レビュー

パワフル&フル機能のクリエイティブ最上位スピーカー「iRoar」

アプリ連携強化。サブウーファ合体で低音増強

Creative iRoar

 YouTubeやサブスクリプション型の音楽配信サービスが広く利用されるようになり、スマートフォンやタブレットなどの携帯端末から音楽や動画を楽しむことも当たり前になった。それに伴いヘッドフォンやイヤフォンだけでなく、スピーカーにおいても「ワイヤレス化」が進んでいる。スマートフォンでBluetoothが標準的な機能になっているだけに、Bluetoothスピーカーは市場に豊富なラインナップが投入されている。

 そんな中でも、今回紹介するクリエイティブメディアのBluetoothスピーカー「Creative iRoar」は、様々な機器に繋げられる接続性と、幅広い用途に対応する豊富な拡張性を備えた強力な製品だ。

 同社のスピーカーシリーズ「Roar」の最上位モデルで出力や音質を強化したほか、独自のマルチコアプロセッサー「SB-Axx1」によりスマートフォンからの機能・音質設定に対応。さらに、ライン入力や光デジタル入力、USBといった有線接続にも対応するほか、オプションでサブウーファ「iRoar Rock」と合体し、さらなる大出力化ができるという機能てんこ盛りのスピーカーだ。直販価格は46,800円。

バイアンプ駆動のBluetoothスピーカー

 外形寸法は約225×120×57mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.1kg。Bluetoothスピーカーとしてはやや大きく重量級であるが、それもiRoarの高機能・高出力のため。外見からも大音量が出そうなデザインになっている。

前面と上面、側面に計5つのドライバを備える

 スピーカー前面には2インチの高中音域用ドライバを2基、上面に2.75インチのサブウーファを1基搭載し、左右に低域用パッシブラジエータを各1基配置。中低音域と高音域を個別に駆動するバイアンプ設計とすることで、パワフルな中低音域の再生を可能としている。満充電時の電池持続時間は約20時間。

前面
上面
側面

 Bluetooth Ver.3.0に対応し、オーディオコーデックはaptX、aptX Low Latency(aptX LL)、AAC、SBCをサポート。高音質・低遅延のaptX LL対応のスピーカーはまだ珍しく、対応スマートフォンユーザーには嬉しいポイントだ。機能面ではNFCによるBluetoothペアリングやタッチ式操作パネル、iOS/Androidアプリ「iRoar Dashboard」経由での音質コントロールやリモート操作などに対応する。

上面にスマートフォンを近づけると、NFCで簡単にペアリングできる

 入出力端子は、ライン入力×1、microUSB×1、光デジタル入力×1、USB DC出力(5V、1.5A)×1など。2基のマイクも内蔵する。本体のみでの音源再生やボイス録音、アドオンアプリの実行機能なども有しており、記録メディア内のファイルを扱うためのmicro USBスロットも備えている。

背面にライン入力や光デジタル音声入力、USB、microSDカードスロットなどを備えている

パワフルな再生音が最大の魅力。意外? に女性ボーカルの相性も良い

 パワフルそうな見た目に違わず、iRoarの本領は大きめの音量で曲を聴いた時に発揮される。音量を抑えても当然普通に聴けるが、iRoarの良さは音量を上げ目のほうが活きてくる。

 本機に関して特に期待するところの1つは、迫力のあるゴリゴリのロックやテクノを大音量で鳴らし切れるかどうか。大音量でどれくらい楽しめるのか? 複数のドライバと大型ウーファを内蔵するiRoarの本領を発揮する部分なので、特に重視したい。

 試した音源はFall Out Boy「Phoenix」、Fatboy Slim「Slash Dot Dash」、KNOCK OUT MONKEY「JET」、Orbital「LUSH 3-5」。もちろん音量はテーブルの上に置いた状態で部屋の床がびりびりと振動が感じられるくらいの結構な大音量に設定した。

