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「ウルトラマン」国外利用権で円谷プロが米国で勝訴。タイ実業家らと20年以上係争

 円谷プロダクションは24日、ユーエムらと係争中の「ウルトラマン」シリーズの日本国外利用権について、米カリフォルニア中央区地方裁判所で、現地時間4月18日に円谷プロの主張が全面的に認められる判決が下されたと発表した。

(c)円谷プロ

 同社が係争中の著作権関連訴訟において「相手方が主張する1976年3月4日付けの契約書が真正に作成されたものではない」という円谷プロの主張を裁判所が全面的に認めた。円谷プロが「ウルトラマン」キャラクターに基づく作品や商品を日本国外においても展開する一切の権利を有することが確認され、権利侵害に対する損害賠償も認められた。

 「ウルトラマン」シリーズの日本国外利用権については、2015年5月18日付けでユーエムが円谷プロに対し、同権利の帰属確認と損害賠償の支払いを求めて提訴。これに対し、円谷プロも同9月11日付けで、ユーエムや同社ライセンシーらに対し、権利帰属と損害賠償請求の反訴を提起し、審理が進められてきた。

 ユーエムは、1976年に円谷プロの代表者だった円谷皐氏が署名した契約書に基づいて許諾されたという「ウルトラマン」シリーズの日本を除く全世界での利用権を、タイ人実業家サンゲンチャイ・ソンポテ氏から承継したと主張。円谷プロは、この文書は偽物であるとして、ユーエムやソンポテ氏と20年以上にわたって争ってきた。

 ソンポテ氏から示された文書は、1ページのみで、原本は開示されなかった。円谷プロによれば「当社の社名や『ウルトラマン』シリーズの作品名、作品本数等、円谷皐が作成したのであれば絶対に間違えることのない基本的な事項について誤った記載が多数あった」という。また、「具体的なライセンス料の定めもなく、その他のライセンスビジネスにおいて当然規定されて然るべき事項の定めもなかった」としている。

 さらに、ソンポテ氏は1976年以降、円谷皐氏が逝去する翌年まで約20年にわたって同文書に基づく権利を行使せず、世界的なビジネス展開をしたことはなかったという。これらの点から、円谷プロは同文書を偽造であるとし、ソンポテ氏や、同氏の権利を承継したとするユーエムとの間で、これまで日本、タイ、中国の裁判所でそれぞれ争ってきた。

 日本では、円谷プロが同文書について裁判所による筆跡鑑定を求めたが、鑑定は行なわれず、真正な文書であると判断された。一方、タイでは筆跡鑑定手続の結果、円谷プロが全面的に勝訴。タイではこの文書偽造について民事だけでなく刑事事件にもなり、ソンポテ氏に対し有罪判決が下された。

 中国では、第一審は円谷プロが勝訴したが、上級審では、タイでの鑑定結果が外国での手続であること等を理由に採用されず、中国での鑑定も行なわれず敗訴となった。

 ただし、中国・日本の判決においても、限定的な利用権を昭和初期シリーズのみに認める内容であることや、勝敗に関わらず、いずれの国の判決でも、円谷プロに著作権が帰属することは認められたという。

 米国の訴訟手続では、今までの各国での訴訟では無かった「ディスカバリー」と呼ばれる手続を通じ、両当事者の持つ膨大な資料や通信履歴が顕出され、長時間かけて調査分析された。

 これまでの各国の訴訟では明らかにならなかった新たな事実や証拠が顕出され、多数の証人や筆跡鑑定の専門家証人らの証人尋問も行なわれた。ソンポテ氏は、米国訴訟の訴状の受け取りを理由なく拒否、証人としての出廷も拒否したという。判決では、契約書は円谷皐氏によって署名され捺印された真正な契約書ではなく、効力はないと判断された。

 円谷プロは、「この判決を踏まえて、今後はさらにウルトラマン作品の積極的な海外展開を進めていく」としている。