レビュー

本物の4K/HDR体験がここに。Ultra HD Blu-rayプレーヤー「DMP-UB900」

 6月24日に、パナソニックから日本初のUltra HD Blu-rayプレーヤー「DMP-UB900」が発売された。Ultra HD Blu-ray(UHD BD)映画タイトルも、FOX、ワーナー、SPEなどが日本市場向けに大作を投入し始めており、レヴェナントなどの新作も続々UHD BD化。映画ファンも楽しめる環境が整いつつある。

Ultra HD Blu-rayプレーヤー「DMP-UB900」とUHD BD映画ソフト

 DMP-UB900の実売価格は13万円。また、UHD BD映画タイトルも4,700~6,000円程度と、従来の2K BDに比べるとまだ高価ではある。しかしUHD BDは、解像度は4Kに、さらにハイダイナミックレンジ(HDR)対応により、明るさや色など、画質に関わるあらゆる表現力が向上する新フォーマットだ。また、ネットの4K配信のビットレートは20Mbps弱だが、UHD BDでは最大100Mbpsのビットレートを扱える。コンシューマ向けの映像メディアとしては、'16年現在最高画質のフォーマットといえる。

 DMP-UB900発売前のUltra HD Blu-ray(UHD BD)再生機は、パナソニックの最上位BDレコーダ「DMR-UBZ1」のみで、実売価格は30万円を超えていた。このことを考えれば、UHD BDの最高画質もかなり身近になったといえる。ようやく登場したUHD BDプレーヤー「DMP-UB900」で、4K/HDR画質を体験した。

シンプルなBDプレーヤー。HDMI×2で奥行きは短い

 シンプルなデザインのBDプレーヤーで、外形寸法は435×199×68mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約2.4kg。幅430mmの“フルサイズ”のプレーヤーだが、10万円を超える上位モデルとしては奥行きが20cmを切るコンパクトサイズで、なおかつ重量も2.4kgと軽量だ。

DMP-UB900
天板は高級感ある仕上げに。奥行きは20cm以下

 前面にはアクリル調のカバーを配しており、開いて左側にBDドライブを搭載。中央部にUSBとSDカードスロットを備えている。BDドライブは、Ultra HD Blu-rayのほか、BD/DVDビデオ、BD-R/RE、DVD-R/RW/RAM、音楽CD、CD-R/RWなどの再生に対応。SACDには対応していない。

前面にアクリル調のパネルを配している
中央にSDスロットとUSB 2.0端子

 HDMI出力は2系統装備。一方をAVアンプに、もう一方を4Kテレビやプロジェクタに出力可能で、映像/音声信号を分離することで干渉を最低限に抑える。HDMI以外の出力端子は光デジタル音声×1、同軸デジタル音声×1、アナログ音声出力×1、7.1chアナログ音声出力×1。

背面
大型のインシュレータを装備

 ネットワークオーディオ機能もDMP-UB900の特徴。そのため、個人的にはアナログ7.1chよりも、DMR-UBZ1同様のアナログバランス2ch出力(XLR)が欲しいと感じたが、先行してUB900を投入した欧州のシアター需要を考慮し、アナログ7.1ch出力を優先したという。ただし、電源仕様などを日本向けに変更するにあたり、電源や音質重視のパーツ選択が行なわれているという。

リモコン
電源ケーブル
18GHz対応のHDMIケーブルが付属する。地味ながら重要なポイントだ

 入門機DMP-UB90との違いは、音質に拘ったシャーシ設計やパーツ選択、チューニング、7.1chアナログ出力の装備に加え、独自の4Kエンジン「4Kリアルクロマプロセッサplus」を搭載すること(DMP-UB90は4Kリアルクロマプロセッサ)。DMP-UB900は高画質・高音質を求める上位モデルという位置づけだ。音を重視するならばDMP-UB900一択となるが、4K/HDRをもう少し手軽に体験したい人にとってはほぼ半額(実売7万円)のDMP-UB90も選択肢に入れたい。

型番DMP-UB900DMP-UB90
UHD BD/HDR
クロマ処理4Kリアルクロマ
プロセッサplus
4Kリアルクロマ
プロセッサ
大容量電源-
高音質パーツ-
HDMI出力22
出力端子7.1ch
2ch
光デジタル音声
同軸デジタル音声
光デジタル音声
発売日6月24日7月22日
実売価格13万円7万円

