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第69回:波形編集ソフトの性能とは?
〜 その4:オンラインソフト4種 〜


 これまで、「Sound it!」、「DigiOnSound2」、「Sound Forge」、「WaveLab」の4本について、リサンプリング、タイムストレッチ、ピッチシフトの3機能を比較した。今回のシリーズでは、読者からも様々なご意見、アドバイスなどをメールでいただいているが、「ぜひチェックして欲しい」という要望の1つに、フリーウェアやシェアウェアなどのオンラインソフトがある。

 普段はSound Forgeなどを使っているため、オンラインソフトに興味はあるものの、私自身しっかりと触った経験がないが、今回初めてチェックしてみた。取り上げるのは海外のソフト2本と国内のソフト2本の計4本。



■今回取り上げる4本

 今回取り上げるソフトは、読者のみなさんからのリクエストを元にした以下の4本だ。

 比較的著名なソフトばかりなので、ご存知の方も多いと思うが、それぞれを簡単に紹介しておこう。

Cool Edit Pro 2.0
 まず、Cool Editはかなり古くからある、シェアウェアの波形編集ソフト。

 今回取り上げた「Cool Edit Pro 2.0」は、現行のCool Editシリーズの中の最高峰に位置付けられるソフトで、価格も249ドルと高額。一番下は39ドルの「Cool Edit 2000 Lite」、その次に69ドルの「Cool Edit 2000」という計3種類に加え、オーディオカードなどにバンドルされている非売品の「Cool Edit ProSE」、「Cool Edit Pro LE」というものも存在する。

 このうち、Proはマルチトラックのレコーディングに対応し、エフェクトを45種類も装備。さらにDirectXプラグインにも対応するなど、なかなか強力な機能を備えている。

GoldWave
 次のGoldWaveも海外の有名なシェアウェアで、早い時期からFraunhofer-IISのMP3エンコーダエンジンを搭載していたことから、MP3ユーザーの中で評価の高かったソフトでもある。

 現在のバージョンでもいち早くOggVorbisに対応するなど、圧縮オーディオには強そうだ。見た目が結構派手で、スペクトラムアナライザが搭載されているなど、使っていても楽しいソフトである。

 実は'99年にMP3の実験をするために購入したのだが、それ以降まったく使っていない。その3年でそれほど大きなバージョンアップがなかったようで、現行バージョンでもライセンスキーがそのまま利用できた。

DIGITAL Gretchen
 DIGITAL Gretchenは、本連載で2度目の登場となる。ノイズリダクションの回で取り上げたソフトであり、日本のソフトハウス、イクスクラのシェアウェアだ。

 MP3、WMA、CDリッパー装備の高性能サウンドエディタとしてリリースされており、音質については、かなり自信を持って開発しているという。試用期間中(30日間)は60分まで(長さ制限)のファイルなら自由に読み書きが可能なので、今回の実験では試用させてもらった(ライセンスを所有しているのだが、マシンのCPU変更をしたため、ライセンスキーが通らなくなっている)。

Sound Engine
 最後のSound Engineは、国産のフリーウェア。これも最初のバージョンが'99年にリリースされており、かれこれ3年の歴史を持つ。前から気になってはいたものの、実際に使うのは今回が初めて。Web上での説明を見ると「マスタリング or トラック、サンプル加工向け簡易2ch波形編集ソフト」とある。

 起動してみると確かに、一般の波形編集ソフトと比較してマスタリング系の機能がいろいろと用意されている。たとえば、質感、高域強調、丸み、CV制限といったパラメータをもつ「マスタリング・プロセス」というメニューがあったり、フィルタがあったりと、少し独特。もちろんイコライザやコンプレッサもある。

 以上4つのソフトを用いて、これまでと同じ実験を行なった。



■リサンプリングではそれぞれの違いが出た

 まずは、リサンプリング。この実験では、2つの素材を用いて48kHzから44.1kHzへのリサンプリングを行なう。素材は1kHzのサイン波と、440Hzのサイン波-8dBに、330Hzの矩形波-6dBを足したものだ。

 さっそく、4つのソフトそれぞれで行なった。まずCool Edit 2000にはEditメニューにConvert Sample Typeという項目があるので、これを選択する。ダイアログが表示されるが、特に変わった設定は存在しない。ただ、Qualityの設定があるので、ここではHighに設定した。

