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ソニーの'15年第1四半期は純利益824億円。テレビ黒字継続、PS4も好調

 ソニーは30日、2015年度第1四半期(2015年4月1日~2015年6月30日)の連結業績を発表した。売上高は、前年同期比0.1%減の1兆8,081億円、営業利益は同38.8%増の969億円。税引前利益は同102.9%増の1,387億円。純利益は824億円と黒字化した。

ソニー 代表執行役副社長兼CFOの吉田憲一郎氏

 売上高は、為替の好影響のほか、イメージセンサーが好調なデバイス分野が大幅な増収。一方、スマートフォンの販売台数の大幅な減少によるモバイル・コミュニケーション(MC)分野の減収や、液晶テレビの普及価格帯の販売台数減によるホームエンタテインメント&サウンド(HE&S)分野の減収などにより、全体ではほぼ前年同期並みとなった。

 営業利益は、前年同期比271億円増加の969億円、主に、再評価益を計上した音楽分野の増益とデバイス分野の増収の影響による。一方、MC分野では為替の悪影響、映画分野では映画製作における劇場興行収入の減少などによる損益悪化要因があった。当四半期の平均為替レートは1ドルが121.3円、1ユーロが134.2円。

2015年度第1四半期決算

 代表執行役副社長兼CFOの吉田憲一郎氏は、現時点でのソニーの収益力について、「昨年、平井(社長兼CEOの平井一夫氏)が申しました“やりきる構造改革”の効果自体は明らかに出てきていると認識している。しかし、今の収益力がソニーにとって十分かと言われると、まだまだ課題がある。例えば、スマートフォンの構造改革自体が1年遅れている事、為替の影響を受けやすく、ドル高に対して非常に弱い体質は継続している」と説明。

 商品については、「言わばソニーらしい商品、ソニーの強みを活かした製品というのは出てきているとは思う。特にカメラ。センサーの強みを活かしたカメラの領域では単価も上がっており、平井の肝いりである交換レンズのラインナップも揃ってきている。カメラ自体は成長市場とは言えないけれど、その中でポジションをとっていく、付加価値を上げていける製品は出てきていると思う」とコメントした。

テレビは前年度比100万台減も黒字継続

 テレビなどのHE&S分野の売上高は、前年同期比13.8%減の2,531億円となった。営業利益は同23.6%増の109億円。液晶テレビの主に普及価格帯における販売台数減と、家庭用オーディオ・ビデオの市場縮小にともなう販売台数減などが売上のマイナス要因となっているが、コスト削減や高付加価値モデルシフトにより、分野全体では増益となった。

HE&S分野の実績

 テレビ事業については、売上高は前年同期比17.6%減の1.689億円。液晶テレビの販売台数は260万台で、昨年同期(360万台)より100万台減少し、北米以外の地域で販売台数減となったが、「売上規模を追わない戦略によるもの」と説明している。

 高付加価値製品の増加など製品ミックスの改善やコスト改善があったが、販売台数減や為替の影響で、営業利益は前年比9億円減の70億円。黒字は継続している。年間の販売台数見通しは1,150万台。吉田副社長は、「4月末の決算発表時、テレビの新モデルが遅れて赤字に陥る可能性についてお話したが、その導入が改善されたこともあり、黒字を維持できた」とした。

PS4コスト削減やソフト販売好調でゲーム大幅増収

 ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野は、売上高が前年比12.1%増の2,886億円、営業利益が350.5%増の195億円と増収増益。PlayStation 4(PS4)のソフトウェアの増収や、PS4周辺機器の販売台数増加、為替の影響などで大幅な増収となった。

G&NS分野の実績

 損益面では、PS4のハードウェアコスト削減や、周辺機器販売台数増、PS4ソフトウェア増収などにより大幅増収となった。PS4の販売台数は300万台で、年間販売台数見通しは1,650万台。なお、同分野の為替悪影響は156億円。

 PS4の年間販売台数見通しの1,650万台は、従来の予測の1,600万台から増加している。中国市場での販売解禁が影響しているかと問われた吉田副社長は、「中国での販売の解禁は大変歓迎している。現時点でこの影響を大きく今回の販売台数の予想に盛り込んだということはないが、重要な市場としてコンソールゲームの楽しさを中国の方々にお届けしていきたい」とした。

スマホは赤字。デバイスは大幅増収

ソニー本社

 デジタルカメラなどイメージング・プロダクツ&ソリューション(IP&S)分野は売上高が前年比3.5%増の1,704億円、営業利益は同22.2%増の213億円。市場縮小により、販売台数は減少しているものの、高付加価値モデルシフトにより増収/増益となった。為替の好影響は20億円。デジタルカメラの販売台数は前年同期比50万台減の170万台。

