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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語” |
第4回:気がつけばデファクトスタンダード 1年ぶりのメジャーアップグレード「VideoStudio5.0」 |
■気がつけばデファクトスタンダード
ユーリードシステムズのVideoStudioが久しぶりにバージョンアップしてバージョン5になった。約1年ぶりのメジャーアップグレードということである。そしてこの1年の間にVideoStudioを取り巻く状況は大きく変化したと言っていいだろう。
あまりビデオ方面を詳しくご存じない方のために、一応その状況ってのを説明しておこう。筆者の察するところ、今までUlead VideoStudioをパッケージを購入した人はほとんどいない、と思う。しかしビデオに興味があるPCユーザーなら、持っている確率が非常に高い編集アプリケーションである。ヘタすると2つ3つ持っているというユーザーもいることだろう。なぜならばUlead VideoStudioは、IEEE 1394(i.LINK)系キャプチャーカードや、今流行のテレビチューナ系デバイスの大半にバンドルされているからだ。何らかの形でUlead VideoStudioと関連のあるメーカーをざっとあげると、筆者が知るだけでもカノープス、NEC、アダプテック、アイ・オー・データ、メルコとまさに錚々たる顔ぶれである。
筆者が知らないだけでほかにもあるだろうが、自社で編集ソフトを開発しているメーカーを除いて、実売3万円前後のビデオキャプチャ関連製品のほとんどが関係していると考えていいだろう。
なぜこれほどまでにVideoStudioのバンドル採用率が高いのかを考えてみると、Ulead製品はいろんなトレンドに対して非常に対応が早いというのが理由の1つだろう。マイクロソフトが、自身でコントロールするにはあまりにも肥大してしまったVideo for Windowsに見切りを付け、それとはまったく互換性のない独自のDirectShow形式でありながら同じAVIという拡張子を持つというフォーマットを発進させて大混乱したとき(AVI2とかNetShowとか色々な名前で呼んでいたアレだ)にも、いち早く対応したのはUleadだった。
またMPEG-1とMPEG-2の編集も可能にするなど、ビデオのトレンドにばっちり追従してくるフットワークの良さがある。今回のVideoStudio 5では、いくつかのエフェクトがPentium 4に最適化されるといったところもさすがだ。さらにWebでの製品サポートが充実していたり、機能に不満なユーザーには上位アプリケーションのUlead MediaStudioがあったりと、色々なタイミングで製品をリリースするメーカーにとってもパートナーとするのにもってこいの条件が揃っているというわけだ。
そんなわけでUlead VideoStudioは、すでに累計出荷本数が140万本を突破しており、「日本全国いつのまにか持ってたソフトコンテスト」があれば、少なくとも3位入賞はカタいと思われるほど、普及してしまっているモンスターアプリケーションなのである。
さてここで今まで謎だった……、わけではなく単に手抜きで書いてなかっただけなのだが、記事をフェアなものにするために筆者の特殊な立場を明確にしておかなければならないようだ。筆者は、ビデオ編集に関してはアマチュアではない。番組やCMを編集するプロのビデオ・エディタとしてテレビ業界に身を置き、かれこれ17年になろうとしている(「いやーんやっぱり筆者っておっさーん」とか言うなソコ、反応するポイント違うだろ!)。
皆さんは、世の中にそういう職業が存在するということは薄々ご存じだったろうが、本物を目にするのは初めてなのかもしれない。そういうわけで筆者は普段からコンシューマのビデオ関連製品はわりかしビシッ!と厳しい目で見ている。しかし逆にプロもびっくりの「知っててやりました」みたいな、コンシューマ市場ならではの確信犯的機能に関しては、惜しみなく賞賛しようというつもりであることをここに明言しておく。
■注目の新機能!!