 小さなサイズのスピーカーにありがちなのは、大音量に耐え切れずに音が割れてしまうことだが、iRoarの場合、そうした心配は完全に杞憂で、このサイズのスピーカーとは思えないくらいの大音量が楽しめた。これは大型のスピーカーユニットとバイアンプを搭載することの恩恵が遺憾なく発揮されたポイントだろう。

 iRoarで試聴した楽曲の中でもFall Out Boy「Phoenix」はiRoarと特に相性が良く、パトリック・スタンプのパワフルなボーカルと駆り立てるような曲調を存分に堪能できた。大音量にしても単に音が割れないのはもちろんなこと、バランスも保たれている。部屋の広さ、天井の高さによっても聞こえ方は違うが、筆者宅の10畳程度の間取りで、床から天井まで2.8mの空間を持つ室内であれば、十分に楽しめた。

 ジャンルにもよるが、特にロックではベースラインの格好良さを楽しむのも醍醐味の一つだろう。個人的にはiRoar単体でも十分な低音が出ていると思うが、もし実際に使ってみて低音の鳴りをより強化したいと思ったならば、後述する外付けサブウーファの「iRoar Rock」で解決を図ることができる。「大音量で楽曲を楽しむ」という観点においては、必要とされる部分をしっかり作りこめており、とても好感が持てた。

 音楽鑑賞という観点では、中音域と高音域の伸びが良いので、女性ボーカル曲の再生にも向いているように思う。今回はオリガ「ポーリュシュカ・ポーレ」、angela「シドニア」、電気グルーヴ「虹」、MOBY「Lift Me Up」、Avicii「Always On the Run」、Splatoon Original Soundtrackより「シオカラ節」などの曲を選んで聴いた。

 このうち特に気分良く聴けたのは「ポーリュシュカ・ポーレ」、「シドニア」、「Always On the Run」、「シオカラ節」。全体的にスッと耳に入ってくる感じではないのだが、大きめの音量で流していても耳を突く感じはせず、個人的に好きな音の傾向だった。女性ボーカル曲はスピーカーの特性と相性が良いようで、楽曲の持っているキャラクターが男性ボーカルと比べてより活きているように感じた。特にシオカラ節は人間の声というよりは電子音寄りなのでどうかな、と思っていたのだが、思いの外伸びやかなボーカル(にあたる音声)を楽しむことができた。

スマホアプリ「iRoar Dashboard」からフル制御

 iRoarのオーディオエンジンを担うマルチコア・プロセッサ「SB-Axx1」は、従来よりSound Blasterシリーズのポータブルアンプなどに搭載していたサウンドチップだ。Roarシリーズは従来でも、PCから細かなサウンド設定が可能だったが、iRoarの専用アプリ「iRoar Dashboard」では、スマートフォンアプリでも、PC版ソフトウェアと同等のフル機能が使えるようになった。

iRoar Dashboard
Smart Volume設定画面

 また、SB-Axx1から得られる恩恵としては、最新のオーディオエンジン「BlasterX Acoustic Engine」による種々の音質最適化機能が挙げられる。

 BlasterX Acoustic Engineでは、スピーカードライバやアンプの音響性能を最適化することで、音源ソースの圧縮時に失われるダイナミックレンジを補間するほか、映画などで急激に音量が変化する場合の音量変化を自動的に抑制するSmart Volume機能が提供される。また独自のCMSS(Creative MultiSpeaker Surround)技術を使った「Immersion」により、小型サイズのスピーカーでも広い空間を感じさせる空間表現を実現するとしている。

 音楽でももちろん使えるのだが、こうした効果を実感できたのはSFやアクション、パニックものなどの映像作品。展開の緩急がはっきりしており、派手な音響効果を使う作品では、テレビ内蔵のスピーカーとはまた違った迫力が感じられた。

スマートフォンからiRoarをコントロール

「iRoar Dashboard」の柔軟な音質設定

 iRoar Dashboardの基本的な機能としては、高中低音域の調整を行なう「イコライザー」、音の広がり感を強調する「Immersion」、特に人物の音声出力を上げて聞き取りやすくする「Dialog+」といった音質関連の調整が可能。映画やゲーム、ライブといった各ジャンルに向けて、あらかじめ設定されたプリセットも用意している。バスやトレブルの設定も可能で、イコライザーはグラフィックカルなインターフェイスで視認できる。

