【バックナンバーインデックス】

20GB HDDや光デジタル入力を搭載したポータブルオーディオプレーヤー
クリエイティブ
NOMAD Jukebox 3
発売時期/4月下旬 価格/オープンプライス(実売価格52,800円前後)

■ 主な機能

 クリエイティブメディア株式会社の「NOMAD Jukebox 3」は、2.5インチの20GB HDDを内蔵したポータブルオーディオプレーヤー。前モデルの「NOMAD Jukebox」に比べ、HDDが3倍以上大きくなった上で、サイズは一回り小さくなっている。重量も約289g(本体のみ)と100gほど軽くなった。とはいえ、同じくHDDを内蔵する「iPod」に比べると、かなり大きく感じる。

 PCとの接続はUSB、または同社が「SB1394」と呼ぶIEEE 1394互換の端子で行なう。端子形状は一般的な4ピンのIEEE 1394端子と同じで、一般的なIEEE 1394端子と通信できる。対応OSは、Windows 98 SE/Me/2000/XP。

前モデル(右)との比較。一回りほど小さくなった。片手での操作もなんとか可能だ。HDDの作動音も静かになった 上面のボタン配置は前モデルを踏襲。ディスプレイ直下に3つのボタンが並び、中央が再生キューボタンで、その右が検索ボタンになる 専用のリチウムイオンバッテリは計2つを装着できる。挿入口がぎりぎりの大きさなので、一度装着すると取り出すのに苦労する
右側面。メニュー操作で多用するスクローラ(ジョグダイヤル)と、ヘッドフォン端子を備えている。ヘッドフォン端子はリモコン対応だが、専用リモコンの国内発売は未定 本体の後ろにはアナログ出力×2、SB1394(IEEE 1394)、USBを搭載。アナログ出力は2つ同時使用で4スピーカーに対応する 電源ボタンは本体左にある。長押しで起動し、操作可能になるのは約10秒後。リジューム後30分以内なら高速復帰する。左側の端子は光デジタル入力兼アナログ入力端子で、PCを使うことなくNOMAD Jukebox 3への録音ができる

 再生フォーマットはMP3(32~320kbps)、WMA(60~160kbps)、WAVE(11.025~48kHz)で、20GBのHDDに、128kbpsのMP3なら5,000曲、64kbpsのMP3なら8,000曲を収納できる。これだけ大容量なら、非圧縮のWAVEでの記録も現実的な選択となるだろう。音飛び防止メモリは16MB分を搭載している。

 バッテリは専用のリチウムイオンバッテリを使用する。バッテリパックは同時に2つを装着可能で、パッケージには1つだけ同梱されている。1つだと最大11時間の連続再生が可能。2つ装備すると約22時間となる。1つだけを装着した場合、MDプレーヤーなどと比べると多少再生時間が短く感じるかも知れない。しかし、HDDが入っていることを考えると納得できる範囲だ。

 PCからの曲データの転送には、同梱の専用ソフト「Creative PlayCenter」を使用する。これは、音楽CDのリッピング、CDDBでの曲情報検索、WMAまたはMP3へのエンコード、プレイリストでの再生といった一般的な機能を搭載した音楽ソフト。もちろん、専用を謳うだけのことはあり、NOMAD Jukebox 3との連携機能も持っている。曲の転送、タイトル入力、エフェクトといった各種設定もここから行なえる。また、「AudioSync」と呼ぶ機能で、PCのライブラリとNOMAD Jukebox 3の曲データを同期させる機能もある。

 なお、39.8MB分のMP3ファイル(8曲)を使い、SB1394(IEEE 1394)とUSBそれぞれの転送速度を計ったところ、IEEE 1394が約14秒、USBが約52秒という結果になった。やはりIEEE 1394での転送は高速で、USBに約3.7倍の差をつけている。

 また、この種の製品としては珍しく、アナログ入力と光デジタル入力端子を装備している。つまり、録音機能付きMDレコーダなどと同じように単体で録音ができるのだ。録音フォーマットはMP3あるいはWAVEで、MP3ならビットレート64/96/128/160/192/256/320kpbsでの録音が可能。WAVEの場合は、サンプリング周波数11.025/22.05/44.1/48kHzで記録できる。

