第48回:小説の映像化は成功するか? |
怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。 |
戦闘妖精雪風 OPERATION :1 | |
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価格:5,800円 発売日:2002年8月25日 品番:BCBA-1174 仕様:片面2層 収録時間:約47分(本編) 約27分(特典) 画面サイズ:4:3 音声:日本語(ドルビーデジタル5.1ch) 発・販売元:バンダイビジュアル |
「戦闘妖精・雪風」(早川書房)。'84年に発表された神林長平の代表作であり、第16回日本SF大会「星雲賞」(日本長編部門)を受賞した。既に、発表から18年の歳月が経過しているが、数多くのファンを惹きつけてやまない。
その証拠に、15年後の'99年に、続編の「グッドラック 戦闘妖精・雪風」(早川書房、ISBN:4150306834)が発表され、2002年4月には、旧版に加筆した「戦闘妖精・雪風(改)」(早川書房、ISBN:4150306923)も発刊されている。
そして、この未だ人気の衰えない「雪風」を初めて映像化したのが、8月25日に発売されたDVD「戦闘妖精雪風 OPERATION :1」である。ちなみに、EMOTIONの20周年記念作品でもある。
このDVDの制作発表会は、2001年8月18日幕張メッセで開催された「第40回日本SF大会」の会場内で行なわれた。発表会の様子は、AV Watchでもレポートしたが、アクセス数も4万以上と、想像以上の人気に驚かされた。
そして迎えた2002年8月25日の発売日。行きつけのショップのDVD売り場に向かった。が、ない。どこを探してもない。そこで、近くの量販店などをまわっても、どこも売り切れている。
8月25日は日曜日。ご存知のように、最近のDVDは、発売日前日の販売開始が常態化している。特に日曜日発売のタイトルは流通の関係から、金曜日にはショップに入荷していることがほとんど。そのため、金曜日の夕方には店頭に並び、人気のあるタイトルだと発売日に行っても購入できないことも多くなっている。
そのことは理解していたのだが、申し訳ないが「雪風」にそんなに人気があるとは思っていなかった。発売日に店頭に行けば十分だと考えていたのだが、その考えが甘かったことを思い知らされた。結局、探しに探して、いつも購入しているところより割引率が低いところで購入するハメに。セコイことを言うようだが、5,800円もするので割引率はかなり財布に響いた。
ちなみに、その人気を裏付けるように、今週のDVD売り上げランキングでも9位に入っている。
■ 雪風とは?
「雪風」は、フェアリイ空軍・特殊戦・第五飛行戦隊所属深井零がパイロットを務める、高性能コンピュータを搭載した戦術偵察用戦闘機スーパーシルフのパーソナルネーム。
南極大陸に当然出現した強大な霧の柱。その正体が、異星体ジャムの地球侵略用超空間通路と判明。地球防衛機構は、「通路」の向こう側「惑星フェアリイ」上でジャムの進攻を食い止めるため、フェアリイ空軍を設立し、前哨基地を置いた。
深井零の任務は、戦闘情報の収集と「必ず帰還する」こと。そのためには、味方を見殺しにすることもいとわない。そんな彼が、唯一心を開く存在は、上官のブッカー少佐と、「雪風」のみだった。
そして、ある任務で、雪風と零は激しい追撃にあい、絶体絶命の状態に陥る。まさに、その時、雪風は零の制御を離れ、自立コントロールを宣言する。そこから、零の想像を越えた雪風の真の能力が明らかになる……。
今回の映像化にあたり、フルデジタルアニメ「青の6号」を、「3Dメカ + 2Dキャラ」という映像演出で制作したクリエーター集団「GONZO」が協力。「LightWave 3D Ver.6.5」で描いた3Dのメカ画像データを、「セル・シェーダー」などの画像処理方法により、輪郭を持つセル画風の2D画像に変換。2D処理で描かれるキャラクタ画像とのマッチングを図っている。
■ DVDとしてどうか?
