ドルビー、映画制作向けリファレンス液晶モニタを披露

-来春国内発売へ。RGB LED制御で忠実な階調表現


PRM-4200

 Dolby Japanは25日、4月にドルビーラボラトリーズが米国で発表した業務用の42型フルHD液晶モニタ「PRM-4200」を報道関係者向けに披露した。

 「PRM-4200」は、映画制作のスタジオ、ポストプロダクションや放送局向けに開発されたリファレンスモニタ。米国ラスベガスで行なわれた「NAB 2010」にて発表された。米国では54,950ドルで発売され、11月末より出荷を開始。日本での発売は検討中だが、来春4月以降の発売を予定しており、価格は未定。

 現在主流であるCRTからの置き換えを想定。ピーク輝度120cd/m2の「CRTリファレンスモード」や600cd/m2の「ダイナミックリファレンスモード」、PDPや液晶テレビ向けのエミュレーションモードも用意。黒レベルもCRTに合わせた0.005cd/m2とし、「CRTの正確さと、フラットパネルディスプレイの万能性を兼ね備えた」としている。

 パネル解像度は1,920×1,080ドットのフルHDで、外部調達(調達元は非公開)。入力映像は2K(水平2,048ドット)まで対応。2K映像の場合はドットバイドット表示し、パンすることで全体を観られるモードと、フルHDにダウンスケーリングするモードを用意する。パネルのリフレッシュレートは最大120Hzで、60pまでの入力に対応。24p映像は96Hzで表示する。視野角は水平90度。

 バックライトは直下型のRGB LEDで、パネルと1,500個のRGB LEDトライアド(計4,500個のLED素子)を、RGB個別に制御。LEDとパネルと同期して実時間でフレームごとに変調する「Dual Modulation」技術を採用。各LEDは12bit精度のPWM信号で制御され、10bit制御のパネルと組み合わせて、ソースに忠実な階調表現を実現している。この技術をコアとして、LED光学フィルタやパネルの部品調達、光学系の設計、組み立て、アルゴリズムの実装などを含めた設計・製造に特許技術を採用。これらを組み合わせてドルビーの独自技術としている。

 DCI P3のデジタルシネマ色域をサポートし、デジタルプロジェクタを使用せずに映画のカラーグレーディング作業が可能。そのほか、Rec.709やSMPTE C、EBUの色域をカバーしている。

Dual Modulation技術を搭載し、高品位な階調表現を可能にしたデジタルシネマのDCI P3などの色域をサポート

 映像入力はDual-Link対応3G HD-SDI(BNC)とDVI(8bit)を備え、HD-SDI出力とオーディオ同期出力(BNC)も装備、Ethernetを2系統備え、1つは付属リモコンとの接続、もう1つはLAN接続に利用できる。外形寸法は991×381×660㎜(幅×奥行き×高さ)、重量は68㎏。

 付属リモコンは2Uラックマウント、または卓上で利用可能。モニタ本体にはOSDメニューを搭載せず、リモコンに備えた液晶を見ながら調整する。リモコンには、表示モードの切り替えやパラメータ編集、機器のステータス表示などのボタンや輝度/コントラスト調整ノブを装備。USB端子も備え、PCで設定したルックアップテーブル(LUT)をUSBメモリ経由で読み出すことも可能となっている。

側面
付属リモコン。中央の液晶を見ながら調整できる
CRTリファレンスモード(最高120cd/m2)での表示。右はCRTモニタ。液晶ながら、暗部のディテールにおいてCRTを上回る表現も見られたダイナミックリファレンスモード(最高600cd/m2)での表示ARRI D-21デジタルシネマカメラで撮影したコンテンツをCRTリファレンスモードで表示。鮮やかな赤など、HDTV規格を上回る色域まで表現可能となっている


■ プロの声に応えるDolbyクオリティを実現

Dolby Japanの松浦亮氏

 製品開発の経緯について、Dolby Japanのマーケティング本部 プロダクトマーケティング部の松浦亮シニア・マーケティング・マネージャーは、「デジタルシネマで見られるように、ドルビーはオーディオ技術だけでなく“エンタテインメント技術を提供する会社」とし、ハリウッドなど制作サイドにおけるCRTモニタ代替えに対する要望を受けて開発に至ったことを説明。

 制作現場におけるモニタについては「民生用では42型の液晶テレビが浸透し、業界の基準であるCRTと乖離していることから、もはやCRTは利用できない状況になっている。代替として他社が複数のデバイスを提案しているが、十全なものは無い。そこで、プロの現場の声に応える製品を出したい」と述べた。パネルなどは外部調達だが、前述のLEDバックライト技術など「Dolbyクオリティ実現のために、自社開発・自社製造にこだわった」という。

 ユーザーとしては「第1ターゲットは映画制作の現場を想定している。実際の用途としてはDI(デジタル中間ファイル)、テレシネ、カラーグレーディング、CG、VFXなど制作の上流側の作業を意識している。それに合わせて、最終的な品質チェックなどにも利用できる」とした。



(2010年 11月 25日)

[AV Watch編集部 中林暁]