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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第146回:誰もが一度はお世話になる?「DVD MovieWriter 3」
~ 「いつの間にかシェアNo.1」が統合ソフトに ~


■ 実はデファクトスタンダード?

 DVDオーサリングソフトも、一時は雨後の筍のごとく乱立したが、やはり継続したバージョンアップを行なえる力を持つところの製品が生き残ってきた。だがオーサリングソフトの市場というのは微妙なもので、リテールパッケージの売れ行きだけを見て全体のシェアを計ることはできない。DVDドライブへのバンドル版が、リテールとは比べものにならない本数が出荷されるからだ。おそらく多くの人が、ドライブバンドルのソフトをそのまま使っていることだろう。

 現在のところDVDドライブはスピード競争やスーパーマルチ化により、新規購入+買い換え需要でにぎわっている。DVDドライブバンドルのオーサリングソフトは、昨年あたりまで「Sonic MyDVD4」と「Ulead DVD MovieWriter」の一騎打ちという状況であった。だが1年近く新バージョンの音沙汰がないMyDVDに対して、MovieWriter2、MovieWriter Advanceと地道に進化するUleadのほうが、今年に入ってから勢力を伸ばしている。

 バンドル本数のほうはドライブメーカー各社の売上と絡んでくるので、なかなか具体的な数字は出てこないのだが、Pioneerの新モデル「DVR-A07-J」やアイ・オー・データのほとんどのモデルにバンドルされていることから考えても、シェアとしては1位2位は堅いところだろう。またユーリード独自調査によるリテール売上では、2003年でシェア40%を獲得し、No.1だという。

 そんなDVD MovieWriterの新バージョンが、4月16日にリリースされる。もはや単なるDVDオーサリングソフトではなく、これ1本でDVDが完結する統合型ソフトに進化したという。

 DVDドライブユーザーは今後お世話になる可能性が高いDVD MovieWriter 3、その新機能を早速チェックしてみよう。なお今回使用するのはベータ版のため、最終的な仕様とは異なる可能性がある。


■ 廉価ながらすべてのフォーマットに対応

最初にランチャーが起動する

 まず起動すると、最初にその違いに気づく。DVD MovieWriter 3(以下DMW3)のアイコンから起動するのは、ランチャーだ。統合ソフトは複数のソフトで成り立つため、このようなランチャーを設ける例は多い。DMW3では、ユーザーが行なう作業別にアイコンを設けて、ソフトウェアが立ち上がるようになっている。

 とはいっても、実質的には数個のアプリケーションを、専用モードで起動するに過ぎない。従来でいうところのDVD MovieWriterが担当するのは、「ビデオディスクの新規作成」、「ディスクに直接録画」、「スライドショーディスクの作成」、「ディスクに追記/再編集」の4つだ。

 もっともベーシックなモードである「ビデオディスクの新規作成」機能から全体を見てみよう。出力形式としては、DVD-VRフォーマットにも対応しているのがわかる。インストール時にはUleadオリジナルのUDFドライバもインストールされるので、VRフォーマット完全対応と言っていいだろう。

 またDVD+VRフォーマットにも対応しているが、これはデータ構造としてはDVDビデオフォーマットと互換性があるので、オーサリング作業は単にDVDとして行なう。最後のライティングの時に、DVD+VRを選ぶという段取りになる。

出力形式ではDVD-VRも選択できる DVD+VRは最終書き込み時に選択する

 このような構成は、フォーマットの性格からすると正しいのだが、DMW3から想定されるユーザーが、そこまで理解しているかどうかは疑問だ。作業内容は同じであっても、アピールとして最初の選択肢にDVD+VRがあってもいいだろう。いやあんまりこのフォーマットを使わせたくないというのであれば、これでもいいのだが。

オーサリング画面には大きな違いはない

 起動したオーサリング画面は、前バージョンとは若干配列やアイコンが違う程度で、基本的なテイストは同じだ。スライドショーの追加などが「メディアの追加」グループにまとめられた関係で、画面全体はすっきりして見える。

 今回のDMW3では、「マルチタイトルセット」機能に対応した。これはFull D1やHarf D1などの異なる解像度、異なるビットレートのクリップを混在させても、再エンコードすることなくメディアに書き込める機能だ。もちろん各クリップの解像度やビットレートは、DVD規格内である必要がある。

