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DAZNがダウンロード対応へ、Jリーグ中継はカメラ最大20台。「値上げはしない」

 スポーツ専門の映像配信サービス「DAZN」は25日、事業戦略説明会を開催。ジェームズ・ラシュトンCEOが来場し、2018年に放映予定のJリーグなどのスポーツコンテンツや、新たに提供開始を予定しているダウンロード機能について説明した。また、Jリーグ中継のカメラ追加など制作体制の強化や、視聴時の“バッファリング”改善状況、今後の計画であるAR採用についても説明した。

ジェームズ・ラシュトンCEO

ダウンロード視聴やパーソナライズに対応予定

 2018年における取り組みの一つとして、放送後に試合映像をスマートフォンなどにダウンロードして後で視聴できる機能を提供予定と発表。欧州サッカーなど時差がある試合も、朝起きた後にスマートフォンにダウンロードして、通勤時などに見られるようにする。

 対象コンテンツ数や視聴期間などは個別の契約によって変わるため明らかにしていないが、「全てとは言えないが、ほとんどのコンテンツはダウンロードできる予定。通常のストリーミング/タイムシフト(1週間)よりは長くキープできるかもしれない」としている。

ダウンロード機能を提供予定

 また、'18年上期に提供する機能として、ユーザーの好きなスポーツ/リーグにすぐアクセスできるようにするなど、UIを偏光するパーソナライゼーションに対応予定。また、好きなチーム/選手のゴールなどがあった時に知らせるなど、最新情報をプッシュ通知するフォロー機能を提供予定としている。

パーソナライゼーション機能
フォロー機能/プッシュ通知

Jリーグはカメラ最大20台体制、AR観戦も視野。金曜夜にも試合実施

 さらに、DAZNが放映権を取得してから2シーズン目となるJリーグの'18年の強化も発表。J1のカメラ構成は、試合によって、従来のPREMIUM/STANDARDに加え、その中間となるSPECIALという3カテゴリで展開。STANDARDの場合は'17年シーズンから3台(ゴールネットカメラ、上手ゴール裏カメラ)を増やした12台体制、SPECIALはこれに移動式カメラ(タッチライン沿い)を加えた14台体制、PREMIUMは昨年の構成に上手ゴール裏カメラとハンディカメラの2台を加えた18台体制となる。ロッカールームなどのカメラも加えると実質20台になるという。J2は5台、J3は4台で構成。J3には、新たにスカウティング専用カメラを追加する。

'18年のJリーグ制作方針

 DAZNコンテンツ制作本部長の水野重理氏は、「一番変わったのは、ゴール、ペナルティがあった時に必ずどこかのカメラでとらえられること。ゴール決まった時にリプレイも、今までは1枚(1つのカメラからの映像)だったのが、3枚、4枚になる。カバレージが増えるとともに、選手の表情や、ファンの様子など、映像的に楽しめる部分も、カメラ台数を追加することで提供できる」とした。

 ラシュトンCEOは、将来的な検討項目の一つとして「AR」(拡張現実)を活用した観戦方法も提案。サッカーファンのために、新しいテクノロジーを積極的に導入する意向を示した。また、報道陣からの「4Kへの対応予定は?」との質問に対しては「継続した技術革新に力を入れる。権利者/事業者と連携したい」と述べた。

 前出の水野氏は、「どれだけスタジアムに近い臨場感を出すかというのが一つの決め手。Jリーグ映像が数年以内に、ヨーロッパのプレミアリーグやラ・リーガのような世界的な水準になり、それを超えて世界をリードするところを目指している」とした。

 ゲストとして、Jリーグの村井満チェアマン(日本プロサッカーリーグ理事長)が来場。'17年を振り返り「世界を知るDAZNから多くの学びを得た」として、Jリーグ自らが試合中継の制作を行なったことを紹介。DAZNのサポートを受けつつ、1,000を超える制作を通じて動画コンテンツを保有し、インターネット配信などで多くのファンに注目されたという。映像だけでなく、昨年はスタジアムへの来場者数が過去最高を更新。平均年齢も下がり、若いファンも獲得したという。村井チェアマンは「DAZNのサポートが大きかった」とコメントした。

Jリーグの村井満チェアマン

 また、'18年の試合では新しい取り組みとして、土日だけでなく金曜の夜に試合を行なう「フライデーナイトJリーグ」を開始することを発表。J1全34節のうち、金曜に試合ができる12節全てに試合を行ない、11のクラブがこれに賛同したという。

 議論の中で「土日に比べて金曜では入場者数が減る」との懸念もあったが、DAZNが配信している欧州5大リーグの実績では、平日での観戦習慣も根付いているという。週末に観戦する客層だけでなく、「週末は家族などと過ごすため、平日なら行ける」という層にもアプローチを図る。

