SCE、「PlayStation Vita」を12月17日に発売

-3G料金発表。ニコ動対応でゲーム画面生配信も


日本で12月17日に発売

 ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は、次世代携帯型エンタテインメントシステム「PlayStation Vita」を日本で12月17日に発売すると発表した。また、3GのキャリアパートナーがNTTドコモとなることと、料金体系として「プリペイドデータプラン」を採用する事も発表された。ドコモの通常のデータ定額プランも使用可能。

 14日に開催したプレス向けイベント「SCEJ Press Conference」で発表されたもの。なお、Vita本体の価格は既発表の通り、無線LANモデルが24,980円、3Gと無線LAN両対応のモデルが29,980円。予約の受付は10月15日より開始される予定。




■プリペイドデータプラン。3Gモデル初回50万台に100時間プラン付

プリペイドデータプランの詳細

 通信プランはプリペイド式と、既にドコモが提供している「定額データプラン」のどちらかが利用可能。プリペイド式のプランは、Vita向けに新たに用意されるもので、2種類存在。20時間分の通信が可能で980円の「プリペイドデータプラン 20h」、103時間で4,980円の「プリペイドデータプラン 100h」を用意する。

 どちらも通信速度は受信時最大128kbps/送信時最大64kbpsだが、「100h」プランでは103時間のうち3時間は、受信時最大14Mbps、送信時最大5.7MbpsのFOMAハイスピード通信が使用できる。

 また、利用可能時間だけでなく、利用可能期間の制限があり、「20h」プランでは30日間に20時間の3G通信、「100h」では180日間に103時間という制限がある。これらのプランは一定期間内にドコモの専用Webサイトにアクセスする事で更新手続きが可能。更新手続き期間は通信可能期間に14日間の猶予をプラスしたもので、「20h」プランで44日以内、「100h」プランで194日以内となる。これとは別に、契約事務手数料として2,100円も必要。

 3GモデルにはSCEのキャンペーンとして、あらかじめプリペイドデータプラン 20h/100hが契約されており、初回分の利用料金と契約事務手数料があらかじめ支払われたドコモUIMカードが同梱。購入後すぐに3G通信が利用でき、店頭で手続きが不要なのが特徴。発売を記念し、3Gモデルの初回限定50万台に、100時間のデータプラン(4,980円相当と契約事務手数料2,100円)がバンドル。それ以降はこちらも数量限定となるが20時間プラン+契約事務手数料がバンドルされる。

 なお、契約を更新しなかった場合、自動的に解約となる。再度利用したい場合はPCやスマートフォン、VitaのWi-Fi接続から専用サイトにアクセスし、新規に契約する必要があり、前述の2,100円が必要。契約後、一週間程度でドコモのUIMカードが郵送される。

 現時点でテザリングには非対応。なおVita側の仕様として、3GモデルにのみGPSを内蔵。無線LANモデルには搭載されない。

 

プラン名プリペイドデータプラン 20hプリペイドデータプラン 100h
利用料金980円4,980円
通信利用可能時間20時間103時間
通信利用期間30日間180日間
更新期間44日間194日間

 

SCEJの河野弘プレジデント
右がNTTドコモ代表取締役副社長の辻村清行副社長

 支払いはクレジットカード、もしくはドコモのケータイ払いが利用可能。また、青少年保護対策として有害サイトへのアクセスを制限する「プリペイドフィルタ」があらかじめ設定されており、解除を希望する場合はUIMカードと年齢確認ができる運転免許証などの書類を持参の上、ドコモショップに来店する必要がある。20歳未満の場合は親権者の同意書などが必要。

 SCEJの河野弘プレジデントは、キャリアパートナーにドコモを選んだ理由について、「Vitaはネットワークに繋がり、3G通信モジュールを内蔵しているのが特徴。それを活かすために、安定、信頼性、そして常に新しい事に一緒にチャレンジできる真のパートナーを組めると考えたのがドコモさんだった」と説明。

