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ヒットモデル「3・2・1」の上位機
BOSE 「3・2・1 GS」
「FreeStyle」
発売日:11月1日
標準価格:179,800円(3・2・1 GS)
       89,800円(FreeStyle)


■ ヒットモデルの上位機種が登場

旧製品の「3・2・1」(2002年5月発売)も併売される
 DVDプレーヤー一体型のシアターシステムながら、リアスピーカーいらずの手軽さが話題となり、2002年のヒットモデルとなったBOSEの「3・2・1(サン・ニイ・イチ)」(149,800円)。今回取り上げる「3・2・1 GS」は、その上位モデルに当たる。

 3・2・1を簡単におさらいすると、フロントスピーカーの「イメージアレイ」、DVDプレーヤーやAM/FMチューナを内蔵した「メディアセンター」、サブウーファ「ベースモジュール」で構成され、リアスピーカーを必要とせず、イメージアレイ2個でサラウンドを再現する製品。入力された音声は「BD(Bose Digital)」で5.1ch化された上でサラウンド化し、イメージアレイへと出力される。

 60mmユニット2つを外側を向けて搭載したイメージアレイには間接音を効果的に利用する「ダイレクト/リフレクティング」技術の影響を色濃く見て取れるし、ベースモジュールにはLSシリーズと同じく「アクースティマス」を採用。随所に同社の独自技術が取り入れられており、ベースモジュールをはじめとしたデザインにもBOSEらしさが感じられる製品だった。

 3・2・1 GSになっての最大の変更点は、フロントスピーカーをイメージアレイから「ジュエルアレイ」にしたこと。ユニットを50mmに小型化し、一体型プレスコーンに交換した。また、ネオジウムマグネット、ボイスコイル、アルミボビンなどを採用、「高能率と広帯域化を実現した」という。

 そのほかは3・2・1のコンセプトを踏襲しており、DVDビデオ、音楽CD、CD-R/RWの再生に対応。「モノラルを含むすべてのソースを5.1ch化する」というBDでプロセス後、フロントスピーカーだけでサラウンドを再現するという。


■ 多彩なデジタル入力。しかしコンポーネント出力はなし

 メディアセンターには、定格25W×4chのアンプのほか、DVDプレーヤー部、AM/FMチューナ、入出力部といった機能を搭載。その割には国産のフルサイズAV機器に比べると幾分コンパクトだ。ただし、デザインはAMシリーズやLSシリーズと同じく、我々日本人からするとスタイリッシュとはいえない。このあたりはBOSEならではのアメリカンテイストだと割り切るしかないだろう。

 メディアセンターには電源ケーブルを挿すところがなく、電源はベースモジュールから専用ケーブルで取る。ベースモジュールは重量11.1kgのどっしりしたもの。しかし、LSシリーズなどのベースモジュールと比べると一回り小さく、場所を取らないのがうれしい。

 ジュエルアレイとメディアセンターとは専用ケーブルで接続する。付属のケーブルはかなり長く、12畳、16畳と言った広目のリビングでも対応できるだろう。また、基本的にはDVDビデオを再生するシステムだが、この種のシアターシステムとしては音声入力(デジタル×4、アナログ×3)が豊富なので、シンプルなAVアンプとしての利用も可能だ。

 接続面で気になるのは、コンポーネント出力端子がないこと。もちろんDVDビデオのプログレッシブ出力も非対応。国内のシアターシステムが軒並みD2端子を装備する中、機能的に見劣りするのは否めない。3・2・1もコンポーネント非搭載だったが、上級機を名乗るならば(海外製品なのでD端子は仕方ないにせよ)、RCAのコンポーネント出力くらいはほしかった。今回、S映像でのDVDビデオを久しぶりに見たが、コンポーネントに比べて階調の荒さやにじみが気になった。

メディアセンター 上面に操作ボタンを装備 背面
ジュエルアレイ ベースモジュール背面 リモコン

 DVDプレーヤー部はDVDビデオ、音楽CD、CD-R/RWの再生が可能で、CD-R/RWに記録したMP3ファイルの再生もサポートしている。ただし、ID3タグやファイル名の表示は不可能で、音楽CDと同じくトラック名のみが確認できる。フォルダ間の移動やフォルダごとのリピートなど、フォルダがらみの操作もできない。ディスクの読み込みは比較的高速で、頭からの再生のほか、リピート、シャッフル再生も可能だ。