 これまでのオーサリングソフトでは、プロジェクト全体の設定とは違う解像度やビットレートのクリップは、再エンコードになってしまうものが多かった。今回のDMW3からDVD-VRフォーマットにも完全対応したことから、DVDレコーダで録ったいろいろな録画モードのコンテンツをインポートすることも多くなるだろう。そのときに画質が落ちないのは、ありがたい機能だ。

 


■ バグフィックスがメインの編集機能

クリップの編集画面。ここでも前バージョンと大きな違いはない

 続いてクリップの編集機能を見てみよう。ここも基本的には同じだが、以前のバージョンでは複数箇所を編集すると、クリップが再エンコード扱いとなって、ディスクの使用量表示が大幅に増えるという問題があった。だがあれは表示のバグで、実際には再エンコードされていなかったのだという。このあたりの問題も、DMW3ではFixされているようだ。

 編集といえば、従来であればビデオ編集ソフトで行なっていたような部分まで手を入れることができる。トランジションの追加は、自動的にシーンの変わり目を検出して設定してくれる。効果はリアルタイムでプレビューできるが、再生ボタンを押してから実際に再生が始まるまでには少し待たされる。また解像度もプレビュー用に落として表示されるが、内容はだいたい確認できる。

 テキスト追加では、画面内にテロップも入れられる。ソフトのドロップシャドウも付けられて、なかなか綺麗だ。だがカットイン、カットアウトのみでは味気ない。どうせレンダリングするんなら、せめてフェードイン、アウトぐらいの機能は付けて欲しかった。

)シーンの変わり目で自動的にトランジションを付加してくれる テロップはカットイン、カットアウトのみ

 チャプタ追加機能では、自動チャプタ機能も改善されている。自動チャプタ機能は、シーンの変わり目を自動検出してチャプタを付けていく機能だ。筆者は以前DVD MovieWriter2でDVDライティングのムックを作ったことがあるのだが、このとき調べた結果では、MPEGファイルに対して自動チャプタが使えなかったり、かと思うとなにかの拍子に使えてしまったりと、動作が不安定というか意味不明となっていた。これもバンドル版として沢山あるバージョンごとに微妙に動作が違っていたりして、ユーリード自体でもちゃんと状況を把握できていなかったようだ。

 DMW3ではこの部分も改善され、MPEGファイルでも自動チャプタが使えるようになっている。だがこれがバンドル版になると、また使えたり使えなかったりするかもしれん。これに関して筆者はなんの保証もしないし、あまり関わり合いになりたくない部分である。「使えたらラッキー」ぐらいに考えておくのがシアワセだろう。

自動チャプタ機能もちゃんと? 動く オーディオは合計3トラックのミックスができる

 オーディオ系も若干拡張され、クリップにBGMとしてオーディオが加えられるようになっている。さらにPCにマイクを繋げば、ナレーションも同時録音で入れられる。オリジナル音声と合わせて3トラックが使えるようになったわけだ。タイミングで音のバランスを上げ下げできるような機能はないが、一応これで子供の成長記録DVDみたいなものを作る環境は整ったわけである。

 メニュー関係では、テンプレートが見直され、全体的にテーマが明確になっている。また従来からボタンのモーションには対応していたが、今回から背景にも動画が使えるようになった。プレビューすると再生まで若干待たされるが、動いた状態で確認もできる。

 DVD書き込みのオプションとしては、「高速再編集」機能が加わった。以前からディスクの再編集機能はあったが、DVD-RWを使った場合は、いったんコンテンツ全部をHDDに吸い上げて再編集したのち、メディアを再フォーマットしてアタマから書き直す、という手の込んだことをやっていた。だが今回の高速再編集は、メディア内のコンテンツを直接編集してしまうので、HDDへのコピー作業などが必要ない。

タイトルのテンプレートが増え、よりテーマ性が強調されている 書き込み時に「高速再編集」モードが指定できる

 ただしできることは限られており、収録したクリップから不要部分をカットするといった編集作業はできない。チャプタやメニューの作り直し、クリップの追加といったことができるわけだ。またはDVDメディアから直接いろんなものを呼び出している関係上、どうしてもレスポンスはガクッと落ちる。これを指して「高速再編集」と言えるかどうかは、ビミョーなところだ。


