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マランツ、薄型かつ9万円で8K/60p、4K/120pにも対応したAVアンプ「NR1711」

薄型AVアンプシリーズの新モデル「NR1711」

マランツは、薄型AVアンプシリーズの新モデル「NR1711」を9月中旬に発売する。価格は9万円。カラーはブラックとシルバーゴールド。

高さ105mmの薄型筐体が特徴。スリムデザインはそのままに、新たに8K/60pや、4K/120p映像、MPEG-4 AAC、HDR10+などの最新映像・音声フォーマットに対応。音質も向上したモデルとなる。

「NR1711」

HDMIは6入力、1出力搭載。入力の内、1系統(HDMI 6)、出力1系統は、8K/60pおよび4K/120p映像信号のパススルーに対応。また6入力/1出力すべてが、最新の映像コンテンツに対する著作権保護技術「HDCP 2.3」に対応。衛星放送やインターネットを通して配信される4K/8K Ultra HDコンテンツの高精細映像をハイクオリティなサウンドとともに楽しめるという。

さらに、入力されたHDMI映像信号を、8K/60pや4K/60pなどにアップスケーリングしてHDMI出力することも可能。ただし、フレームレート変換には対応せず、アナログ映像入力信号はHDMI信号には変換されない。

HDRのパススルーにも対応。HDR10、Dolby Vision、HLGに加え、新たにHDR10+、Dynamic HDRにも対応、最新のパッケージメディア、ストリーミング、放送などソースを問わず表現力豊かなHDR映像が楽しめる。

従来のARC(Audio Return Channel)に加え、「eARC(Enhanced ARC)」にも対応。eARCでは、テレビからAVアンプへの5.1chや7.1chのリニアPCM信号や、Dolby TrueHD/DTS-HD Master Audioなどのロスレスオーディオ、Dolby Atmos/DTS:Xなどのオブジェクトオーディオの伝送が可能。HDMI CECにも対応する。

HDMI 2.1の新機能「ALLM(Auto Low Latency Mode)」、「VRR(Variable Refresh Rate)」、「QFT(Quick Frame Transport)」、「QMS(Quick Media Switching)」に対応。ALLMはコンテンツの種類に応じて画質とレイテンシーのどちらを優先するかを自動で切り替える機能。例えばゲームやVRコンテンツを再生する際には、レイテンシーが最小になるよう自動で設定され、操作に対する画面表示の遅れを最小化。その際AVアンプは、画質調整やi/pスケーラー、オートリップシンクなど、レイテンシーに影響する機能を停止する。

VRRは、PCやゲーム機などの映像ソース機器とディスプレイを同期させ、任意のタイミングでリフレッシュレートを切り替え。これにより画面割れ(ティアリング)やカクつきを抑えられる。QFTは、ディスプレイ側のフレームレートは変更せずに、映像ソース機器からの伝送速度を上げることでレイテンシーを低減。QMSは、ディスプレイとソース機器のリンクを維持したままフレームレートや解像度を切り替える。これにより、画面のブラックアウトや表示の乱れの問題を解決する。

オブジェクトオーディオのDolby Atmos、DTS:Xにも対応。5.1.2ch構成、5通りのスピーカー配置に対応する。フロントハイト、トップフロント、トップミドル、フロントドルビーイネーブルド、リアドルビーイネーブルドのいずれかをハイトスピーカーとして使用でき、ドルビーイネーブルドスピーカーについては、Audyssey MultEQによる自動補正に加え、天井までの高さを設定することでさらに補正の精度高めることができる。

ハイトスピーカー信号を含まない従来のチャンネルベースのコンテンツも、Dolby SurroundやNeural:Xで3Dサウンドにアップミックスすることが可能。

さらに、新4K/8K衛星放送で使用されている音声フォーマットMPEG-4 AAC(ステレオ、5.1ch)に対応。4Kや8Kの超高解像度な映像を臨場感豊かなサラウンドサウンドと共に楽しめる。

バーチャルサラウンド機能として、「Dolby Atmos Height Virtualizer」と「DTS Virtual:X」に対応。ハイトスピーカーやサラウンドスピーカーを設置していないステレオ、5.1ch、7.1chなどの環境でも、高さ方向を含むサラウンドをバーチャルで再現できる。

薄型筐体だが、実用最大出力100W(6Ω、1kHz、THD10%、1ch駆動)のフルディスクリート・パワーアンプを搭載。サラウンドバックを含む全7チャンネルを同一構成、同一クオリティとしている。ディスクリート構成とする事で、回路設計およびパーツ選定の自由度を高め、Hi-Fiアンプと同様に徹底した音質チューニングが行なっている。接続するスピーカーのインピーダンスは4~16Ωに対応。サラウンドバックおよびハイトスピーカーを使用しない場合には、フロントスピーカーをバイアンプ接続したり、2組のフロントスピーカーを切り替えて使用することも可能。

