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PS5でHDMI2.1普及に期待。“4K120A”って何? HDMI最新動向

HDMIの最新バージョン2.1をサポートする「PlayStation 5」

HDMIライセンシング/フォーラムは、技術見本市「CES 2021」の開催を前に、HDMI技術と関連市場の最新状況に関するオンラインミーティングを実施。HDMIバージョンの規格策定に携わるHDMIフォーラムのCEO/プレジデント デビット・グレン氏が、HDMI2.1の最新状況説明とインタビューに答えた。

HDMI(High Definition Multimedia Interface)は、映像・音声・データ信号を1本のケーブルで伝送できるデジタルインターフェース規格。

コンシューマー向けのAV機器やPC、モバイル端末、自動車、業務用機器ほか、現在では医療や軍事、航空、セキュリティなどの分野にも展開。HDMI採用機器の出荷数は、2002年の市場投入以来すでに100億台を超えており、テレビに関しては2020年出荷の全てにHDMIが搭載される高いシェアを誇る。

グレン氏は「HDMI搭載製品は、'20年に続いて'21年も堅調に推移する」とコメント。在宅勤務や在宅学習といった遠隔ニーズがしばらく続くことや、HDMI2.1に対応した機器やコンテンツの本格的な登場が、関連機器の売上を大きく伸張させると予測する。

伸張の大きな牽引役と期待しているのが、'20年11月に発売され、4K/120pなどのHDMI2.1をサポートする新世代ゲーム機「PlayStation 5」「Xbox Series X/S」の存在。

HDMIフォーラムでは、新たに策定したバージョン2.1において、4K/120pや8K/60pなどの高解像・ハイフレームレート信号のほか、HDR10+やDolby Vision、欧州、中国の各種ダイナミックHDR規格、高ビット・多チャンネルオーディオといったAV・産業向けの新機能を大幅に追加。

さらに、快適・高品位なゲーム体験をも実現すべく「ALLM」(テレビなどが自動的に低遅延なモードに切り替わる)、「VRR」(ゲームで変動するリフレッシュレートに合わせて表示)、「QFT」(各フレームの転送速度を上げる)といった、ゲーム向けの機能を拡張した。グレン氏は「HDMI2.1をサポートした新しいゲームコンソールと対応機器の組み合わせにより、今までにない先進的なゲーム体験が可能になる」とアピールする。

HDMI2.1で追加された機能
ゲーム用として「ALLM」「VRR」「QFT」が用意された

現在、HDMI2.1対応製品はテレビやゲーム機、AMDやNVIDIAのグラフィックボードなど、一部機器に限られているが「2021年には、デスクトップPCやノートPC、ドッキングステーション、STBなど、様々な機器でHDMI2.1をサポートする製品が市場に投入される」という。

HDMI2.1対応機器の市場投入と合わせ、48Gbps伝送を実現する「ウルトラハイスピードHDMIケーブル」の試験・認証プログラムも加速。

「プログラム開始後、数カ月で既に100を超える製品を認証しており、直近では、5m以上の長距離伝送を可能にするアクティブ型のウルトラハイスピードHDMIケーブルも初めて認証した。48Gbps伝送を謳うには、ケーブルの長さ毎・モデル毎に試験と認定を行なう必要があり、テストをパスした場合は、製品、もしくはパッケージに認証ラベルが貼られる。製品が市場に投入された後も、HDMIライセンシングが実際に購入し、抜き打ちで検査するなど永年で検証を続けている」という。

48Gbps伝送に対応し、認証プログラムでパスしたHDMIケーブルのみ“ウルトラハイスピードHDMIケーブル”と謳うことができるという

HDMIライセンシングがライセンス供与していない偽造品対策も実施する。

現在1,700社を超える企業がライセンス供与を受け、HDMI規格に沿った製品を市場に投入しているが「まれに許諾を受けないまま開発・販売する製品も流通している」とのこと。「引き続き、法執行機関や輸出入に関わる当局など、様々なチャネルを通じ、工場摘発や製品押収、偽造製品の登録削除などを講じる」としている。

ウルトラハイスピード認証にアクティブ追加。4K120対応に「A」「B」表記を

HDMIフォーラムでCEO/プレジデントを務めるデビット・グレン氏に話を聞いた。

ーーHDMI機器の“偽造品”とは、主にどのようなものを指しているのか。

グレン氏(以下敬称略):ライセンスの許諾を受けていない、ありとあらゆる製品が対象だ。ソース機器やディスプレイ、ときにケーブルといった製品も含まれる。HDMIライセンシングにおける偽造品対策は数年前から行なってきており、偽造品が市場で最低限の数に抑え込めるように対策を講じている。HDMIケーブルのパッケージに添付されている認証ラベルにはホログラムを組み込んでおり、これも偽造品対策の一環となる。

ーーウルトラハイスピードHDMIケーブルの認証プログラムには、パッシブ型の試験しかないと聞いていたが、アクティブ型も認証テストが始まったのか。

グレン:光ファイバー導体を使用したアクティブ型の認証テストも始まった。アクティブ型で初めてウルトラハイスピードHDMIケーブル認証を受けた、というプレスリリースが該当メーカーから'20年12月に発表されている。ただ、その製品が日本で発売しているか否かは当方では把握していない。

