mmbi、“地アナ終了後”の携帯向け放送をAndroidでデモ

-「次世代UI」などを提案。'12年4月開始を目指す


Android端末を使った「次世代UI」のデモ

3月8日発表


 アナログテレビ放送が終了する2011年以降に空くVHF周波数帯のうち、HIGH帯(10~12ch)で開始される新たな放送サービスへの採用が提案されている「ISDB-Tmm」方式。この方式を推進しているマルチメディア放送(mmbi)は8日、携帯端末向けの放送サービス実用化に向けたデモをマスコミ向けに行なった。

ファイルキャスティングとストリーミングの2つのサービス提供を目指す

 mmbiは、フジテレビやNTTドコモ、スカパーJSAT、ニッポン放送、伊藤忠商事が共同で'08年に設立。ワンセグの方式であるISDB-Tを発展させた「ISDB-Tmm」方式を推進し、2012年4月のサービス開始を目指して実証実験を行なっている。このVHF HIGH帯には、クアルコムが推進する「MediaFLO」も参入を表明しており、最終決定は総務省によって下されるが、mmbiではISDB-Tmm方式の進捗状況を披露することで、採用に向けてアピールした。

 なお、VHF LOW帯(1~3ch)の放送サービスについては、社団法人デジタルラジオ推進協会(DRP)とVL-Pが「ISDB-Tsb」方式を推進している。

 mmbiのサービスとしては、従来のテレビと同様のストリーミング視聴のほか、動画や音楽、電子コミックといったコンテンツを端末に自動で蓄積させる蓄積型コンテンツ視聴の「ファイルキャスティングサービス」を計画。例えばオリンピックなど大型イベントがある時期にはストリーミングの割合を増やすなど、利用帯域の割当てを柔軟に行なうことを可能としている。

 ファイルキャスティングサービスでは、ユーザーの視聴頻度やレーティングなどの情報を元に、意識することなくコンテンツが自動蓄積されることを想定。1週間に300程度のコンテンツが配信されるイメージで、属性にあったコンテンツが端末のストレージに保存される。ファイルが多くなると古いものから順次削除されるほか、視聴頻度が低いものについてはダウンロードしなくなるなど、長く使用するほどユーザーにあったサービスになっていくことを目指している。

帯域の柔軟な利用でコンテンツ配信を効率化蓄積型サービスではレコメンド機能を活用して、ユーザーに合ったコンテンツを自動で取得できるようにするトップ画面のイメージ。写真ではレーサーの佐藤琢磨氏が登場しているが、ユーザーの属性に合わせて様々な人物が出るようにするという

 これまでも実用化に向けた様々なデモを行なっているが、今回は「次世代ユーザーインターフェイス」を紹介。NTTドコモのAndroid端末「HT-03A」を使って、独自の操作画面を提案している。画面をタッチしながら本体を傾けると項目の送り/戻しや映像の早送り/巻戻しが行なえるほか、本体の向きを少しずつ回転させることで、動画のジャンルを選ぶことが可能。また、動画をレーティング(評価)する際、本体を左右に傾けることで星の数が増減できるといった、センサーを活用したユニークな操作をデモ。従来のタッチ操作だけではない方法を提示した。

 また、携帯端末をシェイクすると、家庭のテレビに映像を出力するといった機器間の連携機能も紹介。今回は無線LANを使ってPC経由で携帯端末内の動画をテレビで再生するという形をとっていたが、将来的には携帯から直接テレビに出力するといった方法も、機器メーカーとの連携で実現したいとしている。

動画の再生画面例蓄積されたコンテンツから再生したいものを選択する場合、画面をタッチしながら上に傾けると、サムネイルが下にスクロールして、上の項目が選べるようになる横画面時。タッチして横に傾けることで画面がスクロール
タッチしながら本体をシェイクすると、テレビ側に映像出力する。もう一度振ると携帯側に戻る

 そのほか、会場では10ch~12ch(207.5MHz~222MHz)の33セグメントを使うOFDM変調機の試作モデルを披露。13セグ番組を2ch分ストリーミング放送し、2つの携帯端末で受信するというデモを行なった。ISDB-Tmmを含む新方式では最大720×480ドット/30fpsとワンセグに比べ高画質化が可能。会場のデモでは、13セグのTSをOFDM変調試作機に入力した後、アップコンバータ経由で13セグ対応携帯端末(試作機)にストリーミング配信(デモ時の番組は2~3セグメント分を使用)。実用化に向けて技術的な準備が進んでいることをアピールした。

33セグメントを使った変調機の試作デモ概要2台の携帯端末にストリーミング配信左が初披露されたOFDM変調機の試作機。右はCEATECでも展示された携帯電話型受信機の試作モデル


■ 通信系など他サービスとの連携も

mmbiの石川昌行社長mmbiの目指すサービスイメージ

 石川昌行社長は、ファイルキャスティング方式について「ユーザーが意識することなく、端末にコンテンツを落とす形にすることで、今まで(ワンセグなどでは)放送エリア以外では見られなかったが、できるだけいろんな場所、時間で観られるようにしたい」とした。また、映像の品質については「まずは少なくともワンセグより高品質でスムーズなものを目指す」とした。

 さらに、「放送波でたくさんのコンテンツを出せるが、それぞの人に合ったコンテンツを端末が選んで落としていくことで、ユーザーが自分で選ばなくても欲しい情報が入っていることを目指す。同じ人でもウィークデーとウィークエンドは生活パターンが違うので、それも見据えた上でコンテンツを送るということをきめ細かにやっていきたい」とした。

 将来的に目指す姿として「新しい放送の姿をクリエイトしたい。あたらしい“気づき”、“つながり”、“スタイル”を提案し、『まさにこれが欲しかった』といわれるサービスを提供したい。また、我々のサービスだけでクローズせず、これをゲートウェイとして通信系など他とつながっていくようにしていきたい」と述べた。



(2010年 3月 8日)

[AV Watch編集部 中林暁]