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第97回:コンシューマ用7.1chオーディオカードを試す
~その1:8ch完全パラ出力が可能な「Prodigy 7.1」~


 最近になって、7.1chの出力に対応したサウンドカード/オーディオカードが登場しはじめた。これら7.1chのカードではどんなことができるのか、性能はどうなのかを2回にわたって検証する。



■ VIA TechnologiesのEnvy24HTを搭載

 今回入手したのはEgo Systems Japanが発売するAUDIOTREKブランドのカード、「Prodigy 7.1」と、M-AUDIO Japanが発売する「Revolution 7.1」という2種類のカード。

 前者は秋葉原で2万円弱で売られており、後者は15,000円弱という価格。ただし、Revolution 7.1の方は、実はM-AUDIO Japan扱い品でなく、並行輸入による英語版。従って、パッケージもマニュアルもすべて英語となっている。なお、先週末より秋葉原ではM-AUDIO Japanによる日本語版パッケージの販売が開始されている。

Prodigy 7.1

Revolution 7.1

24bit/192kHzの再生が可能 Revolution 7.1のコントローラチップ。「Envy24HT」の刻印が見える

 ここに来て、複数の7.1chのカードが登場したのは、それに対応したオーディオコントローラチップが登場したからにほかならなない。具体的にはVIA Technologiesの「Envy24HT」(ICE1724コントローラ)であり、Prodigy 7.1、Revolution 7.1ともにこのEnvy24HTが搭載されている。

 このEnvy24HT、低価格なチップながら、数多くの機能を備えている。24bit/192kHzサンプリングに対応している一方、5.1/6.1/7.1chサラウンドなどに対応。Windows Media 9も正式にサポートしている。

 実際、Prodigy 7.1もRevolution 7.1もWindows Media 9対応を打ち出した製品となっており、再生に関しては24bit/192kHzまでサポート。ただし、録音に関しては両製品とも24bit/96kHzまでとなる。


■ Prodigy 7.1chを使ってみる

 同じオーディオコントローラチップが搭載されているだけに、非常に近いスペックの2製品ではあるが、今回は、さまざまなユニークな機能を搭載したProdigy 7.1を使ってみた。

 ドライバやユーティリティをインストールすれば、とりあえずすぐに利用できる。ただし、サラウンドで利用するにはかなりの端子に接続しなくてはならいので、これらをセッティングすることからはじまる。Prodigy 7.1には7.1ch、つまり8ch分の出力端子がある。いずれもステレオミニジャックとなっているので、アナログのライン出力の端子は計4つ。このうちフロントの左右の端子のみはヘッドフォン出力も兼ねており、コントローラソフト側でヘッドフォンアンプのオン/オフが可能となっている。

 7.1chのスピーカー/アンプを持っている人は多くはないとは思うが、いずれもアナログのラインアウトなので、手持ちの機材を接続してもいいだろう。

 なお、コアキシャルでのデジタル出力も搭載しており、これはフロントの左右のチャンネルと同じ内容のほか、ドルビーデジタルやDTSのストリーム出力が行なえる。これもコントローラソフト側で、コンシューマ用のS/PDIFと業務用のAES/EBUを切り替えることが可能だ。

 一方、入力のほうは、マイクインとラインインをそれぞれ1つずつと、コアキシャルでのデジタルインが用意されている。また、ボード上には内蔵のCD-ROMドライブと接続するための端子が用意されている。いずれの入出力もすべてミキサー上でコントロールすることが可能となっている。

内蔵CD-ROMと接続する音声入力 7.1ch出力端子とマイクイン、ラインイン、デジタルイン

 7.1chとして利用するためには、Windows側でスピーカーを7.1chに設定するとともに、Prodigy 7.1側も7.1chに設定する。その上で、Windows Media Player 9で7.1chソースを再生させたり、ドルビーデジタルEX/DTS-ES対応のDVDを再生させればいい。

 もちろん、DVD(ドルビーデジタル5.1ch、DTS)や、DirectSound(3D/EAX 2.0)を再生する場合には5.1chとして再生できる。

入出力はミキサー上でコントロールできる 7.1ch時のWindows側の設定 Prodigy 7.1のドライバでマルチチャンネル設定を行なう



■ ASIOでは8chの完全パラ出力

 Prodigy 7.1の場合、MME、DirectSound、EAX 2.0のほかにASIO 2.0ドライバにも対応しており、CubaseSXなどのアプリケーションで十分なパフォーマンスを発揮することが可能。

 ASIOを利用した場合、アプリケーションからは、それぞれ独立した8chの出力ポートに見えるようになっている。また、ASIO 2.0対応なので、レイテンシーのまったくないダイレクトモニタリングが可能。バッファサイズを変更することで、レイテンシーを0.5msec程度にまで小さくできる。

ASIO 2.0では8chの出力ポートとして認識する レイテンシーなしのダイレクトモニタリングも可能 バッファイサイズを変更すると0.5msec程度のレイテンシーに


■ ASIOとVSTを組み合わせた

 ここまでは7.1ch以外には、それほど珍しい機能があったわけではない。しかし、Prodigy 7.1にはもう1つ非常にユニークな機能が搭載されている。

 Ego Systems独自のドライバ技術により、最高8チャンネル音声出力にリアルタイムVSTエフェクト効果を付け加えることができる。つまり、Windows Media PlayerでもCDプレーヤーでも、どんなアプリケーションに対してもエフェクトをかけることが可能となる。

 これはAdvanced NSP機能というもので、出力すべき音を一旦ASIO入力へルーティングさせ、それにエフェクトをかけるというもの。予め付属のアプリケーションを組み込んでおくと実現できるという機能だが、ユーザー側からは完全にドライバが持っているエフェクト機能のように見える。もちろん、音を出しながらエフェクトのパラメータをいじることも可能だ。

 またAdvanced NSP機能のエフェクトはVSTプラグインを採用しているので、フリーウェアなどを含め、どんなエフェクトでも利用可能。エフェクト用のラックは計8つあり、当然エフェクトを増やせばその分CPU負荷が大きくなってくる。また、各ラックに対して、どの入力から持ってくるかの設定も自由にできるようになっているので、なかなか便利だ。これをうまく活用することで、単なるサウンドカードとは異なる多機能なソフトとなるだろう。

ASIO入力にエフェクトを掛けられる「Advanced NSP」 Advanced NSP機能のエフェクトはVSTプラグインを採用。エフェクト用のラックは計8つあり、各ラックに対して、どの入力から持ってくるかの設定も自由にできるようになっている

 以上、Prodigy 7.1の概要について見てきた。次回は、Revolution 7.1でどんなことができるのかをチェックするとともにそれぞれのの音質を比較する。

□Ego Systemのホームページ
http://www.egosys.net/
□製品情報(Prodigy 7.1)のホームページ
http://www.egosys.net/jpn/technote/read.cgi?board=ATrelease&y_number=27&nnew=2
□M-AUDIOのホームページ
http://www.m-audio.co.jp/
□製品情報(Revolution 7.1)のホームページ
http://www.m-audio.co.jp/products/Revolution/Revolution.html
□関連記事
【2002年12月24日】M-AUDIO、192kHz/24bit対応オーディオカード「Revolution 7.1」
-VIA製のオーディオコントローラ「Envy24HT」を搭載
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20021224/maudio.htm

(2003年4月21日)


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL」(リットーミュージック)、「MASTER OF REASON」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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