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静止画の2次元キャラが簡単アニメ化。After Effectsなど新Adobe CCは夏前に登場

 アドビシステムズ(Adobe)は、映像/放送の国際展示会「2015 NAB Show」において、「Adobe Creative Cloud(CC)」の次期アップデート内容を予告。この中で、映像編集/制作ソフトの「Premiere Pro CC」や「After Effects CC」、「Audition CC」の新機能について紹介している。なお、アップデート時期は「数カ月以内」としていたが、メドとしては'15年夏前に提供する見込みだという。

Adobeブースのプレゼンテーションステージ。クリエイターらが多く詰めかけ、立ち見も出ていた

 NABのAdobeブースは、新機能についてプレゼンテーションを行なうステージと、製品のデモを見られるコーナーで構成。After Effects(AE)においては、新たに2Dキャラのアニメ化ソフト「Caractor Animator」が付属。AEを購入すると、合わせて利用可能になることなどを明らかにした。同社はAfter Effects CCとPremiere Pro CCで共通のキーワードとして、革新的な技術を指す“Magic”と、色彩表現の新機能“Color”、制約が少なく自由に制作できる“Make It”の3つを軸に、今回のアップデートによる機能や操作性の向上などをアピールしている。

After Effects CC
Premiere Pro CC

After Effectsの2次元キャラアニメ化機能とは

 After Effects CC関連で注目の新機能は、2次元キャラクターをアニメーションとして動かせる「Character Animator」。このソフトは、PhotoshopやIllustratorであらかじめ作成した複数レイヤーの静止画(psd/aiファイル)を、アニメーションのように連続した動画にできるというもの。

Character Animatorの画面

 この機能のキーとなるのは、フェイストラッキング(顔認識)技術。After Effectsでは、強力な動画フェイストラッキング機能を搭載しており、顔の輪郭だけ追従する方法と、認識した目や鼻、口、眉毛といったパーツごとに細かく追従していく方法のどちらかを選択可能。これを活用して、パソコンのWebカメラに映った人がウインクするとキャラクターもウインクするというように、動作が連動。カメラに近づくとキャラも大きくなり、離れると小さくなる。こうした動きをCharacter Animator上で録画することで動画(PNGシーケンス)で書き出せる。なお、目を閉じた動作などをさせる場合は、あらかじめ閉じた目のパーツもレイヤーとして準備しておくことが必要。

フェイストラッキング機能により、顔のパーツ個別に追従可能

 人の顔だけで再現できない動作(キャラの腕など)は、マウスやキーボード操作で任意の方向に動かしたり、固定することなども可能。Character Animatorで作成したアニメーションをAfter Effectsに受け渡して、より詳細な加工なども行なえる。2人分のキャラを作成/編集することにより、画面上で掛け合いするといった動画も作れる。

 2Dのキャラクターや、構成するパーツを作成しておけば、CGやモーションキャプチャなどの知識を持たない人でも、自分の顔で目的の動作をさせられるため、人間に近い生き生きとした動きが簡単に作れるのが特徴。映像制作の間口を広げることにもつながりそうだ。

aiやpsdファイルを読み込んで利用可能
目や眉などのパーツをあらかじめレイヤーとして作っておくことで活用可能
顔の傾きや目の開閉などに連動
細かい動作はマウスやキーボードでも設定できる
複数のキャラを1画面で動かすことにより、会話のようなやり取りも可能

 高精度な顔認識機能の活用としては、人の目の部分だけにモザイクを入れてプライバシーを保護するといったエフェクトも簡単に作成可能。目の部分に仮面を合成し、人(顔) が動いてもその部分にマスクが追従するといった動きもできる。フォトレタッチの進化に合わせ、動画のレタッチにも細かい補正を掛けたいという要望が高まっていることを受け、詳細なフェイストラッキング機能を搭載したとのこと。

