気になるグッズを衝動買い


【バックナンバーインデックス】


第17回:ノイズキャンセリング、リベンジ
今度は密閉型「松下 RP-HC100」


 AV製品はピンからキリまでいろいろありますが、いわゆるメインストリーム以外にはいろんなおもしろいアイテムがたくさんあります。ここでは思わず衝動買いしたくなるけど、冷静に考えるとどうかな~? と、気になる「モノ」に積極的なアタックを繰り広げていきます。

骨振動に耐えられず……

 かなり良好な使用感であった、ソニーのノイズキャンセリングイヤホン「MDR-NC10」。しかし、骨振動を拾って歩きながらのリスニングにどうにも慣れないという欠点があった。「どうにかならんものですか?」と思い1週間使用してみたが、結論は「どうにもならない」に決定。あかん、自分には耐えられませんわ……。

 ノイズキャンセリングの効果はとてもナイスなのだけれども、この骨振動の響きはかなりのマイナス。地下鉄やイスに座りながらの使用ならば、なんとか我慢できるレベルだけれども、やはり歩きながら快適にリスニングしたいじゃないですか。

 結局、「MDR-NC10」ではこの問題に関する解決策はナシと考え、次なるブツに手を出すことを決意したのであります。ああ、「MDR-NC10」もかなりいい感じなんだけどなぁ……。


今度は松下の密閉型ヘッドフォン

 耳に押し込むプラグ型イヤホンの「MDR-NC10」では、どうしても骨振動をひろってしまう。問題解決にはやはりヘッドフォン型にするしかない。

 同じソニーにも「MDR-NC20」というヘッドフォンタイプの製品があるけれども、どうせなら別メーカーのものも試してみたいな、と考えて松下の「RP-HC10」を調べてみた。

 製品情報をよくよく見てみると、この「RP-HC10」、いまどきコードが両耳直出しタイプで、コード長も1.5mとリモコンに接続するにはかなり長い。なんというか、2~3世代前のヘッドフォンという感じ。もしかしてかなり前の製品でモデルチェンジしないまま販売しているのかも。

 しかし、折りたたみ式なのでポータブル使用にも便利そうだし、しかも密閉型なのでハウジングによる遮音効果も期待できそう。ま、実は両方とも一長一短があると思うのですが、使い勝手に関しては試してみないことにはなんとも言えないしなぁ。よし、買ってみますか! と決意し、5件ほど店舗めぐりを繰り返した後、新宿の量販店発見。試聴はできなかったけれども、まあ、目的もはっきりしているのでいいでしょう。お値段8,000円。「MDR-NC10」より1,500円ばかり安い感じかな。ノイズキャンセリング機能つきにしてはリーズナブルな価格だと思います。それじゃ、ゲットしますか。

パッケージ。シースルータイプで本体を確認できる 同根物一覧。本体とキャリングポーチ、マンガン電池のみ マニュアルは台紙の裏に印刷されている。ううむ、エコロジー


折りたたみでコンパクトに、しかも電池は内蔵

 パッケージはこのクラスの製品にありがちなシースルータイプ。製品を実際に確認できて良いのだけれども、1つ、確認できなかったことがありました。それがスケール感。購入前は、「耳全体を覆うタイプ」のハウジングだと考えていたけれども、実際に装着してみると「耳にのせるタイプ」のハウジング。つまり、小さかったわけね。

 ぐは、これは結構痛い誤算だ。自分、長時間のリスニングには耳全体を覆うタイプのハウジングで、耳たぶとドライバ間に十分なスペースがないと耳たぶが疲れてしまうんです。現在使用中のKOSS「PORTA PRO」はドライバを直接耳にのせるタイプだけれども、こちらはドライバが小型で耳に当たる面積が少ない。アームのテンションも低めなので全然気にならない。しかし、「RC-HC100」はちょうど耳たぶ全体に覆い被さるくらいのサイズ。ちょっと疲れそう。考えてみれば「コンパクトな折りたたみ型」という時点で予想すべきことだったのですが。

