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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第144回:18倍ズーム小型メガピクセルDV「キヤノン FV M100」
~ 10万円以下で「写真DV」は本物か? ~


 2003年夏に発表されたキヤノンDVカメラ「FV M1」と「IXY DV M2」は、久々の原色フィルター回帰と、動画と写真「ダブルOK」画質を前面に押し出した意欲作であった。特にM2は昨年9月の発売から年末にかけてダントツの売れ行きを示し、DVカメラの業界地図を塗り替えたとも言われたヒット作になった。

 そんな状況を受けて今年3月中旬に続くモデルが、今回取り上げる「FV M100」だ。3色のカラーバリエーション展開を行なうという、いわゆるバリューゾーンモデルで、ランク的にはM2のちょい下ということになる。店頭予想価格は9万円前後。10万切りでありながらメガピクセル機で、今年の春商戦の主戦場にうってでた。

 映像エンジン部も上位モデルと同じキヤノン独自の「DIGIC DV」を搭載し、相変わらず動画と写真の「ダブルOK」画質を謳う。またレンズは光学18倍ズームと、上位モデルから大幅にスペックアップしている。だが原色系フィルターにこだわるキヤノンの次期モデルとしては、M100のフィルターは補色系になっている。

 今回は開発元のキヤノンにお邪魔してそのあたりの話も伺いながら、その実力を検証してみよう。


■ 大きな光学系、小さいボディ

 まず最初にボディから。大型になりがちな横型ながらも、外形寸法74×130×78mm(幅×奥行き×高さ)と、かなりコンパクト。手の中にはいるほどではないが、メガピクセル機、しかも光学18倍レンズを装備しながらこの小ささに、キヤノンのがんばりを感じる。

 全体的な印象は、光学軸がドカッとあって、メカ部が横にくっついてるといった感じ。光学部は物理的に小さくしてしまうとスペックダウンしてしまうため、今後の高画質カメラはこのようなフォルムの傾向に向かうものと思われる。

ボディの割には大きめの光学レンズを搭載 手の小さい人でも掴みやすいサイズ

 カラーはシルバー、シャンパンゴールド、ロゼの3種類だが、違うのは液晶フタ付近とレンズ下のカラーだけだ。非常に淡い色遣いなので、よく見ないと気が付かないかもしれない。今回筆者がお借りしたのはシルバーだが、光学部のシルバーよりも若干青みがかった感じで、完全に同色ではない。

 フィルタ径は34mm、レンズ径も実測で24.4mmと、このクラスでは大型のほうだろう。レンズ部は非球面レンズを1枚使用した、光学18倍の8群10枚レンズ。F1.8と、上位モデルM2並みにまずまず明るい。手ぶれ補正が電子式なのもM2と同じ。動画でのワイド端は50.5mm、テレ端は909mm。静止画ではワイド端37.9mm、テレ端682.2mm、いずれも35mm換算である。

光学18倍ズームのキヤノンビデオレンズを搭載 0.7倍のワイドアタッチメントが標準で付属

 ただ、これではワイド端が足りないだろうということで、0.7倍のワイドアタッチメントが標準で付属しているのはうれしい配慮だ。これにより、動画のワイド端で35mm、静止画で27mmと、十分な広角を確保できる。ただしワイコンと違って、ワイド端でしか使えない(ズームするとフォーカスが合わない)ので、その点だけ覚えておく必要がある。

 CCDは1/4.5インチ133万画素で、フィルタは補色。また今回も、手ぶれ補正をOFFにしてCCDの有効画素数を広げる「高解像度16:9モード」を備える。静止画の記録画素数は1,280×960ドットと640×480ドットの2種類。

 レンズ下部にステレオマイク、その下にDVとS端子がある。またレンズ横の半円部が赤外線受光部、その左にナイトモード用のLEDライトがある。さらに外側が外部端子類で、マイクIN、AV OUT、USB、ACが並ぶ。AV OUTはメニュー設定でヘッドホン出力にもなる点は、なかなかよく考えられている。

前面下部にDVとS端子を備える AV OUTはヘッドフォン端子と兼用

 グリップ面はなめらかな曲線を描くシルバー仕上げだ。多くのカメラはこの部分が樹脂丸出しの安っぽい灰色だったりするのだが、こういうところにまで気を配っている。

 反対側のモニタサイドには、メニューボタンと設定用レバーがあるのみで、一見非常にシンプル。だがモニタ内部にはダイレクトにモード切替ができるよう、多くのボタン類が隠されている。SDメモリーカードスロットもここに備えている。液晶モニタは2.5インチTFTで、約12.3万画素。