 リモコンは大柄でLSシリーズと共通するイメージ。3・2・1と異なり、テレビ操作が可能になった。また、自照式ボタンはリモコン上部の入力切替ボタンだけで、何かしらの操作を行なうと、現在使用している入力のボタンが赤く点滅する。

 リモコンで困るのは、LSシリーズと同じく、字幕や音声の切り換えボタンがない点だろう。字幕表示の利用頻度が少ない海外市場で生まれた製品だと妥協するしかない。また、DVDメニューの呼び出しやチャプタ送りを行なうと、ワンテンポ待たされることが多い。慣れればどうということはないが、もう少しきびきびした動作にしてほしいところだ。


■ スピーカー変更で音質が向上

 サラウンド再生に当たって特別な操作は必要なく、再生するソースは基本的にすべてサラウンドになる。そもそも再生モードを切り換えるという概念は一切なく、音楽CDなどの2chソースも自動的にサラウンド化する。

 5.1ch収録のDVDビデオを視聴してみたところ、確かにフロント2スピーカーだけでも包囲感や移動感が得られていた。さすがに視聴者の真後ろまではカバーできないようだが、前方から真横まで、継ぎ目ない包囲感がある。さらにソースによっては、斜め後ろまできっちり包み込まれるときもある。極端な逆位相感もなく、セリフも画面中央に自然と定位。また、スイートスポットが広く、リビングで複数人が視聴する場合などに重宝しそうだ。

 前方から後方に抜ける音も再現する。「マトリックス リローデッド」では、銃声や対向車の移動音がすぐそばを掠める感覚が味わえる。ただしリアルスピーカーに比べると、後ろではなく斜め前方に抜けるように感じるシーンも多い。また、「ハリー・ポッターと秘密の部屋」のクィディッチシーンのように、視聴者の後方を左右に移動する音も再現できていない。とはいえ、包囲感はしっかり再現しており、単に2chで再生した場合より、遥かに臨場感は高まるはずだ。

付属のケーブル。手前からベースモジュールとメディアセンター間、スピーカー、電源 DVDトレイ

 スピーカーを変えただけあって、音質は3・2・1よりも良くなった。特に中高音の解像感が高まり、そのせいかチャンネルの分離感も向上した印象。これまで3・2・1で感じた若干のモッサリ感は、サラウンド化プロセスに起因するものだと思っていたが、どうやらスピーカーにも一因があったようだ。ジュエルアレイとベースモジュールのつながりにも問題はなく、セリフの厚みもシアターシステムとしては十分だ。

 メニューはLSシリーズから必要なものを抜き出した構成で、音声関連では、フィルムEQ、D.R.C(ダイナミックレンジ圧縮)、モノデコーディング、高音強調、低音強調が設定できる。フィルムEQはTHXでいうリ・イコライゼーションのようなエフェクトで、高音がしっとりとまとまる。ただ、そのままでも映画風の音調なので、好みによっては適用しなくても良いだろう。

 音声で気になったのは、映画ソース再生時の低音の薄さ。メニューに入ってD.R.CをOFF、低音増強を+5以上にするとある程度改善されるが、LSシリーズに比べ、低域が思うように鳴らないケースが多い。特に、LEFが持続する場面で低音が長続きしないのは気になる。貸出機固有の問題かもしれないが、視聴時のストレスにつながるので改善を期待したい。さらにディスクを取り替えると、必ずD.R.CがONになるのもいただけない。

 なお、音楽CDでは低音の薄さは気にならず、むしろ中低音の量感に圧倒された。この場合も音が自然に回り込み、スイートスポットは広い。ロックやポップスをBGMで楽しみたい人にはお勧めできるセットだ。

 定評ある機種の後継だけあって、サラウンドを手軽に楽しめる点では良くできている。凝った機能はないものの、大げさな見た目の機器をリビングに置きたくない場合や、設置の簡便性を第一に考えているなら、購入を検討しても損はないだろう。ただし、コンポーネント出力ができない点は留意した方が良いと思う。


