ミニレビュー

壁に挿してスマホでテレビ。Wi-Fi搭載チューナ「DXメディアコンセント」を使った

 スマートフォンやタブレットでテレビを観るための方法はいくつかある。本体にチューナを内蔵しているスマホなどもあるが、それ以外でも最近のBlu-ray Discレコーダなどであれば、スマホからリモート視聴できるモデルも多いし、ネットワーク経由での視聴を前提としたソニー・インタラクティブエンタテインメントの「nasne」のような製品もある。

 スマートデバイス向けテレビチューナとして3月末に発売された「DXメディアコンセント」は、設置にスペースを取らず、簡単に使えるところが最大の特徴で、気軽にテレビを観たいというニーズにぴったりの製品。手持ちのiPhone 6sや、Xperia Z4、isai FL、Galaxy Tab 8.9を使ってテレビ視聴してみた。

スマートフォンでテレビが観られるDXメディアコンセント

スマホ/タブレット視聴に特化したシンプルなテレビチューナ

 DXメディアコンセントは、DXアンテナが製造するテレビチューナで、現在はNTT西日本のショッピングサイトで販売している。同サイトでの価格は8,980円。DXメディアコンセントの利用自体で何らかの契約は発生しないため、NTT西日本以外の管轄エリアでも購入は可能。

アンテナ端子のそばのコンセントにそのまま繋げばいい(写真左上がACアダプタ)

 端末は名刺ぐらいのサイズで厚さは1~2cm程度とコンパクト。背面にはアンテナ端子が飛び出しており、コンセントのように壁のアンテナ端子に差し込んで利用する。このあたりの仕組みが「コンセント」の名前の由来だろう。あとは電源を接続するだけで準備が完了する。

コンパクトなボディにアンテナ端子が一体化している

 付属のミニB-CASカードを挿入することで、地上デジタル放送の視聴が可能になる。視聴できるのは地デジのみだ。スマホなどで視聴するためには、次にDXメディアコンセントを宅内の無線LAN(Wi-Fi)ネットワークに接続する必要がある。

側面。ミニB-CASカードスロットと電源端子、アンテナ端子、そしてSETボタンのみのシンプルな外観
ミニB-CASカードを挿入して視聴準備完了

 設定のためのインターフェイスは特になく、本体の「SET」ボタンを長押しする。無線LANネットワークの接続にはWPS 2.0機能を利用するので、自宅の無線LANルーターに設置された“簡単接続”系のボタンの長押しなどで行なえる。

 試してみたところ、NECアクセステクニカのAtermシリーズなら「らくらく無線スタート」、NTT東日本のルーター「PR-500KI」なら「無線LAN簡単接続」で接続ができた。DXアンテナのサイトによれば、バッファロー製のルーターも動作確認が取れているので同様に接続ができそうだ。こうした対応しているルーターがあればほとんど手間はない。

本体左側のSETボタンを長押しで無線LAN接続を行なう
PR-500KIの無線LAN簡単接続の場合は、Web画面から設定できる
「モアテレビ」アプリ。自分の端末で利用できるかどうかのテストも可能なので、購入前にチェックできる

 接続したら、スマートデバイス側で「モアテレビ」アプリをインストールして起動する。iOS 8以降/Android 4.4以降に対応したアプリで、マルチスクリーン放送協議会が作成したアプリとのことだが、DXメディアコンセント専用という位置づけになっている。なお、1台のDXメディアコンセントに対して、視聴できるスマホまたはタブレットは1台のみ。

 アプリを起動したら、まずはチャンネルサーチで視聴地域を選択。選んだ地域でチャンネルサーチが行なわれ、それが終了するとテレビが映り、これで設定は完了。特別な手間もなく、簡単にテレビが視聴できるようになった。

