■竹山正寿の 業務用チップ搭載のMPEG-2エンコーダカード
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■プロユースでは定番となっている三菱のMPEG-2エンコーダ
三菱電機はDVDオーサリングシステムを古くから作ってきたメーカーである。特に、映画やセルビデオのDVD化を行なっているポストプロダクションで使われているDVDオーサリングシステム「EN-1000」、「EN-250PRO」は性能、機能、操作性ともに定評がある。
しかし、困ったこと(?)に、立派なのは性能や機能だけでなく、価格もなのだ。システム価格が「EN-1000」では1,500万円から、「EN-250」でも500万円から。
セルビデオを常時制作しているならいざ知らず、企業内ビデオやブライダルDVD制作現場ではこの価格帯では導入しにくい。そういった現場では、システム価格で50万円以下のDVDオーサリングシステムが必要とされる。
もちろん、機能としても「EN-1000/EN-250」などで採用されているSDI(D1シリアル)入力、AES/EBU入力など業務用ビデオ機器への対応や、マルチアングルやマルチストーリーに対応した「Scenarist NT Professional」などは不要。その代わりといってはなんだが、DVによる入力が欲しい。
―そんな要求を満たす製品として登場したのが三菱電機の「EN-20/EN-20RP」である。「EN-20」の価格は198,000円、「EN-20RP」が298,000円と、コンシューマ用としては決して安くないのだが、業務用としては破格の価格だ。
もちろん、無理をすればパーソナルユーザでも手が届きそうな価格帯と言えるだろう。なお、「EN-20/20RP」は、「EN-1000/250」のようなシステム販売ではなく、ハードとソフトのパッケージとして販売される。
基本的には購入した人が、自分のPCに自分で組みこんで使うということだが、プロショップではターンキーとしてシステム販売される可能性もある。
■「EN-20」と「EN-20RP」の違い
「EN-20」と「EN-20RP」との違いは、「EN-20RP」に「Adobe Premiere 6.0 日本語版」とダイキン工業の「ReelDVD 2.5LE」が添付されている点だけだ。
PCIカードであるハードウェアMPEG-2リルタイムエンコーダボードとドライバ、専用ソフト「MPEG File Creator DV」については変わりがない。すでに、Premiere 6と、「Scenarist」などのDVDオーサリングツールを導入しているポストプロダクションにとっては、10万円の価格差は微妙なところ。Premiere 6ユーザーにとっても、悩みどころかもしれない。
いうまでもなく、DV端子によるビデオ制御にも対応し、RS-422による制御はオプションとなる。エンコードは、1パスVBR(可変ビットレート)もしくは、CBR(固定ビットレート)のリアルタイム・ハードウェアエンコードが可能。また、PC上では、デコードしたものをリアルタイムにモニタリング表示できる。
■自宅のテスト機に装着
今回は、推奨動作環境をクリアできるテスト機がなかっため、推奨CPUより少し遅いPentium III 933MHzのマシンにインストールしてみた。
ちなみにマザーボードは「ASUS P3V-4X」、ビデオカードは「Abit SiluroMX400(GeForce2 MX400)」、サウンドカードはCreative Lab「Sound Blaster Live!」、データ用HDDは「Fastrak100」にIBM製7,200回転のATA100ドライブ2台をRAID0のストライプセットとしている。
■推奨動作環境
本来、映像関連を扱うマシンにはLANカードは入れないほうがよいのだが、ドライバやテストプログラムを扱う上で仕方なしに「3Com FastEtherLink XL PCI」を使用。しかし、キャプチャやエンコード時には切り離している。
なお、MPEG-2エンコード中に、エンコードされた映像をリアルタイムにPCのディスプレイ上でモニタリングするには、Direct Draw対応のVRAM 32MB以上のビデオスカードと、「DirextX 8a」が必要となる。また、Premiere用プリセットは対応OSがWindows 2000 日本語版のみ、ということにも注意する必要がある。
実際のカードの装着から、ドライバやアプリケーションのインストールまでのセットアップ手順は、通常のMPEG-2エンコーダや、ビデオキャプチャカードなどと変わりない。
■操作感は良好
キャプチャ方法は2種類ある。1つは、専用ユーティリティ「MPEG File Creator DV」を使う方法。もう1つは「Adobe Premiere 6.0」でムービーキャプチャを行なう方法だ。
データを加工せずDVD-Videoのオーサリングする場合には、「MPEG File Creator DV」を使ってIBPフレームのMPEG-2ファイル(拡張子m2v)と、同名で拡張子が異なるAC3音声ファイル(拡張子AC3)でキャプチャした方が手っ取り早い。
Premiere 6.0で編集したい場合には、Premiere 6.0のムービーキャプチャでDV圧縮のAVIファイルとしてキャプチャする。ただし、アナログコンポジット、S-Videoからの入力をDV圧縮のAVIファイルとして記録することはできない。これはアナログ出力機能がないのでいたしかたがないところ。
さらに、DV出力ができないので、編集途中での書き戻しができないのは、いささか不便だ。Adobe Premiereの編集が終了したら、「MPEG File Creator DV」でDVデータからMPEG-2ファイルにコンバートするか、Adobe Premire 6.0の出力時にm2v、AC3へエキスポートすることになる。
