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次期Android LはBluetooth 4.1対応、“TVにもBluetooth”時代へ。ウェアラブル急増

 Bluetooth Special Interest Group(Bluetooth SIG)は22日、Bluetoothの最新動向を紹介する記者会見を開催。低消費電力が特徴のBluetooth Smartを採用したウェアラブルデバイスデバイスが盛況で、対応するヘルス&フィットネス機器は2014年の5,400万台から、2018年には1億4,200万台に、家電などを制御するスマートホームでは2014年の2,170万台から、1億8,150万台に急増すると予測した。

Bluetooth SIG グローバルインダストリー&ブランドマーケティング ディレクターのエレット・クローター氏

Bluetooth Smartとは? テレビもBluetooth対応へ

 2010年に登場したBluetooth Smartは、Bluetooth 4.0で追加された低消費電力通信規格の「Bluetooth Low Energy」に対応する機器を総称したブランド名。iPhone 4Sを皮切りにiOSも対応し、Androidでも4.3からネイティブでサポートしている。Bluetooth SIGでは、この技術を“Bluetooth対応機器増加の第二の波”と位置づけ、重要視している。

 特徴は2つ。1つは低消費電力で、製品によってはボタン電池などを交換せずに1年、2年といったスパンで利用できるようになり、バッテリを小さくする事で対応製品の薄型化なども実現できる。

 もう1つは開発の容易さ。iOSやAndroidといったOSがネイティブでサポートする事で、メーカーはアプリやハードウェアの開発に専念でき、素早い製品投入が可能になるという。

 Bluetooth SIGでは、2018年までに、フィーチャーフォンも含めた全ての携帯電話の96%が、こうしたBluetooth Smart機器と連携できる「Bluetooth Smart Ready」になると見込んでいる。Bluetooth SIG グローバルインダストリー&ブランドマーケティング ディレクターのエレット・クローター氏は、「そうなると、対応端末は何十億台という市場になる。そこに向けて、様々なサービスを作っていけるようになる。この規模がBluetoothの一番大きなポイント。ワイヤレステクノロジーで、ここまで広がるソリューションはBluetooth以外には無いだろう」と、Bluetooth Smartの今後の展望に期待を寄せた。

 さらにクローター氏は、次期Android「Android OS L」でも、Bluetooth Smartと、従来のBluetooth技術である「Bluetoothクラシック」の両方がネイティブでサポートされる事を説明。さらにAndroid OS Lでは、最新のBluetoothバージョン4.1に対応するという。「Android OS Lは、4.1に初めて対応したOSのひとつとなり、IPv6接続の強化や、スマートホームに不可欠な常時接続のハブまたはゲートウェイとしての役割を担っていく」とした。

 なお、iOSでのBluetooth 4.1対応についてクローター氏は、「わからない」としながらも、アップルが発表会を開催するとされる9月9日に「いろいろな発表があるのではないか」と予想した。

 Android OS Lでは、1つの開発環境で様々なディスプレイサイズの製品に対応できる特徴を紹介。「1つアプリを作れば、それが小さな画面から、大きな画面の製品まで利用できる」とし、デベロッパーの負担を軽減しつつ、Bluetooth対応機器の幅が広がる機会になる事をアピール。

 また、ソニーが2015年から自社のテレビに採用するとアナウンスし、シャープも対応を予告している、Androidを使ったテレビ向けプラットフォーム「Android TV」についても触れ、「Bluetoothがテレビにも搭載される時代にもなっていく。スマートフォンからテレビ無いのAndroidをCONTROLしたり、テレビを使い、ユーザーが家にいない時でも家電をコントロールするといった事も可能になるだろう」と予測した。

ヘルス&フィットネスとスマートホームが急成長

Bluetooth Smart対応の“おしゃぶり”や“歯ブラシ”も

 クローター氏は、フィットネスなどで利用できる心拍などのデータを取得するウェアラブル機器やスマートバンドといった、現在続々と製品が登場しているジャンルだけでなく、今後は赤ちゃんの状態をチェックするBluetooth Smart対応の“おしゃぶり”や歯ブラシなど、医療分野も含めた、より幅広い展開を予想。

 こうした流れにより、ヘルス&フィットネス分野での対応機器は、2013年の3,430万台から、2014年に5,400万台、2018年には1億4,200万台に急増。2013年から2018年の年平均成長率は77%と予想した。

 さらに、照明やエアコンなど、宅内の様々な機器をBluetooth Smartで制御する「スマートホーム」分野も成長著しく、対応機器は2013年の540万台から、2014年に2,170万台、2018年には1億8,150万台になり、2018年までの年平均成長率は232%と見込んでいる。

 他にも、テレビなどの家庭用電化製品は107%、決済システムなどの「ビーコン&小売」分野では106%の年平均成長率を予想している。

 さらに、「Beacons」も急成長している分野だと説明。これは、Bluetooth Low Energy(BLE)を使った技術の1つで、店舗や美術館などに入ると、訪れたユーザーのスマホに割引クーポンや情報などを提供できるもの。展示している美術品の詳細をスマホでチェックしたり、頻繁に買い物をしてくれる人にクーポンを提供するといったサービスが実現でき、iOS 7でiBeaconとして標準搭載された事で注目を集めている。

 なお、Bluetooth Smartも含めたBluetoothデバイスの出荷台数は、世界で2014年に31億台、2018年には46億台になるという。クローター氏は、「'99年の登場から9年かけて10億台になったが、その後は急速に市場が拡大している。ワイヤレスの製品としては歴史的に最も成長率が高い」とした。

ウェアラブルとスマートホームの対応機器台数予測
Bluetooth Smart機器のジャンル別、年平均成長率
Bluetoothデバイス出荷台数

Bluetoothでのハイレゾ音楽の伝送は?

