ニュース

日本初のHDRドラマ「海に降る」10月10日WOWOWで放送開始。撮影は4K、水深1,500mでも

 WOWOWは、日本のドラマとして初となる、HDR(ハイダイナミックレンジ)映像技術で制作された「連続ドラマW 海に降る」を10月10日夜10時から放送を開始する。全6話構成。ただし放送はHDRではなくSDR(従来の映像)となる。6日、発表会と第1話の上映会が開催され、主演の有村架純さんらキャスト一同が登壇した。第1話は無料放送。

左から山本剛義監督、板谷由夏さん、有村架純さん、井上芳雄さん、時任三郎さん

HDR、4Kで制作

 朱野帰子原作の「海に降る」を映像化した実写ドラマで、JAMSTEC(海洋研究開発機構)が全面協力、2014年に完成25周年を迎えた有人潜水調査船「しんかい6500」で日本初のドラマ撮影を行なうなど、リアルな深海世界、海洋科学技術の最先端を描いた作品。

 実際に「しんかい6500」に撮影クルーが搭乗し、沖縄本島近海、水深1,500mでの撮影も敢行。神秘的な深海の映像美も見どころとなる。

 その映像を活かすため、この作品は全編4Kで撮影(放送はフルHD)。さらに、ドラマとしては日本初のHDR技術を採用して制作されている。

 撮影現場ではRED Digital Cinemaの「EPIC」や「DRAGON」と、マスタープライムなどの、単焦点をメインに使って撮影。12bitのRAWデータなどで記録しておき、そのデータを用いて、カラーグレーディングなどの作業の際にHDR映像を作り出していったという。チェックにはHDR対応のマスターモニターも活用された。

 そのHDR映像を、10bitのDPXフォーマットで書き出し、上映会ではデモとして再生。表示にはソニーPCLの355インチ「4KVIEWING」を使っている。HDR対応LEDカラースペースはITU-R BT-2020、HDRガンマはHLG(ハイブリット・ログ・ガンマ)。解像度は3,840×2,160ドット、フレームレートは23.976fps、色温度は6500Kとなっている。

左がHDR対応の映像、右はSDR

 なお、現在のテレビ放送はHDRに対応していないため、10月10日からのテレビ放送は通常のSDR映像、解像度もフルHDとなる。Channel 4Kでの4K放送や、HDR対応を謳うNetflixなどのビデオ配信サービスへのコンテンツとしての提供などは現時点では予定されておらず、HDR & 4Kでこの作品が見られるのは今回の発表会のみとなる。

 WOWOWの技術局 技術企画部の篠田成彦エグゼクティブ・エンジニアは、「今後、4K放送の本格化を迎えるにあたり、経験を積むためにもHDRと4Kでドラマ撮影をした。HDR/4Kでの放送が可能になった際に、すぐにコンテンツが用意でき、また新たなコンテンツを制作するためのノウハウも必要であるため」と説明。今回の撮影はIMAGICAが協力しており、制作を通じて「RAWからHDR映像を生み出す際も、撮影時に照明をしっかり当てて、しっかり撮るという収録の基本が大事というノウハウが得られた」という。

「海に降る」とは

 主人公を演じるのは、連続ドラマ初主演となる有村架純さん。「映画 ビリギャル」の主演を務めるなど、女優として活躍著しい彼女が、組織の中で奮闘し、亡き父の遺志を受け継ぎ、深海の謎に命を懸けて臨むパイロット役に挑戦する。発表会には有村さんに加え、共演の井上芳雄さん、板谷由夏さん、時任三郎さん、山本剛義監督が参加した。

有村架純さん
左から有村さん、井上さん、時任さん
左から板谷さん、有村さん、井上さん

 物語の舞台はJAMSTEC(海洋研究開発機構)。有人潜水調査船「しんかい6500(通称6K)」の運航チームに所属する天谷深雪(有村架純)は、6Kのパイロットになることを夢見ていた。

 父・厚志(時任三郎)もパイロット兼研究者だったが、志半ばで病死。深雪は、幼少期に父が話してくれた“深海の宇宙”を探索することを目標に、パイロット候補生として日々業務にいそしむ。

 そんなある日、深雪は6Kに搭乗するチャンスをつかむ。JAMSTECも日本人初の女性パイロット誕生とあって広報活動に余念がない。しかし潜航直前、深雪は父のロッカーの中から1本のテープを見つける。そこに記録されていたのは、未知なる巨大な物体や深海に取り残されたパイロットたちの恐怖の映像であった。そこには父の最期の姿も映っていた。美しき深海とは程遠い、衝撃的な映像を目にした深雪は、激しい恐怖に襲われる。果たして彼女は、暗黒の深海から無事に帰還できるのか……。

【WOWOW】有村架純主演が神秘的な深海の世界に挑む!連続ドラマW「海に降る」

 JAMSTECの事は知らず、「まずはJAMSTECにお邪魔させていただいて、そこを知る事からはじめました」と語るのは有村さん。「ハードな撮影でしたが、本当に面白い、良い作品になったと思っています。人間ドラマと共に、JAMSTECを知っていただくキッカケになると嬉しいと思っています。ドラマが面白いと感じたら、ぜひJAMSTECの事も知って、広めて欲しいです」とコメント。

 井上芳雄さんは、「研究者という役どころなので、長い、専門用語が多いセリフが多かったです。大変ではありましたが、“シロウリガイ”など、知らない言葉を調べて、知る喜びがあり、それほど大変だとは思いませんでした。先輩俳優の皆さんには“セリフ多くて大変なんすよ”と言っていましたけど(笑)」。

 JAMSTECの広報を演じた板谷由夏さんは、「本物のしんかい6500を見る事ができて、これが深海という知らない世界に行くのだと思うとゾワッと鳥肌がたちました。息子が見ている海の図鑑、そのどれにも必ずしんかい6500が出てくるんです。もし叶うなら、いつか子供を乗せてあげたいなと思いました」と興奮気味。

 時任さんも、「役作りのために乗せていただきましたが“男のロマン”を感じました。皆子供みたいに目をキラキラさせて、JAMSTECの方々を質問攻めにしていました(笑)。しんかい6500の中は狭いのですが、3人が中に入ると、外にいる時よりも距離感が近く、すぐに親しくなれる不思議な空間でした」という。

山本剛義監督

 山本剛義監督は乗り込むだけでなく、実際に水深1,500mの世界への潜行も体験。「研究者の方が3年、5年と待ってようやく乗れるかどうかというプレミアチケットを、このドラマのために譲っていただいたJAMSTECの方々に本当に感謝しています。窓から見た深海には、石などが落ちているのですが、当然外に出てその石に触れる事はできない。宇宙でも、宇宙服を着れば船外活動ができ、石に触れますが、深海では絶対に出る事ができない。そう思った時に、そこにある石すら神々しく感じました」と、貴重な体験を語った。

 トークショーではHDR技術についての解説や、デモコンテンツでのHDRとSDRの比較も実施。有村さんらキャスト陣は、屋外の明るさ、波の白さなど、輝度の高い部分の鮮烈さがSDRと大きく違うと指摘。「HDRは現場で撮影していた時の風景に近い」(井上さん)といった感想も飛び出した。

左のHDR映像の方が、撮影現場の実際の見た目に近いと語るキャスト陣

(山崎健太郎)