 NTTドコモ代表取締役副社長の辻村清行副社長は、プリペイドプランについて「Vitaの新しい価値を、簡単に、すぐに体験していただけるように新設したもの。ゲーム機に適したプランはどういうものなのか、様々な検討を重ねた、ドコモの一つの結論」と紹介した。




■UMDタイトルへの対応は「検討中」

PS Storeでのダウンロードゲームの充実をアピールする河野プレジデント

 Vitaでは専用のメモリーカードを採用しているが、PSPで採用されたUMDスロットは備えていない。そのためPSPユーザーが所有しているゲームをそのままプレイする事はできない。

 河野プレジデントは、「お持ちのソフトをVitaで遊びたいという、皆様からの要望に少しでも応えるために、特別な価格で提供できるようなプログラムを検討している」と説明。詳細は決定次第発表するとした。

 また、Vita発売の時点で「PS Store」ではPSP向けのゲームソフトが約600タイトルダウンロード販売されている見込みで、これらのソフトの多くがVitaでもプレイでき、デュアルスティックや有機ELの高画質で楽しめることもアピールした。




■バッテリ持続時間はゲームで約3~5時間

 また、Vitaのハードウェアスペックの詳細も発表。主な仕様は既発表の通りだが、バッテリ持続時間が公開された。バッテリはリチウムイオンで、DC3.7V 2,200mA。ゲームプレイで約3~5時間、動画再生で約5時間、音楽再生(スタンバイ時)で約9時間の再生が可能(スクリーンの明るさは工場出荷時設定/Bluetooth機能不使用/ヘッドフォン使用時)。ACアダプタを使った充電所要時間は約2時間40分。

 CPUはARM Cortex-A9 core(4コア)。GPUは「SGX543MP4+」を採用。メイン・メモリは512MB、VRAMは128MB。デジカメも前面と背面に備えており、640×480ドット/60fps、320×240ドット/120fpsの動画撮影も可能。ステレオスピーカーとマイクも内蔵。

 GPSは3Gモデルのみ。両モデルに6軸検出システム(3軸ジャイロ・3軸加速度)、3軸電子コンパス機能を備えている。外形寸法は約182×83.5×18.6mm(幅×奥行き×高さ)で、重量も公開。3Gモデルが約279g、無線LANモデルが約260g。

 PlayStation Vitaカードスロットとメモリーカードスロットを備えており、Vita用ゲームタイトルでは、セーブデータなどのデータをメモリーカードに保存するタイプと、PlayStation Vitaカードに保存するタイプがある。メモリーカードに保存するタイプの場合、遊ぶためにはメモリーカードが必要となる。同日発表されたメモリーカードの周辺機器は別記事で紹介している。



■Vitaの開封~利用開始までと、AV機能

 続いて河野プレジデントは、Vitaの利用イメージを伝えるため、初期設定や基本操作、AV関連も含めた操作方法をステージで紹介した。

 Vitaを起動(初回起動)させると、黒い画面があらわれる。右上に、シールを剥がしかけたような部分があり、タッチパネルを使って指で画面を剥がすような動きをすると、“利用開始”となる。イメージとしては、製品購入時に画面保護フィルムを剥がすのを、初回起動時に画面の中でも行なうような感覚だ。

初回起動時の画面。真っ暗だが、右上に剥がし掛けのシールのような表示がある画面をシールのように剥がすと言語設定画面が表示される

 言語や時間、誕生日、ネットワークやPSN(PlayStation Network)のアカウント設定が終了すると、ホーム画面が表示される。ホームには円形のアイコンが並び、それぞれに「ブラウザー」、「フォト」(デジカメ)、「フレンド」、「PS Store」などの機能が割り当てられている。ホーム画面は上下などに移動でき、好きな画面に任意のアイコンを設置する事も可能。壁紙もユーザーが設定できる。

ホーム画面。機能が丸型アイコンで表示されている時計表示が入れ込まれたロック画面。画面を剥がすような操作で解除できるホーム画面はカスタマイズも可能だ

 マルチタスクにも対応し、音楽を再生しながら静止画を表示するといった使い方も可能。タスクを終了させる操作がユニークで、前述の“剥がす”操作をミュージックプレーヤーや静止画表示の「フォト」画面で行なうと、そのアプリが終了される。

