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第297回:「12音解析」搭載ミュージックプレーヤーソフト
〜 曲の特性からプレイリスト作成可能「VAIO MusicBox」〜



 ソニーからVAIOの秋モデルが、9月25日に発表され、順次発売されているが、このモデルにVAIO MusicBoxというユニークなアプリケーションが追加されている。SonicStage Mastering Studioのような音質追求型のソフトではなく、音楽的な解析機能を持ったMP3やWMA、AACなどのプレーヤーソフトだ。

 各曲のサビを抽出したり、音楽の特性を自動的に解析した上で、プレイリストを作成するなど、賢い機能が特徴。実際どんなことができるのか検証した。

秋モデルの「VGC-LT80DB」 VAIO MusicBox



■ 楽曲を約255分類に分解、24チャンネルに統合

 予め断っておくと、今回紹介するVAIO MusicBoxは、Windows Media PlayerやiTunes、そしてSonicStage CPなどのようなトータル的なジュークボックス型プレーヤーではない。CDリッピング機能などは持っていないし、そもそも任意の楽曲を指定して再生することもできない。音楽ファイルをMusicBox上へドラッグ&ドロップしても、はねられて再生できず、その曲を直接指定する方法すらない。どうやって使うソフトなのか困ってしまうかもしれないが、使っているうちに、そのすごさが見えてくるだろう。

 VAIO MusicBoxはジャンルとしてはプレーヤーソフトであり、MP3/WMA/AAC/ATRAC/WAVのそれぞれに対応しているが、前述の通り、直接ファイルを指定して再生はできない。では、どうするのかというと、ミュージックフォルダなど、あらかじめ指定したフォルダ内の楽曲ファイルが“どんな音楽なのか?”を自動的に解析。その結果をもとに、ジャンル分けを行ない、ジャンルごとに再生するというソフトなのだ。

 この独自技術は「12音解析(12TONE ALALYSIS)」と呼ばれるもので、もともとソニーの情報技術研究所で開発されていたという。昨年発売されたソニーのHDD搭載ミニコンポ、NETJUKEにも搭載され、VAIO TypeM専用のアプリケーション、SoundFLOWにも利用されている。


フォルダを追加指定することも可能 「12音解析(12TONE ALALYSIS)」によって自動解析

 この12音というのは、もちろんC、C#、D……という音階の12音。これを音ごとに、音のベロシティ、長さなどをベースとして、BPM、メロディ構成、コード進行、テンポ、音符の数……といった音楽的構造を解析していく技術だ。音楽が演奏される時間の経過に沿って、コード進行の繰り返しパターンや、盛り上がっている区間などの情報を解析し、音楽の特徴量というものを取り出しているという。こうした解析によって、サビ部分だけを抽出することも可能になる。

 さらに、それぞれの音の基本的な特徴から、明るい、暗い、リラックスなど感覚的なジャンルの中に振り分けていく仕組みとなっている。その基本的な特徴は約255分類35通りに分解、数値化していく。多くの情報を集めて、できるだけその音を細分化していくのだ。それを元にして、さらにムード10種類、ジャンル40種類に分けて整理した後に、24チャンネルに統合する。

 ユーザーに見えるのは、最終的な24チャンネルのみで、下表のようになっているのだが、これもクラシック、ロックといったジャンル名で表現するのではなく、フォレスト・ホール、エクストリームといった感覚的な表現になっているのが面白いところ。なかなか明確に分けられない曲もあるために、こうしているようだ。

【チャンネル一覧】
チャンネル 名称 内容 チャンネル 名称 内容
001 おまかせチャンネル 時間帯別のおすすめ曲 002 お気に入りチャンネル お気に入りリストの
曲をシャッフル
003 気まぐれチャンネル 全曲をシャッフル 004 新着チャンネル 取り込み日付が新しい曲を
シャッフル
101 ファイン・デイ 元気が良くて
楽しい曲など
102 レイニー・デイ しっとり、もの悲しい曲など
103 シフトアップ ノリの良い曲など 104 スローライフ ゆったりとした曲など
201 ソファラウンジ ジャジーな曲など 202 フォレスト・ホール クラシック調の曲など
203 ダンスフロア リズムに乗ったラップ、R&Bなど 204 エクストリーム 激しいロック曲など
205 エモーショナル バラード調の曲など 206 ノスタルジア 録音が古い感じの曲など
301 アコースティック アコースティック楽器を
使った曲など
302 エレクトロニック 電子楽器を使った曲など
303 インストウルメンタル 楽器だけの曲など 304 ボーカル ボーカルの入った曲など
401 おはようタイム 元気でさわやかな目覚め曲 402 おやすみタイム 静かで穏やかな
ベッドルーム向けの曲
403 パーティータイム アップテンポで明るい曲など 501 ウォーク お散歩、ウォーキングに
502 ラン ジョギング、エクササイズに 503 メディテーション 集中したいときに



