「SNS×TV」連携の現状と展望。Twitter/Facebook、mixi/LINEの取り組み


JoinTV カンファレンス2012

 10月16日、日本テレビ本社において「JoinTV カンファレンス2012」が開催された。このイベントでは、2012年秋からの「JoinTV」の機能強化を発表。既報の通り、「スマートフォン対応」や「Twitter連携」といった施策を11月より実施する。

 このイベントには、日本テレビ関係者だけでなく、Facebook、Twitter、mixi、LINEというSNS大手からも代表者が参加。各サービスの現状や、テレビとのつながり、今後の取り組みなどについて、各社の調査や分析などを元に来場者に説明され、テレビとSNSを取り巻く現状や各社のビジョンが浮き彫りとなった。



■ Twitter

Twitter Japanの牧野友衛氏

 Twitterは、「テレビとTwitter。その活用法と関係について」と題してプレゼンテーションを行なったTwitter Japanの牧野友衛氏は、テレビとTwitterの親和性の高さや、海外におけるテレビ番組との協力事例などを説明。

 アニメ映画「天空の城ラピュタ」がテレビ放送されたとき、滅びの呪文「バルス」が一斉にツイートされるという現象はよく知られている。'11年放送時の25,088秒/ツイートという記録は1位の座を未だに守っており、2位の「あけおめ 2012」(1月1日)の18,438ツイート/秒を大きく引き離している。3位はサッカーの「EURO2012」(6月27日)。このほか、「FIFA(なでしこ決勝)」もベスト10に入っており、日本ユーザーの影響力の大きさがうかがえる。

 テレビ番組と実際に連携した例としては、米国のバラエティ番組「サバイバー」(SURVIVOR)の出演者であるJeff Probstが、テレビ放映の時間にライブツイートに参加した時、通常の放送に比べ約3倍のツイート数に達した事例を紹介。

 国内でもお笑い番組の「レッドカーペット」においてハッシュタグを使ってツイートを募集し、テロップ表示したところ、2時間で23万ツイートが寄せられたという。ドラマ「SPEC」の特番では、放送中に番組ハッシュタグのタイムラインをデータ放送に表示した。また、大河ドラマ「平清盛」でも、出演者によるツイートを不定期で行なったところ、実施された回のツイート数が約15,000から約22,000まで大きく伸びた。

「バルス」のツイート/秒は、不動の1位を保っている「サバイバー」の出演者が放送中にライブツイートに参加「レッドカーペット」での取り組み

 Nielsenが行なった調査によれば、「ツイートなどソーシャルの話題(掲示板含む)が9%増えると1%の視聴率向上につながる」というデータがあり、TwitterはNielsenと協力して、ツイートと視聴率の直接の相関関係についても調査中としているが、牧野氏は「少なくとも他のサイトに比べ、放送当日のソーシャル系のBuzzが多いのはTwitter」とした。

 Twitterが8月に行なった調査によれば、ユーザーの54%が、視聴している番組についてツイートしたことがあるという結果が出ているという。また、「テレビ番組に関するツイートをきっかけに、行動を起こしたことがあるか」(複数回答)という質問では、約30%が「テレビを点けて番組を視聴した」と答えたほか、「チャンネルを変えて番組を視聴した」という人も約20%となり、半数以上が何らかの行動を起こしているという結果を示した。

Nielsenの調査結果Twitterユーザーの54%が、視聴している番組にツイートしたことがあるという47%のユーザーが、他人の番組ツイートに対して行動を起こしている

 一方で、課題としては、番組関連ツイートなどをまとめて表示できるハッシュタグの利用が、10~30代は多いものの全体では41.7%と、半数に達していないことも指摘。この結果、例えば「アメトーーク!」の場合、投稿したキーワードが正式名だけでなく「アメトーク」や「アメトーーク」といったように同じ番組でもツイートが分かれてしまい、もしツイートが多くても「トレンド」に表示されないことがあり、後でまとめて表示する場合も手間がかかる。牧野氏は「解決策として、現在はハッシュタグを使うしかないが、今後はキーワードを統一化できるような動きをしていけば、より関連するツイートを集めたり、トレンドに出る可能性が増えて、より多くの人に番組に関連するツイートを見てもらえるので、こうした取り組みをやっていきたい」とした。

