■ 待望の新モデルは2タイプ Panasonic D-Snapの登場以来、超小型で動画が撮れるカメラも徐々に注目されるようになってきている。今までビデオカメラというと、まずDVカメラで、価格は10万前後で、買うのは子供ができてから、という図式から脱却できていないように感じる。あるいはちょっと気合い入れた海外旅行とかネ。 しかしD-Snapに代表されるような小型ムービーカメラの場合は、あきらかに「日常の遊びで使えればOK」というスタンスであり、10万円も出してビデオカメラ買うつもりはまったくないという世代をうまく取り込みつつある。多くの携帯電話にムービー機能がついたことが、この「日常的動画生活」という感覚を形成させた中心的要素だろう。 このようなトイ・ムービーカメラでは、アイ・オー・データもなかなかがんばっている。昨年12月に発売された初代Motion Pix「AVMC131」は多くのメディアで取り上げられたようで、PC Watchにも詳しいレポートがある。価格のわりにはちゃんと写るということで、他メディアでも好意的に受け止められているようだ。 今回のElectric Zooma!では、このMotion Pixの2世代目、「AVMC211」を取り上げることにする。すでに3月に発売されてはいるが、前モデルを小型化し、210万画素のCMOSを搭載したモデルだ。また最近、同デザインでレンズとCMOSを131万画素に変更した廉価モデルの「AVMC132」も発売されたことで、このあたりの製品に再び注目が集まっているようだ。では早速テストしてみよう。
■ 高級感はないが、コンパクト まずはいつものように本体からチェックしてみる。ボディサイズは、ムービーカメラとしては十分に小型だが、D-Snapよりは若干大きい。あちらが専用充電池を内蔵するのに対し、AVMC211では単三電池2本で駆動するようになっているので、その分が大きいといった感じだ。 ボディはほとんど樹脂製で、造りとしてはかなり安っぽく見える。左側面の一部のみアルミのようだが、これも高級感を醸し出すにはもう一歩及ばない。液晶部は普通のビデオカメラのように開くが、縦には回転しない。つまり自分撮りなどはできないということになる。まあ価格的なことを考えれば、このぐらいは妥当なところだろう。
電源ボタンのスライドスイッチは動きが堅く、かなり入れにくい。指の腹ではちゃんとスイッチが入るまでスライドできず、爪で引っかけてスライドさせる必要がある。もちろんこの堅さは切るときも同様で、切ったつもりが切れてなかったということがたびたびあった。使っていくうちに柔らかくなるのかもしれないが、ここは改良の余地があるだろう。 電池およびSDメモリーカードは、本体後部の蓋をスライドさせた中にある。上部のゴム蓋内にはUSB端子と、アナログ出力のAV端子がある。USBによるPCとの接続では、カメラ側が録画モードになっているとカメラモード、再生モードになっているとマスストレージモードとなる。
底面には三脚穴がある。前モデルではネジがかなり奥のほうに切ってあったので、市販の三脚のネジが届かないという不具合があったようだが、この点は改善されている。試しによく量販店などで売られているミニ三脚と合わせてみたが、これだけでもちゃんとしたカメラに見えるから不思議だ。
またこの三脚穴ってのはISO規格で決まっている寸法なので、折りたたみ傘の先っちょとかにだって付けられるのである。いや付けてどーすんだヨとか言われても困るが、例えば高いアングルから狙うときに一脚代わりにするとか、まあこれはこれでいろいろ考えれば用途はあるものだ。もっとも雨降ったからといってカメラ付けたまま傘さすと、かなり馬鹿っぽいあげくカメラも壊れるので、それはやめとけ。おじさんとの約束だゾ。
■ なかなかいい静止画撮影
同じCMOS搭載のカメラということでなにかと比較対象となるのがD-Snapだが、AVMC211のアドバンテージは画素数の多さだろう。D-Snapが35万画素なのに対し、こちらは210万画素というのは圧倒的な解像度である。動画では関係ないが、静止画ではかなり撮れるものに差が出てくる。パッケージには3.1メガピクセルと書いてあるが、これはハードウェア的な補間技術で300万画素相当(2,048×1,536ドット)の撮影に対応できるという意味だ。 デカい絵が撮れるのはなんとなく安心できる要素だが、この画素クラスのCCD搭載デジカメと比較すると、若干絵の輪郭が甘くなるようだ。色味に関しては派手さはなく、素直な感じ。ただいろいろなショットを撮ってみると、全体的にやや緑が強いような気がする。 前モデルからの改良点として2倍までデジタルズームができるようになったのが今回のモデルの売りだが、撮影中はズームできない。またフレキシブルにズームできるのではなくてワイド端・テレ端含めて、4段階のサイズで固定されるようだ。もちろん光学ではなく電子ズームなのだが、このあたりはコストによる制限なのだろう。
