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第350回:小型スリムのUSB-MIDI、KORG「nanoシリーズ」
~キーボードなど3種類。ドライバ不要で駆動可能~



 先日、KORGから「nanoシリーズ」というUSB-MIDIデバイスが3種類発売された。microKONTROLなどよりもさらに小さいということでnanoという製品名になっているのだが、確かにこれまで見たことない薄くて小さい。価格も実売で5,000円~6,000円程度と手ごろなnanoシリーズ、実際にどんなものなのか使ってみた。


■ 薄型のUSB-MIDIデバイス3モデル

 つい先日、発売が始まったKORGのnanoシリーズは、MIDIキーボードの「nanoKEY」(標準価格6,195円)、パッド・コントローラの「nanoPAD」(同7,350円)、フィジカル・コントローラの「nanoKONTROL」(同7,350円)の3種類。標準色は白と青のツートンカラーだが、ブラックモデルも用意されている。

MIDIキーボードのnanoKEY パッド・コントローラのnanoPAD フィジカル・コントローラのnanoKONTROL

ブラックモデルも登場。nanoKEY(左)、nanoPAD(中央)、nanoKONTROL(右)

 外形寸法と重量は、nanoKEYが320×83×14mm(幅×奥行き×高さ)/重量220g、nanoPADが320×82×16.5mm(同)/330g、nanoKONTROLが320×82×29.5mm(同)/290gと非常にコンパクト。ノートPCをメインターゲットにした機材とのことだが、確かに横幅はデスクトップ用のキーボードよりずっと小さい。

 また普通の机でも3つ並べられる幅であるというのも驚きだ。何よりもすごいと思うのが薄さで、iPod touchと比較すればそれなりの厚みがあるが、ほとんど見たことのないサイズである。またここに設けられた端子はいずれもUSBポートが1つあるのみで、電源もUSBからの供給となる。

3機並べられるサイズ この薄さが特徴的。USBポートを1基装備する

 実は最初に驚いたのがパッケージのコンパクトさ。これでは12cmのCD-ROMも入らない大きさなので、8cmのCDでも入っているのかと思うと、それもなし。いずれも本体とUSBケーブルとマニュアル類のみ。これで大丈夫なんだろうかと思って、とりあえずPCに接続してみたところ、OS標準のドライバで動いてしまう。nanoシリーズ3機種とも同様で、WindowsでもMacでもドライバ不要で動作する。

パッケージもコンパクト ドライバ不要で動作する


■ MIDIキーボード「nanoKEY」

14mmの薄さだが、ストロークがあって、ベロシティーもつく形で入力できる

 さっそくnanoKEYを使ってソフトシンセを演奏してみたところ、そこそこ弾ける。まあ、25鍵・2オクターブ分しかないので、ちょっとした試演用といったところの用途ではある。しかし、本体が14mmの薄さではあるのに、それなりのストロークがあって、ちゃんとベロシティーもつく形で入力できる。

 さすがにミニキーサイズだから、両手で弾くにはキツイことは事実だが、シンセの音色作成用のデバイス、ステップ入力用のデバイスと考えれば悪くないだろう。また、薄いこともあって、見た感じかなりチャチそうな気がしたが、作りは結構しっかりしている。補強板が入っているようで、斜めにねじってみてもほとんどしならない強度を持っているのだ。

本体左側には6つのボタン

 本体左側には6つのボタンがあり、それぞれOCTAVE DOWN、OCTAVE UP、PITCH DOWN、PITCH UP、CC MODE、MODとなっている。

 見ればわかるとおり、OCTAVE DOWN/UPでオクターブの切り替えが可能で、上下4オクターブの切り替えが可能。PITCH DOWN/UPはボタン式なので、一気に最大レベルまで動いてしまうがピッチホイール、MODも同じく一気に動くモジュレーションホイールとなっている。そして、CC MODEはコントロール・チェンジ・モードであり、これを押すと各鍵盤がコントロールチェンジ信号を発するようになり、コントローラとして機能する。

 そのコントロールチェンジg、どの鍵盤が何に割り当てられているかというと、もちろん工場出荷値というのはあるが、ユーザーが自由に割り当てられるようになっている。それを行なうのが、「KORG KONTROL Editor」というソフト。

 前述のとおり、本体には何もソフトはバンドルされていないが、KORGサイトからダウンロード可能となっているのだ。そして、KORG KONTROL EditorはnanoKEYだけでなく、nanoPAD、nanoKONTROLのすべてに共通となっており、それぞれのデバイスのキーやパッド、ボタン、スライダーなどにコントロールチェンジやノートなどを割り当てることができるようになっている。

ソフトウェア「KORG KONTROL Editor」。KORGサイトからダウンロード可能 各デバイスのキーやパッドなどにコントロールチェンジやノートなどを割り当てることができる

 また、ベロシティーカーブの設定なども可能だ。ただし、このKORG KONTROL Editorを使うためには、OS標準のドライバではなく、KORGサイトからダウンロードするKORG USB-MIDIドライバが必要になるのが注意点ではある。

 一方、ダウンロードできるのはこれらだけでない。nanoKEYユーザーはM1 Leというソフトシンセをダウンロードできる。これはKORGが発売するソフトシンセ「KORG Legacy Collection」のDIGITAL EDITIONに含まれるM1の機能限定版。機能的にはハードウェアのM1相当のものとなっている。

nanoKEYユーザーは「M1 Le」というソフトシンセがダウンロードできる

 Windows、Macともスタンドアロンとプラグインで利用することができ、プラグイン環境としてはVST、AU、RTASに対応している。なお、M1 Leのダウンロード自体は誰でも行なえるが、10日間以上使うためにはnanoKEYにバンドルされているオーサライザキーが必要となる。


