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第87回:フランス発のハイスピードサバイバルアクション
世はまさに特殊部隊ブーム!! 「スズメバチ」

怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ 特殊部隊は漢の浪漫です

 スズメバチ コレクターズ・エディション

価格:4,700円
発売日:2003年5月23日
品番:PIBF-7527
仕様:片面2層
収録時間:103分(本編)
       約140分(特典)
画面サイズ:シネマコープ(スクイーズ)
音声:1.フランス語(ドルビーデジタル5.1ch)
    2.フランス語(DTS)
    3.日本語吹替(ドルビーサラウンド)
字幕:日本語/吹替用
発売元:日本ヘラルド映画株式会社
販売元:パイオニアLDC株式会社
 冒頭から個人的な話で恐縮だが、私は大の「特殊部隊好き」だ。以前もこのコーナーで「スナイパー好きだ」と書いたが、実は特殊部隊も大好きなのである。警察や軍隊から選りすぐられた精鋭が、迅速かつクールに任務を遂行する映像を見ていると熱くならずにいられない。

 最近のハリウッド映画では、スーパーマンのような刑事が単独で悪の軍団を倒すようなストーリーではなく、現実同様に特殊部隊が活躍する映画が多くて嬉しい限りだ。海外ソフトが主流となっているPCゲーム業界でも、特殊部隊を主人公にしたアクションゲームは人気で、1つのジャンルを確立している。世はまさに「特殊部隊ブーム」だ。

 余談だが、そんな映画やゲームをプレイしていると、黒い目だし帽をかぶって、お台場の高架橋の下で電動ガン片手に「特殊部隊ごっこ」をしていた若かりし頃の思い出が蘇ってくる。もちろん、今思うと「はたから見れば“ごっこ”ですまなかったかも……」という消したい過去であるのは確かなのだが。

 そんなわけで、お店のDVDコーナーを歩いていても、「人質をとって銀行に立て篭もる犯人」、「要人の護衛」、「ハイジャック犯に特殊部隊が!」などの文字を見つけるとついつい手に取ってしまう。今回取り上げる「スズメバチ コレクターズ・エディション」も、ナディア・ファレスが黒いタクティカルスーツに身を包み、私の好きな銃(FA-MAS)を構えたジャケットだけでノックアウトされてしまった。

 ナディア・ファレスは「クリムゾン・リバー」に出演していたが、他にも「TAXi」シリーズの主役でお馴染みのサミー・ナセリ、「ピアニスト」でヒロインの相手役を演じたブノワ・マジメルなど、出演者の顔ぶれも豪華だ。

 DVDの価格は4,700円。再販キャンペーンなどが人気を呼び、低価格が進む昨今のDVDとしては高価な部類に入る。映画自体も劇場公開時にそれほど話題になった記憶はないので、思わず躊躇してしまう価格だ。しかし、「レオン」や「TAXi」、「ル・ブレ」など、フレンチアクションはヒット作も多い。ジャケットが気に入ったとはいえ、悩んだ末に半ば「賭け」の気持ちで購入してみた。特典ディスクを加えた2枚組みだが、価格相応の魅力があるかどうかが問題だ。


■ 一味違う、こだわりのガンアクション

 映画の冒頭は、3つのまったく異なるシーンから始まる。1つは、大物マフィアを裁判所に護送している警察の特殊部隊。もう1つは、巨大な倉庫に忍び込み、ノートパソコンなどが詰まったコンテナをトラックで盗み出そうと考えている窃盗グループ。そして、何やら意味深な雰囲気を漂わせた初老の警備員。

 「誰が主人公なのだろう?」と思いながら鑑賞していたのだが、ストーリーのテンポが速く、次々と3つの場面が切り替わり、どの物語に集中して良いのかわからないまま進んでいく。だが、ボスを奪還するため、マフィアの集団が特殊部隊を襲撃した瞬間に物語は激変する。かろうじて離脱した特殊部隊は、まさに窃盗グループが盗みを行なっている最中の倉庫に逃げ込む。もちろん、その倉庫は初老の警備員の勤務先だ。

 3つのストーリーがあっという間に1つにまとまり、観客も物語の中に一気に引き込まれてしまう。かくして、倉庫を取り囲むマフィア、中には警察と窃盗グループという、奇妙な状況が完成。3つの勢力の、文字通り「三つ巴の銃撃戦」が幕を開ける。

 この「銃撃戦」こそが最大の見せ場であり、映画の大半を占めている。DVDのパッケージ裏には「ラスト9分40秒! 飛び交う12,000発の弾丸!!」というコピーが書かれているが、実際には映画の半分以上が銃撃戦というイメージだ。そのため、映像的な演出や、次々と起こるハプニングがふんだんに盛り込まれており、単なる撃ち合いで観客が飽きないよう工夫されている。

 「絵になる銃撃戦」と言えば良いだろうか? 360度から撃ち込まれる弾丸で、倉庫の壁やシャッターが蜂の巣になり、その穴から外の光がビームのように差し込む場面、天井から砕けたガラスがシャワーのように落ちる様子など、じつに印象的だ。