1人の顔にモザイク処理
仮面をつけたところ
片側だけを、“デカ目”のようにすることも

Premiere Proに、簡単操作の色編集や、インタビュー向け新機能など

 Premiere Pro CCは、色調補正が行なえるカラーパネルの「Lumetriカラーパネル」を搭載。これは任意の場所で動画を止めて、空や人物などの色をより細かく調整できるもので、既存ツール「Adobe SpeedGrade」の要素をPremiere Proに統合したもの。色編集のニーズが高まったことを受けて、SpeedGradeと行き来する時間を不要とし、より素早い操作で高機能な色編集をPremiere Proだけで可能にする。

Premiere Pro。右側がLumetriカラーパネル
ホイール部分の調整で、特定の色だけ彩度を上下することなどが可能

 色温度の調整やトーンカーブの調整や、フィルムに近い色調、周辺光量落ちの再現などが可能。カラーホイール画面により、特定の色だけ彩度を上げることもでき、調整のON/OFFを比較可能。

Morph Cutの画面

 もう一つの新機能「Morph Cut」は、編集で複数のクリップをつなぎ合わせる際に、その途切れ目を目立たないように自然に仕上げるというもの。インタビュー映像などで、話者が考えている時間など不要な部分をカットした際に、顔の動きなどをなるべく抑えてつなぎを自然にするもの。背景が大きく変わるシーンの間では利用できないが、インタビューの受け答えにあまり慣れていない人などの映像でも、自然な仕上がりができるという。

 さらに、映像全体の長さを調整する「Time Tuner」も搭載。カットごとの微調整が不要で、±10%の範囲内で出力尺を調整でき、見た目上の変化も無いという。海外のテレビ局や制作スタジオなどからの要望を受けて開発したというもので、納品する国や地域によって必要となるわずかな調整にも対応可能としている。

Morph Cutの作成例

スマホアプリのProject Candyで直感的に色編集

 Creative Cloudと連携できるiOS端末用の新アプリの「Project Candy」も、同じく夏前に提供。スマホで撮影した写真から色調を解析し、それを他の映像作品などの色合いに活かせるというもの。旅先で出会った印象的な風景などのエッセンスをクリエイターの映像制作に反映でき、効果の強弱なども設定可能。シンプルで直感的な操作を可能にする。

カメラロールの写真から色情報を解析

 スマホで写真を撮り、Candyで認識させると、3D空間上に色のついた球上のオブジェクト“バブル”が複数表示。バブルの位置で上下は彩度を示す。動画に反映したい色合いのバブルを1つ選ぶと、それが動画全体に反映。画面下部のスライダーで強弱が調整できる。作成した動画はCreative Cloudの共有ストレージに保存でき、Premiere ProやAfter Effectsで編集/加工できる。

Project Candyアイコン(開発中のもの)
カメラを向けた風景から解析することも可能
全く別の画像から、色情報を動画に反映可能
異なるバブルを選ぶと、その色が全体の色調に反映される

 Adobeが既に提供している、複数の短い動画をつなげて1つのクリップを作成可能なアプリ「Adobe Clip」とも連携可能。Candyで検出した色情報をClipの動画に反映し、Premiere Proで細かい編集を行なうといった作業もシームレスに行なえるようになるという。

Adobe Clip
作成した動画を、Premiere Proでも編集可能

Audition CCもDynamic Link対応で、4Kなど高画質映像の音声編集もスムーズに

 音声波形編集ソフトのAuditionも機能強化され、Premiere Proなど他のAdobeソフトと同様に、ソフト間連携機能のDynamic Linkに対応。これにより、Premiere ProのシーケンスをそのままAudition上で読み込み可能になる。映像のオーディオ部分を編集する際、レンダリングすること無くすぐに作業ができるため、4Kなど大容量のファイルを扱うときも、従来に比べ時間の短縮が図れる。

Audition CC
Caractor Animatorなどのプレゼンテーションを行なったAdobeのJason Levine氏。軽妙でハイテンションなトークにより、会場を沸かせていた
例年盛り上がるという、米VideocopilotのAndrew Kramerプレジデントのプレゼンテーション。After Effectsモーショントラッキングを活用した様々なアイディアを披露し、立ち見を含む多くの来場者で辺りが一杯となった

(中林暁)