■ 低価格ユニバーサルプレーヤー登場 DVDオーディオや、スーパーオーディオCD(SACD)などの“次世代”オーディオが登場してから、すでに5年。その間、映像分野ではDVDビデオの市場拡大により、DVDプレーヤーが普及、さらにはDVDレコーダまでも飛躍的に伸びて、従来メインの録画機だったVHSビデオデッキを完全に置き換えつつある。 映像と比較してオーディオ分野でのフォーマット移行は進んでいない。DVDビデオの場合はテープメディアから光ディスクへという物理的な大きな変更があったことに加え、ランダムアクセスや軽量性、高画質など、ユーザーにわかりやすい利便性の向上があったというのが、普及の最大のポイントだろう。 しかし、オーディオではCDというランダムアクセス/光ディスクメディアからのわかりやすい変更点が少なく、高音質やマルチチャンネルというメリットだけではユーザーの心を動かすことができなかった。オーディオの「世代交代」はまだ果たされてない。 とはいえ、最近の音楽CDはコピーコントロールCDなど、レッドブックの規格外のディスクが増えている。新発売タイトルの多くが規格外のディスクとなっている現状は、CDの寿命はほぼ終焉を向かえ、無理やり延命しているという状態のように思える。いっそ次世代フォーマットに移行してもいい時期にきているようにも見える。 しかし、次のフォーマットでも同じ12cmディスクサイズながらSACDとDVDオーディオの2つの異なる規格が覇を争っており、ユーザーはどちらを選択していいのかわからない状況。DVDオーディオとSACDのいずれかに対応したプレーヤーは既に多く発売されている。特にDVDオーディオ対応製品は、松下電器のDVDプレーヤー/レコーダ、ミニコンポなどで導入が進んでいて、実売2万円程度のビクター「XV-A707」のように低価格な製品も多い。一方のSACDに関しては、ソニーの多くのオーディオ/ビデオプレーヤーに加え、シャープのミニコンポなどでも導入が進んでいる。しかし、どちらも普及にはほど遠い。 やはり、ユーザーが安心できるのはDVDビデオ/オーディオ、SACDマルチチャンネル対応の「ユニバーサルプレーヤー」だろう。しかし、専用機は比較的高価格で、10万円を切る機種は多くなく、約4万円強のマランツ「DV6400」、デノン「DVD-1400-N」、そして従来までの最安値はパイオニアの「DV-600A-S」で3万円弱といったところだ。 しかし、5月下旬に発売されたパイオニアの「DV-578A-S」は、実売で2万円台前半という低価格。しかも、DVDビデオプレーヤーとしても、108MHz/12bitのビデオDACを搭載するなど、一昔前のハイエンドプレーヤーに並ぶようなハイスペックなデバイスを搭載している。これはコストパフォーマンスが高い。実際の購入した価格は、23,800円(10%ポイント還元あり)。
■ 筐体の質感はイマイチ 外観は、オーソドックスなDVDプレーヤーで、本体の外形寸法は420×243×55mm(幅×奥行き×高さ)、重量は2.1kg。非常に軽く、片手でも十分持てる。「ユニバーサルプレーヤーがこの軽さでいいのか?」と不安になってしまうほど。 安価な製品とはいえ、国産大手メーカー製ということで、本体の質感にも期待していたのだが、このあたりは少々期待はずれ。樹脂製の前面パネルにシルバーの塗装を施しているのだけれども、安っぽさは拭い去れない。家電量販店ではアイ・オー・データのDivX/ネットワーク対応DVDプレーヤー「LinkPlayer」と並べておいてあったが、工作精度はDV-578Aのほうが高いが、遠めに見た質感はLinkPlayerの方が勝っているように思えた。 前面パネルは右端に基本操作ボタンやMENUボタンを配したオーソドックスなもの。表示管の明るさを切り替えられる「FL DIMMER」ボタンも備えている。
背面には、映像出力端子として、コンポーネント、D2、S2映像、コンポジットを各1系統搭載。音声出力は、同軸デジタル、光デジタル、アナログ2ch、アナログ5.1chを装備する。 リモコンもシンプルなもので、グレーを基調にした地味なカラーリング。自照/蓄光式ではないのは残念だが、この価格帯の製品では標準的な仕様だ。
■ 低ノイズ/高解像感の再生画質 まずは、DVDビデオを再生した。ローディング時間は7~8秒程度。VRモードで記録したDVD-RWの再生にも対応するが、DVD-RAMの読み込みは行なえない。ユニバーサルプレーヤーの「とにかくどんなディスクでも読める」という点が大きなセールスポイントとなると思うので、是非対応して欲しかったところ。 12bit/108MHzのビデオDAC搭載ということで、同スペックのビデオDACを採用してる「PSX」と視聴比較した。松下の液晶プロジェクタ「TH-AE500」や、三菱の28型テレビ「28W-HR1」にコンポーネント接続し、比較してみたが、色のりの薄いPSXよりもデフォルト設定でもしっかりとした発色が感じられる。
