■ 国産ポータブルDVDに久しぶりの新製品が
今春は三洋電機の「DVD-HP58」、東芝の「SD-P1400」など、国内メーカー製ポータブルDVDプレーヤーの新製品が久しぶりに発売される。松下電器の「DVD-LX8」もその1つだ。 かつてポータブルDVDプレーヤーは、東芝、ソニー、パイオニアなど、多くの国内メーカーが参入していた。しかし現在は、axionブランドなどの海外メーカー製が低価格を武器に幅を利かせている。また、ノートPCの駆動時間が伸び、B5サイズタイプでもドライブ搭載モデルが増えているため「出張の友」としての存在意義が薄れはじめている。 DVD-LX8は、10万円前後という海外メーカー製の2倍近い実勢価格ながら、DVD-RAMをはじめとする再生メディアの多彩さ、「DVD-LV65」の流れを汲む液晶アーム、HighMATレベル2対応、9V型の大型液晶ディスプレイ、金属を多用した外装など、海外メーカー製品にはない特徴を多数持つ。特にDVD-RAM再生機能は、DVD-RAMレコーダ利用者にとって気になる機能だろう。
■ 再生画質は上々。ただし、連続使用時間が心もとない
9V型液晶ディスプレイを搭載しているため、ポータブルDVDプレーヤーとしては大き目のボディを採用する。ミニノートを彷彿とさせるサイズなので、5V型モデルのように、ちょっとした机の空きに設置するのは難しい。 また、金属外装のためか重量も1.25kgと重い。毎日持ち歩く通勤・通学用プレーヤーというよりは、バカンスや長期出張用なのだろう。その代わり質感は高く、海外メーカーモデルとは別次元の満足感が得られる。剛性感も高く、この種のポータブルプレーヤーで気になるディスクの回転音も小さい。 大きな特徴は、ヒンジを2カ所用いることで、細かいディスプレイの角度調整を可能にした点。特に、ディスプレイを前方に移動させてから傾ける「フリースタイル」が、旅客機内などの狭い場所で使いやすそうだ。2002年6月発売の5V型ワイド機「DVD-LV65」で採用された機構だが、大型ディスプレイの本機でこそ役立つ。
本体には多くのボタンを装備し、たいていの操作が本体だけで行なえる。もちろん、フル機能を操作可能な赤外線リモコンも付属しているが、ポータブル機の場合、外部出力時ぐらいしかリモコンを利用しないため、本体操作の充実はうれしい。ただし、字幕切替、音声切替ボタンが本体になく、OSD経由の操作になるのは残念なところ。 また、本体左側の青く光るカーソルボタンも特徴的だ。再生中に光り続ける設定のほか、メニュー操作時のみ発光するよう設定できる。ベッドルームなど、暗がりで使いやすいのは便利だが、少しの力で斜めに入りやすく、操作性はあまりよくない。
ディスプレイは800×480ドットの9V型ワイド。ポータブルDVDプレーヤーとしては大型の部類に入る。表示品質は高く、DVDビデオ再生時の精細感やダイナミックレンジはこの分野としては満足できるものだ。小型液晶ディスプレイで良く見られる中間色の緑っぽさや、ノートパソコンなどで再生したときに気になる薄茶色のノイズも抑えられている。動きボケもディスプレイの大きさの割には目立たない。 ただし、視野角の狭さが気になる。特に上下が狭く、ちょっと首を動かしただけでスイートスポットから外れてしまい、黒浮きや色変化が起こる。据え置き型より使用用途や環境が複雑なため、個人的にはポータブルDVDプレーヤーこそ広い視野角がほしいと感じる。また、色合いを調整できないため、中間色の緑の汚れをごまかすのが難しい。 それでも、ポータブルDVDプレーヤーとしては高レベルの表示品質にあるのは間違いない。少なくともノートPCで再生するよりはキレイなので、専用機としての体面はしっかりと保っている。 外部入出力は、S映像/コンポジット端子と光デジタル/アナログオーデオ端子を装備。S映像は出力のみ、コンポジットは入力および出力が可能。オーディオは光デジタルが出力のみ、アナログが入出力に対応している。 据え置きDVDプレーヤーが安くなった現在、こうしたポータブル機の外部出力のありがたみが、かつてより薄れているが、価格を考慮すると、東芝の「MED900J」のようにD2端子を装備しても良かったと思う。 なお、テレビチューナ(VHF/UHF)を本体に内蔵し、外部アンテナコードも付属する。受信品質には期待できないものの、テレビのない部屋に持ち込んだ場合などに役立ちそうだ。また、海外メーカー製がよく同梱しているカーアダプタは別売(12,000円)になる。
バッテリは専用のリチウムイオン充電池を使用する。別売で底面を覆うかたちの大型バッテリ「DY-DB75」(25,000円、税別)も利用できる。カタログスペックでの再生時間(画面輝度最小時)は、DVDビデオの連続再生で2.5時間、テレビ再生時が3時間、SDメモリーカード再生時が3時間となっている。別売バッテリパックを増設すると、それぞれ7.5時間、9時間、9時間に延長できる。 ただし、実際に見やすい明るさまで画面輝度を上げると、DVDビデオで1時間30分弱で充電を促すメッセージが出た。長時間での使用を予定しているなら、結局、別売バッテリパックも必要になりそうだ。