 銃の描写があくまでリアルな点にも好感が持てる。銃器のチョイスもマニアックで大変よろしい。一例を挙げると、特殊部隊の女性中尉が持っているのはフランスの制式軍用ライフル「FA-MAS」、他の隊員もオーストリア・ステアー社の「ステアー・AUG」、スイス・SIG社の「SG551」と優美なフォルムを持った銃器が並ぶ。M16やMP5系の銃が山ほど登場し、悪役が必ずロシアのAK銃を持っているようなハリウッド映画とは一味違う。

 また、初老の警備員がカウボーイのようにカービンライフルを装備し、窃盗グループは取り扱いが簡単なライアット・ショットガンを持つなど、使用する武器でキャラクターの性格や立場が表現されていて面白い。音響面でも、マルチチャンネルを活かし、四方八方から飛来する銃弾の音に興奮すること間違いなしだ。

 なお、記事の冒頭で「PCゲームでは特殊部隊を扱ったものが人気」と述べたが、劇中でも特殊部隊ゲームの代表作「RAINBOW SIX」(Rogue Spear)を登場人物がプレイしているシーンがあり、思わずニヤリと笑ってしまった。撮影現場には銃器やこの手のゲームが好きなスタッフが集まっていたのだろう。



■ 音質は良好、銃の発射音が素晴らしい

 音声はフランス語をドルビーデジタル5.1chとDTSの2種類で収録。日本語はドルビーサラウンドのみ収める。基本的にDTSで鑑賞したが、低音がふんだんに入った迫力の音響が楽しめた。また、サラウンドの包囲感が秀逸で、野外の騒音や倉庫内のディレイの効いた音場が素晴らしい。スピーカーセッティングのチェックにも役立つだろう。

 特筆すべきは銃の発射音で、登場する銃ごとに実銃をサンプリングした非常にリアルな音が楽しめる。弾丸発射時の低音もとより、銃の金属的で硬質な動作音に思わず興奮してしまった。また、ガス圧作動の銃ではちゃんとガスの漏れる音がするなど、芸が細かい。

 音声ビットレートは、フランス語のドルビーデジタル5.1chが384kbps、日本語のドルビーサラウンドは192kbps。共に低めのビットレートだが、その代わりDTSはフルレート1,536kbpsで収録されている。音質の面では迷うことなくDTSでの鑑賞をお勧めする。

 DVD Bit Rate Viewer Ver.1.4で見た本編の平均ビットレートは8.82Mbpsとかなり高め。音質に負けず劣らず画質も良好で、独特のみずみずしさを感じる。ただ、物語の展開上、薄暗いシーンが多く、暗部の階調がつぶれたシーンもいくつか見られた。しかし、アラ探しのような観方をしなければ画質に不満はない。

DVD Bit Rate Viewerで見た平均ビットレート

 特典ディスクの収録内容は、キャストへのインタビューや未公開シーン、予告編など。また、映画の基となるストーリーボードと本編をマルチアングルで切り替えて視聴するコンテンツも収録している。さらに、銃器の解説やアクションシーンの裏側などは、監督やスタッフのこだわりが感じられて楽しめた。ただ、できれば各コンテンツにもう少しボリュームが欲しかった。

 また、未公開シーンや監督のインタビューは違う意味で必見の内容といえる。その理由は、本編の中で張られた伏線や意味深なシーンが、きっちり説明されないまま映画が終わってしまうからだ。「登場人物が交わす視線や、漂う雰囲気で何となくわかるだろう」という判断でバッサリ切ってしまったのかもしれないが、特典ディスクを見て初めて知る事実が多くて驚いた。もちろんストーリーが破綻しているわけではないが、キャラクターに深みを持たせる設定は映画の中でさりげなく説明して欲しかった。もっとも、「想像力のないお前が悪い」と言われればそれまでなのだが……。


■ ガンマニア以外の人にもお勧めです

 監督の狙いだと思われるが、この映画には確固たる「主役」がいない。登場人物それぞれに平等な量のドラマを割り当てているので「全員が主人公」と言えなくもないが、とにかく1人だけに感情移入しずらい作品だ。だが、それが逆に銃撃戦そのものの楽しさに目が行く要因になっているのだろう。

 また、あたかも「ガンマニア向けの映画」のような紹介文を書き連ねてしまったが、難しいことは考えず「爽快でカッコイイ銃撃戦を観てスカッとしたい」という向きにも最適のタイトルだ。臨場感たっぷりの音響と合わせてホームシアターの醍醐味が味わえるだろう。

 もちろん、私のように「特殊部隊のリーダーが女性」と聞いただけでグッときてしまうような人には必見の作品だ。4,700円という価格には賛否両論あるだろうが、ふとした瞬間に「ああ、あのカッコイイシーンもう一度見たいなぁ……」と思い出すことが予測できるので、個人的に満足した買い物になった。

●このDVDについて
 購入済み
 買いたくなった
 買う気はない

前回の「ショウタイム 特別版」のアンケート結果
総投票数208票
購入済み
28票
47%
買いたくなった
82票
39%
買う気はない
98票
47%

□パイオニアLDCのホームページ
http://www.pldc.co.jp/
□オフィシャルサイト
http://www.suzume8.jp/
□製品情報
http://db.pldc.co.jp/search/view_data.php?softid=162496

(2003年6月24日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]



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