 一方で、Bluetoothスピーカーなどの音楽伝送の今後も気になるところ。現在はA2DPプロファイルに対応した製品が多数登場している状態だが、例えばハイレゾ楽曲を非圧縮で伝送できるような、広帯域の新しい音楽伝送の仕組みなどを作ろうという動きはあるのだろうか?

 クローター氏は、「現時点でアナウンスできる事は無い」と前置きしながらも、「Bluetoothスピーカーは日々、1日何製品というペースで増加しており、Bluetooth SIGとしてもオーディオのクオリティアップには感心を寄せている。(ハイレゾブームも)我々は認識しており、オーディオの次世代がどのようなものになっていくか、非常に注目している」と語った。

スマホとキーボードがワイヤレスでMIDI通信

 会見では、CSRやNordicらが、Bluetooth Smart対応製品の開発キットなどを紹介した。
 QUICCO SOUNDの「Wireless MIDI Interface mi.1」は、キーボードなど、MIDI対応機器に接続すると、iPhone/ipadとワイヤレスでMIDIデータの通信が可能になるもの。MIDIの送受信が可能で、キーボードで演奏したデータをMIDI形式でiPadに記録したり、スマートフォン側でMIDIデータを再生し、キーボードに再生させるといった使い方ができる。

Wireless MIDI Interface mi.1

 MIDIのポートからの給電で動作するため、「mi.1」自体にバッテリは搭載されていない。クラウドファンディングで出資を集めて製品化する予定で、出資者には今月製品を発送、一般販売は10月頃に4,500円で販売する予定だという。

キーボードのMIDIポートに接続したところ
演奏したデータをiPadにワイヤレスで伝送
iPhoneから再生したMIDIデータを、キーボードでワイヤレス再生

 スマートフォンとBluetoothで同時に接続する機器の台数限度は8台などの機器が多いが、これを一気に拡大し、例えば50台のBluetooth Smart対応照明機器を1台のiPhoneから操作できるようにするプロトコルをCSRが開発。「CSRmesh」として訴求している。

 これは、Bluetooth Smart対応の機器、あるいはグループ化した機器に対してスマートフォンから指令を送り、リレー形式で伝送させるもの。例えば、スマートフォンからA1というLEDライトに「赤く光れ」という指令を出すと、A1は赤く光ると共に、その指令をA2に伝送、A2はA3に……とリレーされ、数十台といった規模の照明を1台のスマホから制御できる。リレーしていく事で、10mといったBluetoothの伝送距離の限界も突破できる。

 この照明はグループ化し、グループ別に制御できるため、「照明Aグループは赤、Bグループは緑」といった制御も可能。また、例えばA3のライトが故障した場合は、それをスルーしてA4に指令を伝送する事もでき、“A3が故障している”という情報をリレーでスマホに戻し、スマホのアプリ画面で「A3が故障した」と表示させる事も可能。

 家庭内にある多数の機器を制御するスマートホームの実現に活用できるプロトコルである事から、CSRではこの「CSRmesh」が、Bluetoothの規格として採用されるようアピールしており、Bluetooth SIGでも評価試験などを今後実施する予定だという。

「CSRmesh」に対応したBluetooth SmartのLEDライトを階段に多数設置。1台のスマホから制御しているところ

 ログバーは、Kickstarterで資金を集め、10月か11月に一般販売を予定している「Ring」という指輪型のデバイスを紹介。指に装着し、その動きを検出、スマートフォンにその情報を伝送し、スマートフォンを経由して様々な機器を制御したり、Webサービスを利用できるもので、例えば「指をまわしてTwitterでツイートする」といった魔法のような事も可能になる。

ログバーの「Ring」
充電台
メガネ販売チェーン・パリミキを展開する三城ホールディングスによる「雰囲気メガネ」。スマホと連動して、電話の着信、メール、SNSの受信、株価変動、天気の変化などを音と光で知らせてくれる
Bluetooth Smart対応のサイコロなども展示。転がした目の情報がスマホに伝送されるため、ゲームアプリなどで利用できる
アプリックスは、Beacon対応機器を展示。
Cerevoは既発売の製品を展示。左が、既存のUSBキーボードをiPhone/iPadやAndroidタブレットで利用できるようにするデバイス「EneBRICK」
スマートフォンと連携し、離れた場所からデジタル一眼カメラのシャッターを切れる「SmartTrigger」

(山崎健太郎)