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NHK、BSとラジオを各2波へ削減、BSは将来1波も。「スリムで強靭なNHK」へ

NHKは4日、2021年度~23年度までの中期経営計画案を発表。新型コロナウイルス感染症の影響や人口減少などにより長期的に受信料収入が減収していく事を踏まえ、コンテンツやサービスに経営資源を集中させるため、衛星波の右旋を現在の3波から2波へ、ラジオも現在の3波から2波へと整理・削減していく検討を進める。

新型コロナウイルスの感染拡大によって、日本と世界の社会・経済環境が一変する中、正確な情報や娯楽などを、多様な伝送路を通じて広く提供するという「NHKが公共メディアとして果たす役割が再認識された」とする。

その一方で、様々な動画配信サービスの登場などによって、近い将来テレビ視聴とインターネット利用時間の“逆転”が予想されるほか、人口・世帯数の減少やテレビ保有率の低下、公共に対する社会的な意識の変化、技術革新の加速化など、「今後も私たちの予想を上回る速さでメディア環境・視聴者行動の変化が進むことが想定される」と分析。

そうした中でNHKに必要な事は、これからの時代に対応した、新しい「NHKらしさの追求」であるとし、それを具現化していくものとして中期経営計画案を発表した。

衛星波やラジオの整理・削減

現在保有するメディアの今後については、「合理的なコストにより最適な媒体(地上波・衛星波・インターネット)で提供するという観点と、視聴者のみなさまの利便性を損なわないことを前提」としながら、整理・削減を実施。

具体的には、右旋の3波(BS1・BSP・BS4K)は、コンテンツをより効果的に届ける再設計を計画期間内に行ない、公共メディアとしての価値を維持しながら、2波(4K・2K)へ整理・削減する。具体的な実施時期などは、視聴者に対する意向調査等を踏まえて検討を進め、「2021年の本計画の議決の際に公表する」という。将来的には、4Kの普及など変化するメディア環境を見極め、1波への整理・削減に向けてさらなる検討を、在り方の検討にあたっての前提に則って進めるとしている。

また、左旋のBS8Kについては、「効率的な番組制作や設備投資の抑制を徹底し、東京オリンピック・パラリンピック後に、在り方に関する検討を進める」としている。

音声波(ラジオ)については、民間放送のAM放送からFM放送への転換の動きや、聴取者の意向、さらなるインターネットの活用などを前提に、現在の3波(R1・R2・FM)から2波(AM・FM)への整理・削減に向けた検討を行ない、計画期間内に具体案を示す予定。

新しい「NHKらしさの追求」と、事業の再構築によるコスト構造の改革を同時に推進することで、「スリムで強靭なNHK」へと変わり、「将来にわたって持続可能な業務体制のもと、視聴者・国民のみなさまに、受信料で支えられるNHKでしか創り出せない価値をしっかりと提供していく」という。

「NHKらしさ」を具現化していくための5つのキーフレーム

新しい「NHKらしさの追求」の柱となる、5つのキーフレームも発表。

  • 安全・安心を支える
  • 新時代へのチャレンジ
  • あまねく伝える
  • 社会への貢献
  • 「NHKらしさ」を実現するための人事制度改革

「安全・安心を支える」では、地震や台風などの災害、新型コロナなどの疫病、インターネットの弊害など、様々な脅威から“命と暮らしを守る”ため、専門分野に知見を持つ取材者などによる信頼できるコンテンツを、「NHKプラス」、「NHKニュース・防災アプリ」など、放送による一斉同報とデジタル技術を効果的に連動させ、よりパーソナルな形で提供する報道・サービスを強化していく。

首都直下地震や南海トラフ地震など、巨大災害にも充分に耐える放送・サービス機能を維持のため、老朽化した各地の放送会館の建て替えなども計画的に実施する。

「新時代へのチャレンジ」では、高い専門性に裏打ちされ、深く奥行きのある「NHKらしく」見応えのある大型シリーズ番組として、自然・科学分野などのコンテンツを、放送・デジタルそれぞれの特性に最適化しながら提供。

3DやAR・VR、インターネットを活用したコンテンツ配信技術なども活用し、「よりリアルな視聴体験をもたらす未来のメディア技術の研究・開発を進める」とする。

「あまねく伝える」ために、ジャンル別管理の徹底による編成や、インターネット配信を含むポートフォリオ管理の最適化などを実施。AI技術を活用した音声認識字幕システムや、リアルタイムで生成する手話CGなどの最新技術を駆使し、最先端のユニバーサル・サービスなどの研究・開発を推進していく。

「社会への貢献」に向けては、人口減少が進む地域を支えるため、地域発の情報発信の割合を大幅に増加。NHKが取材・分析したデータや知見などを活用してもらうための取り組みを進めるなど、全国ネットワークを最大限に活かすとする。

また、NHKの高品質で高画質な映像制作技術を使い、日本各地に残る伝統的な文化や芸術、歴史遺産を記録して未来に伝えるなど、NHKの持つ知見・技術を広く提供するという。

「NHKらしさ」を実現するための人事制度改革としては、職員の創造性を最大化するため、採用から退職まで、人事制度を抜本的に改革。各現場も、マネジメント層も、プロフェッショナルとしての能力評価・登用を徹底し、人材育成・開発を強化する。