また動画ではズームしても解像度が変わらないが、静止画モードではズームすると、画素数が自動的にLowにセットされる。ワイド端に戻してもLowのままなので、高解像度で撮っているつもりで失敗しないよう、注意する必要がある。
撮影可能距離は最短で1mぐらいなので、マクロ撮影は基本的にできない。同じような条件のカメラとしてCASIOのEXILIMがあるので、これ用のクローズアップレンズが使えるかなと思って買ってみた。
試してみたところ、とりあえず20cmぐらいまでなら撮影できるようだ。ただしレンズの口径が全然合わないので、手でレンズを持って撮影というなんとも情けない状態である。なんとかうまく着脱できるような細工を考える必要があるだろう。
もう1つ同じようなレンズに、ケータイのカメラをワイドにするというレンズがあるので、これも買って試してみた。しかしこれはちょっと経が小さすぎたようで、一応ワイドにはなるのだが周りがケラレるし、フォーカスが全然合わなかった。マクロはともかく、ワイド化はちょっと難しいかもしれない。ほかにもこういうものがあったら、試してみたいところだ。
■ 動画機能はどうよ
ムービーの画質は、カメラを固定して動きが少ないものを撮ればそこそこなのだが、ハンディで自由に撮るとそれほど良くない。ちょっとしたムービーメモといった使い方に割り切るべきだろう。 オーディオは、本体前面のマイクでモノラルで録れる。メモとして使えるかなと思い、某メーカーのプレス発表会を撮影してみたのだが、本体での再生では音声が不明瞭で、撮ったものを本体だけで再生するのはあまり意味がない。だが撮影したムービーをPCに取り込んで聞いてみると、それほど悪くはなかった。 普通にしゃべっていれば、メモには問題ないレベルだろう。しかし人の話をメモる道具として考えたときに懸念されるのが、レンズの画角だ。なんせ35mm換算で55mm程度という狭さなので、被写体から1mほどのところから撮ると、ほとんど顔しか入らない。相手がちょっと動いたらもうアウトなんである。
PCに取り込んだときに困ったのは、ファイルのタイムスタンプがデタラメになっているところだ。ムービーはおおむね2001年1月1日、静止画は下は2008年2月8日から2070年8月3日までいろいろだ。これは何も筆者が日付設定をさぼったからではない。もともとMotion Pixには日付を設定する機能がないのである。
これはファイルの日にちでフォルダ分けするような取り込みツールを使うときにかなり困るし、2070年ってどう考えても筆者は死んでるナと思うと悲しくなっちゃうので、いろいろな意味で勘弁してほしい。
■ 総論 総合的に見ると、Motion Pix AVMC211は確かに手軽に撮れるカメラではある。電池の持ちだってものすごくいい。編集部でさんざんいじくり回し、筆者が約2時間ほどテスト撮影したが、同じアルカリ電池でまだ残量表示がフルのままである。 静止画に関しては、トイカメラにしては意外にちゃんと撮れるじゃん、という素朴な喜びがある。ただレンズが50mm(35mm判換算)というのは、ビミョーに使いづらい画角だ。目視でいいなと思った被写体をいい構図で入れようと思ったら、もう一歩後ろに下がらないといけない。やっぱりデフォルトでもうちょっとワイドのほうが使いやすいのではないだろうか。 動画に関しては、画質はあまり期待してはいけない。いわゆるビデオカメラとは違うのである。ちょっとしたビデオメモや、そんなに気合い入れるわけじゃないんだけど面白いものがあったら撮ろうぐらいの気持ちでポケットに突っ込んどくには、ちょうどいいデバイスだ。 D-Snapに比べればそりゃあ多機能さや造りで見劣りするのは否めないが、あちらが撮ることと見ることを均等に考えたマルチデバイスであるのに対して、Motion Pixは撮ることを重視した「カメラ」であるため、割り切りがはっきりしている。特に静止画機能では、圧倒的にMotion Pixのほうが優れている。 ただ、AVMC211では300万画素相当の2,048×1,536ドットで静止画が撮れるのが売りだが、これで撮ったものをプリントしたいというニーズがどのぐらいあるだろうか。自分のホームページに載せる程度の使い方なら1,600×1,200ドットでもそんなかわりゃしないので、もしかしたらこれの廉価モデルAVMC132のほうが現状の画質相応でお買い得かなぁという気がしないでもない。でも3,000円ぐらいの違いだったらやっぱAVMC211にしとくかなぁ、という感じで揺れ動くのである。
□アイ・オーのホームページ (2003年5月7日)
[Reported by 小寺信良]
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