発売前のAV機器をいち早く紹介 |
斬新な音声理論を採用した卵形スピーカー |
富士通テン 508PA |
発売日/4月20日発売 価格/100,000円 |
正面 | 左側面 |
背面 | 上面 |
■ アンプ部
正面 | 背面 |
上面 |
アンプ底面のターミナル | パイロットランプの青色LED | ACアダプタ |
■ 主な特徴
上位機種「512」の内部断面図 |
スピーカー部に採用されている「タイムドメイン理論」は、周波数領域に着目した従来の再生方法に加え、「時間領域(タイムドメイン)の再現性」に注力したもの。音が発生するとき振動が起きるが、その振動の発生から消滅までの時間的な過程を再現することで、原音の波形に忠実な再生を目指している。
この理論を実現するには、スピーカー内部で発生する様々な振動や反射音を抑える必要がある。本機ではスピーカーユニットとエンクロージャーが直接触れないよう、スピーカーユニットをディフュージョンステー(支柱)で支える半中空構造を採用。また、スピーカーユニットのマグネット後部に重量のあるグランド・アンカーを取り付けることで、エンクロージャーに作用を及ぼさない、スピーカーユニット単体による理想的な振動が可能になったという。
独特の形状は、スピーカー内側で発生する定在波の影響を排除するために採用された。共鳴や反射音を低減する効果があるという。
スピーカーの再生周波数帯域は55Hz~20kHz(+0dB)で、口径は8cm。重量は1本2.3kgとなっている。市販されている他のアンプをつなぐこともできる。
付属するアンプ部は12W×2(10kΩ)のベーシックな性能のもの。円錐形の頂点部分がボリュームノブになっている。入力端子はRCAピンジャックが1系統。
販売は専用サイト「ECLIPSE TD」で行なわれるが、全国30店の契約取扱店でも試聴・購入が可能。広告にはブライアン・イーノを起用している。
■ 編集スタッフのファーストインプレッション
今回の視聴機材 |
●今回の視聴機材
まず、音の分離が良く、非常にクリアな印象を受けた。大げさにいえば、チャンネルごとのリバーブやコンプレッサーの状況まで分離して聞こえてくる感じ。思わずシーケンスソフトのエディット画面を思い浮かべてしまったほどだ。高域の伸び、低音の輪郭も、価格とフルレンジであることを考えれば、すごい描写力である。 強調されている帯域は特に感じられず、特性的にはモニタースピーカーを思わせた。ただし、ソースによっては、逆にそれが物足りなく感じるケースも見受けられた。 また、音と音の重なり具合に、奥行きを感じる場面が多かった。これは分離感からくるのだろう。ジャズ系の音源を聞いたが、本当にライブを聴いているような臨場感が得られた。 情報量はかなり多い。アコースティックギターのフレットノイズやコントラバスの胴なり、ピアノの弦のびびりまで聞こえてくる。まあ、DVDオーディオの帯域の広さも影響しているのだろうが、本機がそれについていくだけのポテンシャルを持っていることも感じられた。もちろん、CDでも傾向は大きく変わらず、音の伸びとクリアさは、とても10万円のシステムとは思えない。 弱点は指向性の狭さと見た目だろうか。どうせ買うなら口径12cmの「512」も気になるし、製品の性格を考えると、「アンプは必要ない」という人も多いだろう。商品コンセプトとして中途半端な印象を受けたが、富士通テンとしてもホームユースは初参入なので、これからのラインナップに期待したい。 |
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自分が普段聞く音楽はテクノが中心。それほど鮮鋭度や、分離感、定位感などが求められるソースではないので、現在使っているオンキヨーのミニコンポ「CR-185」でも満足している。聞き始めた当初はそれほど違う音には感じられなかったが、しばらく聞くとその価格の差が納得できた。確かに音に輪郭があり、楽器それぞれの音も分離して、その位置まで感じさせてくれる。リスニング後に「CR-185」を改めて聞き込んでみたが、こちらに比べると音も濁り、分離感、定位感も劣っているように感じた。 DVD-Audioのリファレンスディスクでは、特に高音質を感じられた。オーケストラでははっきりとした奥行きがある。ジャズ系の音楽では、演奏される楽器それぞれの位置まで感じることができた。ただ、オーケストラではジャズで感じられたほどの分離感はなく、多少にごりを感じる。カルテット程度のソースが最適かと思われる。「ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ」のリスニングでは、ボーカルにライブ感があった。その場の「空気」を感じられるという印象。聞き惚れました。 ソースをCDに変えてみると、とたんに高音の伸びがなくなった印象に。逆にいえば、DVD-Audioの持つ音を伝えられるだけの力量は持っていると言えそうだ。それでも、自分のミニコンポの音よりも高音質。専用CDプレーヤーで聞いたテクノの音は、高低域に広がりすぎてどうも迫力を感じない。まあ、これまで聞いていたコンポの音がいかにまとまっていたかは思い知ったけれど。DVD-Videoの「U-571」も、あたりまえだがサブウーファで聞く低音よりは迫力を感じない、オーディオ専用のスピーカー+アンプなので、映像ソースの表現力に期待するのは無理があるか。 振り返ってみると、高低双方とも良く伸びていて「空気」を感じられるほどの表現力はあるものの、得手不得手もあってソースを選ぶスピーカー、と感じた。ジャズやアイリッシュトラッドなどの「しっとり系」ならば、非常に気持ちよく聞けると思う。 | |||||
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しかし、高音の抜けのよさにたいして、低音はやはり鳴らしきれていない。とはいえ、ブラインドテストをして、この音が8cmフルレンジのユニットから出ているとは、まず正解できないだろうし、一般的なリスニングでは十分といえるだろう。 実際に音を聞いてみると、DVD-Audioを聴いた後に、J-PopのCDを聴くと、あまりの音の寂しさで聴くのがいやになった。裏を返せば「508PA」では、その違いがわかるぐらいのレベルにあるということ。なるべく、いいソースを繋ぎたいところだ。 デザイン面では、アンプ部のトンガリ頭がボリュームだったり、電源LEDが青色だったり、質感も高くて個人的には好印象。スピーカーもスピード感が出ていていい感じだ。 ただ、ハイエンドオーディオの価格帯でないのだから、入力が1系統しかなく、リモコンが用意されていないのはつらいところ。もう少し、一般のユーザーが使うこと想定してもよかったのでは。 とはいえ、使い勝手をある程度犠牲にしていいのなら、置く場所も小さくてすみ、買って損はないと思う。
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■ 主な仕様
(スピーカー部)
□富士通テンのホームページ
http://www.fujitsu-ten.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.fujitsu-ten.co.jp/release/2001/20010328.htm
□ECLIPSE TDのホームページ
http://www.eclipse-td.com
□関連記事
【3月29日】富士通テン、卵型フォルムで原音再生を追求したスピーカーシステム
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010329/ten.htm
(2001年4月19日)
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