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第70回:「なつかしいにおい」にオトナは涙……
映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ! オトナ帝国の逆襲

怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ 大人が泣けると評判のオトナ帝国の逆襲

映画クレヨンしんちゃん
嵐を呼ぶモーレツ! オトナ帝国の逆襲

価格:3,800円
発売日:2002年11月25日
品番:BCBA-1407
仕様:片面2層2枚
収録時間:本編約95分
画面サイズ:ビスタサイズ(スクイーズ)
音声:ドルビーデジタル 5.1ch
   ドルビーサラウンド
字幕:1.日本語
発売元:シンエイ動画株式会社
販売元:バンダイビジュアル株式会社

 今回取り上げるのは、「映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ! オトナ帝国の逆襲」(正式タイトルが長いので以下、オトナ帝国の逆襲と表記)。

 クレヨンしんちゃんといえば、コミックやTVアニメでおなじみだが、'94年の「アクション仮面VSハイグレ魔王」から映画化され、今回紹介するオトナ帝国の逆襲は、その第9作目。2001年に公開された。

 クレヨンしんちゃんの映画作品については、第1作から、「大人の鑑賞に堪える」との声が高かった。中でも、オトナ帝国の逆襲は、傑作との評価が多い。

 そういった、一連のクレヨンしんちゃん作品は、VHSではリリースされていたが、DVD化がファンから強く望まれていた。そしてついに、2002年11月25日に初DVD化。映画版では、オトナ帝国の逆襲と、アクション仮面VSハイグレ魔王がリリースされた。

 正直なところ、クレヨンしんちゃんについては、コミックは結構読んいるけれども、TVアニメの方はほとんど見ていない。そもそも、原作は大人向け漫画だが、TVアニメの方は子供がいない人で、見ている人は少ないだろう。

 映画版も残念なことに、劇場に見に行たことがない。子供がいれば、それをだしに足を踏み入れられるが、さすがに子供でごった返す劇場に大人1人で入るのは勇気がいる。

 ということで、DVD化されたことを機に見ることを決意。どれを購入するか検討していると、バンダイビジュアルのサイトには、クレヨンしんちゃんのページが設けられていた。そこを探ると、オトナ帝国の逆襲だけ、専用ページがある。やはり、注目度が高いということだろう。

 結局、大人が泣けると評判のオトナ帝国の逆襲を購入。表向きは子供向け作品ということもあり、アニメとしては値ごろ感のある3,800円。この点は、一消費者として、大きなお友達向けのアニメも、見習ってほしいところだ。


■ オトナ帝国の陰謀

 ある日、春日部に'70年代を再現したテーマパーク「20世紀博」が開園した。20世紀博では、昔のTV番組や映画、暮らしなどを再現。懐かしい世界にひたれるテーマパークに、大人たちは大喜び、ひろしや、みさえをはじめとする日本中のオトナたちは夢中になっていた。

 しかし、それは現実の21世紀に絶望し、夢と希望のあった20世紀をやり直そうという、“ケンちゃんチャコちゃん”をリーダーとするオトナ帝国の陰謀だった。

 数日後、オトナたちは子供たちを残して、20世紀博に消えてしまう。オトナたちを取り戻すため、しんのすけ達が結成した“かすかべ防衛隊”のメンバーは、20世紀博へ乗り込んでいく……。

 端的に言えば、20世紀の懐かしさにとらわれ、そこに閉じこもるオトナたちを現実世界に引き戻し、21世紀を守るというストーリー。その中に、しんのすけ家族の家族愛も押し付けがましくなく、描かれる。

 冒頭は突然、太陽の塔のアップから始まり、(大阪)万博開催中の風景へと展開する。そのため「へ?」という感じで、なにが起こったわかるまで時間がかかる。そして、前半から中盤にかけて、なつかしネタが数多く仕込まれていて、それが結構緻密に練られている。

 流行歌や、自動車、プロレス、テレビから流れるギャグなど、「あったあった」というようなネタを詰め込む。ちなみに、ギャグ関連は、ほとんどを関根勤と、小堺一機が声をあてていて、特にジャイアント馬場は関根勤が担当。こんなところにも、力の入れ具合がわかる。