ーー昨年PS5、Xbox Series XなどのHDMI2.1対応機が発売されたが、一部のゲーム機とAVアンプやテレビなどとを組み合わせ、4K120p信号を伝送すると「表示できない」などの事象が発生した。

グレン:そうした問題が一部で発生していることは、我々も認識している。特定のゲーム機とディスプレイなどの間にAVアンプを接続し、一部の信号を伝送する場合に発生する、と。ゲーム機から直にディスプレイに接続した場合はそうした問題が起きないため、現在関係するメーカーが対処に当たっていると聞く。

ただ実際のところ、具体的にどこに問題があるのかということがまだ確実に見極めきれていないというのが現状だ。新しいHDMI規格が出ると、今回と似たような事例が起きたことは過去にも存在した。我々がやることとしては、関連する機器をラボに持ち込み、どこに問題があるのか、どのデバイスがHDMI規格を満たしていないのか、といったことを調べる作業をし、問題が特定したらアップデート等の問題解決を促すようにすることだ。

一つ強調したいのは、HDMI2.1対応機器の全てで問題が発生しているわけではないということ。ゲーム機もAVアンプも特定の信号以外では、何ら問題は発生していない。通常通りに使用することができる。あくまで特定の信号、特定のケースでのみ上手くいかないのであって、大半の機器・ケースがHDMI2.1対応機器として問題なく動作している。もちろん、だからといって今回の問題を無視するわけではない。我々も引き続き注視していく。

ーーHDMI2.1になったことで伝送できる信号や機能が増えたが、製品がどの信号・どの機能に対応しているか、きちんとアナウンスできていない製品が多い。HDMIフォーラムやHDMIライセンシングで、何か対策は考えているか。

グレン:メーカーがHDMIの機能を製品に謳うことを想定し、我々は機能ごとに決められた名称をドキュメントなどに使うようアドバイスしている。名称とは「eARC」「ALLM」「VRR」といったものだ。

またHDMI2.1の新機能はあくまで“拡張”であってマストではない。HDMI2.1を実装する場合でも、必ずこの機能はマストで入れなければいけないという義務化もない。ただもし、特定の機能を実装する場合は、他のデバイスと問題なく運用できる仕様にすることはもちろん、そしてコンシューマーに誤解を与えないように機能を正しく明記するなど、要件を細かく規定し、順守するように促している。

HDMI Forum CEO & President David Glen

ーーHDMI2.1では、映像データを圧縮伝送(DSC)できるようになった。“4K/120p対応”と謳うHDMI2.1対応機器であっても、圧縮された4K/120p信号は表示できない、という場合も将来出てくるのか。

グレン:HDMI2.1では規格上、4K120や8K60などの信号を圧縮・非圧縮で伝送できる。例えば、非圧縮で4K伝送する場合は4:2:0 10bitで伝送できるようにすることをマンダトリーとしている。一方圧縮の場合は、4:4:4 10bitが必須要件となっている。このようにフォーマットを規定することで、ソースとシンクが4K120できちんと送信・受信できるようにしている。

ただ、非圧縮の4K120信号と、圧縮の4K120信号は全く異なるものだ。なので本来であれば、非圧縮の4K120信号をサポートする場合は「4K120A」、圧縮の4K120信号をサポートする場合は「4K120B」、圧縮・非圧縮の両方をサポートする場合はユニバーサルを意味する「4K120AB」と表記する必要がある。同様に8Kも、8K60Aや8K60Bなどという表記が必要だ。

【お詫びと訂正】記事初出時、“非圧縮の4K120信号をサポートする場合は「4K120B」”と記載しておりましたが、正しくは“圧縮の4K120信号をサポートする場合は「4K120B」”です。お詫びして訂正します。(1月7日11時)

ーー「4K/120pA」などではなく、「4K120A」なのか。

グレン:4K120Aだ。120のインターレースは存在しないので、我々はプログレッシブを意味するpは付けていない。一般的な話で言えば、いま市場に出ているのは、ほぼほぼ非圧縮のみをサポートする4K120Aの製品だ。圧縮にも対応したモデルは、現状1~2製品と記憶している。

HDMIライセンシングとしては、メーカーに対して、4K120対応を謳う場合は製品のドキュメントのどこかに「4K120A」などの表記を明記するよう、引き続き働きかけていく。是非貴誌でも、テレビメーカーに4K120A、4K120Bなどを仕様に明記するよう、訴えて欲しい。

ーー最後に、HDMIフォーラムの今年の活動や、今後の目標を教えて欲しい。

グレン:HDMI2.1規格は決まったが、実際の対応機器が出てくるのはこれから。まずは今年本格的に出てくるであろう様々なHDMI2.1対応機器を、心から楽しみに待ちたい。

先ほど圧縮の話が出たが、HDMI2.1は当分先のフォーマットまでカバーできることを見据えた規格だ。例えば将来、デバイスや機器が登場すれば、コンシューマーで8K120伝送も不可能では無い。そのため近々に、2.1を大幅にバージョンアップすることはないと考えている。

HDMIフォーラム、そしてHDMIライセンシングとしては、しばらくはHDMI2.1規格や関連製品をしっかり整備、普及させることが第一だ。フォーラムでは、それと並行してHDMI2.1のマイナーアップデートも進めてはいるが、正式にアナウンスできるまでには何年か時間を要すると思っている。