ソニー、Android 3.0搭載「Sony Tablet」を秋以降発売

-9.4型「S1」、5.5型×2の「S2」。AV連携/PSゲームも


ソニー「S1」(左)、「S2」(右)

 ソニーは26日、Android OS 3.0を採用したタブレット端末「Sony Tablet」(ソニータブレット)を2011年秋以降に全世界で発売すると発表した。9.4型ディスプレイを備えた「S1」と、5.5型のディスプレイを2つ搭載、折りたたみ可能な「S2」の2機種を用意。いずれもコードネームとなっている。

 9.4型の「S1」は「リッチ メディア エンタテインメントを提供するもの」、5.5型の折りたたみ型「S2」は「モバイル コミュニケーション エンタテインメント」向けと位置付けられている。


手に持ったところ
 Android OS 3.0を採用し、通信機能は無線LANとWANに対応。Webブラウジング、メールに加え、ネット上での動画再生、ゲーム、電子書籍などが楽しめる端末になるという。

 

 9.4型の「S1」は、重心を片側に寄せた偏重心デザインを採用することで、「手にしたときの軽量感と安定したホールド感を実現した」というモデル。長時間使用での快適性を追求しており、大画面を活かし、コンテンツを快適に操作・閲覧できるとする。

 「S2」は5.5型のディスプレイを2枚搭載し、折りたたむことでコンパクトに携帯可能。小型化と、2つのディスプレイを合わせた大画面の利便性を両立するという。また、1つの画面に映像、もう1つの画面に操作ボタンやソフトウェアキーボードを表示するなどして「従来のタブレット端末とは異なる閲覧性と操作性を実現している」という。

S1(左)とS2(右)S2を側面から見たところS1の側面
日本語では“サクサクテクノロジー”とのことブラウザでの表示などの速度を比較S2のキーボードは下画面に。キーなども独自でデザイン

 

4つの独自性をアピールした
 ほかにも、独自の即応性技術を投入し、タッチパネル上の操作やブラウザの表示を快適に行なえるという。同社はこれを「Swift & Smooth Performance」、日本語では“サクサクテクノロジー”と呼び、高速で快適な操作性を訴求していく。

 コンテンツ面では、ソニーのネットワークサービスプラットフォーム「Qriocity」と連携し、映像や音楽コンテンツを提供。ビデオオンデマンドのサービスでは、購入前に画面内でプレビューできるほか、購入後のダウンロード中に再生することも可能。音楽は、Qriocity Music Unlimitedに対応。現時点で700万曲のライブラリが楽しめるという。また、iTunesやWMPの楽曲もQriocity Music Unlimitedで管理でき、「マイライブラリ」からそれらの楽曲が利用可能。

 さらに、タブレット端末で初の「PlayStation Certified」端末であり、 PlayStation Suiteで、初代プレイステーションのゲームを楽しむ事ができる。電子書籍はオンラインブックストア「Reader Store」と連携する。


Qriocityの動画選択画面S1での動画再生画面S2で電子書籍を読むときは縦持ちに

 

動画の購入画面ダウンロードマネージャーの画面S2の動画再生では、上画面が動画、下がコントロールパネルとなる
ゲーム画面(クラッシュバンディクー)。左がS1、右がS2

 AV機器との連携機能も用意。タブレットから家庭内の機器をコントロールできるほか、「S1」は赤外線機能を使い、BRAVIAのテレビなど、様々な機器のリモコンとしても使える。さらに両機種とも、DLNAで接続することで、タブレットに保存した写真や動画をテレビに表示したり、音楽をワイヤレススピーカーから再生する事もできるという。

 

S1のコンテンツを、DLNA経由でテレビで再生したところテレビなどの赤外線リモコンとしても利用可能発表会では、スライド収納式キーボードの「フリースタイルハイブリッドPC」をVAIOブランドで発売することも予告。詳細は今後明らかにされるという

【S1】

【S2】




■ 本格的なクラウド時代の価値を提案

 

最初に登壇したのは平井一夫氏
 今回の発表会は、「新製品発表会」ではなく、「ソニー ITモバイルミーティング」として開催。ハード/ソフトウェアとネットワークの連携を軸とした、ITモバイルビジネスの今後の展開について説明が行なわれた。

 4月1日付で代表執行役副社長に就任し、コンスーマープロダクツ&サービスグループのプレジデントを務める平井一夫氏は、今回の新端末を含む、同社のハード/ソフト両面を活用したユーザー体験の提供について紹介。

 4月から発足したコンスーマープロダクツ&サービスグループは、全てのコンシューマ製品事業と、それらをつなぐネットワークサービス事業を担当。統括する平井氏が今年このような記者会見に臨むのは、1月のInternational CESと、PlayStation Meeting 2011に続き、今年3回目となった。