ディスクは片面2層を使用し、アスペクト比は4:3。本編47分、特典27分と短いこともあって、平均ビットレートは本編が8.2Mbps、特典が8.91Mbpsと高い。ただ、特典の方がビットレートが高いのが不思議ではある。また、ビットレートの変動が激しく、かなり高いビットレートになるところもあるが、手元にあるDVDプレーヤー数台、パソコンでの再生では特に問題がでることはなかった。
本編の音声はドルビーデジタル5.1ch、ビットレートは448kbps。制作スタッフが、2000年夏に航空自衛隊の全面協力により、小松基地で実機取材を敢行。音響監督の鶴岡陽太氏が、音ロケも実施し、駐機場や、滑走路脇で実機のジェットサウンド録音した。
さすがにこれだけ贅沢に高いビットレートを使っていることもあり、画質に破綻はない。アニメとしては高画質の部類に入るだろう。音声の方も飛行シーンなどでのサラウンド感は結構高いが、LFEはあまり使っていない。そのため、“ドンドン”という重低音の迫力を求める人にとっては物足りないかもしれない。
もう一点気になったのは、セリフのミキシング。アニメが5.1ch収録される場合、頭文字DのDVD版などでもそうなのだが、極端なミキシングをされていることが結構ある。GONZOの代表作でもある「青の6号」もそうで、かなりセリフが聞き取りづらかった。
雪風も、奥行きを感じさせるためにセリフにエコーを深めにかけたり、登場人物の位置関係を強調するためか、極端に各セリフを各chに割り振ったりしている。青の6号に比べればかなり聞きとりやすいが、個人的にはもう少し自然な音場設計の方がいいと思うのだが……。
映像面ではCG自体の質は総じて高い。が、機体と風景とのマッチングが今一つというシーンがいくつか見られた。また、CGということもあって、実写ではあまりできない飛行シーンでのカメラワークや、視点切り替えが効果的に使われている。その感覚は、フライトシミュレータで、視点切り替えを頻繁に行ないながら飛んでいる感覚に近い。
映像特典には、自衛隊の小松基地で実機取材や、CG制作風景などに加え、スタッフインタビューも収録。しかし、取材風景や制作風景にはナレーションがまったく入っておらず、結構静かに進行する。テロップが要所要所にでるので、何をしているのか大体はわかるのだが、もう少し説明してほしかった。
ジャケットはリバーシブルになっており、表に深井 零、裏にスーパーシルフが描かれている。また、カラー16ページの「YUKIKAZE FLIGHT MANUAL」が封入されている。そのほかにも、初回限定特典として「3Dジャケットサイズカード」なるものが付属する。
この3Dジャケットサイズカードが思いのほか優れもので、かなり立体感がでていて、カッコイイ。店頭で是非確認してほしい。ちなみに、日本のDVDでは珍しく、ドルビーデジタルのトレーラー「RAIN」が入っていた。
Bit Rate Viewerで見た本編のビットレート |
Bit Rate Viewerで見た映像特典のビットレート |
■ モノ足りなさはぬぐえない。OPERATION 2に期待
中身の方だが、これはもう正直にいって47分にストーリーを詰め込みすぎた、としかいいようがない。シーン切り替えに暗転を多用していることもあって、ダイジェスト的なシーンをつなげているような印象を受ける。また、バックストーリーの説明がほとんど無いので、原作を読んでいないと話についていけないだろう。基本的に原作を読んでいる人しか買わないだろうという判断かもしれないが、原作を読んでいる人にとっては、「喰い足りない」という思いを拭いきれない。
また、エンディングテーマはムッシュかまやつが担当している。特にムッシュかまやつが嫌いというわけでも、エンディングテーマ曲「R.T.B」が悪いわけでもない。しかし、劇中に使われている、ザ・蟹の曲調とあまりに違う。エンディング曲が流れはじめたときに、かなり面食らってしまった。受け取り方は人それぞれだと思うが、正直な感想は「置いてきぼりを食らった47分間」である。
なお、雪風のこれ以降のリリース予定は発表されていないが、当初の予定ではDVDは全5巻で、2巻以降は各30分収録になるという。SFファンの1人として、今後の展開に是非とも期待したいところだ。
●このDVDについて |
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□バンダイビジュアルのホームページ
http://www.bandaivisual.co.jp/
□製品情報
http://product.bandaivisual.co.jp/web_service/shop_product_info.asp?item_no=BCBA-1174
□関連記事
【2001年8月20日】SF小説「戦闘妖精・雪風」が初の映像化
-DVDが2002年春からリリース開始
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010820/bandai2.htm
(2002年8月30日)
[furukawa@impress.co.jp]
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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp