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第76回:屋内シーン限定なら国内最高クオリティ?
「ロード・トゥ・パーディション 特別編」

怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ 今は亡き巨匠のアカデミー撮影賞受賞作

ロード・トゥ・パーディション 特別編

価格:3,300円
発売日:2003年3月19日
品番:FXBA-23297
仕様:片面2層
収録時間:約117分(本編)
画面サイズ:16:9シネスコサイズ(スクイーズ)
音声:1.英語(DTS)
     2.英語(ドルビーデジタル5.1ch)
     3.日本語(ドルビーデジタル5.1ch)
字幕:日本語/英語/吹替用字幕
発売元:20世紀 フォックス
     ホームエンターテイメント ジャパン
 今回買ったのは、3,300円の「ロード・トゥ・パーディション 特別編」。公開当時、トム・ハンクス、ポール・ニューマン、ジュード・ロウという豪華な顔ぶれが話題になったギャング映画だ。最近では、撮影監督のコンラッド・L・ホールが本作品により第75回アカデミー撮影賞(Cinematography)を得たことで、再び脚光を浴びている。

 惜しくも1月4日に亡くなったコンラッド・L・ホールは、アカデミー賞ではノミネート10回、受賞3回という名匠中の名匠。本作以前の受賞作は「明日に向かって撃て!」と「アメリカン・ビューティー」で、どちらも芸術的なライティングと職人技ともいえるカメラワークが名高い。遺作となった本作でも、一見普通ながら、実は計算つくした美しい映像が見所だ。DVDでどこまで再現されているか気になる。

 個人的にギャングものはさほど好みではなく、よほど話題作でない限り手を出したことはない。しかし、今回はコンラッド氏の最後の作品ということで、とりあえず購入することにした。価格も3,300円と、超大作並みに安い。国内ではそれほど盛り上がらなかった作品だが、海外では相当数が売れるのだろうか。

 DVDは片面2層1枚で、映像はシネマスコープサイズのスクイーズ収録。20世紀FOXお得意のクリアタイプのトールケースは、黒地に金の特色でアクセントを付けた紙パッケージに入っており、3,300円にしては所有感が高い。音声はドルビーデジタル5.1chに加え、DTSトラックも収録。さすがに近作だけあって、ディスク仕様にも隙はない。



■ どのシーンも芸術性高し。1カットずつ堪能したい

 1931年の冬、イリノイ州ロックランドでは、アイルランド系ギャングのジョン・ルーニー(ポール・ニューマン)が街を牛耳っていた。トム・ハンクス演じるマイケル・サリヴァンは、街中から恐れられる組織の幹部。ジョンの信任も厚く、ジョンの実子、コーナー・ルーニーですらマイケルを苦々しく思う日々。しかし、マイケルが最も恐れていたのは、息子達が自分と同じギャングの道を歩むことだった。折りしも12歳に成長した長男は、父の仕事について不信を覚え始める。

 そんなある夜、長男は銃を乱射するマイケルの姿を盗み見てしまう。口止めを理由に、マイケル親子を罠に嵌めようとするコーナー。その日を境に、父と子の逃避行が始まった。親子を執拗に追う殺し屋、マグワイヤ(ジュード・ロウ)との死闘の中、マイケルは1つの逆転策を思いついた。

 原作は製作のディーン・ザナックに売り込まれた1冊のグラフィック・ノベル。ただ逃げるだけでなく、最終的には組織に復讐を果たすところなどは「アメリカ版子連れ狼」といったストーリーだ。しかし、銃撃シーンは思いのほか少ない。激しいアクションを期待していると肩透かしを食うかもしれない。

 もちろん、ジョンをめぐる跡目争いや、アル・カポネ率いるイタリア系組織との小競り合いなど、「ギャングもの」らしい展開もあるにはある。しかしあくまでも主題は「サリヴァン親子がいかにして絆を取り戻すか」という点。前半のギクシャクした父と子の会話の方が、銃撃戦よりもよっぽどスリルがあった。

 映像は期待通りの出来。帽子の下の顔にかかる影や、月明かりに照らされた壁に映った窓を伝う雨の影など、光と影が織り成す1カット1カットの美しさは格別。すべてのシーンが一幅の絵のように決まっており、Iフレームをすべてキャプチャして、壁紙にしたいほどだった。また、フォーカスの位置や前後移動のスピードが非常に巧妙なのも特徴。当代きってのカメラマン、コンラッド・L・ホールの手腕をたっぷり味わえる。

 コダックのエンタテイメントイメージング事業部のサイトによれば、彼はT1.9のワイドオープンレンズで撮影することで、前景と背景がやや軟調になるような撮影を狙ったという。屋内シーンでの使用フィルムは、感度500のKodak Vision 5279。それほど高性能なフィルムではないが、これだけの明暗バランスを完成させたのは、彼一流のライティングのなせる業なのだろう。


■ 屋内シーンは上質、しかし屋外では並み以下か

 前半の重要な場面はほとんど屋内。屋外に移ったとしても夜が多い。さらに季節は冬。衣装も黒やグレーばかりだ。MPEGにはきつそうな題材だが、思ったより平均輝度が高いのが救い。やはり、ライティングが絶妙なのだろう。そのためか、この種の映像にしては高画質で、特に前半の室内シーンは秀逸だ。影の落とし方1つで物語を語る作品なので、室内シーンのハイクオリティぶりはうれしい。ただし、暗部領域が多い割には明暗差が大きいので、装置によっては黒浮きに苦労するかも知れない。

 むしろ気になるのは屋外シーン、特に陽光下のシーンだ。コートのふちなどに発生する擬似輪郭、空を舞うノイズ、ブロックノイズで覆われた草原など、気になる点は多い。通常のDVDの場合、屋内より屋外の方がきれいに見えるのだが、この作品の場合は逆だ。

 そういえば、モノクロでの撮影が適わなかったコンラッド氏は、いくつかの屋外シーンで銀残し(ブリーチバイパス)を指定したという。その影響が多少出ているのかもしれない。また、終盤に向かってどんどん圧縮ノイズが増えていくのが惜しい。DVD Bit Rate Viewer Ver.1.4で見た平均ビットレートは6.51Mbpsだった。

DVD Bit Rate Viewer Ver.1.4でみた平均ビットレート

 音声はDTSが768kbps、ドルビーデジタル5.1chは、英語が448kbps、日本語が384kbps。静寂を破る銃声やエンジン音でLFEが効いており、ドアの閉まる音や機械の重々しさもとてもリアル。また、環境音の包囲による臨場感も素晴らしい。雨のシーンがいくつか出てくるが、降雨量ごとの音の違いも楽しめる。英語音声に関して文句はない。

 唯一の難点は、日本語吹き替えのクオリティ。ビットレートが低いので仕方ないが、同じドルビーデジタル5.1chの英語トラックとの差は歴然としている。銃声は若干弱々しくなり、雨の音もかさつきが気になった。


■ 充実した音声解説に満足

 特典は、サム・メンデス監督のコメンタリーと、未公開シーン、メイキング、フォトギャラリー、キャスト・バイオグラフィー、スタッフ・バイオグラフィー、プロダクションノートなど。コメンタリーでのサム・メンデスは非常に能弁で、キャスティング、撮影、ポストプロダクションについて詳細な解説を行なう。おそらくきっちりした台本を用意していたのだろう。いい加減なコメンタリーが多い中、好感の持てる内容だった。

 未公開シーンは11シーンを収録。それぞれでサム・メンデス監督の音声解説をON/OFFできる。どれも興味深いシーンだが、最も楽しめるのはアル・カポネの登場シーンだろう。もともとカポネの右腕として名高いフランク・ニティ(スタンリー・トゥッチ)が出てくるが、カポネ自身は名前しか出てこない。このシーンを見ると、アイルランド系ギャングとイタリア系ギャング関係が、親子の逃避行で微妙な曲面を向かえつつあることがわかる。また、マグワイヤがカポネを恐れる様も描かれており、彼の執拗な追跡について説得力が増す。

 未公開シーン全般の画質は良く、ここでも芸術的な画作りを楽しめる。できれば未公開シーンを本編につないだ完全版も見てみたいと思った。

 気になったのは、フォト・ギャラリー、バイオグラフィーなどの静止画コンテンツがすべて英語のままだったこと。以前は良く見られたが、最近では珍しい仕様だ。権利関係で完全なローカライズが無理だとしても、せめてブックレットなどで対訳をつけて欲しかった。


■ 地味ながら、あらゆる面で魅せる1本

 ここまであまり触れなかったが、主役3人の演技はやはり魅力的だ。どちらかといえばギャングに似つかわしくないイメージのトム・ハンクスにしても、まったく違和感を感じさせないのはさすが。ポール・ニューマンも眼光の鋭さは健在だし、ジュード・ロウにいたっては、髪を頭頂まで剃り上げるほど力の入った役作りぶり。大物役者が競演するという、大作映画ならではの魅力も味わえる。

 ともかく、コンラッド・L・ホールの最後の作品ということで、好きな人は間違いなく買いの1本。また、屋内シーンの美しさは、数あるDVDビデオの中でもトップクラスにある。その反面、屋外シーンや終盤は、現在の水準を下回っているのが惜しい。「中途半端に両立させるよりは」という判断なのだろうが、特典を削ってでも映像全体にビットレートを割いて欲しかった。もっとも、この作品の知名度では、特典ディスク付きの2枚組みは難しいのかも知れない。

 また、1枚組みでのリリースを考えると、やはり「近いうち再販キャンペーンの対象になるのか」という点が気になる。もっとも、2,500円ないし2,980円が多い20世紀FOXの再販なら、今買っても差額はそれほどでもないだろう。

●このDVDについて
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前回の「サイン コレクターズ・エディション」のアンケート結果
総投票数353票
購入済み
76票
21%
買いたくなった
161票
45%
買う気はない
116票
32%

□20世紀FOXのホームページ
http://www.foxjapan.com/
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(2003年4月8日)

[AV Watch編集部/orimoto@impress.co.jp]



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