 GoldWaveのほうは、ずばりResampleというメニューがあるので、これを選択するが、設定項目はサンプリングレート以外は存在しない。いたって単純なものだ。

 国産の方はというと、Gretchenは編集メニューにサンプリング周波数変換というものがあるので、これを利用する。これもサンプリングレートを設定するほかに動作モードというものがあり、速度重視、標準、音質重視の3つから選択できるようになっていたので、当然音質重視を選択した。

 最後のSoundEngineでは簡易サンプリング周波数変換というメニューがあったので、これを選んだ。簡易という言葉がついているため、これを比較されるのはSoundEngineの作者としては本意ではないのかもしれないが、今回はあえて使わせてもらった。ここでの設定項目は特になく、単にサンプリングレートを設定するだけだった。

Cool Edit 2000のEditメニューでは、QualityをHighにした GoldWaveのResampleメニュー。ここでサンプリングレートを指定できる Gretchenも編集メニュー内でリサンプリング設定が可能

 以上4つのソフトでSample1、Sample2のデータをリサンプリングした。結果は以下の通りだ。

  元ファイル
sample1.wav(376KB)
Cool Edit 2000
ce01.wav(345KB)
GoldWave
gw01.wav(345KB)
Sample1
Gretchen
gc01.wav(345KB)
SoundEngine
se01.wav(345KB)

  元ファイル
sample2.wav(376KB)
Cool Edit 2000
ce02.wav(345KB)
GoldWave
gw02.wav(345KB)
Sample2
Gretchen
gc02.wav(345KB)
SoundEngine
se02.wav(345KB)

 波形を見る限りSample1についてはほとんど違いが確認できない。しかし、Sample2のほうは、エッジの部分が各ソフトともジャギーが出ているほか、同じ波形なのに場所によってジャギーの出方が違うという面白い現象も見られた。

 では、このSample1の結果を周波数分析にかけるとどうなるだろうか? それがその下にあるグラフだ。それぞれ違いが出ていることがわかる。目安としてSNを見てみると、Gretchenが85.75dBといい結果になっているのに対し、Cool Editが81.39dB、GoldWaveが75.66、SoundEngineが75.42dBという結果だった。 単純な信号を聞いただけではあまり実感できないが、それなりに違いが出ていることがわかる。

Cool Edit 2000 GoldWave
Gretchen SoundEngine


■ Cool Editのみがタイムストレッチとピッチシフトの双方に対応

 さて、今までだと次はタイムストレッチに行くことになるのだが、実は今回取り上げた4つのソフトのうち、タイムストレッチに対応していたのは、Cool Editのみであった。また、GoldWaveにはTime Warpという機能があったが、これは長さとともに音程まで変わってしまうので今回の実験の主旨に反する。

 一方、国産ソフトであるGretchenには速度補正という機能があるので、これを使おうと思ったのだが、基本的に90%〜110%にまでしかデータ量を増減できず、一気に半分とか2倍に設定することはできない。かといって、同じ操作を繰り返すのはあまりにも音質が劣化しそうなのであきらめることにした。最後のSoundEngineも、やはりタイムストレッチ機能は用意されていない。というわけで、今回、試したのはCool Editのみ。このCool Editで開くダイアログにおいて、モードを切り替えることで、タイムストレッチ、ピッチシフトがともにできるようになっている。また、設定項目としてPrecision=正確さというものがあったが、ここではやはりHighに設定しておいた。

 まずSample1について、半分の時間、倍の時間に設定してみた。この結果を見る限り、Sound it!やDigiOnSoundで出たようなうねり現象は起こっていなかったし、聞いた感じもまったく問題はなかった。一方、音楽データでもSample3およびSample4を用いて同様の実験を行った。その結果、Sample4ではグラフ上に問題がはっきりと表れた。短くすると、各ドラム音の非常に短くなり、とくにアタック部分が消えてしまうため、非常に弱いサウンドとなってしまう。逆に倍の長さにすると、トレモロ現象が生じ、リズムがおかしくなってしまう。

