【バックナンバーインデックス】



DivX対応プレーヤーで108MHzビデオDACを搭載
低価格で高機能・高画質
サイテック 「DVP-550DX」
発売:3月下旬
価格:20,800円(ソフマップ直販価格)


■ 意表をつく仕様のDivXプレーヤー

 サイテックが3月下旬に発売したプログレッシブDVDプレーヤー「DVP-550DX」の特徴は、DivX再生に対応したプレーヤーとしては珍しく、108MHz/12bitのビデオDAコンバータを搭載すること。現在、ハイエンド機のビデオDACは216MHzに移行しつつあるが、108MHzのビデオDACといえば、2002年に発売された中上級機が良く採用していたデバイスだ。その流れから、現在でも5万円台後半から7万円台後半の中級機に備わっている例が多い。2万円強という価格を考えると、コストパフォーマンスは高い。

 さらに、192kHz/24bitの音声DACを6ch搭載し、DVDオーディオの再生にもフル対応する。DVDオーディオをマルチチャンネルで再生できる機器としては、おそらく最安値の製品だろう。そのほか、HDCD、SVCD、MP3、WMA、JPEGと幅広いフォーマットの再生に対応するなど、この種の製品としては、久しぶりに特色豊かな製品となっている。

 本体は高さ41mmの薄型で、ディスクトレイも透明の薄型タイプ。トレイがペラペラなので、使い始めのころはディスクを載せるたびに不安を感じたが、実用上、特に問題はなかった。

前面パネル。表示管はハーフミラーを採用 松下電器製「DVD-S75」を思わせる透明トレイ

 前面パネルの周囲は樹脂製だが、それほど安っぽくはない。本体を薄くしたためか、操作ボタン類は前面パネル上に装備する。そのため、ほかの機器を本機の上に置くのは気が引ける。薄いのでラックの隙間に押し込めそうだが、操作ボタンのことを考えると、上方に多少のクリアランスを設けた方が良いだろう。

 前面パネル左に、ハーフミラーの表示管を装備。文字色はブルーで、本体が薄いせいもあり、表示される文字は小さい。3mほど離れると、何を表示しているのか判別できない。もっとも、タイトルやチャプタの経過時間・残り時間といった視聴中に確認したい事柄は、リモコンの「情報」ボタンを押すことで、再生画面の上に表示できる。

 前面左にはステレオミニジャックのマイク端子とボリュームつまみを搭載する。今回は試さなかったが、これはカラオケマイクを接続するための端子。通常、ボーカルマイクは標準ジャックということで、パッケージには標準-ステレオミニ変換コネクタが付属している。

 背面には、コンポーネント、S映像、コンポジットといった映像出力を備える。また、低価格機ながら音声出力が充実しており、光デジタル音声、アナログ2ch音声に加え、アナログ5.1ch出力、同軸デジタル音声も各1系統装備。クラスを考えると十分な接続性といえる。RCAはすべて金メッキだ。

前面左のマイク入力とボリュームつまみ。押し込むと格納する 端子は金メッキ。同軸デジタル出力も搭載


■ ビデオ収録ディスクも高品質にプログレッシブ化

 リモコンは小ぶりで、ボタンも小さい。比較的良く使う字幕や音声切替で誤操作が多くなるだろう。しかし、カーソルや決定ボタンが大きいので、メニュー操作は問題ない。それよりも、全ボタンに蓄光式ボタンを採用するところに、良くあるタイプのDivXプレーヤーとは異なるこだわりを感じた。

 そのほか、DVDビデオ再生時の操作面では、早送り/早戻し(2倍→4倍→8倍→16倍→32倍)、AB/タイトル/チャプタリピート、コマ送り、スロー再生(1/2、1/4、1/8、1/16)など、一通りのトリック再生に対応する。動作もきびきびしており、ストレスは感じない。また、リモコンのズームボタンを押すごとに、2倍→3倍→4倍と拡大し、さらに押すと、1/2→1/3→1/4と表示画面が縮小する。縮小機能を搭載したDVDプレーヤーは珍しい。