 「折りたたみ型」でもう1つ気になるのは、アジャストがスライド式ということ。自宅用のヘッドフォンを選ぶとき、フリーアジャストのAKG「K501」とスライド式のゼンハイザー「HD570」で迷い、結局フリーアジャストの「K501」を選択した自分には、少々面倒。

 しかし、折りたたみのメリットは大きいのも事実。折りたたみ機構のないソニー「MDR-CD750」をポータブルで使用していた時期もあったけど、未使用時に首から下げてると首が絞まっちゃうんだよねぇ。おまけに、場に合わない状況に出くわしても、収納スペースはナシ。そのまま気まずい雰囲気、ということもあったな……。

 結局、ポータブル用には折りたたみ型の「PORTA PRO」を選択して現在にいたる、訳なので「アジャストがどうこう」はないものねだり。でも、折りたたみ型でフリーアジャストという製品はないものかね?

 折りたたんだ状態は結構コンパクトで、カバンの隅でも十分に入りそう。このヘッドフォンで重要な点は、ノイズキャンセリング回路用の電池がハウジングに内蔵、という点。そう、「MDR-NC10」では外付けだった電池と回路はハウジングに内蔵なのです。

 電池は単4型で、R側にあるカバーを外して収納。電源スイッチもR側についていて、電源ランプは赤色LED。スイッチを入れればもちろんL側にもノイズキャンセリング効果が反映されます。しかし、これならコードも片出しできるんじゃなかろうか?

  
装着したところ。ちょうと耳たぶ全体の上にのせる形に ヘッドフォン本体。アジャストはスライド式 折りたたんだ状態。電池を内蔵する割にはコンパクトに。隣りは「PORTA PRO」

電源スイッチ部。「OPR」は「オペレーション」の略 電池の挿入部。ふたが分離するタイプなので、なくさないよう注意


キャンセル効果はそれなり。ホワイトノイズはナシ!

 ノイズキャンセリング効果を試すべく、無音状態で電源ON。とりあえず職場でリスニングしたところ、「MDR-NC10」とはまた違った印象。

 まず、骨振動を拾わない。ま、ヘッドフォンタイプだからこれは当然といえば当然。キャンセルする音も結構違うようだ。空調やPCファンの音はかなり低減してくれるものの、音の存在は確認できる、。「MDR-NC10」では、ほとんど聞き取れなくなっていたキーボードの打鍵音はOFF時と大差なく聞こえる。そして、一番の違いは会話音がクリアに聞こえる、ということ。「MDR-NC10」はいわば「耳栓」であったので、会話はにごって聞き取れなかったが、こちらは外さなくてもOFF時と同様はっきりと内容が理解できる。これなら話し掛けられても安心です。

 ただ、ハウジングによる遮音効果はほとんどない、ということなんだよね。せっかく密閉型なのに、その点は残念。原因は、やはり耳たぶまで覆わない「耳乗せタイプ」であるため、密着度が低いからなんでしょう。当然、外にもそれなりの音量で音漏れしてしまいます。

 ノイズキャンセリングする音域は、マニュアルによると40~1,500Hz。スペック的には「MDR-NC10」と全く同じだけれども、「耳栓」による遮音効果がない分、聞き取れるノイズは少し大目の印象。パッケージには「周囲の騒音約70%カット」とあるけれども、第一印象としては50%くらいかな。ただ、これはキーボードの打鍵音と会話か聞こるから、という面が大きいですが。しかし、耳孔内の反響がない分、こちらの方が快適です。

 で、試してるうちにふと気づきました。「あ、これホワイトノイズないわ」。

 ヘッドフォンとして当たり前なことなので気づきませんでしたが、電源をONにしても「サー」というホワイトノイズはありません。全くの無音といっていいでしょう。「MDR-NC10」でははっきりとホワイトノイズが出ていたので、これは大きなアドバンテージ。しかし、どうも超音波が出ているようで、少し鼓膜に圧迫を感じます。もしかしたら自分だけかもしれないけれど。