Sample1を50%に圧縮 Sample1を200%に伸張

Sample4の元データ Sample4ではグラフ上に問題がはっきりと表れた

Cool Editのタイムストレッチ
 元ファイル50%に圧縮200%に伸張
Sample3 sample3.wav(1,953KB) 3ct50.mp3(90KB) 3ct200.mp3(356KB)
Sample4 sample4.wav(977KB) 4ct50.mp3(46KB) 4ct200.mp3(179KB)

Cool Editのピッチシフト
 元ファイルダウンアップ
Sample3 sample3.wav(1,953KB) 3cpd.mp3(179KB) 3cpu.mp3(179KB)
Sample4 sample4.wav(977KB) 4cpd.mp3(90KB) 4cpu.mp3(90KB)

 この辺はMP3のサウンドを聞けば実感できると思うが、Sample3もおかしな音になっていることがよくわかるだろう。

 では、次にピッチシフトはどうだろう。 実はこれについても日本の2つのソフトは対応していなかった。が、前述したようにCool EditはTime Stretchとほぼ同じ方法で実現できた。またGoldWaveもピッチシフト機能を持っており、時間を変えずに音程だけを変化させることができた。こちらの結果を見ると、いずれのソフトもあまりいい結果とはいえない。

GoldWaveのピッチシフト
 元ファイルダウンアップ
Sample3 sample3.wav(1,953KB) gw03.mp3(179KB) gw04.mp3(179KB)
Sample4 sample4.wav(977KB) gw05.mp3(179KB) gw06.mp3(179KB)

 実際に収録したMP3のデータを聴いていただければわかると思うが、Sample3においてはCoolEditでは妙な振るえが生じてしまっている。さらにGoldWaveにいたってはすでに音楽とはいえないようなものになってしまった。Sample4のほうはCool Editでは細かい振るえによって金属音的なものになってしまっている一方、GoldWaveはそうした振るえもあまりなく、トリムというかディレイのようなタタンという2重になる現象は起こらなかったので、まあまあという印象だ。

 というわけで、今回は4ソフトで全実験ができたわけではなかったが、リサンプルだけに関して言えば、いずれのソフトも比較的良い結果が出た。タイムストレッチやピッチシフトの機能がないソフトもあり残念だが、波形編集ソフトの性能はこれらの3つの機能だけで比較するものでは決してない。あくまでの1つの参考として考えていただきたい。


 なお、前回のSoundForgeのリサンプリングの結果において、オマケとしてアンチエイリアスについても掲載していたが、これについていくつか質問がきた。それは、どのような設定で行なったのかということと、そもそも1kHzの音のリサンプリングにおいて、アンチエイリアスは効かないのではないか、との指摘だ。

 まず設定は下図のようなもので、Interpolation Accuracy(1 to 4) Med to Highの設定は2。ヘルプを見ると、ここを大きくすると音質が向上する旨が書いてあったので、4で試してみた。その結果、周波数分析結果上、確かに微妙に向上しているが、そう大きく変わったわけではない。

INterpolation Accuracyの設定。右のグラフは設定値を4にした結果。さほど向上したようには見えない

 一方、アンチエイリアスが機能を発揮しているかという点については、私自身にも不明だ。アンチエイリアスとは、サンプリングレートの半分より大きい周波数(44.1kHzの場合は22.05kHz以上)の信号が現れたとき、それをカットするローパスフィルターである。ただし、リサンプリング時に発生するのかどうかは、リサンプリングのアルゴリズムに依存する。いずれにせよ、せっかく用意されている機能なので、チェックを入れない手はないだろう。

 なお、ここでの結果はあくまでもサイン波という単調な波形での実験であるため、音楽データになると、また違いが出てくるだろう。その点は、自分の耳で納得するしかないだろう。


□関連記事
【8月19日】【DAL】第68回:波形編集ソフトの性能とは?
〜 その3: Sound ForgeとWaveLabを比較する 〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020826/dal68.htm
【8月19日】【DAL】第67回:波形編集ソフトの性能とは?
〜 その2: 「Sound it!」と「DigiOnSound」を試す 〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020819/dal67.htm
【8月12日】【DAL】第66回:波形編集ソフトの性能とは?
〜 その1: タイムストレッチやピッチシフトの検証方法 〜
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020812/dal66.htm

(2002年9月2日)

[Text by 藤本健]


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase VST for Windows」、「サウンドブラスターLive!音楽的活用マニュアル」(いずれもリットーミュージック)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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