■ 廉価なプレーヤーなしモデルも発売

Freestyle
 今回は同時発売の「FreeStyle」も視聴してみた。元祖3・2・1からDVDプレーヤー機能を省略した製品で、メディアセンターの代わりに、リモコン受光部付きの入出力部「インターフェイスモジュール」を添付している。イメージアレイは3・2・1と同じものなので、「3・2・1に興味はあるが、DVDプレーヤーはすでに所有している」という人に向けた製品だ。DVDプレーヤーを接続するインターフェイスモジュールは90×63×23mm(幅×奥行き×高さ)と小型で、ラックや机上の片隅にちょこんと載せることができる。

 FreeStyleの場合、任意のDVDプレーヤーを使用できるので、3・2・1や3・2・1 GSで非対応だったコンポーネント出力やプログレッシブ出力が可能になる。ただし、フロントスピーカーが最新のジェエルアレイではなく、3・2・1のイメージアレイに限定されるのがネック。さらに、DTSのビットストリームはデコードできず、デジタル入力はドルビーデジタル、PCMのみに対応する。

 リモコンはカード型のシンプルなタイプで、動作距離は4mほど。OSDもなく、ユーザーが行なえるのは、入力切替、音量調整、ミュート、電源のON/OFFのみとシンプルだ。

 音質は3・2・1 GSに比べると確かに見劣りする。サラウンド感は同等だが、やはり中高音の切れや音離れの点で不満が残る。とはいえ、古いDVDプレーヤーを生かすためのサブシステムや、パソコン中心のデスクトップシアターなどには十分なクオリティ。音楽ソースでは3・2・1 GS同様、分厚い中低音を楽しめるので、とりあえずBOSEサウンドを試してみたい方にもお勧めできる。

インターフェイスモジュール 付属のリモコン
イメージアレイ ベースモジュール背面

【3・2・1 GSの主な仕様】
ジュエルアレイ ユニット 50mm×2(防磁型)
外形寸法 142×107×66mm(幅×奥行き×高さ)
重量 0.44kg(1本)
ベースモジュール ユニット 130mmウーファ×1
定格出力 35W×1ch
外形寸法 221×488×360mm(幅×奥行き×高さ)
重量 11.1kg
メディアセンター 定格出力 25W×4ch
再生ディスク DVDビデオ、音楽CD、CD-R/RW(MP3可)
受信周波数 FM76.0~90.0MHz、AM531~1,629MHz
映像入力 S映像、コンポジット×各1系統
映像出力 S映像、コンポジット×各1系統
音声入力 同軸デジタル×3系統、光デジタル×1系統、アナログ2ch×3系統
音声出力 アナログ2ch×1系統
外形寸法 339×254×100mm(幅×奥行き×高さ)
重量 4kg

【FreeStyleの主な仕様】
イメージアレイ ユニット 60mm×2(防磁型)
外形寸法 200×136×88mm(幅×奥行き×高さ)
重量 1.2kg(1本)
ベースモジュール ユニット 130mmウーファ×1
定格出力 25W×4ch+35W×1ch
外形寸法 221×488×360mm(幅×奥行き×高さ)
重量 11.3kg
インターフェイス
モジュール
音声入力 光デジタル×1系統、アナログ2ch×1系統、AUX×1系統
外形寸法 90×63×23mm(幅×奥行き×高さ)

□BOSEのホームページ
http://www.bose.co.jp/
□ニュースリリース(3・2・1 GS)
http://www.bose.co.jp/information/news/nr_2003092502.html
□ニュースリリース(FreeStyle)
http://www.bose.co.jp/information/news/nr_2003092503.html
□関連記事
【9月25日】ボーズ、フロントSPでサラウンド再生できる「3・2・1」の上位モデル
-DVDプレーヤーなしの下位モデルも発売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030925/bose1.htm
【5月30日】【新プ】BOSE「LS-35」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030530/npp48.htm
【2002年4月16日】ボーズ、フロントだけで5.1ch再生するDVD/AVアンプ一体型システム
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020416/bose.htm

(2003年11月27日)

[AV Watch編集部/orimoto@impress.co.jp]


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