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Astell&Kern新スタンダード機「AK320」は12月18日発売で約25万円。AK380ベース

 アユートは、iriver Astell&Kernのハイレゾ対応ポータブルプレーヤーの新モデル「AK320」の発売日を12月18日、直販価格を249,980円(税込)と発表した。価格はオープンプライス。予約は12月4日から受付開始。最上位モデル「AK380」(直販税込499,980円)の基本設計を踏襲しながら、より購入しやすいスタンダードモデルと位置づけられている。

AK380をベースにした、スタンダードモデル「AK320」
AK320のフロントカバーはアルミ削り出し。525gの固まりから削り出し、41.5gだけが残るという

 AK320の型番は「Astell&Kern AK320 128GB ガンメタル」(AK320-128GB-GM)。筐体の形状はAK380とよく似ているが、筐体の素材がジュラルミン(航空機グレードのアルミ A7075)ではなくAK120II/100IIと同じアルミニウム(6083)となる。数字の違いは強度の違いを示している。内部基板も変更されており、ボリューム部分などデザインやサイズは完全に同じではない。

左かAK320、右がAK380。筐体右側の出っ張り部分の形状が違うのがわかる

 さらに、AK380は内蔵メモリが256GBだが、AK320は半分の128GB。ただしmicroSDカードスロットは備えており、128GBまでのmicroSDXCカードが利用可能。最高で256GBまで拡張できる。

 搭載しているDACは、AK380と同じ旭化成エレクトロニクス「AKM AK4490」で、同チップをデュアルDAC構成で搭載しているもの共通。ただし、ネイティブ再生できるデータが異なり、PCMは192kHz/24bitまで、それを超える352.8kHzは176.4kHz、384kHzは192kHz、32bitは24bitにダウンコンバート再生となる。

 さらに、DSDはネイティブ再生できず、PCM 176.4kHz/24bitへの変換再生となる。AK380は384kHz/32bitまでのPCM、DSD 11.2MHzまでのネイティブ再生ができる。再生対応ファイル形式はWAV、FLAC、WMA、MP3、OGG、APE、AAC、Apple Lossless、AIFF、DFF、DSF。

 USB DAC機能も備えているが、PCMの96kHZ/24bitまでの対応となる。DSD再生もサポートしない。AK380は384kHz/32bit、DSD 11.2MHzまで対応している。

AK320とAK380のスペック面での比較
AK380と筐体デザインはよく似ているが素材が異なるため色味は違う。2.5mm 4極のバランス出力やmicroSDカードスロット、拡張用端子などはAK380と同様に搭載している
左がAK320、右がAK380。背面では違いがわかりやすく、AK380はカーボンプレートが使われているが、AK320はアルミとなっている
側面の比較。左がAK320、右がAK380。ボリュームの形状が違うのがわかる
ボリューム部分をアップにしたもの。左がAK320、右がAK380

 それ以外の仕様は、ほぼAK380と同じ。高精度で、200フェムト秒という超低ジッタを実現するVCXO Clock(電圧制御水晶発振器)を搭載。音質調整用には、20バンド/0.1dBのパラメトリックイコライザを搭載する。

「AK320」

 IEEE 802.11b/g/n(2.4GHz)の無線LAN機能を搭載し、DLNAにも対応。スマートフォン/タブレット向けに提供している「AK Connect」アプリから、AK320を制御でき、NASやPCに保存した音楽ファイルをネットワーク経由でAK320から再生したり、スマホ・タブレット内の音楽をストリーミング再生させる事も可能。この機能をiriverでは「AK Connect」と呼んでいる。

 Bluetooth 4.0にも対応。イヤフォン出力はステレオミニのアンバランスで、光デジタル出力も兼用。2.5mm 4極のバランス出力端子も備えている。出力レベルはアンバランス:2.1Vrms、バランス:2.3Vrms(負荷無し)、出力インピーダンスはアンバランス:2Ω、バランス:1Ω。SN比は116dB(アンバランス)、117dB(バランス)。

 内蔵バッテリは3,400mAhのリチウムポリマー。ディスプレイは4型で、解像度480×800ドット。静電容量式のタッチスクリーンを採用。外形寸法は112.4×75.2×16.5mm(縦×横×厚さ)、重量は約217g。