 このハッシュタグの利用を促進させる取り組みも既に行なわれており、海外ではモータースポーツのNASCARやオリンピックといった放送で「イベントページ」を開設。これは、特定のハッシュタグについてまとめて見られるページで、ページにまとめて表示することが一番効率的で、ユーザーにも利便性が高いという。

 また、アメリカなどの事例として、テレビ番組関連のツイート数を使って、ランキング化や、指標化をするという取り組みも起こっていることを紹介。これは、前述した視聴率との相関とは異なり、Twitterなどソーシャルの話題に特化したもの。視聴率が同じでもツイート数が違う場合もあるため、こうした指標化の動きが出ているという。

ハッシュタグの利用経験は41.7%イベントページツイートを活用した新しい指標を作る動きも海外で始まっているという


■ Facebook

Facebookの森岡康一氏

 Facebookは、「世界最大SNSとテレビ局・動画配信事業者の活用事例と可能性」と題して、海外のテレビ番組などと協力して行なっている取り組みなどを紹介。プレゼンターはFacebookの日本副代表 森岡康一氏。

 Facebookでは、「Watch」(映画やテレビを視聴すること)、「Share」(いいね! や、自分が視聴中/観たい番組などを投稿すること)、「Discover」(友人が観た/観たい番組を知ること)という3つの行動のスムーズ循環を目指して、同社のテレビチームが活動。放送局やコンテンツプロバイダーによる視聴者やユーザーの獲得を、Facebookが“プラットフォーム”として実現するという。

 具体的な取り組みとしては、「FB Pageの活用」、「FBアプリの活用」、「WEBサイト上でのAPI活用」という3つを紹介。

 「FB Page」では、ただの番組HPではなく、動画の配信やコンテンツの提供も実施。さらに、出演者へのインタビューなど「バックステージを紹介して感情移入しやすくする」としており、視聴者投票などもこうした取り組みとして採用されているという。海外の番組ではDiscovery Channelの「いいね!」数が1,185万、The Simpsonsが5,100万、Gleeが約2,000万と人気が高い。

 「FBアプリ」では、CNNが米大統領選に合わせて提供している「I'm VOTING」という事例を紹介。「実際の選挙に影響はないが、報道機関としてこの取り組みは面白く、うまく使っている事例では」とした。また、英BBC SPORTは、オリンピックやウィンブルドンなどのスポーツ番組でアプリを利用。友人と番組を観ながらチャットできるというもので、「お茶の間をバーチャルに作って友人と見るというもので、好評だと聞いている。オリンピックも2,500時間流した」とのこと。

Watch、Share、Discoverの循環を図るFB Pageとテレビ番組の取り組みFBアプリの活用事例

 「WEBサイト上でのAPI活用」は、アプリではなく放送局などが自社サイトをソーシャル化するというもの。米NBCのオーディション番組「The Voice」は、チーム対抗で歌などを競う内容だが、番組サイトでFacebookにログインすると、誰を応援しているのかを友人とシェアしたり、自分が参加チームのリーダーになれるゲームで遊んだりといったことが可能。こうした取り組みで視聴者のロイヤリティを高め、サイトのトラフィックがそれまでの2倍にまで高まったという。

 その他にも、自分の好きな番組や映画を登録してタイムラインに表示する「Get Glue」では、番組関連情報を取得できるほか、見逃さないようにスマートフォにアラートで表示することも可能。英国のスマートフォン/タブレット向けセカンドスクリーンアプリ「Zeebok」では、好きな番組の友人への紹介や、テレビで流れる音楽のダウンロード購入、ネット経由でのテレビ操作、Wikipediaからの情報取得などが行なえることを紹介した。

The Voiceとの連携Get GlueZeebox


■ mixi

mixiの波多江祐介氏

 SNSの老舗であるmixiは、「mixi流TV連動の現状と未来」と題して、テレビなどのメディアとのコラボレーション事例を紹介した。登壇したのは、パートナービジネス本部 ソリューション部の波多江祐介部長。