■ サビの連続再生可能。オーディオフィルタも

 実際にMP3ファイルなどを指定フォルダに入れると、VAIO MusicBoxが起動しているか否かに関わらず、自動的に解析が始まる。PCのスペックによって解析処理時間は違うと思うが、今回試した環境では、1曲あたり10秒程度がかかっているようだ。確認したければ、現在の処理状況を「解析タスクの一覧」を表示させることで見ることができる。また、解析処理速度に関する設定も可能になっており、解析優先にするか、他の処理優先にするかなどを決めることもできる。


「解析タスクの一覧」で処理状況を表示 解析優先にするか、他の処理優先にするかを決めることも可能

 解析途中であっても、処理された曲からVAIO MusicBoxへ登録されていくので、すぐに使うことができる。使い方は至って簡単で、プルダウンメニューで、チャンネルを指定して、再生ボタンをクリックするだけ。チャンネルによってバックの色・模様も変化するが、あとは単純に再生されるだけ。この際、「サビ再生」ボタンをオンにすると、サビのみが次々と再生されていく。ちなみに、このサビの時間は5秒〜60秒で設定できるようになっている。


チャンネルを指定して、再生ボタンをクリックすると音楽がスタート サビの時間は5秒〜60秒で設定できる

 「サビ再生」ボタンの右に「オーディオフィルタ」というボタンがあるが、これはSonicStage Mastering Studio オーディオフィルタ機能のオン/オフを設定するためのボタン。VAIO MusicBox本体にはEQ設定機能などは用意されていないが、SonicStage Mastering Studio オーディオフィルタ機能を利用することで、EQでもQMSSを用いた擬似サラウンドでも自在に使いこなすことができる。

 マニアックに設定しようと思えば、いくらでも設定できるし、とりあえず使うのであれば、プリセットがいろいろ用意されているので、これらを使うと簡単だろう。SonicStage Mastering Studio オーディオフィルタ機能の画面を表示させて、オン/オフを設定すれば、どのアプリケーションでもこの機能を利用することができるのだが、VAIO MusicBoxから直接オン/オフの設定が可能になっていることで、より使いやすくなっている。


オーディオフィルタ画面



■ WMPやiTunesとプレイリストを連携可能

 チャンネル表示の下には「アーティストMIX」、「年代MIX」、「アルバムMIX」という3つのボタンがあるが、これはVAIO MusicBoxのチャンネルモードから抜け出るための機能だ。あるアーティストの曲を再生している際に「アーティストMIX」ボタンをオンにすると、その先の再生は、そのアーティストの曲がランダムにチョイスされていく。同様に「年代MIX」をオンにすれば、1980年代とか、2000年代というように、その年代の曲になる。そして「アルバムMIX」をクリックすると、その曲が収録されているアルバムが再生されていく。チャンネルで聞き流しながら、ふと気になったアーティストの曲のみに切り替えていくというのも、使い勝手としてはなかなかいい。もちろん、これらの情報はMP3やAACなどのID3タグを利用しているので、タグが設定されていることが前提となる。


再生時に「アーティストMIX」ボタンをオンにすると、その先は、同アーティストの曲のランダム再生に 年代MIX アルバムMIX

 もうひとつ、「アルバムMIX」の下のボタンをクリックすると、画面が右に広がり、お勧め商品をamazonから購入することができるようになっている。ただ、実際に使ってみると検索できない曲がかなり多く、現在のところ、あまり使えない感じではあった。


「アルバムMIX」の下のボタンをクリックすると、amazonからの購入も 検索できない曲が多かった

 なお、このVAIO MusicBoxでの12音解析の結果はメタデータで管理されるとのことで、設定によって、MP3やAACデータに直接書き加えることができるようになっている。ただし、ID3タグを書き換えるのか?、どのように情報が追加されているかは確認することはできなかった。


12音解析の結果はメタデータで管理され、MP3やAACデータに直接書き加えることも可能

 ここまでVAIO MusicBoxで再生することを前提に見てきたが、実はここで再生させるだけでなく、Windows Media PlayerやSonicStage CP、またiTunesといったソフトと連携させることも可能だ。気に入ったチャンネルがあれば、それをプレイリストとして書き出すことができる。形式は.m3uのテキストファイルなので、プレイリストが利用できるほとんどのプレーヤーソフトで読み込める。

 VAIO MusicBoxは、12音解析技術を中心に構成したアプリケーションだが、実際に使ってみると松下のSD Jukeboxに搭載されているミュージックソムリエに非常に近いものという印象だ。音楽データの解析結果の見せ方や最終的なアプリケーションの構成はかなり違うが、おそらくよく似た方法で分析を行なっているのではないだろうか……。双方のソフトに同じデータを読み込ませて解析してどう違ってくるか試してみると面白いかもしれない。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□ニュースリリース(VAIO)
http://www.vaio.sony.co.jp/Info/2007/products_0925.html
□製品情報(VAIO)
http://www.vaio.sony.co.jp/Products/
□製品情報(VAIO MusicBox)
http://www.vaio.sony.co.jp/Products/Solution/MusicBox/
□関連記事
【9月25日】ソニー、地デジ/BDドライブ搭載の「VAIO」秋モデル
−壁掛け対応でテレビにもなる「type L」など
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070925/sony.htm

(2007年10月1日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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