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WMV HD再生に対応のHDDプレーヤー自作キット
ネットワークやUSBホストに対応した
DViCO「TViX HD M-5000U」
標準価格:オープンプライス
実売価格:4万円前後



■ 本体サイズはやや大きめで、大胆なデザイン

 今回紹介する「TViX HD M-5000U」はDViCOが以前発売していた「TViX M-3000U」の後継モデル。新たな機能としてWMVファイル、特にハイビジョン解像度のWMV HDファイルの再生に対応したのが特徴だ。

背面

 この種の動画再生機能付きHDDケースも数多く発売されているが、WMVファイルの再生に対応する製品はこれが初となる。それ以外にも前モデルには搭載されていなかった、PC上の共有フォルダにアクセスして動画ファイルの再生が行なえる「LAN機能」や外付けUSBストレージ機器を接続可能な「USB 2.0ホスト機能」を新たに備えるなど、充実した仕上がりとなっている。

 付属品は、マニュアル、リモコン、HDD用マウンタ、USBケーブル、電源ケーブル、ビデオケーブルなど。コンポーネントケーブルやDVIケーブルについては付属しないので、別途用意する必要がある。

天面に操作ボタンを備える リモコンはやや大柄だが、そのおかげでボタン間にゆとりがあるので押し間違いが少なくて済む

 外観は円筒形のすっきりしたデザインで高級感のある形状だ。上部には上下左右の移動、再生など各種操作スイッチを備えるので、リモコンがない場合でも簡単な操作は行なえる。本体前面にはVFDディスプレイも備えており、再生しているファイルの種類や経過時間などが表示される。

前面VFDの表示。ファイル名などの詳細情報は表示されないが、画面上で表示させずにこうした情報が参照できるのはうれしい

 選択したファイル情報が表示されるわけではないので、テレビ無しでの利用は難しいが、ビデオやDVDなどと同じように再生中の時間が表示されるのは便利。ただし本体サイズが少々大きめで、高さが18.5cm、直径が約13.1cmある。事前に置き場所を考えておかないと、買ってからでは苦労しそうなサイズだ。

背面

 背面端子としては、DVI、USB 2.0、コンポジット、コンポーネント、光デジタルオーディオ、独自のマルチI/O端子など。PCとの接続にはUSB 2.0を使用する。TViX HD起動中であってもUSBケーブルを接続すると自動的にPC接続モードに切り替わる。

 前モデルではPCと接続するとその都度ケースの再起動を行なっていたが、TViX HDではUSBケーブルを抜いた後は再びメニュー画面に戻るのでスムーズに利用ができる。

 背面には4cm角のファンを備える上に、メニュー上からファンの回転速度を5種類から選択できる。デフォルト設定では「普通」だが、発熱量の低いHDDを搭載する場合はファンの回転速度を下げたり、その逆にファンの回転数を上げたりといったカスタマイズが行なえるのは合理的だ。

底面からHDDを入れる造り HDDを固定するためのマウンタは2個付属。HDDの片面のみネジで留める造りになっており、着脱が容易になる上、HDDがしっかり固定される

 HDDは底面のふたを外して取り付ける。HDD取り付け用のマウンタが2個付属するので、あらかじめHDDに取り付けておく。HDDの出し入れはマウンタのおかげでスムーズに行なえるので、用途に応じてHDDを交換といったことも比較的容易に行なえる。

 ただし、IDEケーブルや電源ケーブル周辺については特に工夫がしてあるわけではないので、IDEコネクタを曲げてしまわないように注意する必要はある。


■ 出力先は手動での変更が必要

 出力先については、通常のコンポジット以外に、Sビデオやコンポーネント、DVI出力に対応する。ただし、電源起動時に自動認識するようにはなっておらず、デフォルトの設定がコンポジットになっているため、一度コンポジット出力で設定を変更してから各種ケーブルを繋ぎなおす必要がある点はやや不便。

 またDVI出力については癖があるらしく、我が家にあった2台のDVI接続の液晶ディスプレイは色々設定を変更してみたが、どちらも表示が行なえなかった。原因はわからないが、この辺りは注意が必要だ。