 その時代を知っている人ならば、この部分だけでも楽しめる。そして、映画を見終わるころには、「21世紀をがんばらないと」と、21世紀の大人の責任感を実感するだろう。


■ DVDとしてはどうか

 本編は95分で、ビスタサイズをスクイーズ収録。音声は、ドルビーデジタル5.1ch(448kbps)と、ドルビーサラウンド(448kbps)となっている。

 DVD Bit Rate Viewer Ver.1.4で見た平均ビットレートは、アニメということで高めの8.43Mbps。DVDとしての画質はかなりいい。ただ、もともとの絵自体が、現在増えているヌケのよい鮮やかな絵を目指しているわけではないので、そういった画質を求める向きには不満があるかもしれない。しかし、MPEG-2エンコードは、かなりうまく行なわれていると思う。

 音声は、あまり期待していたなかったのだが、思いのほか良好。特に、5.1chのサラウンド感は見事で、前半の怪獣との戦闘シーンはLFEを効果的に使い迫力がある。また、それだけでなく、環境音のミキシングも、アニメのサラウンドにありがなウソ臭い誇張サラウンドではなく、見事にまとめている。期待以上のできだった。また、ケンの声は津嘉山正種が担当しているのだが、バスが効いていてとても渋く、聴き所となっている。

DVD Bit Rate Viewer Ver.1.4でみた平均ビットレート

 ただ、特典はあまり多くなく、映像特典はノンテロップオープニング(クレイアニメ)、特報、予告編、TVスポット。封入特典は、オリジナルライナーノート(8P)と、今時のDVDとしてはちょっとさびしい内容なのが残念。オーディオコメンタリなどが入っているとうれしかったのだが……。

 特筆すべきなのが字幕で、漢字に振り仮名がついている。字幕どころか、チャプタメニューまで、漢字のあるところには、すべて振り仮名がついているという親切さだ。

 なお、子供向けアニメということで、最初に「部屋を明るくして、画面から離れて見てね……」という、お決まりの注意が流れる。しかし、プロジェクタで見ているので、部屋を暗くしないわけにはいかないのだが……。あっ、「よい子のみんな」じゃないからいいのか。


■ 大人の方へ…ハンカチを用意したほうがいいゾ

 懐かし系のアニメといえば、代表的な作品として「となりのトトロ」があるが、トトロは自然に囲まれた懐かしさだと思う。一方、オトナ帝国の逆襲が描く懐かしさは、自然と人工物の入れ替わりに加速度がついた時代。「今より未来はもっとよくなる」と、無邪気に信じることができた時代。

 現実の21世紀は、「今より未来はきっと悪くなる」と思えてしまう。だかからこそ、懐かしく思えるのだろう。そういった意味では、現在働き盛りの世代にとっては、よりリアルな懐かしさとして胸に迫る。

 ジャケット裏面には「大人の方へ…ハンカチを用意したほうがいいゾ」と注意書きされている。ここは、注意書きどおりハンカチあるいはティッシュを用意しておきたい。ただ、子供が見て面白いのかという疑問もあるのだが、クライマックスのしんちゃんの活躍に胸踊るだろうから、おそらく大丈夫。家族で見ても楽しめると思う。

 実は、弊紙で掲載しているDVD売上げランキングには、オトナ帝国の逆襲は一度もランクインしておらず、ちょっと残念。特典は多くはないが、3,800円の価値はあると思う。お子さんのいるご家庭も、一人寂しい大人が見ても損はない。

●このDVDについて
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前回の「ウインドトーカーズ」のアンケート結果
総投票数356票
購入済み
80票
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買いたくなった
145票
41%
買う気はない
131票
37%

□バンダイビジュアルのホームページ
http://www.bandaivisual.co.jp/dbeat/
□製品情報
http://www.bandaivisual.co.jp/shinchan/otona.html
□関連記事
【2002年8月13日】
バンダイビジュアル、「クレヨンしんちゃん」を初のDVD化
―劇場版/TV版傑作選/スペシャルの計6巻を11月25日リリース
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020813/bandai.htm

(2003年2月25日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]



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