Ultra HD Blu-rayに必要なもの。設定

 前述のとおり、「Ultra HD Blu-ray」(UHD BD)は、4K/3,840×2,160ドットの高解像度、1,000nitを超える高輝度・高いコントラスト表現が可能なHDR(ハイダイナミックレンジ)、広色域規格「BT.2020」などに対応し、3層容量100GBのディスクに、最高100Mbps、HEVC/H.265、10bitの映像を4K/60pで収録する次世代ブルーレイディスク規格だ。

 UHD BDの再生に必要な物は、プレーヤーのほか、著作権保護技術の「HDCP 2.2」と4K/60p信号入力に対応したHDMIを備えたテレビ、およびHDMIケーブルだ。通常のHDMIケーブル(10.2Gbps)も利用可能だが、4K/60pフルスペック(カラーフォーマット:4:4:4/8bit、4:2:2/12bit)接続のためには[Ultra HD Premiumロゴを取得した転送速度18GbpsのハイスピードHDMIケーブルが必要となる。DMP-UB900の18Gbps対応のHDMIケーブルが1本付属するのでこれを使えば良い。なお、10.2Gbpsケーブルでの4K/60p接続時のカラーフォーマットは4:2:0となる。

Ultra HD Blu-rayを楽しむために必要なもの

 今回は、パナソニック4K VIERAの最上位モデル「TH-58DX950」と、東芝4K REGZAの'14年モデル「50Z10X」でテストした。試用したタイトルは「エクソダス:神と王」、「マッドマックス 怒りのデスロード」、「オデッセイ」(米国盤)、「インデペンデンス・デイ」、「宮古島 癒やしのビーチ」など。

映画のしなやかな高品位画質と、宮古島の鮮烈な明暗差

 編集部では、4K VIERAの最上位モデル「TH-58DX950」で視聴した。初期セットアップの[かんたん設置設定]を行なうと、DX950接続時には、4K/60p(4:4:4/8bit)、4K/60p(4:2:2/12bit)に対応している確認する画面が表示され、ここで[開始]を選択。あとはテレビのリモコン操作設定と、クイックスタート設定を行なうだけだ。

DX950を接続してかんたん設置設定を行なうと、自動的に、4K/60p(4:4:4/8bit)、4K/60p(4:2:2/12bit)出力設定が行なわれる

 起動時間は、クイックスタートOFFだと、15~16秒。クイックスタートONだと5~6秒といったところ。OFFでも遅くはないが、頻繁に使ったり、音楽プレーヤーとしても利用する場合は、クイックスタートONのほうが良さそうだ。

 ディスクローディング時間は、「宮古島」が約18秒、「エクソダス」が約27秒。ディスクによる差がかなり程度あった。再生/停止やチャプタスキップ、ポップアップメニューからの音声やチャプタ操作などは2K BDの操作感とほぼ同様だ。

 DX950の画質モードは「映画プロ」を中心に若干のカスタマイズを行なって視聴した。DMP-UB900にも、解像度調整や輝度・色調整などの機能があるが、今回は特に設定していない。また、[ダイナミックレンジ変換設定]という項目は、HDR非対応のテレビにSDR(通常色域/ダイナミックレンジ)で出力する際の明暗比の設定項目だ。

 UHD BDの「エクソダス」を見てみると、何度も視聴しているコンテンツだが、衣装の金属の輝き感や、荒野の山肌のディテールや陰影、そして雲の立体感などに、HDRらしさが感じられる。今回紹介している各タイトルに共通することだが、従来のBD(2K BD)ではほとんど白飛びしていた“雲”の形がきちんと見えるのが印象的だ。もちろん明るさやコントラストといった“HDRらしい”画質の違いもあるのだが、HDR化による表現できる信号量が大幅に増加し、それ故に、いままで“表現されていなかったもの”が見えてくるのが面白い。その代表的な例が雲の表現だ。

 2K BDと見比べてみると、解像度・精細感という点では、確かに違うがそこまで大きな飛躍とは感じない。だが、HDRと4Kが組み合わせることで、色や輝度のダイナミックレンジが大幅に向上し、結果的に画面からより多くの情報、豊かな情感が伝わってくる。

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 「マッドマックス」も2K BDと比較すると、色がかなり異なっており、UHD BDだと濃厚な印象。2K BDも高画質なディスクだと思うが、砂漠の砂塵の色や細かさ、衣装の色の深み、炎の鮮やかさや煌めき感、金属の光沢感などHDRらしい印象的なシーンが随所にある。砂嵐に飛び込むシーンの嵐の細かさや激しさと奥行き感は、UHD BDならではだ。

 また、フィルム撮影の「インデペンデンス・デイ」では、4Kらしい精細度と光の明滅などでHDRらしい画質が味わえる。2K BDと見比べてみると、光源の表現や宇宙船の金属感、空の色の深みなどHDRならではの画質が体感できる。