 AK380と同じ拡張端子を備えており、AK380向けに発売されている、ジャケット型のアンプユニット「AK380 AMP」がAK320でも利用できるほか、今後発売を予定している、PCを使わずにCDのリッピングを直接行なう「AK CD-RIPPER」や、プレーヤーを設置して据え置き機器のように扱える「AK380 Cradle」もAK320で利用できるという。

ジャケット型のアンプユニット「AK380 AMP」をAK320に装着したところ
PCを使わずにCDのリッピングを直接行なう「AK CD-RIPPER」、プレーヤーを設置して据え置き機器のように扱える「AK380 Cradle」もAK320で利用できる
AK320のポジション。価格的に近いAK240も併売される

 発表会ではさらに、AK320を含め、AKシリーズから直接利用できるハイレゾ音楽配信サービスとして展開している「groovers」についても近況を紹介。12月末までに5万曲を配信する予定であるほか、オランダのクラシック専門レーベル「Channel Classics」や、ニューヨーク発のジャズ・クラシック・ワールドミュージックレーベル「Chesky Records」を国内独占配信する事も明らかになった。

12月末までに5万曲を配信する予定

よく似たデザインだが音に違いも

 AK T8iEとのバランス接続でAK320、AK380を聴き比べてみた。使ったのは3曲で、「イーグルス/ホテルカリフォルニア」(44.1kHz/16bit)、「μ's/僕らは今のなかで」(96kHz/32bit)、マイケル・ジャクソンの「Thriller」(DSD 2.8MHz)だ。このなかで「ホテルカリフォルニア」はどちらもネイティブ再生、他の2曲はAK320ではダウンコンバート、およびPCM変換再生となる。

 まず「ホテルカリフォルニア」で聴き比べてみると、音質はかなり近い。AK380の広大な音場や、上下のワイドレンジな再生、ドライブ能力の高さなどは肉薄しており、約半額のプレーヤーとは思えない実力だ。

 だが、発表会場の試聴機を注意深く聴く限りではわずかな違いがある。AK380の方が低域がほんの少しパワフルで、描写の彫りが深く、音の響きの余韻が強く伝わってくる。AK320はそれと比べるとクリアさ重視で、コントラストはやや弱い。このあたりはエージングなどの違いもありそうだが、試聴した限りでは音の違いは存在すると感じた。

 DSDの「Thriller」ではここにネイティブ再生か、PCM変換再生かという違いも加わるため、違いはより明瞭になる。AK380での再生は、DSDらしい質感の豊かさ、ヴォーカルの高域の自然さが良く出ている。AK320では音の輪郭がカチッと固く感じられ、DSDらしい柔らかさがあまり感じられない。

「次の年に向けてさらなるラインナップ拡充も予定」

iriver本社のVice President James Lee氏

 iriver本社のVice President James Lee氏は、両モデルの音の違いとして、「筐体のアルミが異なるほか、(DSD再生用のXMOSを搭載していない事から)プリント基板も異なる。こうしたマテリアルが変わると、音も変化する」と説明。

 さらに、“個人的な印象”として「AK380の方が男性的、AK320には若々しい男性、女性的な音という印象を持っている。AK380、AK320、AK240など、皆さんがどのモデルの音を一番気に入っていただけるか非常に興味深い。ユーザーの皆さんそれぞれが、各自のオーディオスタイルに合ったモデルを選んで欲しい」と語った。

アユートの渡辺慎一代表取締役

 また、James Lee氏は、AKブランドを展開したこの約3年間を振り返り、「毎月のように韓国から日本に来て、日本のユーザーの皆さんの要望や情報などに耳を方向け、それを韓国に持ち帰って改善するという事を繰り返してきた。この流れが、AKシリーズにとってとても重要であり、それに伴い日本市場の重要度も増しています。次の年に向けてさらなるラインナップ拡充も予定しており、それに向けた準備も進めています。AKシリーズをより進化させていくためにも、日本のオーディオファンの皆様に“これからもよろしくお願いします”と伝えたい」とコメントした。

 アユートの渡辺慎一代表取締役は、製品の進化だけでなく、サービスも向上させている事を説明。従来は修理の際、韓国に送って行なっていたが、現在ではバッテリ交換も含め、AKシリーズの修理は全て国内で対応できるような体制を構築した事も紹介された。

(山崎健太郎)