メインメニュー。SETUP以外はどれを選んでも同じなので、ここでUSBやネットワークなどの選択が出来るようにしてもよかった

 起動するとメインメニューが現れる。「VIDEO」、「AUDIO」、「PHOTO」、「SETUP」とあるが、SETUP以外はどれを選んでも以前のように対応するファイルのみを抽出する作りにはなっておらず、TViX HDが再生可能なファイルであれば画像ファイルも音楽ファイルも映像ファイルも全てが表示されるので、メニューが分かれている理由は不明。

 SETUPを選択することで、前述の映像出力設定や後述のネットワーク設定など各種設定が行なえる。それ以外を選択するとHDD内のファイル選択画面になる。カーソルボタンを使い、上下でファイル選択、PLAYボタンで再生を行なう。

 カーソルの右を押すとファイルサイズ順、名前順、作成日時順でフォルダ内のソートを行なってくれる。また、カーソルの左を押すと上部にあるメディアアイコンの選択が可能になるので、後述のネットワーク接続機能やUSB 2.0ホスト機能を使ってHDD以外のファイルにアクセスする場合はここで選択が行なえる。


映像や音声関係のセットアップ項目。接続するディスプレイに合わせてデジタル出力の設定や画面比、映像端子などを選択できる

その他の項目。静止画像再生時のエフェクトや内蔵ファンの速度設定、ネットワーク設定などが行なえる。ネットワーク情報の参照も可能

 再生可能なファイルだが、映像ファイルの定番であるMPEG-1、MPEG-2、DivX各種(3から最新版となる6.11まで)、XviDなどについては問題ない。静止画としては、ビットマップやJPEG、音楽ファイルについてもMP3、AAC、Ogg、PCMなどが特に問題なく再生できた。

ファイル選択画面。音楽ファイル、静止画像、映像ファイルなどそれぞれに異なるアイコンが割り当てられるので、それで判断する。ファイル名は全角で26文字、半角で53文字まで表示可能

 また、MPEG-4についても、ISO準拠のMPEG-4であれば再生可能なので、PSPやビデオiPodでの再生用に作成したMPEG-4ファイルがそのままで問題なく再生が可能だ。H.264には対応していない。また、SD-Video形式のMPEG-4(ASF)ファイルは拡張子を変更しても再生が行なえなかった。

対応していないファイルは拡張子で判断して表示されないようになっているが、コーデックの違いなどで再生できない場合は、FOURCCの表示とともに、ファイルが再生できない旨のエラーメッセージが表示

 注目のWMVファイル再生についてはハイビジョン画質の1,920×1,080ドットのWMV HDファイルが問題なく再生できた。当方のPC(HT Pentium 4 2.8GHz搭載)では再生時にコマ送りになってしまったファイルだったが、何の問題もなく映像再生できた。それ以外にもSD解像度のWMV9ファイルも再生が可能だった。ただし前バージョンのWMV7は再生できなかった。

 Xacti DMX-HD1のMPEG-4(MOV)は、拡張子を.mp4に修正すると、認識され再生可能となった。また、HDVのMPEG-2 TSファイルは拡張子.m2tのまま認識し、問題なく再生できた。

 ISOイメージファイルの再生も可能で、言語設定の変更や字幕のオン/オフも問題なく利用できた。ただし、VOBファイル再生時には副音声を持っていても言語の設定の変更はできなかった。VOBファイルの副音声については、PCの再生ソフトや一部機器では利用が可能なので、ファームウェアのアップデートなどで対応してほしいところ。

 それ以外にもogm、mkvと言った複数のオーディオトラックや字幕を取り込めるコンテナは認識せず、拡張子をAVIに変更しても再生は行なえなかった。

 再生中の操作は右カーソルは早送り(2~32倍)、左カーソルは巻き戻し(8~32倍)と一般的な使い勝手だが、カーソルの下を押すことで15秒スキップ、上を押すことで15秒戻る機能を備えている。15秒というのは一般的なCM1本の時間なので、ちょっとしたCMスキップとして重宝できるのはうれしいところ。

カーソル操作で15秒単位のスキップも行なえるので、未編集のテレビ番組の視聴などに便利。なお、画面中央のファイル情報はリモコンの「Info」ボタンを押した際に表示されるファイル情報。解像度やフレームレートも表示される