 本作で気になるのはフィルムグレイン(フィルム撮影作品特有の粒子感)が散見されることだ。グレインが2K BDより画面から浮いてより強く感じられ、見慣れたフィルムの画調とは異なる印象を受ける。夕日に浮かぶ雲のようなシーンでは、グレインにより見づらさを感じるほどだ。もう少しグレインを抑えめのほうが良いかな、と感じたが、この辺りはUHD BDの課題かもしれない。

 次に視聴したのは「宮古島」。編集部で確認している限り、現在日本で発売されているUltra HD Blu-rayで唯一の4K/60p収録作品だ。ビットレートも、他の映画作品(4K/24p)が15~25Mbpsなのに対し、宮古島は25M~40Mbpsだ。

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 なお、DMP-UB900のリモコン[再生情報]を見ると、ビットレートやカラーフォーマット(4:2:0等)、映像/音声コーデックなどをすぐに確認できる。これはレコーダの「DMR-UBZ1」はない機能で、さらにバックライトを備えているのもDMP-UB900のみ。リモコンへのこだわりもDMP-UB900の特徴だ。

リモコンはバックライト付き。停止ボタンの下に[再生情報]

 宮古島の強烈な日差しの中で撮影されているため、画質モードも「リビング」や「スタンダード」、「あざやか」を選んだが、とにかく明るい砂浜と波に煌めく海原をあざやかに明瞭に描き出すのが印象的だ。

 相当に明るい環境で撮影しているはずだが、砂浜の砂のディテールが飛んでおらず、しっかりと陰影から粒のかけらまで描写できている。それでいて木陰の陰影も全く潰れておらず、影の中の陰影や砂粒、カニの動きなどがきちんと見えている。また、空を見てみても雲のグラデーションや色の濃淡からの表現が見事で、どこまでも雲が続くかのような奥行き感を覚える。

 ビーチの手前から、左右の木陰を抜けて海を見渡すシーンでは、空、砂浜、木陰のどの部分を見てもきっちりと色鮮やかかつ精細に描かれるのには驚かされた。おそらく肉眼であれば、眩しくて目を細めてしまうような、明るい映像の中でも、確かな陰影が表現されている。太陽の光を浴び瞬く波頭も、雲の陰影も、パラソルの下の影も全てが見渡せ、実際には体験できない“超現実”的なダイナミックレンジがテレビ画面上に再現される。ものすごくリアルなのだが、少し、絵画っぽくも見える、不思議な感覚を覚える。

 夕暮れの海に沈もうとしている太陽とその光と色のグラデーション、引波にさらわれる砂粒や波頭の輝き感、砂のくぼみの陰影や砂の中に交じるゴミなど細かすぎるほどのディテールが表現されている。UHD BDでは映像コーデックにHEVC/H.265を採用しているが、波頭が崩れる様子や波の広がりなどを見ても、まるでノイズが感じられない。こうした部分からもUHD BDの“次世代”品質が感じられた。

4K/60p、HDCP 2.2対応であれば利用可能。注意点も

 上記はHDR対応の「Ultra HD Premium」ロゴを取得した最新フラッグシップVIERA「TH-58DX950」でのテスト。期待に違わぬHDR/4K体験は間違いなく魅力的だ。1,000nitを超えるDX950の輝度性能がその魅力を存分に引きだしていることは間違いないが、少し前の4Kテレビではどうだろうか?

 そこで、2014年発売の4K REGZA「50Z10X」でもUltra HD Blu-rayを体験してみた。2年前の製品だが、当時のREGZAのフラッグシップモデルで、ピーク輝度は700nitを超える。さらに'15年末にHDR対応のファームウェアアップデートも行なわれ、UHD BDにも対応した。'14年後半以降の各社4Kテレビ上位モデルは、UHD BD対応(4K/60p+HDR)製品も多いので、自分のテレビがUHD BD対応か確認してみて欲しい。

 注意点は、DX950はHDMIの18Gbps信号入力に対応しているが、Z10Xでは10.2Gbpsまでとなること。そのため4K/60p接続時に、カラーフォーマットが4:4:4/8bit、4:2:2/12bit入力に対応できず、4:2:0/8bitとなる。DMP-UB900の特徴であるクロマアップサンプリングした映像の伝送には制限が出る。