ではさっそくUlead VideoStudio 5を起動してみる。むむ、なーんかこれってVideoStudio 4と一緒のような……。そう、基本的なGUIは4と全く変わっていない。上位ソフトのMediaStudioProはver.6へバージョンアップした際にかなり大きなGUI変更が行なわれたので、もしかしたらと思ったのだが。ビギナーユーザーがターゲットの本製品では、雰囲気が変わってユーザーとまどわせることを良しとしなかったのであろう。ただ筆者としてはこのGUIが完成された(と同時に洗練された)形だと思っていなかったので、逆に同じスタイルで来たことにちょっと違和感を覚えた。何をモチーフにしているのかよくわからないが、特徴的なパネルデザインにもちょっと飽きてきた感じで、新鮮味が欲しかったかなーという感じだ。
VideoStudio 4 | VideoStudio 5 |
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■強化されたキャプチャ機能
リストアップされている新機能のうち、もっとも大きな比重を占めるのはキャプチャ関連の機能強化だ。もちろん以前のver.4でもキャプチャはできたのだが、それは単にDVカメラを繋いでおいて、ボタンをポチッと押したところからだらーっと録画するようなものであった。ver.5のキャプチャ関連新機能をまとめてみた。
つまりただダラダラとキャプチャしただけで、撮影カットごとに細かく分けてくれるのである。ただしキャプチャ元がDVでなければならない。
バッチキャプチャとは、先にキャプチャしたいカットを選んでリストを作り、後からまとめてキャプチャをするという機能である。なーんか文章で書くとそっちのほうがめんどくさそうだが、実際はそうでもない。使わないカットの多い収録素材から必要なところだけをさくっと抜き出すには便利な機能だ。これもDVからキャプチャするときのみ使用可能だ。
具体的には、DVコーデックの場合だいたい19分ぐらいで使い切ってしまう。これを解決するために、キャプチャ中に4GBを越えそうになったら自動的に別のファイルを作って、続きをシームレスにキャプチャし続けるという機能が必要になる。これがシームレスキャプチャの原理だ。
以上の機能は、これまではメーカーカスタムのアプリケーション、たとえばカノープスのEZDV付属のEZEditやピナクルシステムズのStudioDV付属Studio Video Editorなどでは実装されていた機能。これをVideoStudioのようないわゆる汎用アプリケーションに乗せた意味は大きい。
なぜならば、今までVideoStudioをバンドルしていた製品は、バッチキャプチャ用のアプリケーションやシームレスファイルシステムなどを自前で作るか、あるいは別の会社から借りてくるかしていたからである。この対応のおかげで、今後キャプチャ関連製品は、編集に関してはVideoStudio 5だけバンドルしておけば済むようになったわけだ。
■実際にテスト
今回の目玉である、キャプチャ機能を試用してみた。OSはWinsows Me、IEEE 1394カードはピナクルシステムズの「StudioDV」、ビデオカメラは「SONY PC7」という環境だ。StudioDVはビデオ専用アプリケーションが付属するものの、ハードウエア的にはWindows 98 SE以降採用された標準OHCIドライバで動作するので、一般的なIEEE 1394インターフェイスカードと同等と考えていいだろう。
DVカメラに対する使用感は旧バージョンと同じで、キャプチャモード時に画面表示エリア下の普段はクリップの再生などを行なうコントロール部がそのままデッキコントローラとなる。
旧来の方法、つまりボタンを押したところからキャプチャするモードの「ビデオクリップの分割」では、キャプチャ後に分けたクリップを一覧で表示し、中身も確認できて必要なものが選択できる「シーンダイアログ」が出てくる。これは非常に親切だ。その後、キャプチャされたクリップはすべてストーリーボードにも並べられる。
しかしここには大きな落とし穴、英語で言うとビッグビッグドロッピングホール(ソレ違います)があったのだ。「ビデオクリップの分割」によってキャプチャされたクリップは、実は本当にファイルとしてカットごとに分けられているのではなく、単にサムネイル上で分けられているだけなのである。したがって本体ファイルは、キャプチャした際のひとかたまりになっている。であるから、この状態から編集に入ってカットごとのイン点アウト点を調整しようとしたら、それぞれがいくらでも前にも後ろにも延びるので、「アリ?オレは今どこにいますか状態」に陥りやすい。っていうか絶対陥る。
ビデオ編集17年の筆者もこの「ビデオクリップの分割」の本当の意味が判明するまでは、何がどうなってるんだかさっぱりワケがわからなかった。そもそもカットごとにクリップを分ける便利さというのは、「物理的にそのカットはそこからそこまでの範囲のものでありそれ以上でもそれ以下でもない」という区切りをつけるからこそ意味があるのではないだろうか。事実これに類する機能を持つ他アプリケーションでは、そのようにキャプチャされる。もしこの仕様で「ぜーんぜん混乱しないし平気」というアマチュアがいたら、オレは今すぐ頭を丸めてイマジカの新人採用試験を受けて一から編集人生をやり直してもいい。