 スマートフォンなどのMC分野は、売上高が16.3%減の2,805億円、営業損失229億円と赤字。スマートフォンの販売減少により、売上高は減少。為替悪影響254億円などが響き赤字となった。

 吉田氏はスマートフォンについて、「収益構造の改善に向け、規模を追わない戦略を徹底している。販売の見通しも従来の3,000万台から2,700万台に引き下げ、価格維持につとめている。しかし、米国でのシェアが低く、ドル高の悪影響が他の分野より大きく出る。今年の4月時点では事業リスクのバッファとして200億円見込んでいたが、今回、それをモバイル分野に移した形になっている」と説明。

 さらに、「モバイル事業は過去数年の規模拡大路線から方針を転換し、事業規模を適正化していくフェーズにある」とし、テレビ事業とモバイル事業の売上高と営業利益の推移を示したグラフを掲示した。

テレビ事業とモバイル事業の売上高と営業利益の推移を示したグラフ(上と下で年度が3年ずれているのに注意

 「過去のテレビ事業もそうだが、規模を拡大し、固定費を増やした後に、方針転換をすると売上の縮小に十分に削減が追いつかず、大きな損失を計上する事になる。テレビは規模拡大路線から大きく方針転換して3年をかけて通期で黒字化を果たした。モバイル事業は2014年に11月に新経営体制に移行し方針を転換し、今期中に構造改革や事業規模の適正化を終える予定。構造改革の進捗の予定通りすすんでいる」と、テレビ事業黒字化の経験を踏まえ、今後のプランを解説した。

'15年度第1四半期のセグメント別実績

 デバイス分野は、売上高が前年同期比35.1%増の2,379億円、営業利益が同163.8%増の303億円。モバイル機器向けの需要が増加しているイメージセンサーの大幅増収や為替の影響、カメラモジュールの増収などによるもの。外部顧客に対する売上高は前年同期比で41.2%増加している。一方、昨年度に黒字化したバッテリ事業は、当四半期では営業赤字になっている。

 好調なイメージセンサーは長崎テック、山形テック、熊本テックで手がけている。その生産能力を強化。今年の8月から予定通り、月産68,000枚の体制になるという。2016年9月には87,000枚を予定。今年度の半導体設備投資額は2,900億円だが、その内イメージセンサーには2,100億円を投資する。

イメージセンサーの総生産能力推移

 吉田氏は、「需要は引き続き好調に推移しているが、今のところ2016年の生産能力の増強計画を変更はしていない。今後スマートフォンにおいて、複眼化(カメラを2機搭載したモデルのこと)が普及する度合いによっては、(増強計画を)見直しする可能性がないとは言えないが、現在の増産計画で走って行く予定」とした。

 映画分野の売上高は、前年同期比11.9%減の1,715億円。劇場興行収入、およびテレビ局向けのライセンス収入が減少した映画製作の大幅な減収が原因。営業損益は、前年同期が78億円の黒字だったが、今四半期は117億円の赤字となっている。

 吉田氏は、「主に映画のリリースタイミングによるもので、第2四半期も赤字と見ているが、その先の大型作品のマーケティング費用が大きいため。しかしながら、収益性が低いのは課題と認識しており、新たなマネジメント体制のもと、改革に着手しているが、成果が出るまで時間が必要だ」とした。

 音楽分野は売上高が、円安の影響で前年同期比8.5%増加の1,302億円(前年同期の為替レートを適用した場合は3%の減収)、主にパッケージメディア音楽市場の継続的な縮小による影響で、分野全体の売上高は減少している。営業利益は前年同期比201億円増加の318億円。SMEが持分法適用会社だったThe Orchardを100%子会社化した結果、既に保有していた持分51%を公正価値により再評価したことの利益181億円を計上したため。

 金融ビジネスも、主にソニー生命の増収により、前年同期比13.1%増加の2,794億円円となった。保険契約高の拡大にともない、保険料収入が増加。日本の株式相場の上昇幅が前年同期を上回った事などにより、特別勘定による運用損益が改善した。営業利益は前年同期比から22億円増加の460億円。

総額4,200億円を調達
持続的に高収益を創出する企業へ

 6月に発表した公募増資3,017億円、転換社債1,200億円により、総額4,200億円を調達した事も説明。吉田氏は「成長に向けた投資資金の確保」と「財務基盤の強化」を目的に挙げ、「イメージセンサーへの投資費用を充実させるなど、今後の成長への余力を確保できたと考えている。これで“やりきる構造改革”から、成長投資と利益創出のフェーズに移り、持続的に高収益を創出する企業へとステージアップしていきたい」とした。

(臼田勤哉/山崎健太郎)