DX950では、4K/60pの4:2:2/12bit入力に対応する
Z10Xの4K/60p設定は、4:2:0を選択

 とはいえ、映画の4K/24p作品であれば、10.2Gbpsでも4:2:2/12bitで伝送できるので、大きな差では無いし、現時点では4K/60p作品が「宮古島」のみということもあり、問題は無い。設定においても、前述のようにDMP-UB900の初期設定ウィザードで、DX950で表示された、4K/60p(4:4:4/8bit)、4K/60p(4:2:2/12bit)の対応確認画面が出ないだけで、設定さえキチンと行なえば、Z10Xでも十分にUHD BDのHDR画質を楽しめる。

Z10Xでも4K/24pを4:2:2入力に対応

 ただ、Z10X固有の課題として、HDCP 2.2と4K/60p信号対応のHDMI端子はHDMI 3入力のみであることと、後から機能追加しているため、HDR関連の設定をユーザーが行なう必要がある点は注意したい。設定自体は、HDMI 3の[HDRモード設定]で[HDRモード]を選ぶだけなのだが、筆者は何も考えずに別系統のHDMI端子に繋いだりして、若干手間取ったので、手持ちのテレビHDMI入力のHDR、4K/60p対応確認はしっかり事前に行なっておきたい。

Z10Xの場合は、HDCP 2.2、4K/60p入力は[HDMI 3]のみ。また、HDR対応についても明示的に指定する必要がある

 暗室で見たDX950の画質にも感動したが、自宅の見慣れたZ10Xで見ても、やはりHDR映像ならではの驚きと楽しさがある。何度も視聴している「エクソダス」を明るいリビングで見ても、HDRならではの光の煌めき感や情景の奥行きや立体感、明部のみごとな階調表現に唸らされるし、テレビをアップグレードしたような感覚を覚える。

ネットワークオーディオプレーヤー機能も搭載

 UHD BD/BDだけでなく、DVD/CDの再生機能や、ネットワークオーディオ機能も搭載している。DMP-UB900のホームメニューでは、SDカードやUSBメモリ内の動画や写真の再生や、ミュージックプレーヤーなどに利用できる[ホームネットワーク]、Netflixなどの映像配信サービスを楽しめる[テレビでネット]などの機能が選択できる。

DMP-UB900のホームメニューで各種機能を選択

 HDMIも2系統備えており、ビデオとオーディオの分離出力が可能。また、7.1chのマルチチャンネル出力も備えている。

 ネットワークオーディオ機能は、LANに接続し、ホームネットワークで[メディアレンダラー]を選ぶだけ。あとは、スマートフォンからNASなどの楽曲を選んで再生するだけでよい。

 iPhoneでアプリ「Panasonic Music Stream」を使い、NAS(Rockdisk Next)やnasne内の楽曲を再生してみたが、シンプルなネットワークオーディオプレーヤーとして利用できた。FLACやDSD(5.6MHzまで)などのハイレゾ再生にも対応する。

 また、音楽再生時に、映像関連回路を停止し、ノイズ発生を抑える「ハイクラリティサウンド4」や、圧縮音源の欠落した高域成分を復元する「リ.マスター」、真空管のような温かみを加える「真空管サウンド」なども搭載している。

Panasonic Music StreamでNASを選択
再生画面

 NetflixやHulu、YouTube、Amazonビデオ、radiko.jpなどの映像/音楽配信サービスに対応。Netflixはリモコンに専用ボタンを装備しており、NetflixやYouTube、Amazonビデオは4K配信にも対応する。映像配信サービスでも、4Kリアルクロマプロセッサplusによる高画質化が行なわれるため、あらゆる4Kコンテンツの再生先としてDMP-UB900を利用できる。

HuluやNetflixに対応。4K出力も可能

これが本当のHDR画質。新しいフォーマットならではの楽しさを

 機能豊富なプレーヤーだが、DMP-UB900の最大の魅力はなんといってもUltra HD Blu-ray再生だ。従来のBDプレーヤーと全く同じ操作感で、最新の4K/HDRコンテンツが楽しめるし、魅力的なUHD BDタイトルも揃いつつある。

 最高100MbpsのHEVCによる、4K/HDRのUHD BD画質はやはり異次元。Netflixなどの4K配信を見て、4K画質に満足していた人にも是非その違いを体験して欲しいし、特にHDR対応の4Kテレビを持っている人は、是非試してみてほしい。

 10万円を超えるプレーヤー価格は、ややハードルが高いかもしれないが、「家庭で最高の画質を楽しみたい」人には間違いなくおすすめだ。これまで何度も見た作品でも、UHD BDでは、新たな発見があるはずだ。新しいフォーマット、新しい映像表現に触れるワクワク感と喜びがUHD BDには確かに存在する。

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臼田勤哉