ミニレビュー

睡眠用イヤフォン「Sleeper」をつけて寝てみた。“寝ホン”や旅行に最適

好きな音楽を聴きながら横になって眠りにつきたい。けれど家族やご近所に配慮したり、あるいは出先なのでスピーカーが使えない。そんな時に重宝するのが小さなイヤフォンだ。巷では寝るとき専用の通称“寝ホン”を求めて小型イヤフォンを買う人もいるらしい。そんな人にも朗報になりそうなイヤフォンが、これから紹介する「Sleeper(スリーパー)」だ。

ADVANCED「Sleeper」

宮地商会M.I.D.が取り扱うADVANCEDブランドの製品で、その名のとおり、旅先での移動中や睡眠時などに快適に使用できるように設計された“スリーピングイヤフォン”。筆者は会社帰りにふらっと寄ったヨドバシカメラで1,500円で購入した。

シリコンボディのコンパクトなハウジングにダイナミック型マイクロドライバーを搭載し、「全てのタイプの耳にフィットする」というイヤーピースが付いている。再生周波数帯域は20Hz~20kHz。インピーダンスは16Ω。ケーブルの長さは1.2mで、入力はステレオミニ。

ハウジングは柔らかく、指先で少し強めにつまむとグニュッと潰せる。お菓子のハリボーグミをつまんだような感触だが、あれよりはもう少し硬い。ホコリや塵が着きやすいが、筆者はセロテープの粘着面を使って掃除している。左右の区別はケーブルの色で見分けられるようになっており、赤い方が右チャンネルで、黒が左チャンネルだ。

手持ちのイヤフォンから、比較的小型なサトレックスの「Tubomi」や、iPhoneなどの付属品としておなじみのAppleイヤフォン「EarPods」(リモコン無しモデル)を選んで並べてみた。Sleeperの小ささがよく分かる。

Sleeper(左)のサイズ・形状を手持ちのイヤフォンと比べると、その小ささがよく分かる。中央がサトレックスのTubomi、左がAppleのEarPods

イヤーピースはイヤフォン本体にデフォルトで装着されている1サイズのみだが、普段Mサイズのイヤーピースを使うことが多い筆者の耳にはジャストフィット。Mサイズのイヤーピースでフィットしない人は「イヤーピースを交換すれば良いのでは?」と考えるかもしれないが、Sleeperのイヤーピースは本体としっかりくっついて簡単には外れず、自分で交換するのは難しそうだ。できれば、事前に試聴してフィット感を確かめてほしい。

イヤーピースにあたるパーツはイヤフォン本体と一体化して外れない

ノイズキャンセル機能は備えていないが、地下鉄の車内で耳に付けてみたところ、手持ちのカナル型イヤフォンよりも騒音を低減できていると感じた。旅行先で電車や飛行機の騒音、ホテルの部屋の空調ノイズが気になる、といった時にも重宝しそうだ。

耳に装着したところ

「装着したまま横になっても痛くならない」という製品の説明を信じて、自宅で実際にSleeperを耳に付けたまま、おそるおそる布団に横になってみた。確かに耳は痛くならず、これは丸みを帯びたでっぱりの無いデザインのおかげだろう。寝返りを打っても耳たぶに当たって痛みで飛び起きる、というようなことも無く、柔らかいシリコンで出来ているのでイヤフォンが潰れて壊れる心配も無さそうだ。率直にいって、着け心地はすごくいい。

Sleeperをつけたまま押しつけても耳が痛くならない

手持ちのスマートフォンに繋いでSpotifyの音楽をジャンル問わずいくつか聴いてみた。ひと言で言うと「良い意味で解像感が低く、眠くなる音」だ。ハイハットや金管楽器のような中高域の音は適度に抑えられ、バスドラムの響きなど低域も過度に主張しない。

クラシックのピアノ曲と相性が良いようで、ショパンの「雨だれ」やサティ「ジムノペディ」、ドビュッシー「月の光」などを聞いていると本当に眠れてしまった。「突然のピークやスパイクサウンドの無いニュートラルな設計」を採用したということだが、確かに耳に刺さらず、まろやかな音が心地よい。

配信サイトで見かける睡眠向け音源や、ASMR(Autonomous Sensory Meridian Response:音楽ではない音などから得られる心地良さを追求したコンテンツ)を楽しむのにも良さそうだ。元気の良いJ-Popやアニソン、ロックは(寝るときに聴く人はあまりいないだろうが)このイヤフォンで聞くとかなり音がこもったように聴こえるので、音に関してはあくまで「寝るとき専用で使うもの」と割り切った方が幸せになれる。

ケーブルには再生/一時停止/曲送りの各操作に対応したリモコンマイクを備えている。まどろみながら別の曲にしたいと思った時にワンボタンで次の曲を再生でき、「スマホのロックを解除し、プレーヤー画面のボタンを操作して曲送りする」動作がいらないので便利だ。リモコン無しのEarPodsを使っていたときは「せっかく眠くなってきたのにまた目を開けないといけない」という面倒くささがあったが、Sleeperではリモコンのおかげで解消された。

1ボタンのリモコンマイクを備える

1,000円台前半と手頃な価格なので、正直に言えばそれほど期待せずに「試しに一本手に入れてみるか」というノリで買ってみたのだが、実際に使ってみると、個人的には横になっても痛くならず、眠りを誘うような音質も好印象だった。寝るとき用のイヤフォンとしては満点を付けたいレベルの仕上がりだ。

「“寝ホン”を探していたけれど、なかなかいい製品が見つからない」という人にも、ぜひ一度聴いてほしいと思う。

パッケージ

庄司亮一