東和電子、薄型TV接続用の卵スピーカー「TW-D7OPT」

-自動電源ON/OFFで気軽に常用。音質レビューも


テレビの前に設置した利用イメージ

 東和電子は、「Olasonic」ブランドの製品第3弾として、薄型テレビとの接続を想定した卵型アクティブスピーカー「TW-D7OPT」を6月10日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は17,600円前後。カラーはノーブルブラック(B)のみ。

 同社はOlasonicブランドの第1弾として、2010年4月に卵型ボディを採用した、USB接続の小型アクティブスピーカー「TW-S7」(オープンプライス/実売10,800円前後)を発売。2011年3月には、同様の卵型スピーカーと、WM-PORTを備えたウォークマン用ドックを組み合わせたウォークマン用スピーカー「TW-D7WM(T)」(オープン/実売21,800円)を発売している。

 第3弾の「TW-D7OPT」は、これまでと同様の卵型スピーカーを踏襲しつつ、アンプやDACを内蔵したメインユニットに、角型の光デジタル入力と、ステレオミニのアナログ音声入力を各1系統装備。薄型テレビと接続することで、テレビ音声の高音質化を図った製品となる。光デジタル入力は16bit、32/44.1/48kHzに対応する。

 108×108×141mm(幅×奥行き×高さ)のコンパクトな卵型スピーカー、106×180×39mm(同)と薄型のアンプ内蔵メインユニットで構成。総重量は1.2kg。小型筐体を採用する事で、テレビの脇や前などに設置できる。シリコンゴム製のインシュレーターの上に設置するため、スピーカーの角度を自由に調整できるのが特徴で、スピーカーのエンクロージャがテレビの表示面に重なってしまう場合は、スピーカーを横倒しして、低く設置する事も可能。イヤフォン出力も1系統備えている。


アンプ内蔵メインユニットと卵型スピーカーで構成するシステム卵型スピーカーはウォークマン用スピーカーのものと仕様は同じだ背面に60mm径のパッシブラジエータを配置
アンプ内蔵のメインユニット。中央がボリュームの表示。右下にボリュームボタンを備えている

 テレビと常時接続し、利用する事を想定しているため、オートパワー機能を装備。信号入力が無い場合、光デジタルでは30秒、アナログでは3分で電源がOFFになり、入力があると自動的にONになる。そのため、テレビと一度接続すれば、スピーカーの電源状態を気にせずに利用できる。

 USBスピーカー「TW-S7」で採用した独自回路「Super Charged Drive System」(SCDS)を踏襲。定格消費電力を3.5Wに抑えながら、アンプの出力は10W×2chを実現。SCDSとは、内部搭載した大容量のキャパシタ(コンデンサ)を使う技術で、音楽が静かな時にキャパシタに充電を行ない、大音量が必要な時に一気に放電することで、瞬間最大10W×2chを実現する技術。USBバスパワーで動作する「TW-S7」で、ハイパワー出力を実現するために開発された技術だが、テレビと常時接続する「TW-D7OPT」では、省エネ機能としても活用されている。なお、「TW-D7OPT」はUSB端子は備えていない。


メインユニットの前面背面。光デジタル音声入力1系統と、スピーカー接続端子を備えている側面にアナログ音声入力1系統、イヤフォン出力も1系統用意する

 電源は付属のACアダプタを使用。SCDS回路を採用する事で、通常のアクティブスピーカーのACアダプタよりもコンパクトになっている。

 映画などの観賞用に重低音を増強するバスブースト機能を装備。小型リモコンを同梱し、電源ON/OFF、ボリューム調整、入力切替、バスブーストの調整が可能。さらに、ミュート機能とアッテネーター機能も装備。アッテネーターは、ボタンをワンタッチする事で瞬間的に6dB音量を下げるもので、「瞬間的に音がうるさいと感じた時や、電話や家のチャイムが鳴った時など、ミュートするほどではなく、音量を下げたい時に利用できる」という。

付属のリモコンはコンパクト。中央はアッテネーターで、ワンタッチで瞬間的に6dB音量を下げられるSCDS回路を採用する事で、ACアダプタもコンパクトなものになっている