ビデオ再生アプリ「ビデオ」ビデオファイルの選択画面音楽再生アプリ「ミュージック」
音楽再生画面から別画面に移動しているところ。マルチタスクに対応しているタスクを終了したい時は、剥がす操作をする

 Vitaでは前面にマルチタッチタイプの5型有機ELディスプレイ(960×544ドット)を搭載し、背面にもマルチタッチパッドを装備するなど、新しい操作性を実現しているが、楽しみながら操作に慣れるための「ウェルカムパーク」というアプリも用意。画面に現れる数字をタッチしたり、背面タッチパッドで地球を好きなように回転させるといった遊びが可能。

 デジカメも前面と背面に備えており、640×480ドット/60fps、320×240ドット/120fpsの動画撮影が可能。撮影した静止画からパズルを作るアプリも「ウェルカムパーク」に用意されている。

遊びながらVitaの操作を習得できる「ウェルカムパーク」

 Webブラウザは「高速な動作が特徴」という。マルチタスクに対応しており、ゲームプレイの裏で立ち上げて使用する事も可能。PCやPS3とのデータのやりとりには「コンテンツ管理」機能を使用する。USBでPCやPS3と接続し、「コンテンツ管理」を選ぶと、PCやPS3内のデータをVitaから閲覧でき、データを取り込んだり、バックアップする事が可能。

高速な動作が特徴というWebブラウザを搭載コンテンツ管理機能でPCやPS3とファイル・データをやりとりできる

 フレンド機能も備え、既存のPSNアカウントが使用可能。メッセージ交換など、フレンドとのコミュニケーションが行なえ、トロフィーの閲覧・共有、PS3とのトロフィー情報共有、友達との比較も可能。

 SNS機能も充実。Facebookや、foursquare、Skype、Twitterの専用アプリケーションも提供し、ゲームプレイ中にツイートして、再びゲームに戻るといった使い方も可能。Skypeは音声通話が可能で、これらのアプリはPlayStation Storeから無償でダウンロードできる。

フレンド機能も備え、コミュニケーションができる他のSNS機能もアプリとして対応する
Twitterアプリから投稿しているところ主なアプリの一覧


 

■ニコニコ動画に対応

 ゲーム以外のアプリの代表例として、ニワンゴの杉本誠司代表取締役が登壇。Vitaがニコニコ動画に対応する事が発表された。ビューワーアプリを提供する形式でのサポートとなり、12月のVita発売時に、ニコニコ動画が視聴できるアプリ「ニコニコ」をPS Storeで無償提供する。

ニワンゴの杉本誠司代表取締役試作アプリをデモする杉本氏。コメント付き動画が表示されている

 その後、2012年春には配信機能を追加予定。カメラで撮影した動画を投稿したり、生放送配信が可能になるという。さらに、検索機能やマイページ機能なども、順次提供していくプランが示された。

 さらに杉本氏は、「ゲーム制作会社などのコンテンツパートナーがあっての話になるが」と前置きした上で、2012年夏に向けて検討しているというゲーム生放送配信機能について説明。ゲームに対してプラグインのように提供するイメージの機能で、ユーザーがプレイしている画面を「ニコニコ生放送」などで生配信できるというもの。視聴者が投稿したコメントは、Vitaのプレイ画面の上に重なるように表示されるという。

今後の対応予定スケジュールゲーム生配信機能のイメージビジュアル

 Vitaへの対応を決めた理由について杉本氏は、「ニコニコ動画とPlayStationに共通するキーワードは“ゲーム”。ニコニコ動画にはゲームが好きなユーザーが多く、親和性が高いプラットフォーム同士なのではないかと考えた。また、Vitaに関しては、3Gやカメラが入っており、ニコニコ動画を楽しむ上で不可欠な機能を備えている」と説明。「SNSやコミュニケーションがエッセンスとして入り込むことで、今までのオンラインゲームとは違った楽しみ方ができるのではないか」と展望を語った。