液晶を閉じればメニューボタンとダイアルぐらいしかないが…… モニター内にはモード切替のダイレクトボタン類が並ぶ

 背面に回ってみよう。バッテリもより小型化のためか、IXY DV5など縦型の小型モデルで採用していたものとなった。標準添付の「NB-2LH」では、ビューファインダ使用時で連続約115分、液晶モニタ使用時で約90分となっている。

 上面にはフォト用シャッターと並んで、プリンタと直結したときに便利な「イージーダイレクトボタン」を備える。最近はデジカメなどに直接繋がる「PictBridge」対応のプリンタも出てきたが、それらと繋げばこのボタン一発で静止画プリントができる。

バッテリは縦型コンパクトモデルで採用されていたタイプ フォトシャッターの隣にイージーダイレクトボタン


■ 十分なワイド端が堪能できる

 さっそく撮影してみよう。4:3モードでの撮影では50.5mmということで、やはりワイド端の不足を感じる。だが16:9のワイドモードで撮影してみると、そのフレームのせいか画角の狭さは感じない。特に今回のM100では、M2と同じように手ぶれ補正をOFFにすることでCCDの使用面積が広がり、さらに広い絵が撮れる。さらにワイドアタッチメントの標準添付でもっと広がってトリプルOKということで、コンシューマ機では久々にワイド端が十分なカメラだ。

サンプル静止画
(撮影モード・画角別)
モード ワイド端 テレ端
4:3
4:3+ワイドアタッチメント
(ワイド端のみ)
16:9
16:9高画質モード
16:9+ワイドアタッチメント
(ワイド端のみ)
16:9高画質モード+ワイドアタッチメント
(ワイド端のみ)
写真モード

16:9モードでは、液晶モニターもちゃんと横長に表示される

 そして筆者が個人的に感じる、今回の最大の改良ポイントは、液晶モニタの表示も本当に16:9で表示してくれる点だ。DVカメラでは昨年秋モデルあたりから16:9のスクイーズ記録が実現したが、ほとんどのカメラはモニタの表示までスクイーズ(縦長)表示だったのである。

 それでは実景とモニタとで画面アスペクトが違うので、ちゃんとしたフレーミングができない。実にストレスが溜まったわけだが、今回からは完璧な絵作りが可能になった。実際に絵を撮ってみると、この差は歴然である。

 さらにワイド端で広い画角と、そこからの18倍ズームで、フレーミングに関しては自由度が高い。ワイドモードで撮ったら非常に満足感の得られるカメラに仕上がっている。ただし18倍ズームのテレ端では、周辺部やフォーカスのぼけた部分に収差を感じるなど、若干レンズの力不足を感じる面もある。

 価格を考えればこれに文句を言うのも酷なようだが、これぐらいのスペックでさらに高級レンズを搭載した上位モデルも期待したいところだ。


サンプル静止画
補色系ながら、薄暮の中でも強い発色が出ている 細かいディテールも十分 高コントラストの表現力は得意とするところ


■ 「アドバンスドカラーコントロールシステム」で補色の弱点を克服

左から絵本直樹氏(キヤノン販売)、石井芳季氏(キヤノン)、中西務氏(同)

 キヤノンのDVカメラの弱点は、オートフォーカスの追従性かと思う。だが今回この点はほとんど気にならなかった。

 この点をキヤノン株式会社 イメージコミュニケーション統括開発センター 主幹研究員の石井 芳季氏にぶつけてみた。


石井 このモデルから特に手を入れたというわけではありませんが、毎機種ごと少しずつの改良は常に加えています。常に前機種より良くなるように、ですね。

 低価格モデルとはいえ、補色フィルタに戻った点は多くのユーザーにとって気になるところだろう。やはりコストの問題か、それとも輝度が足りないということだろうか。

石井 原色系でプログレッシブじゃないCCDで多画素をやった場合、動画の時には加算読み出しになります。そのときに動画としての解像度が得られる画素数ってのは、自ずと決まってしまいます。各メーカーさんともそのあたりでいろいろ違うわけですが、キヤノンの場合は最低限2M使わないと十分な解像度が出ないという判断です。1Mではどうしても同じ方式で原色をやっても、十分な動画の解像度が得られないのであれば、補色のほうがアドバンテージがあると考えています。