 スピーカーとアンプ内蔵メインユニットはステレオミニケーブルで接続。スピーカーのユニット構成は第1弾、第2弾モデルと同じで、60mm径のポリプロピレン振動板採用フルレンジを1基、同軸上の背面に60mm径のパッシブラジエータを配置。コンパクトなスピーカーながら、豊富な低域再生を実現している。また、ユニットの前にはデフューザーを配置し、高域を拡散させ、指向特性を改善している。

 卵型のエンクロージャは内部定在波の発生を防ぐ形状であると同時に、剛性が高い形状でもあり、エンクロージャの箱鳴りを低減し、クリアな再生にも寄与しているという。また、音の回折も少なく、点音源を実現。音場感や音像定位の明瞭さなども実現するという。再生周波数帯域は60Hz~20kHz。



■実際に聴いてみる

テレビの前に設置。メインユニットも薄型なので、ちょっとした隙間に設置できる

 まずは設置。もともとデスクトップ設置用の卵型スピーカーと同じサイズであるため、テレビの横や、テレビの前など、ちょっとしたスペースがあれば置く事ができる。テレビのモデルにもよるが、アンプ内蔵メインユニットは39mmと薄型であるため、テレビのスタンドで浮いた隙間にも設置できた。

 再生音は「TW-S7」から続く、本格的なサウンド。小型筐体ながらエンクロージャの鳴きが極めて少なく、付帯音の無い、クリアで明瞭なサウンドが展開する。薄型テレビのスピーカーは、ユニットの振動がテレビ全体に伝わり、テレビそのものが振動して音の明瞭度が低下したり、デザイン的にスピーカーを前面に配置する事ができず、ユニットを下に向けて設置して、テレビラックなどに音を反射させて低音を増幅させるモデルもあるが、そうしたサウンドとは一線を画す音質と言える。

 ニュース番組やバラエティ番組でテレビの内蔵スピーカーと聴き比べてみると、アナウンサーの声の聞き取りやすさがアップする。内蔵スピーカーの場合、高域がキツく、音像が薄く、平面的で、中低域は控えめ。高音ばかりが目立つため、ボリュームを上げるとカンカン、キンキンした音が耳につき、うるさく感じてしまう。

 「TW-D7OPT」に切り換えると、豊富な中低域が出て、アナウンサーの音像が立体的になる。お腹から出てくる、声の低い部分もしっかり描写されるため、音の輪郭が知覚でき、音量を必要以上に上げなくても言葉がハッキリと聴き取れる。

 また、内蔵スピーカーで交通事故のニュースを見ていると、ナレーションの背後に「ザーッ」というノイズのような騒音が聴こえる。「TW-D7OPT」に切り換えると、その「ザーッ」という音が、実は「ゴォー」という車の走行音だった事に気付く……という具合だ。

 音場も大きく変化する。テレビ内蔵スピーカーでは、左右に広がる音場のサイズが、テレビ画面と同じ程度にとどまっているが、「TW-D7OPT」に切り換えると、画面の左右に、2倍近くの広さの音場が生まれる。同時に上下の音の高さや、奥行きも感じられ、立体的な音の空間が生み出される。音楽番組で聴き比べてみると、ステージの広さや、楽器とヴォーカルの距離などが「TW-D7OPT」ではしっかり描写される。ヴォーカルもお腹からゆったりとした声が出ていて心地良い。歌手が上手くなったように聴こえる。


万が一、スピーカーがテレビの表示面にかかった場合は、横倒しすれば良い

 空間表現力の豊かさは映画の再生でも活きてくる。「アバター」の森の中での大規模戦闘シーンでも、森の奥深さや、空の高さを感じる事ができる一方、そこを移動する兵士達によるカサコソという葉音や、足音などの細かい音も明瞭に再生できている。バスブースト機能を組み合わせれば、大画面にも負けないシアターサウンドを気軽に再生できるだろう。

 様々な番組で聴き比べて感じるのは、映画だけでなく、スポーツや音楽番組、ニュースなど、普段観ているテレビ番組でも効果の音質の違いを実感できるという事。シアタースピーカーのような、映画を見る時だけ電源をONにするという製品ではなく、薄型テレビのサウンドそのものに不満がある場合に、それを手軽に解消できる製品として興味深いモデルだ。オートパワーON/OFF機能と低消費電力により、AV機器に詳しく無い人でも、意識せずに常用できる点も、魅力と言えるだろう。



(2011年 5月 25日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]