 DVDビデオの画質は、108MHz DACの実力が感じられる上質なもの。同価格帯の54MHz機と比べると、階調性、フォーカス感、ノイズの少なさといった点で秀でている。怪しい出自の多いDivXプレーヤーとしては間違いなくトップレベルの画質で、国内メーカー製の中級機とも比肩しうるクオリティといって良い。物量を投じた高級プレーヤーに比べると、ダイナミックレンジやノイズの抑えこみといった面で多少物足りなくは感じるものの、コストパフォーマンスは高い。

全ボタンが蓄光式のリモコン 本他上部の操作パネル

 プログレッシブ/インタレースの切替はリモコンで行なう。プログレッシブ表示にしたいときは、リモコン左下の「プログレッシブ」ボタンを3秒押し続ける。今回は28型ワイドCRT(三菱電機28W-WR1)、32V型プラズマテレビ(日立W32-PD2100)、液晶プロジェクタでの100型ワイド投写(三洋電機LP-Z2)の3タイプで見比べたが、プログレッシブ時のフォーカスの良さや、階調、色のり、動きに不満を覚えることはなかった。

 プログレッシブ時のクロマサンプリングエラーは、原色で覆われる「HERO」チャプタ8において、輪郭部分に少しだけ確認できた。この程度のクロマエラーは今でも国産メーカーの中級機やレコーダで見られるし、よほど大画面で見ない限り気にならないだろう。

 なお、このプレーヤー最大の弱点と思われるのが、ビデオ収録ソフトのプログレッシブ再生だ。プログレッシブ化ロジックとして、フィルム収録用の2-3プルダウンしか用意されておらず、説明書にも「毎秒30フレーム、60フィールド記録のテレビドラマ・テレビアニメーションなどのビデオ素材DVDに対応しておらず、映像に悪影響が生じる可能性があります。その場合はリモコンのプログレッシブ オフボタンを押して、インターレースに戻して……」と明記されている。

 しかし、20種類ほどのビデオ素材ソフトをプログレッシブ化して鑑賞したところ、気になるほどの動きの乱れや、ジャギー、コーミングの類は見られなかった。CRT、プラズマテレビ、液晶プロジェクタとディスプレイを替えても、安定した表示品質を確認できた。少なくとも編集部のPSX(DESR-5000)のプログレッシブ化能力よりは優秀だ。とはいえ、あえてメーカーが非対応を宣言しているので、ビデオ素材の再生が中心の人は、それなりに注意したい。

初期画面 サーチ 情報画面 一般設定
スピーカー設定(距離設定) オーディオ設定(イコライザ) オーディオ設定(音場モード) オーディオ設定(ダイミックレンジ圧縮)
オーディオ設定(チャンネルトリム) 映像設定(シャープネス) 映像設定(コントラスト) バーチャルリモコン

 なお、オーディオ設定に「イコライザ」という項目があり、そこでは「ロック」、「ポップ」、「ライブ」など7種類のモードを設定できる。DVDプレーヤーにこうした機能は珍しい。同様に「音場モード」として、「コンサート」、「リビングルーム」、「ホール」など7種類を用意。どのエフェクトも大げさで、個人的にはあまり使い道はないと感じた。プレーヤー自体の音質が上質なため、そのままAVアンプに出力した方が良い結果が得られると思う。

 そのほかDVDビデオ関連では、PAL→NTSC変換機能も搭載している。欧州版「千と千尋の神隠し」を再生したところ、普通に再生できた。しかし、リージョン1ディスクは再生できなかった。


■ DivXを滑らかに早送り可能

ファイルブラウザ

 再生できるDivXファイルは、公式には3.11、4.x、5.xとなっており、サイテックでは「DivX Pro Encoder Pack for Windows」のようなDivXNetworks認定のソフトで作成したファイルを推奨している。編集部でも5.x系のファイルをいくつか試してみたが、一部を除き問題なく再生できた。再生品質も優秀で、上記で問題にしたビデオ素材のプログレッシブ再生についても、とりたてて不自然に感じるところはなかった。

