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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第2回:3万円前後の低価格5.1chシステム聴き比べ

~ 第1弾:ヤマハ、ソニー、テイアック ~

【5.1chサラウンドとは?(概要)】 【セッティング】 【出音】 【総評】


■巻き込まれない方がいいこと?

 世の中にはできることなら巻き込まれない方がいいということがあって、それはなんといっても1に犯罪、2に交通事故、3に5.1chシステムのレビューである。なにしろ、どいつもこいつも箱がでけぇ!! そんなもんがいっぺんに4つも5つも送られて来るもんだから、オレが仕事場に入るためにはエート一旦これを外に出して自分が中に入ってから箱をひっぱり後ろ向いて左の箱を前に押して一歩進んで元に戻して右の箱を左にえーと違うな上に乗せるんだそうだそうだそれで一歩前進して体を90度回転ののちおもむろに着席という、まさに「リアル倉庫番」状態。

 今この時間に地震があったら間違いなくオレの背骨はバッキリいっちゃうわけであり、世のAVファンの中には一度でいいからスピーカーに埋もれて死んでみたいとか思っている人も少なからずいると思うが、それがかなり現実に近づいてくるとちょっとヤな感じである。しかし「5.1chスピーカーシステムっていっぱいあってどれがどうなのかよくわかんないよねー」などと編集部に言い出したのはすなわちこのオレであり、100%自業自得であるのでどこにも怒りのぶつけ場所がないため紙面にぶつけてみました。はぁはぁ。

 というわけで、ついコーフンしてしまったが5.1chサラウンドシステムである。一般的にはホームシアターシステムという名前で通っており、こいつぁーDVDの作品をより楽しむためにはぜひとも欲しいところだ。具体的な内訳は、フロントの左右スピーカー + センタースピーカー、リアの左右スピーカー、サブウーファ、AVアンプのセットとなっている。これだけの機材を別々に揃えると結構なお値段になってしまい、毎月のお小遣いからスピーカー1個ずつ買うみたいなかなり情けない状態になってしまう(それはオレです)のだ。が、今ならもっと気軽にサラウンドを楽しめるシステムとして、各メーカーとも標準価格で5万円台、実売2~3万円台というクラスの製品をリリースしている。DVDプレーヤーはプレイステーション2でもいいし、パソコンのDVD-ROMドライブでもいい。もちろん高級機を狙わなければ単体のDVDプレーヤーも2万円台で手に入るため、サラウンドに対する敷居も以前とは比べものにならないほど低いのだ。

 最初に頭に入れておかなければならないのは、このように手頃なホームシアターシステムは確かにスピーカーのセットには違いないのであるが、従来のオーディオにおける原音忠実Hi-Fi指向とはまったく方向性が異なる。すなわちDVDを見る・聴くといういう行為はあくまでも映像主体であり、サウンドのメインは人のセリフであったり映画館を再現したような迫力の効果音であったりするわけで、演出としての「作り込み」がアリな世界だ。まあぶっちゃけた話、テレビの外部スピーカーを買うようなつもりで望むというのが、丁度いいと思う。もちろんシステムによっては音楽の再生でも十分なものもあるだろうが、基本的には音楽用のオーディオとは別物と考えた方がいいだろう。


■5.1chサラウンドとは?

 第1弾として今回テストしたのは、「YAMAHA TSS-1」、「SONY HT-K215」、「TEAC PLS-900D」の3セットである。同じ部屋に3セット同時にセットアップし、DVDプレーヤーからの光出力をアンプに差し替えることで、音の違いなどをテストしている。

【第一弾のテスト製品】
ヤマハ「TSS-1」 ソニー「HT-K215」 ティアック「PLS-900D」
標準価格35,000円 50,000円 オープンプライス
実売価格2万円台前半 3万円台後半 3万円前後

 ざっと概要を説明しておくと、フロントスピーカーの規模としてはTEAC PLS-900Dが頭一つリードしているといった感じだ。YAMAHA TSS-1、SONY HT-K215は、ほぼ同じサイズと言っていいだろう。サブウーファに関しては、YAMAHA、SONY、TEACの順に大きくなっている。ただしそれぞれのウーファーは方式が全然違うので、一概に大きい方がいいという先入観は禁物だ。

サテライトスピーカー サブウーファ アンプ部
左からティアック「PLS-900D」、ヤマハ「TSS-1」、ソニー「HT-K215」 下からティアック「PLS-900D」、ソニー「HT-K215」、ヤマハ「TSS-1」

 ここで5.1chオーディオに関しての現状を簡単におさらいしておこう。現在市販されているDVDソフトのほとんどがこの5.1chオーディオで収録されているのは既にご存じのことと思う。この収録方法には2種類ある。正確には圧縮方式と言った方がいいだろうか。1つはドルビーラボラトリーが開発した「ドルビーデジタル」(5.1chなど)という方式。ただしドルビーデジタルであればすべて5.1chというわけではなく、ステレオや3chなどの音声もドルビーデジタルとして圧縮できる、幅広い方式である。DVDのソフトを購入する際には、5.1という数字があるかどうかに注目だ。