 アプリとしての操作体系は、基本的に複数のプロファイルから1つを選ぶ感じ。きわめてシンプルなので、操作方法に迷うことはまずないだろう。

音質調整機能のプリセット
イコライザー
Immersion
Dialog+

 iRoar Dashboardの「サウンド」カテゴリーで選べるプロファイルは、クリエイティブが独自に調整した「Sound Experience」だ。デフォルト設定の「BlasterX」、ボーカル楽曲向けの「ライブ コンサート」、音源に一切手を加えない「オーディオファイル ブリス」、靴音や銃声などのSEを強調して聞こえやすくする「ゲーム オン」、低音を強調する「ソニック バス」、セリフや爆発音を明瞭に表現する「シネマニア」と、ユーザー設定を保存できる「パーソナル サウンド」の7つ。

 音楽であれば、「BlasterX」もしくは、「オーディオファイル ブリス」、曲のジャンルによっては「ライブコンサート」など好みにあわせて選択したい。また、各プロファイルにはメーカーがあらかじめ設定した値が記録されているが、これらの値を雛形として、自分好みに変更することもできる。この場合は、設定を変更した瞬間に「パーソナル サウンド」として保存される。

 プロファイルの設定値はイコライザー、Immersion、Dialog+の3つの設定の組み合わせで特色を出している。このうちImmersionやDialog+はクリエイティブ製品ならではの特色なので、ここでは後者2項目の値を変更してみて、聞こえ方がどのように変わったかを述べたい。

 Immersionは、音のワイド感を調整する項目。これは実感としては、音の指向性を変化させるイメージの機能だ。効果を強くかければかけるほど、音源の持つ空気感が横に広がる感覚がある。かけられる効果は「ノーマル」(機能OFF)、「ワイド」、「ウルトラワイド」の3段階。これは室内で人物がたてる生活音や風が樹の枝を揺らして生じる葉音、遠くを走る自動車の走行音といった効果音や、人の話し声などをそれぞれ少しずつ強調することで音の空間に広がりをもたせて、映像作品の雰囲気を再現する用途で効果を感じた。

 楽曲のように音が「面」でこちらに向かってくる場合はあまり効果が実感できないが、映像作品でBGMの流れていない場面において、効果音や人の声が発せられるような場合は遠近感が強調され、場の雰囲気を再現するのに一役買っている。こちらは「点」や「線」のイメージだ。

 Dialog+は「ノーマル」、「バランス」、「ダイアログ フォーカス」の3段階で設定可能。効果は非常にわかりやすく、人の声がほかの音よりも前に出てくるように、迫ってくるように感じられ、はっきりと聞き取りやすくなる。

 効果を最大の「ダイアログ フォーカス」にすると、映像作品においては人物が何を話しているのかが明確になる。この機能が活きる映像作品のジャンルは、ナレーションや登場人物の発言が重要なドキュメンタリー映像だと思う。言葉がはっきりと聞こえることによって、人物の発言から感じられる微妙な感情の動きや言葉の意味を感じ取りやすくなる効果が期待できる。

 一方、これが映画の場合、人物の話し声だけでなく、効果音や音楽のバランスが物語の世界に没入するために重要な要素なので、あまり人物の声だけを強調しすぎると、作品の魅力を損なうおそれがある。これは作品にもよるので、鑑賞する作品の傾向に合わせてケースバイケースで聴き比べて決めたいところだ。