 ファイル形式を混載したディスクもロードでき、ファイルブラウザでは全形式の対応ファイルを扱える。カーソル操作やフォルダ移動もすばやく、ストレスを感じることもない。ただし、日本語ファイル名の表示には対応していない。

 特筆すべきは、DivXでも早送りがスムーズなこと。DivX対応プレーヤーの場合、60秒後へのスキップ機能を早送りと称したり、レスポンスが著しく悪いケースが多い。本機では、DVDビデオを早送りしたときと同程度の滑らかさを実現しており、使い勝手は良い(音声は再生しない)。テレビ放送を録画したファイルの場合、オープニングテーマ、アイキャッチ、エンディングなどを飛ばすことが多いので重宝するだろう。また、スロー送り、ABリピートもDVDビデオと同様に利用できる。

 しかし、早戻しは「レベル1」から「レベル5」という表記になっており、ほかのDivX対応プレーヤーを思わせるガクガクした表示になる。また、再生が始まるまでに10~20秒ほどかかることがある。DivX対応プレーヤーで流行しているネットワーク機能も搭載していないのも残念だ。CD-R化の手間を考えると、次機種ではぜひとも対応して欲しい。

 ちなみに、手元にあったMPEG-4ファイルも、普通に再生できた。もちろん、正式対応というわけではないが、再生可能なフォーマットはかなり幅広いようだ。

ディスク再生互換テスト
ディスク種別 結果
DVD-R
DVD-RW(VRモード) ×
DVD-RW(ビデオモード)
DVD-RAM(VRモード) ×
DVD+R
DVD+RW
コピーコントロールCD
(michelle branch/hotel paper)
レーベルゲートCD
(SOUL'd OUT/ウェカピポ)
※この動作結果はあくまでチェックした個体での動作状況です。また、編集部では個別の動作状況についてお答えできません。ご了承ください。


■ まとめ

 現在、国内メーカーの再生専用プレーヤーは、「SACD/DVDオーディオ対応のユニバーサル化」、「HDCP対応DVI出力の装備」など、価値の高い中上級路線をとりつつある。しかも大手家電メーカーはレコーダに注力し、再生専用モデルの新製品が出てこない状況となっている。

 そんな中、本機は低価格プレーヤーではまだ実現していない「108MHz DACによる高画質」と、大手家電メーカーが手を出せない「DivX再生への対応」を同時に果たした点で、市場を反映した意義ある製品といえる。動作も安定しており、比較的荒っぽく使った割には、不安も覚えるような素振りも見せない。音声出力もデジタル、アナログとも品質は良く、DVDオーディオも明瞭かつ倍音の豊かな音が楽しめる。

 低価格プレーヤーからの買い替えを考えていたり、DivX再生にも興味があるなら、コストパフォーマンスの高さからもお勧めできる製品だ。ただし現在のところ、販路がソフマップに限られているので注意されたい。店頭およびWeb直販で扱っており、Web直販では20,800円で販売されている。

【DVP-550DXの主な仕様】
再生可能ディスク DVDビデオ、DVDオーディオ、HDCD、ビデオCD、SVCD、CD-R/RW(MPEG-4、DivX、XviD、MP3、WMA、JPEG)
出力 コンポーネント(RCA)、S映像、コンポジット、アナログ5.1ch音声、アナログ2ch音声、同軸デジタル音声、光デジタル音声(各1系統)
消費電力 10W
外形寸法 420×270×41mm(幅×奥行き×高さ)
重量 2.4kg

□サイテックのホームページ
http://www.scitec.jp/
□ニュースリリース
http://www.scitec.jp/products/divx.html
□関連記事
【2月27日】サイテック、108MHzビデオDAC搭載のDivXプレーヤー
-実売2万円台前半。DVDオーディオの5.1ch再生も可能
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040227/scitec.htm

(2004年4月15日)

[AV Watch編集部/orimoto@impress.co.jp]


00
00  AV Watchホームページ  00
00


Copyright (c) 2004 Impress Corporation All rights reserved.

AV Watch編集部 av-watch@impress.co.jp

Copyright (c) 2004 Impress Corporation All rights reserved.