■ サッカー・ドッグというタイトルに惹かれて……
「買っとけ! DVD」で、どのDVDを紹介するのか毎回悩む。「これを取り上げたい」というタイトルがある時はいいのだが、週刊ペースだと、これっといったタイトルが見つからないこともある。 今回も、ここ1週間に発売されたDVDを「DVD発売日一覧」で目ぼしいタイトルがないかと探していると、「サッカー・ドッグ」というタイトルが目に飛び込んできた。まったく、聞いたことのない映画だが、SPEのサイトでジャケット写真を確認してみると、意味なくかかった虹が、なんともいえない味をだしている。 さらにSPEのサイトをよく見ると、「サッカー・ドッグ ヨーロッパ選手権」という、続編らしきものまである(続編という予想は裏切られたが……)。 タイトルからしてインパクトのある「サッカー・ドッグ」。誰か知っているかと思って、周囲で聞いて回ってもだれも知らなかった。が、タイトルを聞くだけで、だれもが興味を示した。 マイナー作品ではあるが、メジャーメーカーのSPEが発売しているという安心感もある。価格は各3,990円と安くはないが、洋画のDVDとしては一般的な価格。ということで、今回はこの2本を購入した。 SPEの資料に、「アイボより賢く、チワワよりも人気者!」、「ファインディング・ニモ、クイールに続くのはこの犬たちだ!」という、すごいコピーが踊っていたのも決め手になった。 ちなみに、「サッカー・ドッグ」というタイトルを見た時、日本側でキャッチーな邦題をつけたのだと思ったのだが、原題も「SOCCER DOG: THE MOVIE」、「SOCCER DOG: EUROPEAN CUP」。ほぼ直訳だった。
■ 犬がサッカーする、だから「サッカー・ドッグ」 「サッカー・ドッグ」と「サッカー・ドッグ ヨーロッパ選手権」。タイトルを見て、勝手にストーリーにつながりがあると思い込んだが、実際に見てみるとまったくつながりはなかった。監督はサッカー・ドッグがトニー・ジグリオ、脚本はダニエル・フォアマン。ヨーロッパ選手権の監督はサンディ・タン、脚本ジョン・ディーバーと、ぜんぜん違う。 公開はサッカー・ドッグが'98年、ヨーロッパ選手権が2004年。サッカー・ドッグは少年サッカーに犬が参加するストーリー。サッカーを唯一の心の慰めにしてきた、孤児院育ちのオールデンが、エレナという女性に出会い結婚。しかし、一緒にサッカーをする息子がいないことに物足りなさを感じる。オールディンは、自らが育った孤児院から、少年クレイを養子に迎え、彼にサッカーを教える。 ある日、クレイは町で迷子の犬と出会い、リンカーンと名付ける。この犬には、驚くべきサッカーの才能を秘められていた。というストーリーだ。 一方、ヨーロッパ選手権は、大人のチームに犬が参加する。スコットランドの田舎町でサッカーチームに所属するブライアンは、突然自分に息子ザックがいたことを知らされ、一緒に暮らすことになる。ある日、ザックは駐車場でボールを自由自在に操る不思議な犬を目撃する。その犬は、科学者に強化された天才的なサッカー・ドッグ、だった。キンブルと名付けられたその犬は、瞬く間に国中で話題になる。しかし、同時に利用しようとするものも現れた。というストーリーで、冒頭でSFぽい伏線が張られているが、その後に展開に特に生かされることはなかった。 両作品は、犬がサッカーをするということと、親子ものということだけ共通しており、それ以外の関連性はほとんどない。また、登場する犬は、ベイブのように人間の言葉を喋ったりしないし、動きも普通の犬そのもの。人間的なスーパープレーをするわけではなく、あくまで犬としてサッカーをプレーしている。 DVDにはメイキングなどが収録されていなので明確なことはわからないが、基本的には低予算映画のようで、特撮らしい特撮はほとんど見受けられなかった。
■ 4カ国語の音声と、7カ国語の字幕! サッカー・ドッグのDVDは片面1層。音声は英語、日本語ともにドルビーデジタル2.0ch(ドルビーサラウンド)で収録している。音声のビットレートは両方とも192kbps。映像特典も「オリジナル劇場予告編」のみと寂しい仕様だが、8年前の低予算映画なので、しかたないところだろう。 映像は4:3で収録。DVD Bit Rate Viewerでみた平均ビットレートは4.76Mbpsと、さすがに単層DVDなので低めだ。しかし、画質の方は高画質とまではいえないが、問題のないレベルに仕上げられている。また、音声はドルビーデジタル2.0chだが、ドルビーサラウンド収録なので、サラウンド感もそれなりにあった。
サッカー・ドッグ ヨーロッパ選手権は、日本盤のDVDとしては珍しく、4:3とビスタ(スクイーズ)の2種類の画角が1枚の片面2層DVDに収録されている。そのため、平均ビットレートは5.39Mbps高くはないが、屋外の明るいシーンが多い映画なので、画質面で問題に感じなることはなかった。 また、画角に関しては、4:3は16:9の両端をカットしているようで、16:9の方が広い領域が映っている。なお、4:3とビスタの色調や画質にはほとんど同じで、DVD Bit Rate Viewer 1.4のグラフもあまりなかったので、ビスタ版のグラフのみ掲載した。 音声は驚くことに英語、日本語、スペイン語、パルトガル語の4カ国語をドルビーデジタル5.1ch(ビットレートはすべて448kbps)で収録している。字幕にいたっては英語、中国語、日本語、韓国語、スペイン語、タイ語、ポルトガル語の7カ国語が入っている。 もしやと思って、ディスクのリージョンを確認してみると、1、2、3、4が設定されている。この設定だと、見れない地域はロシア、アフリカ、中国だけになる。また、リージョン1のプレーヤーで再生するとメニュー画面は英語に、リージョン2のプレーヤーで再生すると日本語で表示された。おそらく、同じディスクを世界中で出荷するため、こんな仕様になっているのだろう。 音声は5.1ch収録されているのだが、ストレートデコードではサラウンド感はほとんどなく、LFEもあまり使われていない。センタースピーカーのみが鳴るような音作りになっている。AVアンプの設定を確認してしまったほどだ。音に関しては、5.1chのヨーロッパ選手権より、ドルビーサラウンドのサッカー・ドッグの方が優れているように感じた。 なお、ヨーロッパ選手権では映像特典として予告編に加え、「NGシーン」(約3分)、「未公開シーン」(約10分)、「キャストコメント」(約2分30秒)を収録している。キャストコメントで、「低予算」、「低予算」と何度も出てくるのが、印象に残った。
■ アイボより賢く、チワワよりも人気者? タイトルにインパクトのある映画ではあったが、両作品とも突飛な展開はあまりなく、予想通りの展開が続く。その意味では安心して観られる映画だった。ハリウッド映画の特撮を見慣れた目には、チープなつくりが新鮮に感じられるだろう。 映画のジャンル分けとしては「B級映画」というよりも、「低予算映画」になるだろうか。SPEのいうように「アイボより賢く、チワワよりも人気者」かどうかは疑わしい気もするが、「動物」、「親子のキズナ」という定番のテーマが押されているので、犬好きや、子供に見せる映画に適しているかもしれない。
□SPEのホームページ (2004年8月31日) [AV Watch編集部/furukawa@impress.co.jp]
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