 もう1つはデジタルシアターシステムズが開発したDTS(Digital Theater Systems)Digital Surroundという方式。普通は単にDTSと呼んでいる。これもまた色々なチャンネルの組み合わせが可能なのだが、5.1ch以外のものは見かけない。また圧縮率がドルビーデジタルよりも低いので、一般的にはDTSのほうが音が良いとされている。実際聴き比べてみても、DTSのほうがなーんかゴージャス感漂う音がするのである。

 DTS対応ソフトは、“これから増える増える今増えるすぐ増える”と蕎麦屋の出前のように言われているが、そういうかけ声の割にはたいして増えていない。現実としてはとりあえずDVDプレーヤーとAVアンプがドルビーデジタル5.1chに対応していれば、DVDのサラウンド視聴は可能と考えていいだろう。

 しかし逆の見方をすれば、DTS対応のシステムであるならば、DTSなりの音の良さなり違いが実感できなければ対応している意味はないと言える。今回テストする3システムはどれもDTS対応ということなので、DVDプレーヤーは同方式に対応している「Pioneer DV-535」を使用した。オーディオ設定を切り換えて、両方の方式で視聴している。


■各製品のセッティングの違い

 さあこれだけの数のスピーカともなると、セッティングも結構大変である。1セットにつきスピーカー6個なので、3セットで合計18個。6畳間にみっしり18個もスピーカーがあるという、異様な空間ができ上がった。まさにスピーカーの海である。理想的なセッティングに関してはこことかを参考にするわけだが、セットアップのしやすさもシステム選びのポイントであろう。セッティングのポイントなどを機種別にまとめてみた。


実際の出音は?

 さて、なんだかんだ言ってもスピーカーは鳴らしてナンボである。どんなにかっこよくても、出音がショボければ何にもならない。今回テストに使ったソースは、ドルビーデジタル5.1chとDTSが両方収録されているところから、映画ではリドリー・スコット監督「グラディエーター」、音楽ものでは同じ理由からKing Crimsonの「deja VROOOM」を使用した。さらにオーディオ的な特性を判断するため、音楽もののドルビーデジタル5.1chソースとしてUnderworldの「EVERYTHING, EVERYTHING」も試聴した。


■総評

 購入の参考になればということで、個人的な意見として3つの製品を簡単にまとめることにしよう。

 手軽に楽しめて、値段分の元が十分取れるのはYAMAHA TSS-1だろう。外見から想像するよりも音が派手な分だけ、満足感が得やすいからだ。ただしAVアンプではほとんど設定らしいことができないので、出る音は成り行き任せになってしまうのは覚悟しておくべし。もともとは家電コーナーに置かれるよりもPC周辺機器として扱われるタイプの製品なだけに、AVアンプの能力と合わせて考えてやはりパソコンやゲーム機の周辺機器として、狭い空間に配置するサブシステムという使い方がまさにぴったりだ。色や形もシックで、プライベートなベッドルームなどに置いても綺麗にまとまる。

 その点SONY HT-K215は、出音がおとなしい分損している。製品としてこのジャンルは他メーカーが非常に力を入れて頑張っているだけに、SONYというブランドイメージを除いてしまうと、このスピーカーにこの標準価格分の品質があるかどうかは辛いところだ。しかしAVアンプは機能豊富で、長く楽しめるだろう。取扱説明書もアンプの説明に終止しており、サブウーファ以外のスピーカーはオマケと割り切って考えるべきかもしれない。大人しい音が気にいらなかったら、思い切ってスピーカーをアップグレードしていくのも楽しいだろう。

 TEAC PLS-900Dは、楽しむソースが音楽中心ならお勧めだ。映画での低域の迫力が欲しいのであれば、サブウーファを近くに持ってくるなどして調整するといいだろう。AVアンプではセンターとリアスピーカーのディレイ量が決められるなど細かな設定も可能なので、部屋の状況に合わせて設定する楽しみがある。しかし正直なところ、見た目ではこれに一番期待しており、これと比べるのは他社が気の毒かなと思っていたのだが、意外にも出音に大胆さがない。結果的に他社といい勝負になってしまったのは残念だ。

 最後に重要なことを言っておくが、ホームシアターシステムを買うならくれぐれも車で行くか、送ってもらうようにすべし。間違っても電車で持って帰ろうなどと考えてはならない。箱がデカイので迷惑この上なく、しかも腰やっちまいますぜ。人間35を越えたら、力の無さを金で解決するという卑怯な手段も覚えなければならないと、ホームシアターシステムは我々に語りかけてくれているようであった。


□ヤマハ「TSS-1」
http://www.yamaha.co.jp/news/01011503.html
□ソニー「HT-K215」
http://www.sony.co.jp/sd/CorporateCruise/Press/200009/00-0905B/index.html
□ティアック「PLS-900D」
http://www.teac.co.jp/av/TEAC_HOM/pls900d.html

(2001年3月14日)


= 小寺信良 =  無類のハードウエア好きにしてスイッチ・ボタン・キーボードの類を見たら必ず押してみないと気が済まない男。こいつを軍の自動報復システムの前に座らせると世界中がかなりマズいことに。普段はAVソースを制作する側のビデオクリエーター。今日もまた究極のタッチレスポンスを求めて西へ東へ。

[Reported by 小寺信良]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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