ニュース

8K映像制作にも新たな動き。NHKやREDカメラ、アストロの8K最小55型液晶など

 放送/映像制作関連の国際展示会「2015 NAB Show」が、米国ラスベガスにおいて16日(現地時間)まで開催された。会場の中から、8K映像関連の展示を行なっていたNHKやREDなどのブースを中心にレポートする。

NHKが設置した350型8Kシアター

 8K放送のロードマップは、2016年に試験放送が開始され、2018年までに実用放送、2020年の東京オリンピックの本格普及を目指して進められている。NAB会場では、NHKが8Kを中心とした展示を行なっているほか、カメラメーカーのREDが、最高で8K撮影に対応した「WEAPON DRAGON」、NTTブースでは、8K放送も想定したH.265/HEVCエンコーダ「NARA」などを出展している。

NHKは350型8Kシアター。13.3型8K有機ELや120Hzカメラ、MMT多重化も

8Kカメラの標準モデル(左)と多目的モデル(右)

 NAB会場に巨大な8Kシアターを設置。富士山やワールドカップ、CGを駆使した宇宙空間などの8K映像を、350型のスクリーンで体験できる。音声は22.2ch。

 8Kカメラは、放送での使いやすさを重視したモデルを2種類出展している。スポーツ中継やスタジオ制作を想定した標準モデルと、レコーダユニットの追加で撮影/収録が可能な持ち運びできる多目的(マルチパーパス)モデルを用意。

パナソニックと開発した4K/8Kレコーダ

 パナソニックと共同で8K対応レコーダも開発。8Kの録再機として利用できる製品で、ExpressP2カードとmicroP2カード記録に対応。サイズは4Uラックマウント型。

 ディスプレイは、据え置きや壁掛けができる、65型8Kで22.2chスピーカー内蔵のモデルを展示。「現行のハイビジョンテレビと同様のスタイリッシュな外観で、8K画質と22.2ch音響を実現した」としている。さらに、8Kで世界最小となる13.3型有機ELディスプレイも展示している。

 85型で8K/120Hz表示に対応した、BT.2020準拠の広色域液晶ディスプレイも展示。8K/120Hz対応のキューブ型カメラも用意し、スポーツ生中継や、バラエティ、ドラマ制作など様々な用途を提案している。

薄型化し、22.2chスピーカーも内蔵したディスプレイ
ベゼル部分にスピーカーを内蔵
横から見たところ
13.3型8K有機ELディスプレイ
8K/120Hz対応の85型液晶ディスプレイ
8K/120Hzキューブ型カメラ

 また、日本での8K放送に合わせて採用が見込まれる多重化方式のMMTを用いたサービス例も紹介。MMTにより、放送波の映像とインターネット経由の映像を同じテレビ画面内でタイミングを合わせて表示でき、マルチビューやスマートフォンなどとの連携といった、サービスが実現可能としている。MMTは、日本の8K放送だけでなく、アメリカの次世代地上放送方式ATSC3.0の要素の一つとしても採用されている。

MMT関連の展示
カメラコントロールユニットや、カメラコントロールユニットなど、8K制作のための様々な機器を展示

REDが8K対応カメラ「WEAPON DRAGON」。アストロデザインは55型8Kディスプレイなど

 4K制作の映画などで広く採用されているREDのブースでは、8K対応の「WEAPON DRAGON」をショーケース内に展示している。

RED WEAPON DRAGONの8Kモデル

 サイト内で、6K WEAPONのセンサーを8Kに1万ドルでアップグレードするというオーダーもサイトで受け付けており、'15年夏に出荷開始としている。

側面
主な特徴
6Kから8Kの有償アップグレードも

 アストロデザインは、液晶で世界最小とする55型の8K/120Hzディスプレイを出展。7,680×4,320ドットのIPSパネルを備え、バックライトはエッジ型LED。明るさは350cd/m2。コントラスト比は1,400:1。消費電力は最大600W。また、85型の8Kディスプレイも展示している。

アストロデザインの55型8K/120Hzディスプレイ
85型の8Kディスプレイ

 小型の8Kカメラ「AH-4800」には12型の8Kモニタを装着して展示。8K/4K非圧縮SSDレコーダ「HR-7512-C」、バックアップシステムの「TB-8101」なども展示しており、撮影と記録、バックアップまでサポートする製品群として提案している。

 8K以外の製品では、9月の発売を予定しているフルHD有機ELビューファインダ「DF-3515」を展示。パネルは0.7型で、接続はHDMIとSDI。撮影コーナーではパナソニックのVARICAM 35に装着し、低遅延などの特徴をアピールしていた。

8Kカメラ「AH-4800」に12型の8Kモニタを装着
バックアップシステムの「TB-8101」
フルHD有機ELビューファインダ「DF-3515」

NTTは新エンコーダ「NARA」初出展。安価に4K/8K制作するシステムも

NTTの4Kリアルタイムエンコーダ「NARA」

 3月に開発を発表した、放送局などプロ向けの4K H.265/HEVC対応リアルタイムエンコーダLSI「NARA(開発コード名)」を初出展。1チップで4K/4:2:2/60p映像のリアルタイムエンコードが行なえるほか、複数チップを用いることで、8K映像のリアルタイムエンコード処理にも対応可能という製品。このNARAを搭載した1Uサイズのエンコーダを年度末に製品化予定としている。

 4K/8K制作を比較的安価に行なえるというNTT ITのシステム「viaPlatz」も紹介。4Kカメラの映像を、タワー型PCサイズの「viaPlatz VPR(Video Processing Recorder)」でレコーディングし、シンプルなカット編集がWebブラウザ上で可能。その結果を、マスターモニターなどを使ってIP経由でプレビューすることも可能。

「viaPlatz」のコーナー
viaPlatz VPR
Webブラウザ上で簡易カット編集が可能
NTTぷららの「ひかりTV」でも採用が検討されているのが、国際標準規格として承認された高音質符号化の「MPEG-4 ALS」。現在のAAC圧縮ではカットされている高域も損なわずに聴けるようになるため、放送音声の高音質化が図れる
MMT技術関連では、2月に標準化されたという誤り訂正に関するデモを行なっている。4K HEVCのメイン映像と、2K HEVCのマルチアングルでバドミントンの試合を中継。IP伝送のアングルに切り替えても、安定した映像表示を保つため、誤り訂正が活用される。テレビ放送の場合、わずかなパケットロスが重大な問題に発展するため、MMT多重化が実用化される際にも、その厳しい基準のクリアが求められるという

(中林暁)