音質は中音域にまとまってこもり気味

 んじゃ、CDプレーヤーにつないで、地下鉄での効果を試しながら帰りますか、と音を鳴らしてたところ、ちょっと違和感が。「ん? もしかして音質かなりダメ?」

 どうも音がこもり気味でクリアに聞こえない上に、高音域が全くといっていいほど出ていない。接続したプレーヤー「ソニー D-E700」は5年くらい使ってるちょっとお年寄りだから、もしかしたら壊れたかも、と思って「PORTA PRO」をつないでみたが、あら、高音はちゃんと出てるよ?

 改めて「RP-HC100」をつないでリスニング。……音質はやはり先に感じたのと同じ。再生周波数帯は「10~22,000Hz」とあるけれど、ホントにでてるのか、オイ! と突っ込みたくなるようにまとまっている。

 まず、高音域がばっさりと切られたような感覚で、音に伸びが感じられない。低音域も出ていることは出ているが、バランス的には中音域にぐぐっとまとまった感じ。再生周波数帯15~25,000Hzで、低音が強調されてはいるが、高音域もかなり伸びる「PORTA PRO」に慣れている自分の耳だと、ちょっと気持ち悪いバランスです。

 こもった音は、おそらく密閉型のハウジングによるエコーがかかっているもので、分離感もあまりない。う~む、こもった音はハウジングによる影響だからどうしようもないとして、高音域の伸びはエージング効果に期待するしかないなぁ。


地下鉄、街頭、自室でキャンセル効果実験

 まあ、とにかく、いろいろな場所でキャンセリング効果を試さねばなるまい。

 まずは地下鉄。電源OFF/無音時は、やはり密閉度が低いため結構騒音を感じてしまうが、無音状態のままONにすると、劇的に騒音を低減してくれる。レールのつなぎ目ををまたぐ音など、低音域のノイズは「70%カット」というコピーには偽りナシという感じ。

 しかし、車両のきしむ音など1,500Hz以上の騒音も結構うるさく、「耳栓効果」があった「MDR-NC10」よりは少々わずらわしく感じる。クリアにリスニングしようと思うと、音量は大きめになってしまい、「D-E700」では少し音漏れを覚悟しないといけない「3」程度まで上げなくてはいけない。それでも「PORTA PRO」では最低「4」まで上げないとクリアにはならないので、音漏れはかなり低減できる。

 次は街頭。今度は池袋を3時間ほどうろうろしてみた。まず、「MDR-NC10」に比べて会話がクリアに聞こえる分、キャンセル効果が薄いかな、という印象を受けた。カラオケ店の広告アナウンスなど、スピーカー系の音はOFF時と大差ないレベルで聞こえるし、会話音も近くならばはっきりと聞き取れてしまう。

 しかし、自動車の走行音は、遠くならばかなり低減してくれるし、雑踏の放射雑音はほとんど聞き取れなくなる。総合的な効果は大体3割くらい低減、という感覚。まあ、街頭ならば多少音量を上げても音漏れは気にならないから結構使い勝手はよろしいかと。

 最後に、自室で実験。ここのノイズ源はPCのファン1つだけ、という状況。無音状態/ONではハウジングによる遮音効果が薄い点とホワイトノイズがない分、「MDR-NC10」より大きく聞こえてしまう印象だが、「70%カット」というコピーを思い出すと、「まあ、それなりに低減してるな」と思える。

 低減率は、リスニングしながら使用すると、OFF時で少し聞こえたファンのノイズも聞き取れなくなるくらい。まあ、リスニング使用が前提であればかなり使えるレベルかな。

 全体的なノイズキャンセル効果は、「MDR-NC10」と比較すると「耳栓効果」がない分、少々劣る印象。しかし、使用中にも会話が聞き取れるメリットがあり、ホワイトノイズも全くナシ。図書館など、多少のノイズが気になる環境で使用すれば効果は大きいと思う。