チャンネルサーチで視聴エリアを選択。設定はこれだけ
アプリの設定画面。一度視聴可能になれば特に触るメニューなどはない

 自宅は、CATVパススルーで地デジの電波が届いているが、壁のアンテナ端子に直結して問題なく視聴できた。NTT東日本のフレッツ・テレビ環境でもテストしたが、ルーターのアンテナ端子へ直に接続しても視聴が可能だった。

フレッツ・テレビ対応のルーターのアンテナ端子に接続しても受信/視聴できた

 アプリは、画面左上にチャンネル切り替え、右上には設定用の歯車アイコンがある。設定からは、テレビの信号強度やB-CASカード番号などが表示されるが、普段は特別触ることはない、というより、特別設定することがない。引っ越しなどで視聴エリアが代わったらチャンネルサーチをしたり、複数のDXメディアコンセントを使っていたらペアリング設定を使うこともあるが、通常時には特に利用することはない。

 視聴中は、画面にタッチすると上部に現在の番組名が表示されるが、それ以外の機能は特になく、番組表もない。非常にシンプルで、とにかく「テレビを観る」ことに徹しているのが特徴。

視聴中の画面にタッチすると上部にバーが表示され、番組名を確認できる。左上からチャンネル切り替えが可能

 ただ、その分チャンネル切り替えもそれなりに速い。約3秒で画像が切り替わり、画面が動き出すのはその1秒後なので、4秒ほどでチャンネル切り替えができる。それほど不満はない速度だ。

 画質も悪くない。基本的には地デジをそのまま配信しているとされており、それであれば1080iの地デジ画質になる。最近はフルHDを超える解像度のスマートフォン・タブレットも増えているが、おおむね問題は感じない。nasne対応のスマホ用アプリ「Video & TV SideView」だと画質が480pのみなので、それに比べれば明らかに高画質。

 対応する無線LANはIEEE 802.11n/ac。5GHz帯に対応しているので、映像は比較的安定している。時々ブロックノイズが出るようだが、映像の安定度はルーター、DXメディアコンセント、視聴用デバイスの3つの位置関係にもよるので一概には言えない。テストした限りは、nasneと比べてもそれほど遜色はない印象。

 ただ、本体サイズが小さいせいか、無線LANの感度はあまり良くなかった。できれば無線LANルーターの近くに設置した方が良いだろう。我が家ではちょうどルーターと壁のアンテナ端子が近くにあったので問題なかったが、分配器を使うなどしてルーターとの距離を近づけると良さそうだ。

 アプリはシンプルだが、1080iの映像を表示するためか、少し古めのスマートフォンだと重い印象がある。自宅で利用する製品のため、バッテリはそれほど問題にならないが、2~3年前のスマートフォンだと動作が遅くなる場面もあった。今回試した端末の中では、Xperia Z4やisai FLではちょっと厳しい印象。

 最初の無線LANの接続でつまずかなければ、あとは機能的には最小限なので迷うことはない。設置場所もスペースは取らず、「ただ、テレビを観る」という点で言えば十分な製品だろう。

 例えば、リビングには大型テレビはあるが自室にはテレビがない場合。今までは小さいテレビを買うような場面だが、タブレットとこのDXメディアコンセントがあればテレビのスペースがなくてもテレビが楽しめる。寝室で寝る前にテレビを観たいといったときにも便利だろう。また、nasneや番組配信機能のあるレコーダを持っていない場合でも、テレビがない風呂、キッチンといった場所でもテレビが観られる。タブレットやスマートフォンで視聴すると、番組を観ている途中でテレビの前から離れるときも、そのまま視聴を継続できるのはメリットだ。

 最近はテレビを持っていないという人も増えているが、そんな人でも、従来のテレビ台のようなスペースを取らずにテレビを気楽に観られるので、とりあえず持っておいて損はないだろう。録画や宅外視聴といった機能が搭載されていないのはデメリットだが、メインのテレビやレコーダがあって、そのサブとしても使っても良さそう。テレビのヘビーユーザーでもライトユーザーでも活用できる製品だ。

小山安博