 サイト内には、テレビ関連で35,000件の「コミュニティ」が開設。主要番組のほぼ全てのコミュニティが、テレビ局公式ではなく番組ファンのユーザーによって作成され、「勝手に作って、勝手に盛り上がってくれる。番組が情報を発信するより、ユーザーの動きを見届け、活性化をサポートできればと思っている」との見方を示す。

 同社の調査では、SNSによって話題になりやすい番組ジャンルに違いが出ており、mixiでは特にドラマやバラエティ、Facebookではドキュメンタリーやニュース、Twitterでは映画のテレビ放送やアニメ/特撮が強いという結果が出ている。


mixi内で人気のある番組コミュニティ約50%のユーザーがテレビ番組関連で投稿しているというSNSによって、話題になりやすい番組ジャンルに違いが出ている

 波多江氏は「これまでのSNSは、(興味/関心を軸とした)『インタレストグラフ』を活用した取り組みが中心で、盛り上がりの可視化や関心者同士の交流には効果があるが、新規の視聴者を獲得しているとは必ずしも言えない」とし、「SNSが持つ(クチコミなどの)「ソーシャルグラフ」を活用することで、『お茶の間』や『教室』のように、番組の話題が広がり、非関心層に対して番組を定着させることができる」と説明。

 調査では、FacebookやTwitterとの違いとして、mixiユーザーはテレビを観た後に関連商品を買うといった行動に出やすいという結果も出ており、「人に影響を受けやすいユーザーが多いのかもしれないが、こうしたアクションに結び付くのは濃厚なグラフを持つmixi」として、SNSによってテレビとの関わり方に差異が出ていることを指摘した。

mixiの考えるTV×ソーシャルの関係mixiユーザーは、番組視聴後に関連商品を購入した割合が他に比べて高いという結果が出たという昨年実施され、人気だったというテレビCM連動企画「mixi Xmas」を今年も実施する


■ LINE

NHN Japanの出澤剛氏

 日本からスタートし、海外でも急成長しているLINE。日本のユーザーが3,000万を超え、世界では合計6,500万に達している。NHN Japan 取締役 ウェブサービス本部長の出澤剛氏は、「1年ちょっとで、歴史が浅い」としながらも、他のSNSとは異なるユーザー特性などから、今後のテレビとの関わり方などについて、同社の見方を説明した。テーマは「コミュニケーションプラットフォーム『LINE』の展開とテレビ連携の可能性」。

 LINEが他のSNSと異なるのは、ユーザーのほとんどが電話番号で認証していることで、PCとは異なりユニークユーザー数が多いこと。また、デイリーアクティブユーザー数が50%超、一日のメッセージ数が国内のみでも10億と、頻繁に利用されていることを指摘。こうした特徴から、テレビ視聴に対してもユーザーへ大きな効果が期待できることを示した。

 具体的な取り組みとしては、「番組公式アカウント」を、日本テレビのZIP! や、Music Loversなど9番組で開設。ZIP! は72万、Music Loversは68万の「ともだち」登録者がいるという。Music Loversでは、視聴者に対して8月17日~24日に「1日のスタートに聴きたい曲」の投稿を募集していたところ、これに投稿された数千件のうち、ほとんどがLINE経由だったことを紹介。また、Music Loversにおいて、ももいろクローバーZのフォトギャラリーを公開することをLINEで告知したところ、サイトアクセスが通常時の22倍になったという。そのほか、石原さとみが、自身の出演するドラマの最終回放送時に、終了後30分間に渡って感想を募集したところ、16万メッセージが寄せられた。

 今後の取り組みとしては、「双方向性を活かした展開」や、「ユーザーアンケート」、「投票」などの案を示し、特に「スポーツ応援はLINEに適している。オリンピックをニュースで配信したら評価が高く、国民的行事の応援に使えると考えている」とした。また、「スタンプ/コマースも盛り上がっている。テレビ番組は人気のあるキャラクターを抱えているので、近い将来(番組キャラのスタンプ化なども)可能性があるのでは」とした。

Mラバへの投稿のほとんどをLINEが占めたというLINE経由でももくろZの情報を発信ドラマ最終回に行なった取り組みの例


(2012年 10月 18日)

[AV Watch編集部 中林暁]