 録音待機状態にしておけば、入力された信号にシンクロして自動的に録音が始まる。ここまでは一般的なMDレコーダなどと同じだが、曲間を感知してくれないため、途中で止めないとCD1枚まるごとを1曲として録音してしまう。CDプレーヤー側のプログラム再生機能を使って1曲づつ録音するか、すべての曲を通して録音した後、PCで分割する必要がでてくる。これはかなり手間がかかるので、日常的に使えるレベルではないだろう。

 なおiPod同様、音楽ファイル以外のファイルをHDDに記録できるため、ポータブルストレージデバイスとしての使用も可能。ただし、ストレージクラスには対応しておらず、ファイルの転送には専用の「File Maneger」が必要になる。File Manegerディスクはメニューから作成することが可能だ。

専用の転送ソフト「Creative PlayCenter」。PCでの曲管理やNOMAD Jukebox 3への転送を行なうほか、エフェクトなどNOMAD Jukebox 3の各種設定もここから行なえる


■ 操作性と音質

 MP3 CDを超える大量の曲データを収納できるため、ファイル管理機能はかなり充実している。まず、液晶ディスプレイは132×64ドットを搭載し、5行の表示が可能。漢字、ひらがなの表示にも対応している。横方向の表示文字数は、漢字、ひらがなの場合で10文字。情報量は比較的多く、視認性も良い。バックライトもついており、青または緑から発光色を選択できる。

 曲の再生方法は、メインメニュー内の「ライブラリ」から選択し、「再生キュー」に入れた後、目的の曲にカーソルを移動して再生ボタンを押す、という流れになる。ライブラリ内ではアルバム単位、アーティスト単位、ジャンル単位でのツリー表示が可能で、再生キューには1曲単位や、アルバム単位で送ることができる。なお前モデルとは異なり、再生キューに入れることなく、ライブラリ内での再生が可能になった。再生すると自動的に再生キューに送られるが、再生キューに入れたくなければサブメニュー内から「再生」ではなく「試聴」を選べば良い。

 一度曲を再生キューに入れてしまえば、次からは再生キューから曲を選択して聴くことになる。再生キューでもライブラリと同様、アーティスト単位やジャンル単位での表示が可能だ。また、検索ボタンを押すことで、曲データのいわゆるインクリメンタルサーチが行なえる。検索文字列にはひらがなや漢字の入力も可能で、漢字変換は単漢字変換になる。

メインメニューからは曲のほか、各種設定へアクセスできる。再生キューへ曲を送るときもメインメニューの「ライブラリ」から行なう ライブラリからトラックを選んだところ。カーソル移動やサブメニューの表示、項目の決定などすべての操作はスクローラ1つで可能 タイトル名やアーティスト名には漢字も使用できる。変換は単漢字変換のみ

 以上の再生キューを使う方法とは別に、プレイリストを作成する方法もある。再生キューに曲を入れていって、それを保存すればプレイリストとなる。このプレイリストは、PC側のCreative PlayCenterでも編集可能だ。

 一般的なポータブルプレーヤーに比べると、再生キューという概念が多少とっつきにくいかもしれない。そういう人は、PCで作成したプレイリストを主体にするのが正解だろう。しかし、アーティスト、アルバム、ジャンルといった複数のキーを自在に扱えるため、慣れれば大量の曲を柔軟に管理できるようになる。

 操作面で気になったのは、ボタンのホールド機能だ。解除するのは簡単だが、ホールドをONにするにはメニューをたどらなければならない。ポータブルオーディオプレーヤーを使う上で良く使う機能なので、できれば独立したスイッチをつけて欲しかった。また、海外では販売するという液晶付きリモコンの国内発売にも期待する。

 音質は、中音を若干強調したタイプで、ボーカル曲などは聞きやすい。しかし、一般的なMDプレーヤーに比べると帯域幅の面でいま一歩の印象を受けた。特に低域が薄く感じられる。

 ただし、この手のメモリーオーディオプレーヤーとしては解像度が比較的高く、1クラス上の分離の良い音が聴けた。主にジョー・サンプルの「The Pecan Tree」を128kbpsのMP3とWAVEとで聴いてみたが、20GBの大容量を活かしたWAVE再生では、ピアノの高次倍音なども細やかに再生できていた。なお、試聴は付属のステレオイヤフォンではなく、ソニー株式会社の「MDR-E888LP」を使用している。

