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ソニー、'14年第1四半期は営業利益698億円。PS4好調でTV黒字化。モバイルは戦略見直し

 ソニーは31日、2014年度第1四半期決算を発表した。売上高は、前年同期比5.8%増の1兆8,099億円。営業利益は同96.7%増の約698億円、税引前利益は同50.6%増の約683億円。純利益は約268億円の黒字となった。

2014年第1四半期決算概要
セグメント別の業績

 増収の主な要因としては、PlayStation 4(PS4)の貢献があったゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野や映画製作における劇場興行収入、為替の好影響などによるもの。PC事業収束に伴い、その他部門の売上高は大幅に減少した。営業利益は前年比343億円の増加となったが、主にG&NS分野の損益改善が寄与。一方モバイルコミュニケーションズ(MC)分野の損益は大幅に悪化したため、MC分野の通期業績見通しは下方修正された。

PS4好調。テレビも黒字化に自信も「語る資格はあるのか?」

G&NS分野の業績

 G&NS分野は売上高が前年比95.7%増の2,575億円で、営業利益は43億円の黒字。PS4のハードウェアの貢献と、ネットワークサービス収入の大幅増が寄与しており、会員制サービスのPlayStation Plus(PS+)の加入者はPS4購入者の半数を超えているという。G&NS分野の通期売上高も200億円、営業利益は50億円の上方修正を行なっている。

 テレビを含む、ホームエンタテインメント&サウンド分野は、売上高が前年比3.8%増の2,857億円、営業利益は127.5%増の77億円となった。欧州、アジア・太平洋地域の液晶テレビ販売が大幅に増加している。

 テレビ事業単体では、売上高が2,050億円で前年比約200億円の改善で、営業利益も79億円と黒字化。吉田憲一郎CFOは、通期の黒字化に自信を見せながらも、「昨年度も第1四半期は黒字だった」と振り返り、しっかりモニターしていくと説明。通期の販売台数目標は50万台下方修正の1,550万台とし、それに伴い売上高も200億円減の8,600億円と修正した。

ホームエンタテインメント&サウンド分野の業績
テレビ事業単体での業績
吉田憲一郎CFO

 吉田CFOは、「新会社(ソニービジュアルプロダクツ)のマネジメントにはストレッチ(背伸びした)の台数目標は避けてほしいとお願いした。販売減に対しては、コスト削減で対応できると考える」と説明。「台数ベースを下げたのは黒字化の確度を上げるため。国ごとの展開を丁寧に考えていくことが重要。黒字化できると自信を持っているが、一方で過去10年間で7,900億円の赤字を出しているので、『黒字化の確信を語る資格があるか? 』と問われると、どうかなと思うところはある。私自身は黒字化できると考えているし、それは新会社のマネジメントも共有している」とした。

IP&S分野の業績

 イメージング・プロダクツ&ソリューション(IP&S)分野は、売上高が前年比9%減の1,646億円、営業利益は91.4%増の174億円。コンパクトデジタルカメラの販売減により減収となったが、販売費や一般管理費の削減などにより分野全体では増益となった。

 デバイス分野は、売上高がマイナス3.3%の1,841億円、営業利益は15.6%増の125億円。PS3向けシステムLSIなどが減収となったが、為替の好影響や電池事業の収益改善により増益となった。中国を含むスマートフォン向けイメージセンサーが好調のため、通期では営業利益を200億円上方修正の510億円とした。

モバイルが停滞。その打開策とは?

 各分野で堅調だったエレクトロニクスの中で、不調が目立つのがモバイル・コミュニケーション(MC)分野。売上高が10.1%増の3,143億円だが、営業損益は27億円のマイナスとなり、通期の販売台数見通しも5月時点の5,000万台から4,300万台と大幅に下方修正した。

モバイル・コミュニケーション分野の業績

 第1四半期の販売台数は5月の見込みから20万台減の940万台。特に新興国などで大幅な成長を期待していた普及価格帯のスマートフォンの販売が想定を下回ったことが影響した。通期の業績予想も売上高が1,700億円減の1兆3,600億円に、営業利益は260億円減のイーブンとした。

 記者からの質問もモバイルに集中。吉田CFOは「5,000万台という見通しは『甘かった』。モバイルの経営陣と話を重ねて、ベクトルを合わせてきている。今後の方針は、国ごとの戦略を考えてキャリアと強固な関係を保ちながら、プレミアムブランドとして利益を出す。この事業のリスク低減には、規模ではなく収益を重視する施策が重要。商品ラインナップで苦戦しているのは安い領域で、この削減や見直しに着手している」と説明。十時裕樹 業務執行社員 SVPは、スマートフォンの販売について「中国など新興国での成長が想定を下回った」とし、市場全体の見込みもややアグレッシブ過ぎたことや、中国メーカーなどの新規参入の影響などについて言及した。

 モバイル重視という平井体制の戦略の変更の可能性について、吉田CFOは「モバイルは、スマートフォンだけでなく、カメラ、ウォークマンまたはゲームなど、ソニーとしては避けられない、正面から取り組まなければいけないコアの事業だ。平井のビジョンである『感動体験を届ける』に変更はないが、戦略としてなにに注力するのかは変わりうる。ただ、現時点では変更はない」と語った。

 エレクトロニクス5事業の合計では、売上高が1兆2,513億円、営業利益が68億円と黒字化している。ただし、「不動産売却益148億円を含んでおり、実質的には80億円の赤字。エレキの赤字構造は改善してきているものの、黒字転換はできていないと認識している。構造改革を着実に実行する必要がある」(吉田CFO)とした。

エレクトロニクス5事業の売上/営業利益推移

 映画分野は、売上高が前年比22.6%増の1,948億円、営業利益は同109.3%増の78億円、音楽分野は売上高が前年比4.4%増の1.169億円、営業利益が同5.7%増の114億円。金融分野は売上高が前年比1.8%減の2,470億円、営業利益は同3%減の438億円。

 通期業績予想は5月の見通しから変更なく、売上高が7兆8,000億円、営業利益は1,400億円。

(臼田勤哉)