 前モデルで原色の良さを訴求していたわけだが、補色でも「写真DV」と言えるのだろうか。

石井 確かに補色系ではありますが、新たにアドバンスドカラーコントロールシステムというアルゴリズムを搭載しました。これは従来補色が苦手としていたシーンをソフトウェアで補正していく技術です。これプラスDIGIC DVで、原色系に迫る色再現ができるようになりました。

補色系ながらバランスの良い色表現 写真らしい色合いも特徴の1つ

 もう一つの不安材料は、1Mピクセル程度では写真としてプリントするには解像度が足りないのではないかという点だ。

石井 ユーザーさんがプリントするのは、L版が一番ボリュームゾーンです。1Mでもちゃんと本体による処理をすれば、L版なら十分な画質が出せます。ケータイクラスとはレベルが違うと思っています。

 画画素数が少ないというところを逆手に取ったアドバンテージもある。静止画撮影では、1Mピクセルという軽快さを生かして、秒間5コマの10連写が可能となっている。さらに3段階で露出を変えて連写するAEB撮影機能など、本格的なデジタルカメラ相当の機能もある。

 前モデルのM2では、「写真もビデオもダブルOK」というキャッチフレーズで大躍進を果たした。キヤノン販売株式会社 デジタルビデオカメラ商品企画部の絵本 直樹氏はその理由をこう分析する。

絵本 動画と静止画を1台で済ませたいという、潜在的なニーズはあったと思うんです。ビデオではメガピクセルが出てきて長いんで、そういうことができるモデル自体は世の中に存在してたんですが、それを改めてわかりやすい表現で示しました。それと製品自体の画質がお客様に受け入れられたと思っています。

 今回のM100は、M2に匹敵する表現力を持ちながら10万を切るというプライスに魅力を感じる。やはり補色系は安くできる、ということなのだろうか。

石井 確かに原色に比べれば、補色のほうが若干ハード的な部品点数は少なくなりますが、だからといって手を抜いているところはまったくありません。機能やCCDでの差別化はありますが、弊社の場合、低価格モデルだからといって基盤のシステムやアルゴリズムで差別化するといったことはまったく考えてませんので、前モデルで搭載したものは必ず載せていくという考え方です。

 さらにキヤノン株式会社 電子映像事業企画部の中西 務氏はこう結ぶ。

中西 :価格が下げられたのは、カメラの内部的なものよりは、企業努力ですね(一同笑)。全世界的に販売台数を伸ばすことで、同じ部品でもコストを抑えることが可能になったことも大きなポイントの一つだと思います。


■ 総論

 キヤノンのお家芸とも言える記憶色へのこだわり、静止画撮影時とビデオ撮影時で別の色処理を行なう技術は、撮影したあとの満足感も大きい。今回のM100にも、その点は受け継がれている。また地味な改良点ではあるが、今回のM100からオーディオ系も内部的にフルデジタルとなった。デジタルフィルタの採用で、低域の特性が大幅にアップし、内蔵マイクでありながらバランスの良い集音ができる。

 ただコストとのトレードオフという点では、若干18倍ズームに対するレンズの力不足を感じる。ワイド端の画面両脇や、テレ端近くでアウトフォーカスした部分などで感じる色収差は、もう少し頑張って欲しかった部分だ。

 大きな流れで考えれば、今後コンシューマのビデオカメラは大画面テレビの普及に伴って、16:9のワイドモード撮影が主流になっていくだろう。DVDなどの映画では既にワイド画角がデフォルトになっているし、放送も徐々にワイドのコンテンツも増えていく。その中で自分の撮影したものだけが旧態然とした4:3では、満足できないハズだ。

 その点M100は、16:9モードでは撮影時からきちんとそのサイズでフレーミングできることもあって、フルオートでとにかくカメラを向ければ絵としてキマルという、撮ってて楽しいカメラに仕上がっている。HDでこそないが、単に上下切っただけのニセモノではない、ちゃんとしたワイドの画質を体験できる点も大きい。

 10万円を切りながらこの画質ならば、かなり値頃感は高いと言えるだろう。

□キヤノンのホームページ
http://canon.jp/
□製品情報(製品情報)
http://www.canon-sales.co.jp/dv/lineup/fvm100kit/
□関連記事
【1月9日】キヤノン、光学18倍ズーム搭載メガピクセル小型DVカメラ
-シルバー、シャンパンゴールド、ロゼの3色
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040217/canon.htm

(2004年3月3日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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