パワーアンプ回路に電源を供給するブロックコンデンサーには、NR1711専用に新規開発したカスタムコンデンサー(6,800μF×2)を採用。25Aの大電流容量に対応する整流ダイオードを用いることで、高速かつ安定した電源供給を実現。電源部の強化と同時にパワーアンプなどの周辺回路の細部に至るまで徹底した音質チューニングを行なっている。

パワーアンプ回路に電源を供給するブロックコンデンサー

さらに、ユーザーの使用頻度が高いと思われるHDMI入力およびネットワークオーディオの音質向上をテーマに、コンデンサーや抵抗など数多くのパーツの品種や定数の見直し、基板上のパターンも強化。クロックモジュールの振動対策など、これまで以上に時間をかけてチューニングが行なわれた。

信号処理用に、32bitフローティングポイントQuad Core DSPを搭載。DACには、旭化成エレクトロニクスの「AK4458VN」を採用。ディテールの表現力向上のために、出力抵抗に高精度な薄膜型金属皮膜抵抗を使用している。

DSPやネットワーク、USBなどのデジタル回路への電源供給には専用のトランスを使用し、アナログ回路との相互干渉を排除。デジタル電源回路の動作周波数を通常の約3倍に高速化してスイッチングノイズを再生音に影響の及ばない可聴帯域外へシフトさせている。

シールドにより回路間のノイズの飛び込みを抑え、電源ラインに流入するノイズはデカップリングコンデンサーで除去。コンデンサーの品種や定数は、サウンドマネージャーによる試聴を繰り返しNR1711に合わせて最適なものを選定した。

基板やシャーシを固定するビスやワッシャーの種類を使用する箇所に応じて変更し、グラウンドインピーダンスを最適化。「これまでに積み重ねてきた様々なノウハウを用いて音質をまとめ上げている」という。

アナログオーディオ回路には入力セレクター、ボリューム、出力セレクターそれぞれの機能に特化した高性能カスタムデバイスを投入。信号経路を最短化に加え、不要な信号経路の引き回しを排除することで、透明感が高く情報量の豊かなサウンドになったという。

2.2chプリアウトを装備。外部パワーアンプの追加によるフロントスピーカーの音質向上や、パワーアンプダイレクト入力のあるプリメインアンプ(PM8006など)との組み合わせによる、Hi-Fiオーディオシステムとのフロントスピーカーの共有が可能。また広い部屋で使用する場合には、サブウーファーを2台接続してより厚みのある低音を再生することもできる。

専用マイクによるオートセットアップ機能「Audyssey MultEQ」を搭載。「Audyssey MultEQ Editor」アプリを用いて、AVアンプ単体では設定できない詳細な調整もできる。

ワイヤレス・オーディオシステム「HEOS」のテクノロジーによるネットワークオーディオ機能も搭載。音楽ストリーミングサービスやインターネットラジオ、LAN内のNASなどに保存した音楽ファイルが再生可能。Alexa搭載デバイスからの音声コントロールにも対応する。

AirPlay 2とBluetooth受信にも対応。スマホやタブレットと手軽に連携できる。さらに、Bluetooth送信機能も搭載。AVアンプで再生中の音声を、Bluetoothヘッドフォンなどにワイヤレスで伝送、深夜の映画鑑賞などに活用できる。

MMカートリッジ対応のPhono入力も装備。ワイドFM対応FM/AMチューナーも搭載する。

HDMI以外の入力端子は、コンポーネント×2、コンポジット×3、アナログ音声×3、Phono×1、光デジタル×1、同軸デジタル×1を搭載。HDMI以外の出力は、コンポーネント×1、コンポジット×1、2.2chプリアウト、ゾーンプリアウト、ヘッドフォン出力を備える。

外形寸法はアンテナを寝かせた状態で440×378×105mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は8.3kg。消費電力は250W。

前モデルと音を聴き比べてみる

8K/60pや4K/60pへの対応など、機能面の大幅な進化が注目だが、音質も前モデル「NR1710」と比べ、確実にグレードアップしている。

コストの面で、高音質パーツを大量投入する事は難しいが、細かなパーツの変更など、工夫の積み重ねで、さらに音に磨きをかけたという。

実際にNR1710とNR1711を聴き比べてみると、音像の輪郭や、高域の滑らかさ、人の声やアコースティックな楽器の響きなどに、大きな違いがある。NR1710も十分音の良いアンプではあるが、音が少し荒っぽく聴こえる部分が、NR1711では改善。高域もよりなめらかに、ボーカルの表現もより深くなり、乾いた感じが無くなった。

アナログ接続の音だけでなく、デジタル接続でのサウンドも進化した。デジタル入力特有のキツさが改善されており、アナログに近いなめらかで、まとまりの良いサウンドになっている。