MPEG-2エンコードは1パスVBRの場合、映像ビットレート3~9Mbps(0.1Mbps刻み)、VBVバッファを変更して、データ速度の変動を小さくすることもできる。平均ビットレート設定によるCBR、MPEG-1圧縮なども選択可能だ。16:9ワイドにも対応する。
音声はビットレート128~384Kbps(7段階)で、フォーマットはDDCE(Dolby Digital Consumer Encode:ドルビー・デジタル・コンシューマー・エンコード)を採用している。DDCEでは最大2チャンネルまでで、市販タイトルが作れないという制約があるが、PCMよりは容量を小さくできるメリットがある。
また、付属ユーティリティ「MPEG File Creator DV」のインターフェイスには、おもしろいアイデアが採用されている。ウィンドウをいくつも開かないように、1つのウィンドウ上に操作に必要なボタンや設定は常に表示される。逆にいえば、不要なものはいっさい表示されないのである。
ウィンドウ上部にターゲットストリーム(DVD、Video-CDなど)という選択ボタンがあり、これを選ぶと画面下にあるウィンドウが必要に応じて変化し、最適な設定が読みこまれる。もちろん、その画面上で可変することもできるし、More Detailボタンでさらに細かい設定を行うことも可能だ。また、設定を間違えたり、元へもどしたい場合には、「Defボタン」でデフォルトにすべて戻せる。
今回、テストしたバージョンではバッチキャプチャができない(2001年内対応予定)ため、IN点、OUT点を使ったキャプチャのみだが、難しい操作は皆無である。さらに、キャプチャしている最中にMPEG File Creator DVにはエンコードされた映像が表示され、モニタ上で画質が悪いと判断した時点でキャプチャを終了。設定を変更してやりなおせるのは、作業効率という意味で大きなアドバンテージだ。
なお、キャプチャされた映像は、この価格帯の製品としては大変優秀。MPEG-2の仕組み上、5Mbps以上の高いビットレートでは差がでにくいのだがビットレートを落していっても、動きの滑らかさが失われたり、ブロックノイズ、エッジ部分のノイズが目立つこともない。民生用のMPEG-2とはレベルが違う。残念ながらそれほど異なった映像ソースを多量に処理したわけではないが、詳細な設定が可能なのでソースに合わせた圧縮がしやすいと思われる。
EN-20RPに付属のAdobe Premiere 6.0については、いまさら説明するまでもないので、解説は割愛させていただくが、DVDオーサリングツールのReelDVD LEは、ダイキン工業が開発したもの。業務用DVDオーサリングツールとしてNo.1のシェアを持つ「Scenarist」から特殊な機能をはずした製品だ。
マウスによるドラッグ&ドロップで関係づけができる上、制作内容をその場で確認できるプレビュー機能や、シナリオフローのビジュアル表示機能など本格的な機能も持っている。さらに、DVD-R for General、DLTへのプレマスタリングが可能。
PC用のDVDオーサリングというと「DVDit! LE」が有名だが、機能面ではReelDVD LEとは比較にならない。逆にDVDit!LEの方が、わかりやすいという部分もあるが……。
EN-20/EN-20RPは、コンシューマユースとしては価格的にきついかもしれないが、業務用や企業用としてはお買い得。DVから入力し、DV編集してDVD-Rに書き出すのには最適な製品といえるだろう。
□三菱電機のホームページ
(2001年9月28日)
[Text by 竹山正寿]
EN-20
EN-20RP
Adobe Premiere 6.0 日本語版
×
○
ReelDVD 2.5LE
×
○
MPEG File Creator DV
○
○
主な仕様についてはここを参照してもらいたいが、最低限説明しておくと、映像の入力はDV(IEEE 1394)と、アナログ(S-VIDEO、コンポジット、オプションでアナログコンポーネント入力用カードの発売を予定している)。音声入力はDV経由のほかにアナログも可能。
DV端子、S-Video、ステレオミニジャック入力、コンポジット入力、ステレオミニジャック出力
http://www.melco.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.melco.co.jp/news/2001/0705-a.htm
□関連記事
【7月6日】三菱、業務用チップ搭載のMPEG-2エンコーダカード
―ドルビーデジタルCEエンコードにも対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010706/mitsu.htm
= 竹山正寿 (たけやま せいじゅ) =
Sleeping Dragon Press S.p.A 代表
工芸大学大学院画像工学修了。専門は画像工学。大学院で色に関する研究をしていたのだが、研究するより写真をとったり絵を書いたりしたほうが楽しい。そこで、制作側にまわったのだが、最近は、動物写真中心となってしまった。
素材は作るが完パケはメンドウということで、ホームページも女房に写真を渡しておしまいにしているため、自分のページではなく、女房のホームページ(SleepingDragon Press)に写真だけを提供している。
ウォッチ編集部内AV Watch担当
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