 電池の持続時間は、仕様書によれば「マンガン電池約25時間/アルカリ電池約50時間」ということで、付属のマンガン電池を使い、OFF効果を試す以外は常時ONで使用したところ、丸1日後、つまり、仕様書通りの時間で効果が薄くなった。実用的な時間といっていいでしょう。

 長時間使用すると耳たぶが疲れるかと思ったが、意外と疲れを感じることなく使用できた。2時間くらいは快適につかえると思う。しかし、やっぱり超音波出てるのかな、鼓膜が痛くなるんですけど。30分に一度は外さないとダメですわ、自分。


エージング効果もイマイチ。選択はお好みで

 ……さて、気になるエージング効果による音質の変化ですが、20時間ほど鳴らしてみましたが、あまり変わりませんでした。

 エージング20時間では少々足らないかもしれないけれど、それでも何かしらの変化は出るはずなのに、第一印象とほとんど似たような音質にしか感じられない。こもり気味な音はどうしようもないにしても、音域の拡大やバランスの改善があるかと思えば、印象としては全くナシ。計測器で調べればまた違うんでしょうが、それでも中音域にまとまった印象で、低音域が少し延びたかな、という感じ。高音域は相変わらずばっさり切られたままで、伸びが感じられない。

 音質的には「MDR-NC10」の方が優秀で、「耳栓」による遮音効果もあるのだけれども、電池と回路は外付けで、ホワイトノイズと骨振動が気になってしまう。

 「RP-HC100」は、ハウジングによる遮音効果が薄く、音質はちょっと問題ありだけれども、ホワイトノイズは全くないし、骨振動とは無縁。おまけに電池はハウジングに内蔵でわずらわしい外部ボックスはナシ。

 結局、どちらを選ぶかはお好み次第、ということですね。個人的には「MDR-NC100」の方がよろしいかと。でもやっぱり骨振動が気になるなぁ……。


両製品とも携帯の干渉ノイズを拾います

 実は、まだかなり気になる欠点があります。先の「MDR-NC10」の記事に対して読者よりとあるご指摘がありました。なんでも「携帯電話の通信時に干渉ノイズが出る」ということで。

 実は自分、携帯電話を持っていないし、地下鉄は電波が届かないので1週間使用していても全くノイズが出なかったのですが、編集部所有の携帯を手にもちながらiモードで通信など試してみたところ、ああ、確かに干渉しますね……。

 ノイズキャンセルをONにしていると、携帯電話のネゴシエーション時や通話中の不定期に「ブツブツ」とはっきり聞き取れる干渉ノイズを確認。これは「MDR-NC10」、「RP-HC100」の両機種で全く同じように発現いたしました。

 両社のお客様相談センターに連絡して「解決策ありませんか?」と聞いてみても、「ありませんねぇ」と申し訳なさそうにご対応いただだき、「なるべく携帯電話に近づかないようにするとか……」というアドバイスも。ソニーのヘッドフォンタイプ「MDR-NC20」も同様にノイズが出て、この問題を改善した後継モデルの予定もないようです。地上の電車を使う方はこの問題を考えた上で購入のご検討を。

 ただ、地下鉄車内だと携帯意電話がほとんど使えませんので、全くノイズが出ませんし、池袋の街頭を3時間ほど歩いてみても大丈夫。ほかにも「東海道線で電車の減速時にノイズが出る」という報告をいただきましたが、これは確認できませんでした。いや、しかし、携帯電話がこれだけ普及しているのに対策なし、というのはどうにも……。

□松下電器産業のホームページ
http://www.matsushita.co.jp/
□製品情報
http://prodb.matsushita.co.jp/products/fr/RP/RP-HC100.html

(2001年6月12日)

[fujiwa-y@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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