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シャープ、'12年度第3四半期は26億円の営業利益に

液晶TVも黒字化。中小型液晶の受注にリスク

奥田隆司 代表取締役社長

 シャープは、2012年度第3四半期(2012年4月~12月)連結業績を発表した。売上高が前年同期比6.4%減の1兆7,825億円、営業利益はマイナス1,662億円、経常利益はマイナス1,991億円、純利益はマイナス4,243億円の赤字となった。

 一方、第3四半期(9~12月)単体では、売上高が前年比15.1%増の6,782億円、営業利益が26億円と黒字化。営業利益の黒字転換は5四半期ぶり。ただし、経常利益はマイナス18億円、純利益もマイナス367億円の赤字となっている。

 シャープでは、「第1四半期をボトムに、売上高は前年度前半のレベル、営業利益も順調に回復している」と説明。部門別でも液晶を中心とする電子部品の売上伸張により、売上高は第2四半期に対して大幅増収となった。

 奥田隆司社長は、「全体では第2四半期に対して774億円の損益改善となった。第3四半期の実績は社内計画を上回り、結果として各商品部門が黒字化した」と収益力の改善を強調した。

2012年度第3四半期連結業績概要
部門別売上高
部門別営業利益

テレビが黒字化。液晶は収益改善も「中小型の受注状況にリスク」

 エレクトロニクス機器部門の売上高は、23.2%減の9,798億円、営業利益が60.2%減の222億円。そのうち、AV・通信機器の売上高は36.4%減の5,410億円、営業利益はマイナス159億円。ただし第3四半期は、売上高が前年比25.1%減の2,023億円、営業利益は53億円と黒字化した。液晶テレビにおける国内販売回復や、携帯電話の新商品投入や経費削減が貢献した。

シャープ奥田社長

 奥田社長は、テレビの黒字化について「価格が想定より安定して推移。特に大型強化したことで、社内想定を上回る売上となった。一方、中国では尖閣など日中問題が尾をひいて苦戦した」という。

 液晶カラーテレビの年間売上高予測は前回予想から100億円上方修正し、3,800億円。年間販売台数は800万台で変更なし。今後は60型以上(70/80/90型)へのシフトを進めるほか、バリューチェーン改革によるコスト競争力強化や新興国向けのローカルフィットモデル投入、4Kモデルなどの新商品開発を推進する。

 携帯電話は第3四半期に部材調達問題が解消した一方、季節要因などで販売台数は現象。通期の売上高目標を100億円減の2,400億円とした。年間販売台数予測は640万台で変更なし。今後はIGZO液晶搭載モデルなどで国内トップシェア奪回を目指す。

2012年度のAV・通信機器実績と見込み
2012年度の液晶テレビ実績と見込み

 健康・環境機器は、エアコンや洗濯機などの販売が好調に推移し、売上高が4.3%増の2,230億円、営業利益が5.1%の248億円。情報機器は売上高が3.3%増の2,090億円、営業利益が61.2%減223億円となった。

 電子部品は、液晶において、スマートフォン向けの中小型が伸張。大型も堅調で、売上高は前年比40.2%増の4,762億円となった。第3四半期の営業利益は、前期比で402億円改善のマイナス112億円。「増収に加えて、第2四半期に実施した棚卸資産の評価減の効果がでている」という。

'12年度の液晶事業実績と見込み

 一方で、「中小型液晶の受注が計画を下回る見込み」としており、下期の主要なリスクとして尖閣問題とともに中小型液晶の受注減の2点としている。中小型液晶を中心する亀山第1/2工場の稼働率については「亀山第1はお客様の関係があるので開示が難しい。亀山第2は下期を通じて60%の見込み」と説明した。

 そのため、液晶事業の'12年度通期予測を下方修正。売上高は500億円減の8,300億円、営業利益は120億円悪化のマイナス1,440億円を見込む。対策としては、「13年度から本格化するウルトラノートブックPCなどへのIGZOアプリケーション拡大、高精細液晶テレビやモニター用パネル増産の拡大を考えている」とした。

 8月に発表した経営改善対策の進捗については、達成率74%と報告。大型液晶事業のオフバランス化を完了したほか、在庫の適正化や設備投資の圧縮もほぼ計画どおりに進捗している。しかし、第三者割当増資については、クアルコムからの出資49億円にとどまり、目標の669億円に対して、達成率は7%にとどまっている。滞っている鴻海グループとの増資交渉については「(期限の)3月27日までまだ時間はある。可能な限りの話をしながら進めて行きたい」と述べるに留まった。

 2012年度の通期業績見通しは変更なし。売上高は2兆4,600億円、営業利益はマイナス1,550億円、経常利益はマイナス2,100億円、純利益はマイナス4,500億円。今後の方針については、近日中に中期経営計画を発表予定だが、BtoC、BtoBなどの顧客ごとにカンパニー制を取り入れる見込み。

 奥田社長は、「収益は改善しつつある。しかし、厳しい経営、財務状況であることは変わらない。下期の営業黒字実現と、再生、成長に向けた'13年度の純利益黒字に向けて邁進していく。今後の経営方針の具体的な内容については改めて説明する」と語った。

2012年度通期業績見込みは変更なし
通期の部門別売上高見込み
通期の部門別営業利益見込み

(臼田勤哉)