■ パッド・コントローラ「nanoPAD」

 次にnanoPADを見てみよう。nanoPADは12個のトリガー・パッドとX-Yパッドを搭載したコントローラ。かなりしっかりとしたこのパッドはベロシティーにも対応しており、これを使ってのドラムプレイも可能となる。

 ベロシティーについては、nanoKEY同様結構変化を付けられるが、パッドを思い切り叩くという感じではなく、普通に叩いた状態が最大。逆にちょっと触れる程度でも小さなベロシティーとして入力できるので、静かな部屋でも、あまり無理なく演奏できるという印象だ。

 面白いのが左側に並ぶ3つのボタン。ROLL、FLAMというボタンはそれぞれ、ロールプレイ、フラムプレイが可能となっており、X-Yパッドを使いながらパッドを叩くと実現できる。またもうひとつのHOLDはロールプレイ、フラムプレイを保持するという意味で、X-Yパッドを操作しなくてもパッドを叩けばロールプレイ、フラムプレイができるようになっている。

 また、その左にはSCENEというボタンがある。これはSCENE1~SCENE4の切り替えボタンであり、やはりKORG KONTROL Editorを用いて、4つのシーンにあらかじめコントロールチェンジやノートなどを割り当てておくことで、瞬時に切り替えることができる。

本体左側にROLL/FLAM/HOLD、SCENEというボタン KORG KONTROL Editorを用いて、コントロールチェンジやノートなどを割り当てておくことで、瞬時に切り替えることが可能

 このnanoPADもKORGサイトからのダウンロードという方法で、Windows、Macで利用できるドラムソフトが入手できる。これはToontracのEZ Drummer LITEというもの。スタンドアロンで使えるソフトで、nanoPADがあれば、即ドラムプレイが楽しめるのはうれしいところだ。

Toontracの「EZ Drummer LITE」というソフト。同じくKORGサイトからのダウンロードできる


■ フィジカル・コントローラ「nanoKONTROL」

 そして、もうひとつのnanoKONTROLは、9ノブ、9フェーダー、18スイッチ、トランスポート・ボタンを装備したフィジカル・コントローラだ。個人的にnanoシリーズ3種類の中で1つ選べといわれれば、間違いなくこれを選ぶだろう。

 nanoKEY、nanoPAD同様にnanoKONTROLも、なかなかしっかりした強度を持つとともに、滑らかな動きをするフェーダー、ノブを装備しているという印象。それぞれ9つずつあるので、1~8をトラック用、9をマスター用に利用することで、気持ちいい操作ができる。

 ただし、初心者にとってネックになるだろうと思われるのが、どうDAWやソフトシンセと連携させるかという点だ。というのも、nanoKEYは新しい機材であるだけに各ソフトウェアが直接サポートしていないし、KORG側もDAW用の設定ファイルなどを配布していないからだ。

 たとえばSONARを利用する場合、Cakewalk Generic Surfaceを設定した上で、「ラーニング」ボタンを使うなどして、ひとつひとつどの機能に割り振るか設定していく必要があるのだ。またReasonにおいても、自分でデバイス登録した後、やはりひとつひとつ割り当てていく必要がある。確かに面倒ではあるが、一度設定してしまえばよく、設定自体は簡単で単純な作業ではある。

SONARを利用する場合、ひとつひとつどの機能に割り振るか設定していく必要がある Reasonにおいても同様

ボタンを押すと赤く光るなど使い勝手がよいという

 実際に使ってみて感じたのは、予想以上にフェーダーの動きがよく、気持ちよくミキサーの操作などができること。また、各ボタンも押すと赤く光るなど、よくできている。これもnanoPADと同様にSCENEボタンがあり、4つの設定を記憶させておくことができる。そして、やはりKORG KONTROL Editorで設定可能となっているのだ。

 なお、nanoKONTROL用としてはダウンロードできるアプリケーションはない。ただし、3ラインナップすべてにAbleton liveシリーズのクーポン券が入っており、ダウンロード販売のliveをある程度安く購入できるようになっている。


■ USBハブで3台接続しても駆動可能

 これらnanoシリーズは、単体で使ってもいいし、複数を一緒に使ってもOK。またnanoKEYを3台横に並べて、それぞれオクターブ設定を変えておけば音域の広い鍵盤として使うことだって可能だ。

 また、KORGではnanoKEY、nanoPAD、nanoKONTROLをセットにしたnanoSETというものも数量限定で販売されており、こちらは標準価格が18,900円。実売価格が15,800円前後と手ごろだ。しかも、このnanoSETにはUSBハブとソフトケースもセットでついてくるという。

 実際に、そのUSBハブは目にしていないが、ACアダプタもない単純なハブとのこと。でも、ハブ経由でACアダプタなどのないnanoシリーズは本当に動くのだろうか?とちょっと疑問に思った。

USBハブ接続で3機駆動可能

 さっそく手持ちのUSBハブにnanoKEYを接続したところ、問題なく駆動する。さらに、そのUSBハブにnanoPAD、nanoKONTROLを接続したところ、見事3つともUSBバス電源供給で動く。この省電力設計はなかなかのものといえるだろう。

 個人的にはACアダプタを使うUSBハブってかさばるので好きでないが、これならとても快適。仕様を見ると、いずれの機種も消費電流は100mA以下。USBは1ポートにつき500mAの供給ができるので、これなら3つ接続しても問題はないというわけだ。

 手軽で便利なUSB-MIDIデバイスとしてnanoシリーズは人気製品となりそうだ。



□KORGのホームページ
http://www.korg.co.jp/
□製品情報
http://www.korg.co.jp/Product/Synthesizer/nano/


(2008年12月1日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。また、アサヒコムでオーディオステーションの連載。All Aboutでは、DTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。

[Text by 藤本健]


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