それに対してパネル2ページ目にあるバッチキャプチャ機能のほうが、本当にファイルを分割してくれるので間違いがないだろう。これは自動でカッチンカッチンDVカメラが動いてリストどおりにキャプチャしてくれる姿はかなりハイテクかつサイバー感漂うので、そういうのが好きな人にはたまらない魅力のある機能だ。
今までバッチキャプチャをやったことがない人には「オレのDVカメラはこんなことまでできるかっ!」と驚愕することだろう。キャプチャーボタンの横にはリストアップしたカットをテープから再生する機能がある。これはリストの内容確認に使える機能だが、筆者の環境ではうまく動かないかった。キャプチャには問題がないので、単にそのルーチンを利用すれば良さそうだが、簡単にそういうわけにはいかないようだ。
■拡張されたフィルタとタイトル
各カットには、30種類のビデオフィルタが使えるようになった。今までは画像をいじる要素としてトランジションエフェクトぐらいしかなかったのだが、画像処理に使えるビデオフィルタの搭載で、ビデオを編集する・しないに関わらず、キャプチャ映像のコントラストだけ直す、といったようなエフェクター的な使われ方もされることだろう。
各フィルタにはパラメータがよくわからなくても操作に迷わないよう、アニメートされた10個近いプリセットが用意されているのは気が利いている。またフィルタの詳細設定は、上位アプリケーションのMediaStudioProにも採用されているおなじみのダイアログだ。もしVideoStudioに飽きたらないユーザーがMediaStudioProへの移行する際にも、スムーズに新しい環境になじむことができるだろう。
それでも、ビデオでは当たり前の機能がようやく一通り揃った、という意味では、今回のバージョンアップには意味があるだろう。
■豊富な出力
VideoStudio 5には、豊富な出力テンプレートが揃っているのも魅力の一つだ。例えばプリセットではVideoCDはもちろんDVDの名前が見えるのも、いかにも対応の早いUleadらしい。
またUlead VideoStudio 5のインストール時には、Apple Quicktime、Microsoft Windows Media Format 7、Real Player 8も同時にインストールされる。これはそれぞれのフォーマットでストリーミングやE-Mail用のビデオが作れるようにしたものだ。
Real以外は出力のプリセットとしては表われてこないが、「カスタム」からファイルの種類を選択すると、各種フォーマットで保存が行なわれる。
■総論:なんせデファクトスタンダードなんだから
ビデオ編集に慣れた目から見ると、相変わらずインターフェイスの部分で洗練さが欠ける部分はある。しかし機能としては、ビデオに求められるものは一通り揃っている。これはスケールの違いこそあれ、上位バージョンのMediaStudioProにも言えることで、「野暮ったいけどそれなりの機能は一通りあるからなぁ」という意味で無視できない存在なのである。
バンドル製品として入手でき、これだけやれたら良心的といえるだろう。VideoStudioでちょっと気になるのは、あまりにも細かい仕組みをユーザーに隠しすぎるので、イライラする人もいるかもしれない、というところだ。例えば現在の状態を保存するプロジェクトファイルだが、最初に作成したっきりで作業中に明示的に上書き保存するというメニューやボタンがないのは、良くないかもしれない。いや別にVideoStudioが落ちるから、という意味ではない。ビデオ編集という作業は、オーバーレイするためのグラフィックカードやIEEE 1394デバイスのステータス管理、HDDに対する大量データアクセス、音声の再生と録音でサウンドカードと、いろんなハードウエアに対して頻繁にちょっかいを出す作業なのである。すべての関係がうまくいっている間はいいが、このうちの誰かがコケる可能性は少なくないのだ。こういうきわどいジャンルに汎用アプリケーションとして挑むのであれば、自動保存などの安全対策も必要であろう。
さて、VideoStudio 4からのバージョンアップは9,800円が予定されている。製品版の価格が14,800円というあたりを考えると、アップグレード価格としては微妙に悩むところだ。もしかしたら何か新しいキャプチャデバイスを買う予定があるなら、もしかしたらバンドルされているかもしれないのでそれを待つのもいいだろう。なんせデファクトスタンダードなんだから。
□ユーリードシステムズのホームページ
http://www.ulead.co.jp/
□製品情報
http://www.ulead.co.jp/vs5/runme.htm
□関連記事
【2月28日】ユーリード、初心者向けDV編集ソフト「VedeoStudio 5」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010228/ulead.htm
(2001年3月28日)
= 小寺信良 = | 無類のハードウエア好きにしてスイッチ・ボタン・キーボードの類を見たら必ず押してみないと気が済まない男。こいつを軍の自動報復システムの前に座らせると世界中がかなりマズいことに。普段はAVソースを制作する側のビデオクリエーター。今日もまた究極のタッチレスポンスを求めて西へ東へ。 |
[Reported by 小寺信良]
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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp