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第41回:前代未聞、さまぁ~ずが97分つっこみ続ける!!
~でも中身はほのぼの「クロコダイルダンディーin L.A.」~

 怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ 異文化ものの代表シリーズに、さまぁ~ずが挑む

クロコダイルダンディーin L.A.
価格:4,700円
発売日:2001年12月21日
品番:TKBU-5099
仕様:片面2層1枚組み
収録時間:約97分(本編)
画面サイズ:16:9(ビスタ)
音声:ドルビーデジタル5.1ch(英語)
    ドルビーデジタル5.1ch(日本語吹き替え)
    ドルビーデジタル2.0ch(コメンタリー)
発売元:東芝デジタルフロンティア
販売元:徳間ジャパンコミュニケーションズ

 先々週が「耳をすませば」で、先週が「鬼戦車T-34」。スタッフが持ち回りでやっているこの企画、最近はなんだか渋い名作が多い。今回はがらっと趣向を変えて「クロコダイルダンディーin L.A.」をとりあげたいと思う。

 名作でもなく、大ヒットしたわけでもなく、感動で涙がとまらないわけでもない。昨年末にひっそりと出たこの作品に、なぜ今さらスポットを当てるのか。

 それは音声トラックの1つに「さまぁ~ず(旧バカルディ)のつっこみコメンタリー」が入っているからだ。お笑い芸人によるコメンタリーは、おそらくDVD史上初の快挙だろう。「だからどうした」といわれればそれまでなのだが、しばしお付き合い願いたい。これが結構すごいのだ。

 先に作品の紹介をしておこう。ポール・ホーガン主演の「クロコダイルダンディー」といえば、テレビの洋画劇場でも定番の作品。私も子供のころに良く見た記憶がある。「クロコダイルダンディーin L.A.」は、同シリーズの3作目にあたる作品だ。

 '86年公開の初代「クロコダイルダンディー」は、主人公ミック・ダンディーが巻き起こすほのぼのした笑いがうけまくり、9週連続の全米No.1ヒットを達成。続く2作目「クロコダイルダンディー2」('88)は、アクション色を強めて笑いのスケールもアップ。「ランボー3/怒りのアフガン」を抜く3週連続1位(米国)を実現している。

 いわゆる「カルチャーエンカウンター(異文化もの)」に分類されるこのシリーズの人気は、ポール・ホーガンの演じるミック・ダンディーに負うところが大きい。堅苦しい日々を送る現代人は、ミックの実直でマイペースな行動にあこがれを感じてしまうのだろうか。

 そして、もう1つの笑いのつぼが、ミックの発するオーストラリアなまりの英語。本編には言葉の違いから起こる笑いが多く取り入れられているらしい。「らしい」としかいいようがないのは、もちろん私のヒアリング能力が低すぎるため。というわけで、本作のなまりネタについてはまったく言及できないので、その点はご容赦願いたい。


■ ワニ狩り禁止! ダンディー、失業の危機に

 2作目から10年。ミックは妻のスーとともに、故郷のオーストラリアで暮らしていた。2人の間には息子も誕生。大自然の中、穏やかな日々を送る3人。しかし、ミックには不満もあった。ワニ狩りが法律で禁止されたためだ。「クロコダイルハンター」ではなく、ツアーガイドとしての生活に、不満を隠し切れないミック。そこに、ロサンゼルス行きの話が舞い込む。そのころハリウッドでは、撮影所を舞台にした陰謀が進行していた。撮影所に潜入したミックは、運び込まれた大量の絵画に、犯罪のにおいを嗅ぎ取った――。

 前2作から時代の波にもまれつづけ、その都度クールに乗り切ったミックだが、「ワニ狩り禁止」の法律には勝てなかったようだ。監視員兼ツアーガイドとして生きる彼の後ろ姿には、リストラサラリーマンの悲哀がにじみでている。

 舞台をロスに移したあとは、シリーズ共通のお約束が連発。ミックの友人、ジャッコなど、前2作からの登場人物も出てくるし、どこかのんきな独特のムードも健在だ。前2作を楽しんだ人なら、今回も暖かい目で見守れるはずだ。

 ただし、独特のまったりとした雰囲気は、今の時代のコメディにはちょっとそぐわないかも知れない。そのためか、どうも全体的に「B級っぽい」気がする。シリーズ自体のノリはほとんど一緒なので、変わってしまったのは私の方なのだろう。


■ これは新形態のコメンタリーだ!

 さて、さまぁ~ずである。DVDビデオ史上おそらく前代未聞の企画だが、実現したのは劇場版のCMに三村マサカズが出演していた関係からだろう。そのCMは、「でけーよ、ワニ!」、「刺しちゃったよ!」、「しかも牛かよ!」と、画面に映ったものに次々とつっこみを入れるというもの。それを本物の映画でやろうというわけだ。

 さすがに1人ではつらいとの判断からか、相方の大竹一樹も参加している。そのため、大竹のつっこみ自体がボケ、すかさずそれに突っ込む三村(その逆もあり)という、さまぁ~ずらしい展開が楽しめるのだ。

