NHKと日立、TV映像に電子透かし埋め込むトランスコーダ

-データ流出対策。ネット使用の低解像度変換時に使用


 日本放送協会(NHK)と日立製作所は31日、テレビの放送映像を低解像度の動画ファイルに変換する際に、画質の劣化を抑えながら識別情報を電子透かしとして埋め込めるトランスコーダを共同開発したと発表した。識別情報は専用ソフトで把握でき、データ流出対策へ貢献できるという。

 テレビ局では近年、ネット上での番組の二次利用などにより、高解像度の動画ファイルを低解像度に変換する機会が増えているという。さらに、放送を記録するメディアも、テープから動画ファイルへの移行が進んでおり、利便性は向上しているが、データ流出の危険性も増加している。

 開発された技術は、放送映像を低解像度の動画ファイルに変換する際、映像の特徴を検出し、目立たない領域を選択した上で、人間が知覚できない程度に画像を変更し、識別情報を動画に埋め込むもの。映像が単調な領域や輪郭部を避け、絵柄の複雑な領域に多くの識別情報を埋め込むことで、画質の劣化を低減するという。日立独自の電子透かし技術が導入されており、埋め込まれた情報は専用ソフトにより把握できる。

識別信号を上乗せした画像(左)と、電子透かしを埋め込んだ画像(右)の比較

 これまでは、データの識別情報を画像や文字として映像に上乗せ(スーパーインポーズ)していたため、本来の映像に不要な情報を上乗せしなければならないという問題があった。

 トランスコーダの入力対応形式はMPEG-2で、解像度は1,920×1,080/1,440×1,080ドット、ビットレートは100Mbpsに対応。出力はMPEG-4 AVC/H.264の640×480、512×288、352×240ドットなど。ビットレートは512kbps~2Mbps。電子透かしの情報量は64bit/1フレーム。トランスコード速度は1,440×1,080ドット/100Mbpsの入力映像を、352×240ドット/512kbpsに変換する場合、60分の映像を約37分で処理できる。その中で電子透かし処理時間は約17%。


(2010年 8月 31日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]