 また楽曲再生においてはボーカルがバックで鳴っている楽器の音よりも大きく聞こえるが、元々の音のバランスが変わって不自然な感じになる。音楽鑑賞時は、楽曲の持ち味を壊さない観点から、Dialog+機能を「ノーマル」(機能OFF)に設定することを勧めたい。

 iRoarの内蔵マイクは、PCやスマート端末と接続すれば外部マイクとして利用できるが、Dashboardではマイク関連の機能として、集音範囲を「周囲360度」と「本体正面」のどちらかに切り替えられる「Mic Beam」と、ボイスチェンジャー機能「Voice Morph」を使うことができる。

iRoar内蔵マイクの集音範囲を設定できるMic Beam
18種類の声色が選べるVoice Morph

 Mic Beamの「360度モード」は、iRoar周囲全体の声を拾うモード。筆者が使ってみた感じでは、一人で使った際のメリットがあまり感じられなかったのだが、スピーカーフォンとして複数の声を拾いたい場合、例えばSkypeのビデオ通話などで相手にこちらの雰囲気を伝えたい場合には便利に使えるのではないだろうか。実際、クリエイティブとしても、活用ケースとして、複数人での電話会議で使うことを提案している。

 逆に本体正面に指向性のある「プライベートモード」は、集音範囲を約30度に限定するもの。これにより、その他の範囲のノイズを低減するため、PCの前に腰を据えて、ボイスチャットをする際などに普通のマイクとして使えた。

 ボイスチェンジャーのVoice Morphは「男性」「女性」「年配者」といった基本的なプロファイルのほかに、「オーク」や「シマリス」など、かなり変わったプロファイルまで、18種類の声が選べる。使用者の声質にもよると思うのだが、使ってみると意外と"それっぽく"なるので、ボイスチャットや実況動画の音声録りの際などに、遊びで使ってみても面白いかもしれない。

予想外に使えるmicroSD楽曲再生。アドオンアプリも

 iRoarの持つ機能の中でもユニークなのは、microSDカードを用いたアドオンアプリによる機能拡張と、単体での音源ファイル再生機能だ。

 アドオンアプリは、iRoar上で動作する拡張機能。iRoar DashboardからmicroSDカードにインストールし、iRoarに挿入することで、初期状態では利用できない動作をさせられるようになる。現在、iRoar Dashboard上で入手できるアドオンアプリは22種類で、その多くはiRoar本体タッチパネルに触れたときの動作を変化させるものだ。

 一例としては、音楽を聞きながら眠る際に15分または30分で電源を落とす「Bedtime」やmicroSDカードの「Jukebox」フォルダの楽曲を再生する「Jukebox」など。中には、iRoar本体を振ることで、サイコロの出た目の数字を表示して読み上げる「Dice」といったお遊びアプリもある。4面体~20面体まで6種類のダイスが選択でき、妙に手が込んでいるところは好感が持てる。

 なお、アドオンアプリはSDKが公開されているおり、クリエイティブではパートナーやユーザーによるアプリ開発にも期待しているという。

15分または30分で本体をオフする「Bedtime」
microSDカード内の曲を再生するJukebox。再生ボタンまたは、iRoar本体を揺らすことで再生する
iRoar本体を振って、転がしたサイコロの数値を読み上げるDice

 音源ファイルの再生機能は、microSDカードに記録した音源をそのままiRoarで再生できる機能だ。対応するファイル形式は、MP3、WAV、AAC。microSDカード経由での音源ファイル再生自体は従来のRoarシリーズでも可能だったが、iRoarではDashboardの派生アプリ「Remote Assistant」を用いることで、スマート端末からの再生/停止や頭出し、録音操作ができるようになった。

Remote Assistant
microSDカード内の曲をコントロールできるのは便利
録音操作も可能

 このほか、microSDカードを挿入した際にiRoar本体に表示される「REC」ボタンを押すと、再生中の音源や、マイク、ライン入力からの音声などを録音可能(microSDからの再生音源は録音できない)。

microSDカードスロットは本体背面に設けられている

 microSDカードを用いた音楽再生で便利なのは、操作が簡単で、普段使いで何も考えずに使える点だ。例えばmicroSDカードにお気に入りの楽曲だけを入れておいて、普段はmicroSDカードに入っているプレイリストだけを延々と流しておくこともできるし、飽きたら単に曲を入れ替えればいい。また、Remote Assistantの機能がほぼ再生・録音だけに限定されていることもあって、きわめて直感的に運用できる。