■ゲームラインナップも充実

 カンファレンスでは、本体と同時に発売されるローンチ26タイトルに加え、100タイトルものゲームが発売を予定している事が発表され、ゲームクリエイターも登壇。それぞれが手掛けるVita用新作ゲームをアピールした。ゲームの情報については、同誌GAME Watchを参照して欲しい。

カプコンの小野氏は、通信対戦が可能な格闘ゲーム「ULTIMATE MARVEL VS. CAPCOM 3」を本体と同時に発売する事を発表。トロとクロも参戦するという「どこでもいっしょ」と同じ世界観の「みんなといっしょ」。Vitaの通信、コミュニケーション機能を駆使したソフトになるという
KONAMIの小島秀夫監督は、PS3とVitaで同じゲームの続きをプレイできる「TRANSFARRING」機能を取り入れたゲームを開発している事を紹介。さらに、PS3とVita用のゲームを同時発売できるようなゲーム開発用エンジン「FOX ENGINE」も手掛けており、これを使ったオリジナルタイトルを製作中だという
発売予定タイトルは100本におよぶ登壇したクリエイター達カンファレンス冒頭には、SCEJ社長兼CEOのアンドリュー・ハウス氏も挨拶した


■全てのプレイスタイルを満たすエンターテイメントプラットフォーム

 河野弘プレジデントは、PlayStationビジネスの進捗状況についても説明。PS3は6月末の時点で、全世界累計5,180万台に到達。過去1年の販売台数実績では、ハードウェアで49%、ソフトで46%のシェアを獲得。家庭用ゲーム機でナンバーワンのシェアだという。「有力なタイトルが投入されている事、torneやPS Moveなど、新しい価値を提供するソリューションが原動力になっている」と分析する。

 PSPの販売台数は6月末時点で7,140万台に到達。携帯ゲーム機の過去1年間の販売台数シェアでは、ハードウェアシェア43%、ソフトウェア49%のシェアを獲得。「ハードとソフトの両方で最もよく売れた。7年目を迎えたプラットフォームとは思えないほど元気だ」という。その上で河野氏は今後のPSPについて、「若年層や女性層など、エントリー層を取り込む役目を担っていくと考えている」とした。

過去1年間のPS3のシェア過去1年間のPSPのシェア

 さらに、PlayStation 3とプレイステーション・ポータブルの新色も紹介。年末に向けて発売されるもので、PS3は数量限定で新たにスプラッシュ・ブルー、スカーレット・レッドの2色を用意。PSPは表がレッド、裏がブラックのツートンカラーモデルとなる。こちらも別記事で紹介している。

PS3の新色。スプラッシュ・ブルー、スカーレット・レッドPSPはツートンカラーモデルを追加

 また、河野氏は「全てが順調であったわけではない」とし、4月にサイバー攻撃を受け、長期にわたってPSNを閉鎖した事に触れ、「セキュリティに関して再認識する良い機会にもなった」と振り返る。現在では「欧米と日本を合わせ、閉鎖前の水準を取り戻すほど活況を呈している。ユーザーに心から感謝したい」と言う。

 その上で河野氏は、「概ねビジネスは順調に推移しているが、課題は将来の成長戦略をどう描いていくのか? という事。Vitaが成長戦略の一端を担うものだと考えている。ゲームの楽しみ方が多様化し、カジュアルなゲームが裾野を広げる一方で、クリエイターが最新技術を使って生み出したコアなゲームも存在する。この状況はゲーム業界そのものが大きく発展するチャンスでもある。カジュアルからコアまで、ユーザー全てのプレイスタイルを満たすエンターテイメントプラットフォームがVitaである」と語った。

 

「東京ゲームショウ 2011」(9月15日/16日:ビジネスデイ、17日/18日:一般公開)では、試遊台を80台以上、試遊可能タイトルを31作品用意。新ハードとしては非常に多い数だというゲームショウ後は東京、大坂、名古屋、札幌、福岡の全国5都市で試遊キャラバンも実施する

 


(2011年 9月 14日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]