 ラシュトンCEOはこの取り組みにより、「スタジアムだけでなく周辺も盛り上げて、金曜をJリーグファンのお祭りのような雰囲気にしていきたい」と述べた。

「フライデーナイトJリーグ」を開催

バッファリングは0.2%まで改善、機能/コンテンツ強化しても「値上げはしない」

 ラシュトンCEOは、'17年までの取り組みを振り返り、世界では1年5カ月の間に約2,000万時間に及ぶライブ中継を行なったことや、日本では8月にユーザー数が100万人を突破したことを説明。現在の具体的なユーザー数は公開していないが、欧州サッカーの主要5大リーグの配信や、ボクシングの「メイウェザーvsマクレガー」戦などの有力なコンテンツもあった結果、増加を続けているという。

'17年の主な取り組み

 日本での実績は、国内外のサッカーを中心に、米大リーグ(MLB)やNFL、F1などを含め、'17年は年間7,500試合以上をライブ中継。

これまでの1年5カ月

 対応機器は、これまでソニーやLG、東芝などのテレビ、Amazon Fire TV Stick、Chromecast、Apple TV、PS4などの端末に対応を拡大。今後の目標として「'18年末までに90%以上のデバイスに対応できるようにしたい」とした。

対応デバイス

 ラシュトンCEOは、今後の改善のカギとして「放送と同等のクオリティ」と「ユーザー体験」の点から説明した。

 '17年初めにはJリーグ中継で「画面上がバッファリング状態になり試合が視聴できない」問題が起きたことについて、2~3月当時は“リバッファリング率”が1.2%だったのに対し、日本とロンドンのチームの協力により、11~12月は0.2%まで低減したということを紹介。「目標はゼロ。これからも改善に向けて努力していく」とした。

日本のリバッファリング率

 また、HD画質で視聴している人の割合は約8割で推移。「この12カ月で研究開発を続け、HDストリーミングには、それほど多くの帯域幅は必要ないことが分かった。視聴のユーザー体験を今後も向上したい」とした。

HD画質で視聴しているユーザーの比率

 新たなユーザー体験については、前述のパーソナライゼーション機能やフォロー/プッシュ通知により、Jリーグのシーズン以外の時期にも、NFLなど他のスポーツを観戦するきっかけとなることを目指す。

 日本では、Jリーグを中心としながらも、F1などのモータースポーツ、バレーボールのVリーグ、プロレスのWWE、25日に配信スケジュールを発表した自転車ロードレースなどを引き続き配信予定。

F1は3視点の映像を配信
Vリーグなどにも注力
欧州サッカーコンテンツ
欧州サッカーの特集番組も

 今後の具体的なスポーツジャンル/リーグの追加などの拡大予定については、「数週間以内に新規コンテンツの発表を控えている」とした。

 機能/コンテンツの強化を続ける一方で、ラシュトンCEOは「料金を上げるわけではない」とし、現在の月額1,750円(ドコモ契約者向けのDAZN for docomoは月額980円)を継続していくことも明言した。

“スポーツの新しい本拠地”を目指すという

自転車ロードレースの配信予定を発表

 注力コンテンツの一つと位置付ける自転車ロードレースの配信は、1月28日の「カデルエヴァンス・グレートオーシャン・ロードレース」より開始。世界三大ツールの一つ「ジロ・デ・イタリア」をはじめ、「ロンド・ファン・フラーンデレン」、日本初登場となるステージレース「ボルタ・ア・カタルーニャ」など世界トップチームが参加するUCIワールドツアー全37レース中21レースをライブ配信する。詳細は別記事で紹介している

アンバサダー村田諒太選手はサッカー選手の動きも活用

 DAZNマーケティング・パートナーシップ バイスプレジデントの大崎貴之氏も登壇。大崎氏は日本のネット配信に精通し、かつてNetflix日本法人の副社長を務め、DAZNには5カ月前に入社したという。

DAZNマーケティング・パートナーシップ バイスプレジデントの大崎貴之氏

 大崎氏は、ユーザー拡大に向けたDAZNの取り組みについて、特にデジタルマーケティングにフォーカスし、データベースを元にしたターゲティングなどを行なってきたことを説明。メイウェザーvsマクレガー戦などでDAZNに加入した人が、試合終了後すぐ解約するのではなく、他のスポーツで利用し続けるなど、日本でもスポーツストリーミング配信が徐々に受け入れられつつあるという。

 映像だけでなく、多くの人にスポーツを身近に感じてもらうための取り組みとして、DAZNはスポーツ選手を“アンバサダー”に任命しているが、大崎氏は「単なる“広告塔”ではない。彼らの力を借りながら、スポーツの素晴らしさを伝えていく。Jリーグのファンにももっと欧州サッカーを見てほしいし、欧州のファンにもJリーグを見てほしい。DAZNがそのブリッジになれる」とした。

 プロボクサーでDAZNのアンバサダーを務める村田諒太選手がサプライズゲストとして来場。'17年10月よりアンバサダーを務める村田選手は、「昨年就任してから世界を獲った。DAZNとはこれからもいいパートナーでいたい」とコメント。村田選手はサッカーなど他のスポーツを見ることで動きを採り入れるなど、DAZNの利用にも積極的。「ボクシングだけをやっていると同じ動きになってしまう。自分の感性だけでなく、他のスポーツから気づく面は多い。試合全部を観なくても、ハイライト映像もあるので興味をひきやすい」とした。

村田諒太選手が来場

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