 逆に言えば、せっかくiRoar関連のアプリなのだから、iRoar DashboardでiRoarの操作をすべてできたならばさらに便利なのではないか、とも感じる。特にアドオンアプリの操作は、iRoar DashboardとRemote Assistantのいずれからも扱えず、直接iRoar本体を触りに行くしかない。その点は不満だった。まだまだ完成度は上げられるはずなので、今後のバージョンアップに期待したい。

USB接続も便利

 単なるBluetoothスピーカーだけでなく、USBや光デジタルなどの豊富な入力対応もiRoarの特徴だ。PCとUSBを繋いで普通のUSBスピーカーとして使ったり、あらかじめ選曲したプレイリストをmicroSDカードに入れて流しっぱなしにしてみたり、内蔵スピーカーが心もとない再生機器の外部スピーカーとして使うなど、様々な用途が思い浮かぶ。

パソコンとBluetooth接続で使用

 筆者が実際に試したのは、家事をする際にPCと繋いでお気に入りの音源を流しておいたり、家に友人を呼んで家飲みをする際、話のネタとしてYouTubeなどの動画サイトを流しっぱなしにしたりといった使い方。それほど邪魔になるサイズでもなく、音質も良いので、PCやスマート端末内蔵のスピーカーで聞くよりも、はるかに楽しく音楽や映像を楽しめた。

Surface Pro4と繋いでUSBスピーカーとして使っているところ

 なお、PC/MacとのUSB接続時は、「iRoar Dashboard ソフトウェア」が利用できる。オーディオ設定を細かく調整したい場合や、ゲームなどの迫力を出したい場合細かい設定ができる、USB接続が便利だ。

Windows版の「iRoar Dashboard ソフトウェア」
出力音声に迫力を加えるRoar機能の切り替えメニュー

 BGMを流しておく用途で重宝したのは、音量設定はそのままに、音楽の聞こえやすさを向上させる「ROAR」機能。有効にすると主に高低音域が強調され、音楽の迫力が増したように聞こえるので、広い場所などで大音量が必要な場合に使えるだろう。

低音の補強や拡声器利用などの拡張性。アプリによる音質改善も

 さて、機能豊富かつパワフルなBluetoothスピーカーとして、単体でも十分に魅力的なiRoarであるが、豊富な拡張性も注目したいポイントだ。

 クリエイティブでは純正のオプションとして、サブウーファの「iRoar Rock」、ワイヤレスマイク「iRoar Mic」、2台のiRoarを繋いで、音を左右に振り分けたステレオスピーカーとして使えるようにする「Sound Blaster Roar MegaStereo ケーブル」の3種類を用意している。

iRoar Rock

 iRoar Rockは、見た目の通り低音域を補強するサブウーファ。価格は17,800円だ。3.75インチの大型ドライバを備える。iRoar本体を積み上げるように接続するため、上面にコネクタがあり、iRoar本体側でも底面に対応する端子を装備。iRoarをiRoar Rockにセットして、iRoar側の充電も行える。

上面にiRoar本体と接続するためのコネクタを備える
iRoarの底面にも対応する端子がある
ドッキングさせたところ

 外形寸法は245×150×160mm(幅×奥行き×高さ)で重量は2.4kgと、サイズも大きく、電源も必要になるため、実運用はほとんど据え置きになるだろう。ただ使い方は上にiRoarを載せるだけなので非常に簡単だし、純正オプションというだけあって収まりも良い。iRoarと合わせて使った時の音の迫力も段違いになる。特に大音量で音楽を再生した時に本領を発揮するだろう。

iRoar Rock背面。電源入力とスイッチのみ配置されている

 iRoar Rockと組み合わせて使った時の音の傾向として向いているジャンルは、やはり大音量で鳴らして楽しむタイプの曲と相性が良い。筆者が試用した限りでは、ロックやエレクトロミュージック、ジャズも好みの聞こえ方だった。本体のみでも中音域と高音域の伸びがよく聞こえるので、総じて歌モノがよく映えるので試しに聞いてみた演歌も意外と良かった。

 iRoar本体だけでもかなり迫力はあるが、さらに低音域が強化される。ただし、音量を出せないと効果を実感しにくいので、近所迷惑にならない時間帯や場所で遠慮無く鳴らせる環境を用意したい。広めの会場を使ったパーティなどが考えられる。