■ USBホスト/LAN機能も利用可能。ネットワーク接続はやや難あり

 続いて、ネットワーク接続でファイル再生を行なうLAN機能について試してみた。設定はIPアドレスを指定するだけで完了する。ただし、共有フォルダ名の変更も行なえないので、TViX HDで指定された共有フォルダ名をPC側で設定する必要があり、既存の共有フォルダに簡単にアクセスして使うといった用途には向かないのが残念。

 いざ、共有を完了してTViX HDからアクセスしてみると、フォルダ内は無事参照することができたのだが、日本語ファイル名のほとんどが文字化けしている。またこうした文字化けファイルを再生しようとすると、ファイルが破損している旨のエラーメッセージが出て再生が行なえなかった。

 PC上では問題なく再生できるファイルだったので、試しに英語のファイル名に修正してみたところ再生が可能になるものもあった。画像ファイルや音楽ファイルも同様で、日本語ファイル名では正常に動作せず、英語名に直す必要があった。また文字化けしたフォルダにアクセスするとそのまま再起動してしまうようなケースもあるなど、日本語環境での利用にはあまり適していない様子だ。

 なお、余談だが、再生可能だった動画ファイルの挙動を見ていると、HDD内のファイルの再生と比較して、再生を開始するまでに10秒ほどのタイムラグがあった。おそらくTViX HD内にキャッシュするのに時間がかかっていたと思われる。この辺りは完成度を高めてファームウェアのアップデートなどで対応してもらえると非常にありがたい。

カーソルの左を押すと上部のアイコン間を移動できる。共有フォルダ設定が正しく行なわれていると、共有フォルダ内が表示されるが、ファイル名やフォルダ名が文字化けしている。再生できないファイルもHDD内にコピーすれば再生できるものばかりなので、ネットワーク機能の問題と考えられる。同じファイルをコピーした場合、日本語のままでは正常に再生できなくても、英語のファイル名に直すことで再生できる場合が多々あった

 他にも、別途外付けのHDDやUSBメモリなどを接続して内部のファイルが再生可能なUSB 2.0ホスト機能も備える。外付けHDDを接続してみたが、接続後15~30秒ほど待つとメニュー上部のUSBアイコンが点灯、選択可能になるので、後は内蔵HDDやネットワーク接続時と同様に操作するだけで再生できる。こちらの再生機能は内蔵HDDと遜色なく利用が可能で、非常に使い勝手がよかった。

USB端子にストレージ機器が接続されて正常に認識すると、上部アイコン上で移動できるようになり、接続された機器内のファイルが再生可能になる。この場合の再生機能は内蔵HDDの場合と比べて遜色なく行なえた



■ 再生機能は概ね文句ナシ、HDD内蔵/低価格化に期待

 TViX HDの再生機能については、文句のないところだが、やはり一番気になるのはその価格だろう。現在販売中の秋葉原での相場を見ても大体4万円前後。この種のケースの相場が1~2万円前後と考えると、HDDを内蔵しているならともかく、ケース単体で2万円の上乗せは、機能を考えてもちょっと高すぎる。40GB程度の低容量HDDで構わないのでHDD内蔵モデルであればうなずける価格とも言えるのだが。

 また、将来性を考えると、WMV HDだけでなく、H.264コーデックにも対応してほしいと言うのは贅沢な希望だが、次バージョンに期待したいところだ。

 ただ、WMV HDファイルの再生が可能なHDDプレーヤーと考えると、現状ほとんど製品がないのもまた事実。HDVビデオカメラのユーザなどが、撮影したハイビジョン映像を活用する際などには面白い選択肢になるかもしれない。


□アスクのホームページ
http://www.ask-corp.co.jp/
□製品情報のページ
http://www.tvix.co.kr/JPN/Products/TVixHDM5000U.aspx
□関連記事
【2005年12月14日】アスク、WMV HD再生にも対応したHDDプレーヤーキット
-LAN/USBホスト/DVI装備。3.5インチHDD搭載可能
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060224/ask.htm

(2006年3月31日)

[Reported by 池 紀彦]


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AV Watch編集部

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