 平井氏は「これまで一貫してハードとソフト、ネットワークを融合して新しいユーザー体験を創造するテーマを実現するさまざまな発表を行なった。4月からの新組織の戦略については改めて話す機会があるのが、今回一つだけ申し上げたいことがある。お客様の好奇心を刺激するソニーらしい体験を創造する、というということは(前組織の)NPSGから変わらない。すべてのエレクトロニクス製品とネットワークが一つの傘に集まったことで、その推進の速度を増して、さらに価値を創造していきたい」と宣言した。

 また、「これからは本格的なクラウド時代を迎える。膨大なデータをネットワーク経由で引き出して楽しめる、クオリティの高いエンターテインメントを自由に楽しめることは大きな価値。ビデオや音楽、ゲーム、電子書籍を含む多彩なコンテンツやサービス、コミュニケーションを通じた新しい顧客体験を実現していく」とした。

 平井氏は冒頭、東日本大震災についても言及。被災者を見舞う言葉を述べ、「私たちも被災地に多くの事業所を持ち、ビジネスパートナーの多くが拠点を持っている。被害を受けた方々が冷静な行動をとり、復旧を目指す姿には感銘を受け、元気づけられた。多くの課題を持って新年度を迎えたが、ソニーも日本を元気にする一助になりたい」と語った。


■ アプリ追加やアップデートで進化を継続

 

鈴木国正氏
 新製品を紹介したのは、同グループのデピュティプレジデントである鈴木国正氏。「タブレットの可能性をさらに広げる2つのタイプを用意した」とし、家庭内での利用を想定した大画面の「S1」、持ち運びを考慮した2画面の「S2」を披露した。

 「Swift & Smooth Peformance」については、ウェブアクセスだけでなく、グラフィックやタッチパネルのレスポンス、アプリケーションの操作性を含めて強化したことに触れ、「ハードだけでなく、コンテンツ、サービスを提供する私たちにとって、タブレット本来の目的であるストレスの無い使用感を実現した」と自信を見せた。

 快適な動作を実現するため“サクサクテクノロジー”は、Wi-FiやWANなど、無線環境のウェブブラウザ閲覧に効果的なもので、特に無線スピードが不安定なときにより効果を発揮するという。「よく使われる機能であるウェブ閲覧に徹底してこだわり、Adobeと協業し、フラッシュベースのオンラインビデオやウェブアプリケーションをフルに楽しめる」(米ソニーエレクトロニクス タブレットマーケティングディレクターの高柳太一氏)という。

 加えて鈴木氏は、「発売後もアプリケーションの追加やアップデートで進化を続け、さらなる顧客体験とリッチなエンターテインメント体験を提供したい」と述べた。


■ “Androidの父”を刺激する端末。今後はVAIOにも新展開

 

ルービン氏は、震災の被害についてもコメント。同社がこれまで様々な施策や義援金を提供してきたことに触れ「今後もサポートを続けていきたい」と語った
 発表会場には、“重要なパートナー”として、米Googleのモバイル担当上級副社長であるアンディ・ルービン氏が登場。

 「Androidの父」として知られるルービン氏は、子供のころにかかったという“熱病”を振り帰る。「父は小さなビジネスを持つ起業家だったが、その内容は、外国の企業がアメリカで製品を販売する手助けをするものだった。最大の顧客はソニーで、アメリカで発売する新製品をよく家に持って帰り、“ユーザー調査”を子供を使って行なっていた。最初のウォークマン、CDプレーヤーなどのプロトタイプに触れることができ、友人からも羨ましがられたが、この時にかかった“ガジェットフィーバー”から、Androidのビジネスを始めるのに至り、それがGoogleの目に留まった」と語った。

 今回発表されたS1とS2について「革新的なハードウェアデザイン、UIだけでなく、ソフトウェアやネットワークサービスを加えて、ソニーならではのユニークなものにした。発売された暁には、子供のころと同じように最初のオーナーとなりたい」と個人的にも大きな関心を持っていることを明かした。これに対し、ソニーの鈴木氏は「フリーサンプルを差し上げざるを得ない」と笑顔で応えた。

 鈴木氏は最後に、タブレット以外に新たなPC製品の展望についても言及。2011~2012年は、タブレットとともにWindowsベースのノートPCも、新興国需要を中心に引き続き伸びていくとみており、そこに2種類の“特徴あるVAIO”を投入することを明かした。

 一つは、PCとしての性能を妥協なく追求し、ユーザーの可能性を高めるという「Ultimate Mobile PC」。もう一つは、タッチパネルでのウェブブラウジングと、PCとしての生産性を高次元で両立したという「Freestyle Hybrid PC」と紹介。「Freestyle Hybrid PC」はスライド収納式のキーボードを採用するなど、独自のデザインを採用していることなどが特徴となっている。これらの製品については、今後詳細を明らかにしていくという。

 鈴木氏は「今後も感動を提供し、好奇心を刺激する会社でありたい。続々と新しい商品を投入して、メディアの皆様を忙しくさせるので、期待して欲しい」と締めくくった。

 

PCとしての性能を追求したUltimate Mobile PCスライド式キーボードのFreestyle Hybrid PC

 


(2011年 4月 26日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎/中林暁]