 また、再生音には「EAX」と名づけられたDSP補正が付加できる。大きく分けて「エフェクト」、「再生スピード」、「イコライザ」、「スペーシャル」、「Smart Volume」の5つから指定でき、それぞれに複数のタイプを設定できる。このうちエフェクトは、リバーブやディレイによる音場シミュレーション。スペーシャルはヘッドフォンで聞く時に広がりを付加するモードとなる。また、Smart Volumeは先読みでダイナミックレンジの圧縮を行ない、電車内などの騒音の多い場所でも小音量パートを聞きやすくするという機能で、PCからの転送時に先読み結果をメタデータとして埋め込み、効果をさらに上げることもできる。

 EAXの機能自体は多彩なのだが、プリセットから選ぶだけなのが多少残念だ。特に、2バンド程度で構わないので、イコライザくらいは自分で設定したいと感じた。なお、物足りない低音を強調するためエフェクトの1タイプ「ディスコ」を選んだところ、とたんにバスドラムが歪みだした。デフォルトで低域を押さえ気味にしているのは、ヘッドフォンアンプの弱さを隠すためなのかもしれない。


■ 大容量は魅力だがサイズに難ありか

 HDD内蔵、IEEE 1394による転送という意味では、アップルコンピュータ株式会社の「iPod」が競合機といえる。内蔵HDDが5GB、または10GBのiPodに対し、20GBという大容量がNOMAD Jukebox 3の強みとなる。

 問題は本体の大きさだろう。前モデルから小さくなったとはいえ、MDプレーヤーやiPodとなどと比べると、まだまだ気軽に携帯できるサイズとはいえない。また、底面積はポータブルCDプレーヤーより小さいものの、厚みは倍近くある。ポケットに入れるのはまず不可能だし、バッグに入れるとしても厚みがあるため、いまひとつ収まりも良くない。

 しかし、携帯面では分が悪いものの、20GBの大容量はやはり魅力だ。Creative PlayCenterには、CDから直接NOMAD Jukebox 3へ曲を転送するモードがあるので、これを使えばPCのHDDの空き容量が少ないユーザーでも、ためらうことなく高ビットレートのMP3やWMAを利用できる。WAVEでの記録も現実的な選択になりうるだろう。

 また、据え置き型のHDDプレーヤーとして使う手もある。PCとの連携や単体での検索機能がここまで強力な製品はまだ市場に存在していないので、単品オーディオやミニコンポと組み合わせて、屋内を中心に使用してみるのも面白いかもしれない。

ACアダプタも小型化された。右が従来機のACアダプタ 付属のヘッドフォン。高級感はあるが、それほど高音質のものではないようだ 専用の周辺機器ではないが、携帯可能なアクティブスピーカー「TravelSound」も発売。単3電池4本で駆動し、重量は300g(本体のみ)。実勢価格は12,800円前後

【主な仕様】
HDD20GB(2.5インチ)
対応フォーマットMP3(32~320kbps、VBR可)、WMA(60~160kbps)、WAVE(11.025/22.05/44.1/48kHz)
再生時間11時間(バッテリパック×1)、22時間(バッテリパック×2)
周波数特性20Hz~20kHz
SN比最大98dB(アナログ出力)、最大96dB(ヘッドフォン)
チャンネルセパレーション最大98dB(アナログ出力)、最大75dB(ヘッドフォン)
入出力端子SB1394(IEEE 1394、4ピン)、USB 1.1(4ピン、同梱ケーブルを使用)、アナログ入力(ステレオミニ)、光デジタル入力(ステレオミニ)、アナログ出力(ステレオミニ×2)、ヘッドフォン(ステレオミニ)
外形寸法約123×130×35mm(幅×奥行き×高さ)
重量約289g(本体のみ)



□クリエイティブのホームページ
http://japan.creative.com/
□ニュースリリース
http://japan.creative.com/press/2002/020422-jb3.html
□製品情報
http://japan.creative.com/nomadworld/products/jb3/welcome.html
□関連記事
【4月22日】クリエイティブ、20GB HDD内蔵MP3/WMAプレーヤー
―単体でデジタル入力からのMP3録音や、日本語入力も可能
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020422/creative.htm
【2000年10月11日】6GBのHDDを備えた携帯型MP3プレーヤーのニューフェース(PC Watch)
クリエイティブ「NOMAD Jukebox」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001011/nomad_j.htm

(2002年5月2日)

[orimoto@impress.co.jp]


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