■ HighMATに大きな進化はなし
再生可能なメディアは多い。DVDビデオ、DVDオーディオ、DVD-RAM、音楽CD、ビデオCD、CD-R/RWに対応し、CD-R/RWに記録したMP3、WMA、JPEGファイルも再生できる。DVDオーディオが再生できるポータブル機は珍しい。さらに、HighMAT形式(レベル2)で記録したCD-R/RWもHighMAT準拠のメニューで操作できる。 また、SDメモリーカードに記録したMPEG-4、MP3、AACといったファイルも再生可能。機能としては「D-Snap」の再生機能をそのまま移植した趣になる。DIGAシリーズの上級機、DMR-E200H/E100Hで記録したMPEG-4ファイルにも対応するので、DVD-RAMと合わせれば、DMR-E200H/E100Hとの親和性はすこぶる高い。録画番組の視聴を移動先で消化できることに意義を見出す人も多いだろう。 DVD-RAMレコーダで記録したディスクを再生したところ、DIGAシリーズと同じプログラムナビ(番組一覧)が表示され、再生が始まった。DVDレコーダで作ったプレイリストやマーカーも引き継いでいる。もちろん、プログラム名(番組名)の編集や番組の削除は行なえない。また、30秒などのCMスキップボタンがないため、「まったく同じ感覚で再生できる」とは言いがたいのが残念だ。 DVDビデオの再生については、2003年4月発売の据え置き型DVDプレーヤー「DVD-S75」とメニューの構成や見た目が良く似ている。字幕の高さ調整(0~-60)、字幕の明るさ調整(オート/0~9)、音声付き早見/遅見再生(0.8/0.9/1.0/1.2/1.4倍)といった、他ではあまり見かけない機能を搭載する。 音声付き早見/遅見は、引き続きDVDビデオとDVDオーディオの動画部分しか利用できない。つまり、DVD-RAMでは動作しない。この仕様は改めてもらいたかった。
また、S75と同じく、HighMATディスクの再生が行なえる。HighMATディスクでは、記録したコンテンツファイルを「プログラムナビ」と「プレイリスト」の両方で操作できる。LX8で扱えるのは、MP3、WMA、JPEGが対応する「HighMATレベル2」だ。 プログラムナビでは、「アーティスト」、「アルバム」、「ジャンル」などでファイルを分類。一方、プレイリストは「プレイリスト」、「グループ」、「コンテンツ」で分類された一覧表示となっており、左側のタブを切替ることで目的のコンテンツを絞り込める。 HighMATディスクの再生については、S75と同じ見た目と機能だった。プログラムナビで曲単位まで下層に至ると、なぜかプレイリスト形式に切り替わるところも同等。相変わらず慣れないと使いづらいインターフェイスと感じた。ランダム再生が不可能なところも変わりはない。 なおS75と同じく、初期設定で「HighMAT再生しない」にすると、HighMATディスクを通常のデータCD-R/RWとして読み込む。この場合、ID3タグを表示できなくなるが、ランダム再生が可能になる。日本語ファイル名は表示可能なので、通常はこちらが使いやすいかもしれない。
■ RAMレコユーザーの別室再生用?
機能満載で、見た目もかつてないほど豪華なポータブルDVDプレーヤー。10万円前後は確かに高価だが、再生機能の多彩さや、9V型という大型ディスプレイの魅力を考えると納得できる。特にDVD-RAMレコーダのユーザーには期待の新製品といっていいだろう。1kgを超える大型プレーヤーだと考えると、ターゲットユーザーは出張など長時間の移動を行なう人だろうか。 しかし冒頭の通り、最近は「ノートPCではなく専用プレーヤーを使う意義」が薄れているように感じる。長期の出張ならどうせノートPCも持って行くだろうし、そのノートPCのバッテリ持続時間が延びたためだ。さらに、B5以下サイズでDVDドライブを搭載したモデルも増えてきた。特に大型の本機の場合、大きさの面でモバイル向けのノートPCとほぼ競合することになる。さらに、標準バッテリの持続時間の少なさを考えると、専用機としての魅力が物足りない。 とはいえ、画質の良さやヘッドフォンの音質はノートPCよりも上。完成度は高く、持つ喜びも感じられるので、画質にこだわる方なら検討してみるのも良いだろう。こんな豪華なポータブルDVDプレーヤーはもう出ないかもしれない。 また、DVD-RAMレコーダユーザーの録画番組の消化用プレーヤーとしても優秀だ。日常的なモバイル用途ならサイズの小さいDVD-LV65が適任だが、家庭内モバイルならLX8の大画面と高画質を勧めたい。
□松下電器のホームページ (2004年3月25日) [AV Watch編集部/orimoto@impress.co.jp]
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