また、ほとんど画質設定の行なえないPSXとは異なり、シャープネス/ブライトネス/コントラスト/ガンマ/色合い/色の濃さ/BNRなどの設定項目をきちんと持っているので、好みの画質に調整できる。ただし、設定内容を記憶するユーザーモードなどは備えていない。 また、精細感などにおいても「DV-578A」の方が優秀に感じられる。安価ながらもさすがは専用機といったところ。プログレッシブ出力時では、手動でビデオ素材、フィルム素材にあわせたモードを切り替えることはできないが、いずれの素材で視聴しても特に不満点はなく、クロマアップサンプリングエラーも見られなかった。特にノイズの抑えも良く効いており、解像感の高さもこのクラスでは比類ない性能。画質の破綻は無く、この価格帯のトップクラスの再生画質といえる。 また、深夜視聴時などに爆発音などの大音響を抑えながらセリフを聞き取りやすくする「オーディオDRC」(ドルビーデジタル音声時のみ利用可能)や、小音量時でもセリフなどを聞き取りやすく再生する「ダイアローグ」機能も搭載している。ただ、音声付き早見機能を備えていないのが、やや残念なところだ。
■ DVDオーディオ/SACD再生に対応 続いてCDやSACD、DVDオーディオを再生。SACDマルチチャンネルとDVDオーディオの再生が可能なのが、DV-578Aの最大の特徴だが、i.LINKなどのデジタル伝送端子は搭載しない。もっともこの価格帯で5.1chマルチチャンネル出力を備えているというだけでも十分だろう。 SACDの場合は、初期設定メニューからディスクの再生エリアを2ch/マルチch/CDから選択する必要がある。また、DVDオーディオもDVDビデオとオーディオが1枚に収録されている際にいずれを優先するか選択できる。
スピーカー設定項目では、スピーカーサイズをラージ/スモール/オフから選択できるほか、スピーカー距離設定も行なえる。フロントスピーカーを0.3m~9mまで選択でき、センター/リアはフロントの設定値を基準に30cm刻みで補正できる。 CDの再生性能も高くバランスのいい再生品質。若干低域が物足りない気もするが、2万円のDVDプレーヤーと考えれば十分なクオリティ。ローディング時間は遅くなるもののCCCDやレーベルゲートCDの再生も行なえた。 マルチチャンネルSACDや、DVDオーディオも聞いてみた。スピーカー設定などはSACD、DVDオーディオ共通で利用できる。無理な音圧強調の無い非常に穏やかな音場再生はCDでは得られないもの。CDと異なる次世代フォーマットの魅力を体験するには十分な性能といえそうだ。DVDビデオ用にバーチャルサラウンド機能を備えているが、SACDやDVDオーディオでは利用できない。 気になる点はディスクローディングや操作時の動作音の大きさ。CD再生時ではトラックスキップのレスポンスは良好だが、スキップの際にキュンキュンとモータの駆動音がうるさく、高級感は全然無い。DVDビデオ再生時のチャプタスキップでも音はするのだけれど、CDではいかにも「機械動いています」的な音がして耳障りだ。また、ローディング時の読み込み音も同様。低価格なプレーヤーに動作の隅々に高級感を求めるというのは野暮だろうが、気にならない程度に収めて欲しいところではある。
また、CD-R/RWに収録したMP3やWMA、JPEGの再生にも対応。メインメニューのディスクナビゲーターからフォルダ階層をたどってコンテンツにアクセスできる。ディスクナビゲーターでは日本語の表示が行なえないというのが残念なところ。また、MP3やWMAのタグ情報には対応せず、フォルダ/ファイル名の順番に並べられる。
再生時には上部にMP3やWMAのビットレートが表示される。最大フォルダ数は299で、フォルダとトラック数の合計で648まで認識できる。なお、OGG Vorbisは再生できなかった。JPEGの表示では、最大3,072×2,048ドットの再生が可能。90度単位での回転機能も搭載している。
■ SACD/DVDオーディオ入門に最適。安価な高画質プレーヤーとしても優秀 低価格プレーヤーは、1万円台でプログレッシブ対応というのが当たり前という状況で、価格のほかは、ネットワーク対応やDivXなどへの対応が、差別化ポイントとなるような市場となっている。 そうした中、2万円台で「ユニバーサル対応」かつ「108MHz DACによる高画質」という大きなセールスポイントを持ったDV-578Aのコストパフォーマンスは非常に高い。高画質なDVDプレーヤーが欲しいユーザーや、SACD/DVDオーディオなどに手軽に入門してみたいという人には最適な選択肢といえるだろう。 □パイオニアのホームページ (2004年6月11日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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