■ 新たに加わったアプリケーション

 今回のDMW3で新しく加わったアプリケーションが2つある。1つはUlead Burn.Nowというライティングソフトで、ランチャーでは「音楽ディスクを作成」、「ディスクコピー」、「データディスクを作成」の3つを担当する。

 音楽ディスク作成では、音楽CD作成の他にMP3 CD、MP3 DVDなども作成できる。もっともMP3では、やってることはただのデータ書き込みと変わりない。MP3 DVDではDVDビデオフォーマットに変換する、いわゆるDVD-Music形式かと思ったら、ただデータとしてMP3のフォルダを書き込むだけであった。

「音楽ディスクを作成」では3通りの書き込みが可能 CDA書き込み機能も、最低限だ

 CDA作成では、トラック間の2秒のプレギャップを詰める機能がない。またMP3エンコーダを積んでいるわけでもなければ、CDDBなどの音楽情報サービスに対応しているわけでもない。今どきのライティングソフトにしては、力不足に感じるだろう。だが最近音楽CDは、ジュークボックスソフトなど音楽ソリューション系アプリケーションで処理する傾向になっており、DMW3で音楽CDを作るチャンスはないかもしれない。

 DMW3に加わったもう1つのアプリケーションは、Ulead DVD PlayerというソフトウェアDVDプレーヤーだ。映像表示ウインドウとコントローラからなる、オーソドックスなスタイル。ただこの操作性も、いつものユーリード節である。普通ソフトウェアのDVDプレーヤーであれば、マウスでDVD操作画面をクリックすることで操作ができるものだが、このプレーヤーはそれができない。コントローラ横の十字キーを使うか、キーボードのアローキーとEnterボタンで操作するのみだ。

新しく加わった「Ulead DVD Player」 DVDラベルプリント機能まで装備する

 まあDVDプレーヤーのエミュレータとしては正しい動作なのかもしれないが、このままではPCのソフトウェアであるメリットを放棄しているとしか思えない。正式リリース版では改善されていることを望むばかりだ。

 さらに今回は、DVDのラベルプリント機能までついている。DVD-Rにラベルを貼ることは問題があると思うのだが、こういうニーズもあるということだろう。


■ 総論

 DVDオーサリングソフトは、何を売りにすべきか難しいところにさしかかっている。上級者では既にMEPG-2やDVDから離脱して、ホームネットワークやMPEG-4へ関心が移っているという現状もある。その一方でAV Watchの読者には信じられないかもしれないが、コンシューマーレベルでは「これからDVD入門」という層もまだまだ存在するのだ。

 よく言うピラミッド構造である。すなわち先進的なユーザーはどんどん先に突っ走るが、市場としては小さく、商売としては大した儲けにはならない。オイシイのは、これからDVDに飛び込んでくる一般ユーザー、三角形の巨大な底辺に近いところなのである。

 そんな動きの中でDMW3の統合ソフト化は、そうなってしかるべき動きだ。1本でとりあえずなんでもでき、メディアの種別やフォーマットの差を強く意識する必要もない。一例を挙げれば、DVD-VRに完全対応しディスクの再編集も可能になったおかげで、先週のDVDカムで撮影した映像などは、いつまでも進歩がないDVD MovieAlbumよりもずっと効率的に編集できる。

 こうしたバンドルソフトも、今までは複数メーカーのソフトを組み合わせていたわけだが、今度からはDMW3一本ですべてのDVDソリューションをカバーできることになる。好むと好まざるに関係なく、DMW3は今後確実に、DVDドライブなどにバンドルされてくるだろう。

 ただバンドルソフトがドライブの売上に結びつくと考えるならば、逆にオーサリングソフトとして定着したDVD MovieWriterというネーミングがネックになるだろう。統合ソフトならば、本当は一目でソレとわかるそれらしい名前が必要なのではないだろうか。

□ユーリードシステムズのホームページ
http://www.ulead.co.jp/
□製品情報
http://www.ulead.co.jp/dmw3/runme.htm
□関連記事
【2月24日】ユーリード、±VRフォーマットに対応したDVDオーサリングソフト
-2層記録に対応するプロ用ソフトも59,800円で発売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040224/ulead.htm

(2004年3月17日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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