Macbook Airとの大きさ比較

 iRoar Micは、低遅延かつ高音質のBluetooth伝送が売りであり、クリエイティブでは講習会などでの説明、解説、アナウンスなどでの活用を提案している。価格は税別9,800円。

iRoar Mic

 microSDカードに記録した音源とのミックスも可能。iRoar本体は、ワイヤレスでiRoar Micとペアリングした場合にほかのデバイスのスピーカーとして使うことはできないので、マイクの音声と音源をミックスしたい場合は、microSDカードやアナログ音声入力、USB接続したパソコン音源を使う必要がある。

 iRoar本体と組み合わせて使ってみた感じでは、普通にマイク+スピーカーの拡声器として使える感じ。声もクリアに拾ってくれるし、1つの用途としては十分実用になるレベルだ。

手に持ったところ。ちょうど100円ライターを少し大きくしたくらいのサイズ感だ
iRoar本体とのサイズ比較

 派生アプリの「iRoar Megaphone」では前述のVoice Morphと、声の聞こえ方を変える「Rapidtalk」が使用できる。Rapidtalkの機能は低遅延で声に加工やエフェクトを加えない「Speech」と「Speech+」のほか、ボーカル向けの「シンギング」が用意されている。このうちシンギングは、カラオケなどで歌声を明瞭に聴かせる目的の機能。

iRoar MegaphoneのRapidtalk。効果の中では、スピーカーから出力される声の明瞭度を上げるシンギングがおすすめだ

 SpeechとSpeech+は正直何が違うのかよくわからなかったが、シンギングは少し喋ってみただけでもハッキリと違いがわかる。声の明瞭度と艶やかさがまったく段違いに良くなるので、わずかな遅延さえ気にならないのであれば、拡声器として使う際にもシンギングを使えば声の印象はだいぶ違うだろう。

 iRoarを拡声器として使う場合、ボイスチェンジャー機能のVoice Morphも、個人的なボイスチャットで使うのとはまた違った運用ができるのではないかと感じた。具体的には、イベントなどで登壇者が姿を見せずに謎の人物を演出する、といった使い方が考えられる。使いどころさえ間違えなければ場を盛り上げるのに一役買うかもしれないが、スベらないように入念に準備してほしい。

パワフル+の付加価値の魅力は?

 iRoarは、単体のBluetoothスピーカーとして「こんなことできたらいいな」と思う機能が全て詰め込まれており、それが他にはない付加価値だ。社内イベントや会議のプレゼン、身内のホームパーティなど活躍する機会は非常に多い。これ1つあれば何かしらには繋がるので、荷物に余裕があれば、とりあえずiRoar(と場合によってはケーブル)を持っていけばスピーカーの心配がなくなるのは便利だ。

 筆者としては、スマート端末やPCとBluetoothで接続して、日常的に音楽を垂れ流しにできるところ、そして音質のわりにそれほどスペースが取られない点を高く評価したい。充電さえしておけば約20時間動くので、電源が必須でないところも良い。

 ただし、4万円台半ばという価格はBluetoothスピーカーとしては高価な部類だ。ハイパワーかつ高音質なBluetoothスピーカーというのは大きな価値だが、それだけではなく、様々な機器に繋がる利便性、複数のオプションによる用途の拡張性に価値を見いだせるかどうかが重要になるだろう。

 パワフルさに加え、自宅や職場などにおいて、音声出力を必要とするすべての用途を1つで済ませる拡張性とマニアックさ。“使いこなす”には、ユーザーの腕が試されるともいえるが、使いこなすシーンがあればあるだけ、ユーザーの期待に応えるポテンシャルを持ったスピーカーだ。

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(協力:クリエイティブメディア)

関根慎一