TAD、SACD/CD対応のプレーヤー第1弾「TAD-D600」

-252万円。超高C/Nマスタークロック。電源別筐体


TAD-D600

2010年1月下旬発売

標準価格:262万5,000円

 株式会社テクニカル オーディオ デバイセズ ラボラトリーズ(TAD)は、同社初のディスクプレーヤーであり、SACD/CDプレーヤーのフラッグシップモデルと位置付けられる「TAD-D600」を2010年1月下旬に発売する。価格は262万5,000円。

 11月13日より秋葉原で開幕した、オーディオ・ビジュアル関連の総合展示会「オーディオ&ホームシアター展 in AKIBA 2009」(音展)の中で発表会が開催された。

下部にある黒い筐体が、電源部
C/Nを表したグラフ
 「正確なD/A変換の実現」、「振動制御技術」、「高い応答性とローノイズの追求」、「オリジナル高品位メカ・パーツ」などを開発目標としたプレーヤー。SACDとCDの2chに対応し、SACDのマルチチャンネル出力には非対応。

 最大の特徴は、高速デジタル通信基地局などに使われている産業用高性能クロックの技術手法をベースに、超高C/N(搬送波対雑音比:Carrier to Noise ratio)のマスタークロックUPCG(Ultra High Precision Crystal Generator)を開発した事。

 C/Nとは、発振器の優劣を客観的に表すための表現方法で、周波数領域におけるキャリアのエネルギーと、その近傍に撒き散らされる雑音エネルギーとの比を表したもの。TAD-D600のために開発されたUPCGは、発振中心周波数近傍でのジッタ量の低減が音質向上に繋がることに着目して作られており、一般的なCDプレーヤーが中心周波数から1Hz離れた場所のノイズレベルが-50dB程度なところ、TAD-D600では、-100dBという特性を実現。TADではこれにより、「ディスクの信号を全て取り出せる、正確無比な発振器になった」としている。

 DACはバーブラウン製の24bit/192kHz対応のものを、並列接続で使用。S/N比、リニアリティ、ダイナミックレンジ、歪率などの性能を向上させている。

 出力はバランス(XLR)と、アンバランス(RCA)を各1系統、デジタル出力(XLR)も1系統備える。入力は同軸デジタル、デジタルバランス(XLR)を各1系統用意。DACのみの使用も可能で、サンプリングレートコンバータを備えることで、マスタークロックでリクロックした上でのD/A変換が可能。サンプリング周波数は32kHz~192kHzまで対応する。

 デジタル出力は、CD再生時に44.1kHzだけでなく、88.2kHzでも出力可能。SACD再生時も44.1kHzにはなるが、デジタル出力が行なえる。その際もマスタークロックが使われる。S/Nは115dB。

 筐体と別にある、黒いユニットは独立した電源部。独立構成とすることで、電源トランスの不要振動や、漏洩磁束が、プレーヤー本体のメカやオーディオ回路に影響するのを防いでいる。さらに、スペースの制約も無くなるため、強力な大型トロイダルトランスを搭載する事も可能になった。


右にある黒い筐体が電源部プレーヤー本体の背面端子部電源部の背面

 D600では、400VAというパワーアンプ並の強力なトロイダルトランスを搭載。「ディスクのいかなる信号にも追従する応答性能と、高い次元でのローノイズ化を実現した」という。全体の消費電力は32W。

 ドライブメカはTADオリジナルのものを使用。外部振動がサーボ系へ与える影響を抑えているほか、金属軸受けを採用した高精度のローディング機構も採用。トレイはアルミ削り出しに黒色シート素材を配置し、振動やレーザー光の乱反射を防いでいる。

 ディスプレイには、スタティック点灯方式のLEDを使用。操作ボタンも発振器を使わない感圧式のものを採用し、高周波ノイズが音質に与える影響を排除した。

トレイを出したところ。ドライブメカはオリジナルのものを使っている上からみたところ。前面パネルに角度がついていることがわかる左右にあるのが、10月に発売されたモノラルパワーアンプ「TAD-M600」
TAD-M600のフロントパネルにある、三角のとがったデザインパーツ。このデザインがプレーヤーのフロントパネルにも取り入れられているディスプレイにはLEDを使用。高周波ノイズを発生させず、寿命も長いインシュレータは3点支持のスパイク構造

付属のリモコンはシンプルだが、質感は高い
 シャーシには、鋳造アルミニウムと6mm厚銅メッキ鋼板をサンドイッチにしたものを採用。さらに、重量のあるパーツを下部に配置することで低重心構造としている。インシュレータは3点支持のスパイク構造を採用した。電源部の筐体はアルミとなっている。

 外形寸法と重量は、プレーヤー本体が450×440×185mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は26.5kg。電源部が220×430×185mm(同)で、13kg。



 

■ 正確かつ自然な音

試聴の様子
 試聴デモはTADのラインナップで行なわれ、 モノラルパワーアンプ「TAD-M600」(262万5,000円)、フラッグシップスピーカーの「TAD Reference One」(1本315万円)が接続された。

 いずれも高い能力を持った機器だが、「D600」は、同システムのソースとして非常にS/Nの良い、自然な再生音を聴かせる。チック・コリアと上原ひろみのピアノデュオは、広い音場の上に、2台のピアノが左右にしっかりと定位。アタックの強さを持ちつつ、余韻が背後へゆったりと広がる細かい描写が印象的だ。

 高精度のクロックと、制振へのこだわりを追求することで、雑味の無い極めてクリアな再生音を実現しており、回転系の無いメモリプレーヤーが注目を集める昨今、気になるハイエンドディスクプレーヤーの登場と言えそうだ。



■ 「ディスクプレーヤー投入、最後のタイミング」

宮川務社長
 宮川務社長はプレーヤーへの参入について、「CDから次世代メディアへの、メディアチェンジを迎えている。“このタイミングで初のプレーヤーを出すのか?”と思われるかもしれないが、我々は逆に最後のタイミングだと考えている」と語る。

 その理由は、プレーヤーを構成する「ピックアップ、回転系、デバイス、全ての領域で成熟を迎えているから。ディスクに込められた音楽の持つ力、優しさ、力強さを引き出したいと思い、開発した」と、新製品を紹介した。

 なお、TADは10月にモノラルパワーアンプ「TAD-M600」(262万5,000円)を投入。フラッグシップスピーカーの「TAD Reference One」(1本315万円)、コンパクトスピーカー「Compact Reference(TAD-CR1)」(1本194万2,500円)などをラインナップし、システム構成としては自社のプリアンプに期待が高まる。既に開発の検討段階に入っており、「必要な機能など、仕様を練り上げているところ」だという。


TADの製品はパイオニアブースで紹介されている。ブース内ではパイオニアのAV新製品、現行製品も展示されている


(2009年 11月 13日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]