 彼らの説明によると、「普段見ているときに、つい頭に浮かんでしまう作品に対するつっこみを、自分たちが代弁する」という企画らしい。なるほど、とりわけこの作品の場合、どこかピリッとしないボケが多いこともあり、つっこみどころは満載だ。この企画自体、本当に良く思いついたと思う。

 その内容だが、期待した通りの面白さ。登場人物、セット、動物にと意味もなく突っ込んだりボケたりの約97分は、「ああ、今日も無駄な時間を過ごしてしまった」と反省するのに十分な内容のなさ。しかし、この単純さこそ、さまぁ~ず、そしてクロコダイルダンディーシリーズならでは世界だといいたい。これがシニカルなコメディなら、反感を覚えてしまい、決して許されないのではないだろうか。かくいう私も「さまぁ~ず程度では笑わんぞ」と心していたものの、冒頭のとあるシーンでつい吹き出してしまい、以後、最後までさまぁ~ずのペースにはまってしまった。

 もっとも、件のCMのようなテンポの良い突っ込みを期待していると、少しがっかりするかもしれない。CMと違ってストーリーがあるため、突っ込みようのないシリアスな場面もあるからだ。逆に、そういったシーンでの2人の苦境を考えると、「ここは無理だろう、突っ込めないだろう」と内心面白かったりする。また、ストーリーが佳境になると、見入ってしまったのか2人の突っ込み頻度も落ちてくる。そのため「なんでそこで突っ込まないんだ、突っ込めよ、遅せーよ」と、思わず突っ込みを入れる自分に苦笑したりもする。

 なお、このコメンタリートラックでは、2人のつっこみと平行して本編の日本語字幕が出る。これにより、ストーリーを追いながらもつっこみを楽しむことが可能だ。しかし私の場合、最初につっこみコメンタリーで視聴したものの、結局ストーリーを追いきれずに断念。オリジナル音声で最初から視聴しなおしてしまった。


■ DVDとしてはどうか

 パッケージは片面2層1枚。音声は、オリジナル(英語)がドルビーデジタル5.1chで、日本語吹き替えもドルビーデジタル5.1chだ。ビットレートはどちらも384kbps。5.1chといっても、派手なアクションシーンがあるわけでないので、それほどサラウンドを意識することはない。しかし、ロサンゼルスの喧騒や、鳥の鳴き声など、雄大なオーストラリアの大自然は十分に感じられる。

 さまぁ~ずによるコメンタリーは、ドルビーデジタルの2chだ。しかも192kbps。ここにディスク容量を割くぐらいなら、本編映像に使ったほうが良いとの判断からだろう。もちろん、視聴していて何の問題も感じなかった。あえていい切るが、このトラックに関しては、音質などどうでも良い。

DVD Bit Rate Viewerで見たビットレートの推移

 残念なのは画質だ。まず、ビスタサイズなのにスクイーズではないところが悲しい。そのためか、32V型で見ると、解像感が薄く、輪郭のくずれがかなり目立つ。しかし平均ビットレートを見ると、7.5Mbpsと比較的高い数値。

 なお、映像特典は一般的なもの。メイキング、インタビュー、予告編、テレビCMスポットなどを収録している。テレビCMスポットでは、例の三村マサカズ出演のCMを見ることができる。


■ 珍しもの好きならコレクションに入れるべし

 とにかく、さまぁ~ずが印象に残るこのディスク。お笑い好きなら文句なくおすすめだし、さまぁ~ずのファンなら間違いなく必携だろう。また、DVDとしてもあまり類を見ない形態なので、DVDコレクターのあなたにとっても、押さえておくべき1枚かも知れない。

 もちろん、さまぁ~ず以外にも見所は多い。いみじくもさまぁ~ずがコメンタリー中で語った通り、独特のほんわかしたムードは「見ていてなんだかほっとする」のだ。昨今のエログロなコメディでは得られない、平和な雰囲気。子供と一緒に見られるコメディとして、有益な存在ともいえる。

 確かに、テンポやシナリオ、撮影技法において、今の時代感覚に合わない部分もあるが、今回視聴して改めてシリーズの目の付けどころに感心した。ポール・ホーガンが60歳を超える年齢なので、おそらくこれがシリーズ完結編になるだろう。個人的には残念だ。

 パッケージとして気になるのは、画質が平均以下だという点。できればスクイーズ版を出して欲しいところ。また、4,700円という価格も高価な部類に入る。まだ買ってない初代「クロコダイルダンディー」と一緒に低価格再販キャンペーンで出してくれ、というのは無理な相談だろうか。あと、さまぁ~ずには大作、たとえばSFものとかも突っ込んで欲しい。「ライトセーバー持ってたのかよ、ヨーダ! めちゃくちゃ強いし!」とか。


●このDVDについて
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 買う気はない

     

前回の「鬼戦車T-34」のアンケート結果
総投票数471票
[購入済み]
23票
5%
[買いたくなった]
347票
74%
[買う気はない]
101票
21%

□東芝デジタルフロンティアのホームページ(DVD COLLECTION)
http://www.tdf.toshiba.co.jp/tdf/dvdsoft/
□製品情報
http://www.tdf.toshiba.co.jp/tdf/dvdsoft/soft/tkbu-5099.html
□さまぁ~ずのオフィシャルページ
http://www.horipro.co.jp/owarai/summers/

(2002年7月5日)

[orimoto@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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