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NHKのネット同時配信に、総務省が見直し要求。費用の肥大化懸念

総務省は8日、放送と同時のネット配信などをまとめた「インターネット活用業務実施基準」に対するNHKからの変更案の認可申請について、総務省の考え方を示し、NHKへ検討を行なうよう要請した。

NHKは、インターネット活用業務実施基準の変更案(NHK案)を、10月15日に認可申請。6月に公布された改正法(令和元年法律第23号)を受け、インターネット活用業務として常時同時配信を含む新たな業務を実施することや、そのためにインターネット活用業務の実施に要する費用の上限を変更することなどが記されている。

NHK案では、業務内容の変更として、地上波放送の常時ネット同時配信や見逃し配信を可能にする「常時同時配信等の実施」や、現在の有料サービスであるNHKオンデマンドの「見逃し番組サービス」と「過去番組サービス」を統合して、利用料金はそれぞれ引き継ぐことなどが記載されている。

常時同時配信による費用については、現行の実施基準においては、インターネット活用業務全体に要する費用の上限を「受信料収入の2.5%」としている。これに対し、NHK案では、インターネット活用業務のうち常時同時配信等を含む「基本的業務」の費用上限を「受信料収入の2.5%」とし、それとは別に「放送法上の努力義務に係る取り組み」の費用上限を28億円、「ユニバーサル・サービスに係る取り組み」の費用上限を7億円、「国際インターネット活用業務への取り組み」の費用上限を35億円、「オリンピック・パラリンピック東京大会に係る取り組み」の費用上限を20億円と、個別に設定することを求めている。

総務省は、上記のNHK案に対する現時点の基本的考え方を取りまとめ、意見募集を開始。募集期間は11月9日~12月8日(必着)。この考え方を踏まえた検討を、NHKに要請した。

総務省は、「業務、受信料、ガバナンスを三位一体で改革していくことが必要」としており、受信料については「繰越金の現状や近年の事業収支の見込み等を踏まえると、全体の収支構造が妥当なものと認められるか否かについて、改めて検討することが適当であり、具体的には、既存業務の見直しや受信料額の適正な水準を含めた受信料の在り方について、引き続き検討を行なうことが必要」としている。

また、放送と同時のネット配信については「協会の目的や受信料制度の趣旨に沿って適切に実施されるよう、公正競争確保の観点から、適正な規模の下、節度をもって事業を運営する」ことを求めている。

業務の具体的な見直しについて、「子会社の業務範囲の適正化」をこれまで以上に進めることを要請。衛星放送についても「4K・8K放送の普及段階を見据えた衛星放送の在り方等、既存業務の見直しについて、公共放送の担い手として真に適当なものであるか早急に検討を進めることが必要」としている。

受信料については、「受信料の公平負担の徹底」や、「業務の合理化・効率化を進め、その利益を国民・視聴者に適切に還元していくといった取組」を求めている。加えて「平成30年度末には、依然として1,161億円の財政安定のための繰越金を有していることを踏まえ、既存業務全体の見直しを徹底的に進め、受信料額の適正な水準を含めた受信料の在り方について、引き続き検討を行なうことが必要」としている。

ネット同時配信などについては「インターネット活用業務を含む協会の業務全体を肥大化させないことが求められる。インターネット活用業務の拡大が そのまま事業支出の増加につながり、事業収支のバランスを悪化させることとならないように取り組むことが強く求められる」という。

総務省は、今回の意見募集を踏まえて検討をを行ない、電波監理審議会に諮問する予定。